Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

アリスと妖精と人形劇・1

2008/06/19 18:56:10
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「ん・・・・」

アリスの安眠は、突如目に飛び込んだ光によって遮られた

目に入ってきた光から逃げるように寝返りを打つと、突如として首に激痛が走る

「っつう・・・!」

目がちかちかするほどの痛みによって、完全に眠気がさえてしまった彼女は
ズキズキと痛む首をさすりながら、ゆっくり身を起こす。どうやら自分はベッドで寝ていたのではなく
床でつっぷすように寝ていたらしい

「またか・・・」

昨日はちゃんと、ベッドまでいって眠ったはずだ。とすればまた転げ落ちたらしい
首を痛めたのは落ちたときか、はたまた寝違えたからか

「人にはいえないわよねぇ」

そういって、くっくっくと含むように笑う。いまだにベッドでちゃんと寝られないと誰かに知られれば、いい笑い者である
「よいしょ」と腰をあげた彼女はわずかなカーテンの隙間から光をさしこんでいる窓を開け放った

「んんん~」

日の光と、新鮮な空気が部屋いっぱいに流れ込む。それを肌で感じながら、アリスは大きく伸びをした

「あいた」

どうやら痛めたのは首だけでなく、腰もそうだったらしい



「え~と薬、薬はっと・・・」

薬棚から、痛み止めの薬を探す。首をかしげるようにナナメに傾けたまま、奥から二つの瓶を取り出した

「・・・・・」

睨むように両手にもった瓶を見比べる。どちらも茶色の瓶であり、ラベルは貼ってなかった
どちらかが痛み止めで、どちらかが便秘薬だったと思う。しかし、そこまでしか記憶していない

「まぁ、どっちも飲めばいいか」

死にはしないだろう。そう思って、薬棚の扉を閉じた
さて、薬を飲むには、食事をしなければいけない。彼女は食事は気が向いた時しかとらないが、今がその時だった

使い古したエプロンを掛ける。いつでもすぐ使えるように、結び目をそのままにしている
少しだぶついてるが、問題はない。

「何を作ろうかしら~♪」

鼻歌を歌いながら、調味料や、油を棚から取り出す。普段の彼女からは、想像が付かない雰囲気だったが
彼女にとって料理は趣味の一環でもあり、少ない趣味を楽しむのは別に悪いことじゃない

「あっ・・・!」

卵と、ベーコンを取り出した所で、何かに気づいた。身を翻して玄関へと走る。そして乱暴にドアを開けた所で
彼女は部屋に向かって腕を払うように振るった。そうした彼女の指先から、キラリと光る線のようなものがこぼれる

「上海!!蓬莱!!」

光の線は、そのまま部屋の中央にある大きなダイニングテーブルの上に並んで座っていた
かわいらしい二体の人形まで伸びた。線が人形に触れると、人形達は飛び上がるように宙に浮く

「上海は裏庭の奴の世話をお願い!!蓬莱は料理の続きを!!」

それだけいったアリスは、乱暴にドアを閉め、外に出て行った

「シャンハーイ!!」
「ホウラーイ!!」

合点承知といった風に、腕を振る上海と蓬莱は、びゅんびゅんと部屋を飛び回り
勢いをつけた後、上海人形は裏庭に近い窓飛び出て、蓬莱人形はキッチンへと入っていった


玄関から家の隅に走ったアリスは、ちょうど家の影になっている所に設けられている花壇に向かっていた
花壇につくと、規則正しく並んでいる鉢植えを見る。その表情には焦りと不安が見て取れた

「・・・・よかった。間に合った」

そういってほっと息をはく彼女は、そっと鉢植えを持ち上げると、影になってた所から日の光が差している場所に
移していった。
そうして、すべての鉢植えを移動した後、裏庭へと続く道から、上海人形が飛んできた

「シャンハーイ」

「ありがと上海、ご苦労様」

飛んできた上海人形を受け止めると、礼をいうアリス。お礼を言われた上海人形は、くるくると嬉しそうに踊った
自分の周りをはしゃぐように飛ぶ上海をつれて、アリスは家に戻る

ドアを開けると、こうばしい香りが鼻腔をくすぐった
料理担当だった蓬莱人形が、ベーコンエッグとパンをテーブルに用意している

アリスが戻ってきた事を見た蓬莱は彼女の前まで飛んでいき、スカートをつまんでお辞儀をした

「っぷ、蓬莱。それはちょっとおかしいわよ」

口に手を当てて笑いをこらえるアリス。そんな彼女を見て、蓬莱は首をかしげていた




食事を終え、薬も飲み終えたアリスは、次に家全体の大掃除をはじめた
上海や蓬莱のほかに、いくつもの人形を動かし、家の全ての窓を開けさせた後
それぞれの分担を決めて、号令と共に一斉に掃除をはじめる。まるで軍隊のようであった
ばたばたと、はたきや雑巾などを装備した人形達が統制のとれた動きでアリスの家を駆けずり回っている

