みすちーの屋台
皆さんはご存知だろうか?夜になれば獣道に現れる赤提灯の屋台を。
「~♪」
今まさにその屋台の店主が鼻歌を歌いながら営業の準備をしている。
「ラ~♪ララ~♪今日は誰が来るのかなぁ~♪」
曲調は想像にお任せしたい・・(汗)
この屋台は意外と人気で夜になれば妖怪たちがふらふらやってくる。稀に人間もやってくるが、それは極限られた人種で「博霊の巫女」「黒白の魔法使い」「蓬莱人」など、ある程度の力がある者だけで普通の人間はまず飲み食いすることはできないだろう。因みに店主も妖怪で、名はミスティア・ローレライ(仲間内では「みすちー」の愛称で呼ばれている)。彼女は歌が好きで一度屋台を開けば客が来るまでずっと歌を歌っている。ミスティアの歌には人を惑わす力があり、今まで、ミスティアは暗い夜道や森で人を惑わし妖怪に襲わせる、そのようなことをしてきた。しかし、長生きしているとそれも飽きてくる。そこでミスティアは屋台を開くことにした。そして、最初に作った一品が「八目鰻の串焼き」。それは彼女の好物で、そのおいしさは皆にすんなりと受け入れられ常連客の定番メニューとなっている。
そうしてミスティアの屋台は文々。新聞でも取り上げられ、幻想郷中に広まり、行列が出来るとまではいかないがそれなりの客は得ていたのだった。
ミスティアが屋台の準備を済ませ、所定の位置についたその時、本日最初のお客が現れた!
「じゃまするわよ!みすちー!」
「こんばんわ~。」
「いらっしゃ~い。」
やってきたのはチルノと大妖精。この二人が屋台に来たのは今回が初めてで、この二人が一緒なのはそう珍しくないのだが、ミスティアには一つ疑問に思うことがあった。
「あのさ・・チルノって・・」
「なによ?」
むっとした表情でチルノは答える。となりで大妖精はにこにこと笑いながら二人を見守る。
「チルノって・・お酒・・飲めたっけ?」
「!!」
チルノは驚いた。それも自慢の氷の羽にひびが入るくらいに驚いた。そして腰に手を当て・・・言った。
「の、のめるわよ!なんたって、あたいはさいきょうなんだから!」
お酒が飲めることと最強は関係ない、そう言おうと思ったミスティアは言えば後が面倒なので言わないことにした。
「じゃあ、本当に飲めるかどうか試してみようじゃない・・・はい。」
ミスティアはガラスのコップに酒を少し注ぎ、屋台のテーブルにドン!と音をたててチルノにお酒を勧める。コップに入った少量のお酒を見てチルノはゴクリと喉を鳴らす。そして、コップに手をつけると勢いよく口まで運びそれを一気に飲み干した。それを見たミスティアと大妖精は「おぉ!!」と驚きの声を上げる。しかし・・
「あ、あたいったらぁさいきょ・・はぅ!・・ぱたっ・・」
「チルノちゃん!?」
「ち、ちょっと!?」
チルノは倒れた。顔を真っ赤にし、目を回しながら。つまり・・・酔ったのだ。それからチルノは大妖精に抱かれつつも、「あたいったらぁさいきょうらぁ~・・」と酔いが回りながらも最後まで頑なにそれを連呼し、大妖精と共に帰っていった。
「チルノ、あなたのその勇士に免じて認めるわ。あなたは『自称:最強』であると・・」
チルノが最強と認められた瞬間だった。だが、あくまで『自称』である。そこ、勘違いしないように。
それから数時間ほど経ち、どこぞの館の時計が10時を示そうとしていたその時、本日二人目の客が屋台に顔を出した。
「繁盛してるかい?」
「あっ、いらっしゃ~い。今日は早かったわね。」
「ああ。今日は仕事が早く終わったもんだからさ。四季様に何か言われないうちに飲みに来たよ。」
やってきたのは赤い髪に紅い瞳、高い下駄を履き、手に大きな鎌を持った三途の水先案内人、小野塚小町。
小町はこの屋台をたいそう気に入っており、二日に一度は飲みに来るほどの常連客だった。
「みすちー、聞いておくれよ~。今日さぁ・・・。」
そうして小町はミスティアにその日の出来事や愚痴を話してゆく。それをミスティアが嫌がることもなく接するのはお客の嫌な事、楽しかったこと、悲しかったこと、それら全てを聞くことはミスティアの楽しみであり、屋台の店主の勤めでもある、それはミスティアの店主としての誇りだった。
それから2時間ほど話し込んでいた小町はお礼と御代を置いて無縁塚へと帰っていった。
深夜0時前。ミスティアの屋台もそろそろ閉店の時間である。いくら夜でも深夜0時にもなると屋台に来る客は早々いない。丁度よいところで切り上げる、それがミスティアの考えだ。ミスティアは使った食器とコップを水で洗うと、棚へと片付けてゆく。流石というべきか、手際がよい。そして全ての食器とコップを洗い終えると、ミスティアはその日最後の勤めを終え、自分の家へと帰っていった。
――月の出る夜、夜風に乗って、歌が聞こえる
――今日も、とある獣道にて、歌っているのだろう
――屋台に赤い提灯をさげ、お客が来るのを、
――楽しみにしながら
おしまい
皆さんはご存知だろうか?夜になれば獣道に現れる赤提灯の屋台を。
「~♪」
今まさにその屋台の店主が鼻歌を歌いながら営業の準備をしている。
「ラ~♪ララ~♪今日は誰が来るのかなぁ~♪」
曲調は想像にお任せしたい・・(汗)
この屋台は意外と人気で夜になれば妖怪たちがふらふらやってくる。稀に人間もやってくるが、それは極限られた人種で「博霊の巫女」「黒白の魔法使い」「蓬莱人」など、ある程度の力がある者だけで普通の人間はまず飲み食いすることはできないだろう。因みに店主も妖怪で、名はミスティア・ローレライ(仲間内では「みすちー」の愛称で呼ばれている)。彼女は歌が好きで一度屋台を開けば客が来るまでずっと歌を歌っている。ミスティアの歌には人を惑わす力があり、今まで、ミスティアは暗い夜道や森で人を惑わし妖怪に襲わせる、そのようなことをしてきた。しかし、長生きしているとそれも飽きてくる。そこでミスティアは屋台を開くことにした。そして、最初に作った一品が「八目鰻の串焼き」。それは彼女の好物で、そのおいしさは皆にすんなりと受け入れられ常連客の定番メニューとなっている。
そうしてミスティアの屋台は文々。新聞でも取り上げられ、幻想郷中に広まり、行列が出来るとまではいかないがそれなりの客は得ていたのだった。
ミスティアが屋台の準備を済ませ、所定の位置についたその時、本日最初のお客が現れた!
