今夜の月は奇麗だ。
満月であった。美しくはあるが、かんかん照りの太陽の如く銀色の月光をまき散らす空を見て美鈴は、ある人物を思い浮かべる。
「似てるな……」
門と壁の間の柱の上、人二人くらいが許容量のその平らなスペースの真ん中に陣取りながら、美鈴は空を見上げて一人ごちた。
「何が?何に似てるのかしら?」
背後からまさに思い浮かべていた人物の声がいきなり聞こえたので、美鈴はぶったまげた。
精神的ショックが心を飛び出し体にまで飛び火、先ほどの腕組をしながら空を睨んでいたのとは一転、奇妙なポーズの固まる。
「さ、咲夜さん……?」
片足を上げてこける寸前というポーズのまま、とんとんと細かく飛び上がって声の方向に振り向く。
「そうだけど、それ何……?新しい拳法の型?」
果たしてその人物は門の下で腕組をしながらこちらをあきれたように見上げていた。
「い、いえ……気にしないで流してください……」
どうにか体の硬直が解けてきたので、体勢を戻して少し体操のように動かして伸ばす。
「そういえば、この時間に珍しいですね、何か御用ですか?」
伸ばしながら、咲夜に来訪の理由を尋ねる。
「今夜は少し暇になってね。それにいい月だし、だから……久しぶりに、ね」
言いながら、咲夜は片手ずつに持った二本のワインと二つのグラスを掲げた。
美鈴は掲げられたそれを見るや、一気に顔を綻ばせる。
「ああ、いいですねぇ!」
まったく邪気のないその純粋な笑顔に、咲夜は少しだけ嬉しそうに、少しだけあきれたような、そんな微笑みを返す。
「まだ湖の魚を燻製にしたのが小屋の方に残ってたかなー、ビスケットとジャムもあったと思うし、取ってきますねー」
言いながら、柱から一気に飛び降りて咲夜の目の前に着地する。
「あきれた、そんなに貯め込んでるの?」
「どこかのメイド長さんはケチですからね、足りない分は自分で補うしかないんですよ。それにそれをあてにしてお酒しか持ってこなかったくせに……」
ギロリと咲夜が一睨みすると、美鈴はさっと視線を逸らす。
「ま、いいわ。さっさと取ってきなさい」
「はーい、さっき私が立ってたところは眺めがいいんでそこで飲みましょう。上がって待っててくださいね」
言う間にもう走りながら、振り返って答える美鈴に、咲夜はため息をついた。
「さぁさ、早く飲みましょう」
向かい合って座る二人。胡坐をかいて座る美鈴は待ちきれないという風に、コルクを開ける咲夜を急かす。
「はいはい、わかったわよ」
咲夜は子供をあやすように微笑みながら言うと、グラスに注ぎ、美鈴に渡す。
「じゃ、さっそく…と、したいところですけど、何に乾杯しましょうか?」
グラスを持って考え込む美鈴に、今度は咲夜が急かす。
「別に、何でもいいでしょうに……ほら、早く」
美鈴はなおも悩み、空を見上げる。と、眩い月光を浴びて、さっきのことを思い出した。
「そうですね、それじゃ咲夜さんみたいな今夜の月に」
言いながら、グラスを掲げ。
「私みたいな今夜の月に?」
咲夜が訝しげな顔をしながらも、グラスを掲げ。
二つのグラスが軽くぶつかって、奇麗な音を立てた。
満月であった。美しくはあるが、かんかん照りの太陽の如く銀色の月光をまき散らす空を見て美鈴は、ある人物を思い浮かべる。
「似てるな……」
門と壁の間の柱の上、人二人くらいが許容量のその平らなスペースの真ん中に陣取りながら、美鈴は空を見上げて一人ごちた。
「何が?何に似てるのかしら?」
背後からまさに思い浮かべていた人物の声がいきなり聞こえたので、美鈴はぶったまげた。
精神的ショックが心を飛び出し体にまで飛び火、先ほどの腕組をしながら空を睨んでいたのとは一転、奇妙なポーズの固まる。
「さ、咲夜さん……?」
片足を上げてこける寸前というポーズのまま、とんとんと細かく飛び上がって声の方向に振り向く。
「そうだけど、それ何……?新しい拳法の型?」
果たしてその人物は門の下で腕組をしながらこちらをあきれたように見上げていた。
「い、いえ……気にしないで流してください……」
どうにか体の硬直が解けてきたので、体勢を戻して少し体操のように動かして伸ばす。
「そういえば、この時間に珍しいですね、何か御用ですか?」
伸ばしながら、咲夜に来訪の理由を尋ねる。
「今夜は少し暇になってね。それにいい月だし、だから……久しぶりに、ね」
言いながら、咲夜は片手ずつに持った二本のワインと二つのグラスを掲げた。
美鈴は掲げられたそれを見るや、一気に顔を綻ばせる。
「ああ、いいですねぇ!」
まったく邪気のないその純粋な笑顔に、咲夜は少しだけ嬉しそうに、少しだけあきれたような、そんな微笑みを返す。
「まだ湖の魚を燻製にしたのが小屋の方に残ってたかなー、ビスケットとジャムもあったと思うし、取ってきますねー」
言いながら、柱から一気に飛び降りて咲夜の目の前に着地する。
「あきれた、そんなに貯め込んでるの?」
「どこかのメイド長さんはケチですからね、足りない分は自分で補うしかないんですよ。それにそれをあてにしてお酒しか持ってこなかったくせに……」
ギロリと咲夜が一睨みすると、美鈴はさっと視線を逸らす。
「ま、いいわ。さっさと取ってきなさい」
「はーい、さっき私が立ってたところは眺めがいいんでそこで飲みましょう。上がって待っててくださいね」
言う間にもう走りながら、振り返って答える美鈴に、咲夜はため息をついた。
「さぁさ、早く飲みましょう」
向かい合って座る二人。胡坐をかいて座る美鈴は待ちきれないという風に、コルクを開ける咲夜を急かす。
「はいはい、わかったわよ」
咲夜は子供をあやすように微笑みながら言うと、グラスに注ぎ、美鈴に渡す。
「じゃ、さっそく…と、したいところですけど、何に乾杯しましょうか?」
グラスを持って考え込む美鈴に、今度は咲夜が急かす。
「別に、何でもいいでしょうに……ほら、早く」
美鈴はなおも悩み、空を見上げる。と、眩い月光を浴びて、さっきのことを思い出した。
「そうですね、それじゃ咲夜さんみたいな今夜の月に」
言いながら、グラスを掲げ。
「私みたいな今夜の月に?」
咲夜が訝しげな顔をしながらも、グラスを掲げ。
二つのグラスが軽くぶつかって、奇麗な音を立てた。
本当に素敵です。