掃除はすべて人形達にまかせ、自分で育てているハーブに水をやっていると

「毎度どうも、文々新聞でーす」

元気な声と共に、空から天狗が降りてきた。特徴的な一本下駄をはき、首から年代物のカメラを下げた
射命丸文は、腰に下げた鞄の中から新聞紙を一束取ると、「ごくろうさま」といったアリスに手渡す

「今日は大掃除ですか?アリスさん」

窓やら玄関やらから大勢の人形が出たり入ったりしているのを見て文は言う
アリスは広げた新聞紙をその場で読みながら

「見ての通りよ」

と、ぶっきらぼうに答えた。文は特に気にした様子もなく、カメラのレンズからその様子を観察している
「へー」、「ほー」などといって飛び回り、時折逆さになったりして、人形達が働く様を見ていた

「・・・特にこれといった内容の記事はないわねぇ。毎日取ってあげてるんだから、もっとましな記事書きなさいよ」

「辛口意見ですねぇ。そうそうおもしろいネタがないんですよ最近」

「ネタがなくても、どうにかするのが記者ってものじゃないの?嘘でもいいからぐっとくる記事書きなさいよね」

「・・・アリスさん、記者に転職しません?」

「お断りよ」

そういって、アリスは読み終えた新聞紙を人形に渡した。文は「あややや。勧誘失敗」と舌を出す

「では私はこれで、今度、人里で人気の人形師の特集書かせてくださいねー」

「これからも、文々新聞をどうぞご贔屓にー」と、文はすさまじい速さで飛んで行った

「・・・・ごめんよ。まったく」

すでに見えない所まで飛んで行ってる相手に返事を返してから、ハーブの水やりに戻った


家の掃除も終わり、さて何をしようと考えた彼女は、昨日寝る前まで読みかけていた本を取ってきた
この本を遅くまで読んでいたから今日は寝坊したのだが、作業には間に合ったので問題はなかった

自家製のハーブで入れた紅茶とクッキーを用意し、天気がいいから外で読もうかと思い立った所で

「ん・・・?」

ふと、玄関に誰かが近寄る気配を感じた。よく空き巣にでる某魔法使い対策に仕掛けた感知の魔法だったが
どうやら相手はあいつとは違うようだった。あいつなら、よく効く鼻と勘で解除するなり避けるなりするからである
なら誰だろうと意識を集中するが、よく気配がつかめない。しかたないので迎え入れる事にした

アリスは愛用している魔導書を持ち、何事が言葉をつむぐ。そうすると、右手の指先から
上海と蓬莱を動かしたものと同じ光る糸が音もなく現れた。これは、物質化したアリスの意識のようなものである

傍らに、戦闘用の人形を従えた彼女は、いままさにドアの前に立ってる人物がドアノブに触れるよりも先に
糸を使ってドアを開けた。ギィと古めかしい音を鳴らしてゆっくりとドアが開く
人形達が突然の攻撃にそなえる中、玄関先に立っていたのは

「あ、あの・・・」

「・・・・妖精?」

見慣れない妖精だった。緑の髪をサイドポニーで左に結っている。背中には二枚の羽を持ち、日の光に反射して
虹色に光っている。緑のワンピースを着ていて、弱気な表情を浮かべている。

「・・・・・・」

見たことも無い妖精の来訪に、アリスはどうするか考えていた。妖精はよくいたずらをする
本当なら即痛めつけてお帰り願うのが得策なのだが

「あ、あのぉ・・・」

ずっと自分を見て動かないアリスに、おびえた様子で震える妖精。時折声を掛けるが、なんの反応も返ってこないので、ずっとおろおろしている。目には涙も溜まり始めていた。

「はぁ、入りなさいな」

そういって、アリスは体をずらした。「え・・・?」と妖精は目を丸くする

「入らないの?なら閉めるけど?」

「お、おじゃまします!!」

呆けていた妖精を気にした様子もなく、本気で閉めようとするアリスを見て、妖精はあわててドアの隙間に体を滑り込ませる。バタンと妖精の後ろでドアが閉まった。アリスが剣や盾を構えていた人形を元の場所に戻るよう指示をだすと、朝食をとったテーブルの席の一つに座った。そして、身を小さくさせて入った場所から動かない妖精を見たアリスは

「ほら、こっちにいらっしゃいな。別に襲ったりしないわよ」

安心させるつもりでいった言葉だったのだろうが、むしろ余計な事を吹き込んでしまったらしい
部屋の中まで入った妖精は、アリスから一番遠い席に座った。あきらかにおびえている

(やりにくいわねぇ)