「じゃまするわよ!みすちー!」
「こんばんわ~。」
「いらっしゃ~い。」
やってきたのはチルノと大妖精。この二人が屋台に来たのは今回が初めてで、この二人が一緒なのはそう珍しくないのだが、ミスティアには一つ疑問に思うことがあった。
「あのさ・・チルノって・・」
「なによ?」
むっとした表情でチルノは答える。となりで大妖精はにこにこと笑いながら二人を見守る。
「チルノって・・お酒・・飲めたっけ?」
「!!」
チルノは驚いた。それも自慢の氷の羽にひびが入るくらいに驚いた。そして腰に手を当て・・・言った。
「の、のめるわよ!なんたって、あたいはさいきょうなんだから!」
お酒が飲めることと最強は関係ない、そう言おうと思ったミスティアは言えば後が面倒なので言わないことにした。
「じゃあ、本当に飲めるかどうか試してみようじゃない・・・はい。」
ミスティアはガラスのコップに酒を少し注ぎ、屋台のテーブルにドン!と音をたててチルノにお酒を勧める。コップに入った少量のお酒を見てチルノはゴクリと喉を鳴らす。そして、コップに手をつけると勢いよく口まで運びそれを一気に飲み干した。それを見たミスティアと大妖精は「おぉ!!」と驚きの声を上げる。しかし・・
「あ、あたいったらぁさいきょ・・はぅ!・・ぱたっ・・」
「チルノちゃん!?」
「ち、ちょっと!?」
チルノは倒れた。顔を真っ赤にし、目を回しながら。つまり・・・酔ったのだ。それからチルノは大妖精に抱かれつつも、「あたいったらぁさいきょうらぁ~・・」と酔いが回りながらも最後まで頑なにそれを連呼し、大妖精と共に帰っていった。
「チルノ、あなたのその勇士に免じて認めるわ。あなたは『自称:最強』であると・・」
チルノが最強と認められた瞬間だった。だが、あくまで『自称』である。そこ、勘違いしないように。
それから数時間ほど経ち、どこぞの館の時計が10時を示そうとしていたその時、本日二人目の客が屋台に顔を出した。
「繁盛してるかい?」
「あっ、いらっしゃ~い。今日は早かったわね。」
「ああ。今日は仕事が早く終わったもんだからさ。四季様に何か言われないうちに飲みに来たよ。」
やってきたのは赤い髪に紅い瞳、高い下駄を履き、手に大きな鎌を持った三途の水先案内人、小野塚小町。
小町はこの屋台をたいそう気に入っており、二日に一度は飲みに来るほどの常連客だった。
「みすちー、聞いておくれよ~。今日さぁ・・・。」
そうして小町はミスティアにその日の出来事や愚痴を話してゆく。それをミスティアが嫌がることもなく接するのはお客の嫌な事、楽しかったこと、悲しかったこと、それら全てを聞くことはミスティアの楽しみであり、屋台の店主の勤めでもある、それはミスティアの店主としての誇りだった。
それから2時間ほど話し込んでいた小町はお礼と御代を置いて無縁塚へと帰っていった。
深夜0時前。ミスティアの屋台もそろそろ閉店の時間である。いくら夜でも深夜0時にもなると屋台に来る客は早々いない。丁度よいところで切り上げる、それがミスティアの考えだ。ミスティアは使った食器とコップを水で洗うと、棚へと片付けてゆく。流石というべきか、手際がよい。そして全ての食器とコップを洗い終えると、ミスティアはその日最後の勤めを終え、自分の家へと帰っていった。
――月の出る夜、夜風に乗って、歌が聞こえる
――今日も、とある獣道にて、歌っているのだろう
――屋台に赤い提灯をさげ、お客が来るのを、
――楽しみにしながら
おしまい
あと、話の量が少し寂しいような気がする。
もう少しボリュームが欲しいと感じました。
チルノのさいきょうっぷりに感動した
で、自分でぱたっとか言ってるあたりに別種の感動が
こういう日常の切り取りも好きですぜ。
欲を言うならもうちょっと長くするといいんじゃないかなあと思いました。
ちゃんとほのぼのしてるから、場面を多くすればもっと良くなる
それらを読んで、貴方なりのみすちー屋台ものに辿り付かれますよう
ほのぼの分はなかなかのものでしたが。
シリーズ物になる事をコッソリと期待してみたり・・。