そう思ったアリスは、とりあえず相手の警戒心を解こうと考えを練る
そして、妖精にあることを聞いた。

「ねえあなた、お茶は好き?」

「え?」

そう疑問で返す妖精。アリスはとりあえず、さきほど入れたばかりのお茶を上海を使って彼女の前におく

「ありがとう・・・」

「シャンハーイ」

上海はお礼に対してお辞儀と返事で返すと、アリスの所まで戻ってきた

「・・・・・・」

妖精は琥珀色の液体が満たしているカップを見る。そしてアリスのほうをちらりと覗き見た

「どうぞ。これでも自信はあるのよ」

そういって、自分もカップに口をつけた。それを見ていた妖精は、同じようにカップに口をつけ

「・・・・おいしい」

笑った。ほう、と息を吐き、また口をつける。それを見ていたアリスは今度は蓬莱を呼んで
妖精の前にクッキーが盛られた皿を置く。びっくりした妖精はあわてた様子で

「あ、ありがとう!!」

と、今度ははっきりとした声でお礼をした。蓬莱はスカートをつまんでぺこりとお辞儀をした


妖精はクッキーとお茶をおかわりをして、すっかり警戒心が薄れたようであった
機を伺っていたアリスは、お茶に夢中になっている妖精に質問する

「・・・で、なんでうちにきたのかしら?」

「むぐ」と、クッキーを頬が膨れるほどに頬張っていた妖精は、お茶で流し込み一息つくと

「人形劇をやってください!!」

と、大きな声で答えた。アリスは一瞬答えの意味がよくわからなかった
妖精は続けて、

「里で、みたことがあるんです。それをみせてあげようと思って」

ああ、なるほど。アリスは彼女がいった意味をようやく理解し

「つまり、人里で私の人形劇を見た事があると、そしてそれをあなたのお友達に見せたいっていうのね」

こくこくこくと、首を縦にふって同意する妖精。それを見たアリスは紅茶を飲みながら

(めんどうねぇ。)

と、考えていた。そもそも人形劇事態、収入に困った時や新しい人形の具合などを見るために
やっていることなので、彼女自体誰かのためにするということはなかった。それが回を重ねていく内に
言付けで人気を集め、この前劇を行った時は道を埋めるほどに客がきていた。永夜の事件の時にあった
上白沢という半妖からは、今度は寺子屋でやってくれと頭を下げられる始末である。

そういう事があってからは、当分はやらないで置こうと思っていた矢先にこれである
だが、期待に目をきらきらさせている妖精の頼みを断っていいものだろうか
もし断って、次の日から色々なちょっかいを受けるのは、人形劇をやるのよりもさらにめんどうな事だ
それに、今行っている研究の妨害になってしまうかもしれない。それだけは避けたかった

「わかったわ」

深く息を吐いたアリスはそう答えた。その答えに、妖精はガタンと椅子から立ち上がると

「ほ、ほんとうにっ!?」

と、羽をばたばたさせて聞く。アリスは「嘘はつかないわよ」と、薄く笑う

「やった。じゃあ、さっそくみんなを呼んできますね!!」

と、興奮した妖精は窓から飛び立とうとするが

「ちょ、ちょっと。今からするの!?」

アリスがあわてて妖精を止める。それを聞いた妖精は

「え?違うんですか?」と、きょとんとした顔をする。アリスは腰に手をあてて

「あのね、なにをするにも準備は必要なのよ。」と、妖精を説得する

初めはポカンと話を聞いていた妖精も、次第に納得したようで

「じゃあ、アリスさんが決めてください!私もそうみんなに伝えますから!!」

話が通じる相手でよかったわ。とほっとするアリス

「じゃあ、どうやってそれを伝えたらいい?あなた、いつもはどこに住んでるの?」

「あ、私は紅魔湖に住んでます。もし日付がきまったら、湖まできてください。」

なるほど、あそこなら遠出にはならないし、準備に必要な材料も近くで手に入る

「?。湖にいけば、あなたは私を見つける事ができるの?」

それを聞いた妖精は「あ。」と気づく

「考えてなかったわけね。いいわ、こっちで探すから」

「え、探せるんですか?」

ええ。と答えたアリスは、ハンカチを取り出し

「髪の毛を一本もらえるかしら?」と、妖精にいう

妖精はさほど疑問を抱く様子もなく、自分の髪をちぎって渡した

「ありがとう。あとあなた、名前はあるの?」

そう聞いたアリスに対して、妖精は

「大妖精っていいます。よろしくお願いします。アリスさん」

そういって、ペコリとお辞儀をし、にっこりと笑った







続く
二作目です。人間地雷です。またまた長いです。おまけに続き物です。どうやら自分は、話を要約する技術が乏しいみたいです。続きはなるべく速く書く予定なので、どうかお待ちください。今回の主役はアリスです。大妖精もいます。メインはこの二人ですが、これからもっと登場させるつもりです。病んでるアリスを期待した方々、ごめんなさい。私の中でのアリスはツンデレだけど、よく気の利くおねいさんキャラなんです。では、また次回お会いしましょうー。
人間地雷
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ほのぼのした香りが心地よいですね。
>>私の中での~
俺もそうだから問題ない!続き期待してますよ~