こうして本棚の整理整頓に勤しむのが私の存在理由という奴なのだろうか。
私の人生整理整頓時々弾幕ごっこ。あーんどパチュリー様の遊び相手。
ぱたぱたぱた・・・・・・
果たしてこの本棚の清掃は意味を成しているのだろうか?そうですか。考えたら負けですか・・・・・・。
私は叩きを置いて本棚に寄り掛かり、仕入れたばかりの本が並べられた棚へと目を向けた。
「『人形師の憂鬱』『はじめてのだんまく』『黒白桃の木気になる木』・・・・・・また増えてる」
『図書館の館長って、小悪魔じゃなかったの?』という有難いお言葉を、随分昔にレミリア様から頂いた。
『パチュリー様はマスコットで、小悪魔さんは気苦労の多い館長って感じですよね。ウフフー』
・・・・・・これは美鈴さんの例え話だけれども、実に的を射ていると思う(後にこの話がパチュリー様の耳に入り、美鈴さんが魂ごと賢者の石に錬成されかけたという面白エピソードもあるがそれは又の機会に)
「あ!」
そんな時、私はある本棚の片隅にキノコが生えているのを見つけてしまう。
こんなものが生える原因といえばただ一つ。
「湿気は厳禁だとあれ程言ったのに。・・・・・・パチュリー様ー!」
「・・・・・・なにー?」
気だるい返事が返って来た。
うー、相変わらずこの図書館の音響効果は凄まじい。耳が痛い。
「また何か厄介な魔法を使いましたね?キノコが生えてますよ!」
「・・・・・・ウォーターエレメント」
「あああもう!図書館内では湿気厳禁!火気も厳禁!許可するのは植物性で自然に優しいエコロジーな魔法だけです!!」
「うるさいわね。字を間違えちゃったわ」
「誰のせいだと思ってるんですか!まったくもう・・・・・・」
私はしぶしぶ手袋をはめてキノコの撤去作業に入った。
環境が環境だけに、時々とんでもない効果のあるキノコが生える場合があるのだ。こういった災いの種は早期に刈り取るのが最良と言える。
しかし。
「・・・・・・キノコと聞いて黙っていられるほど、私は穏やかではないぜ」
「!?」
しまった!
霧雨魔理沙・・・・・・!
「そいつは貰ったあっ!」
風が吹き抜けたかと思えば、手のひらにあったキノコは忽然と姿を消していた。
「返しなさい!貴方に渡すとろくな事がないんです!!」
「馬鹿な事言うな。実りある実験素材を誰が返すか」
ですよねー。魔理沙さんに説教するだけ時間の無駄ですよね。
「ま、どうせ捨てんだろ。だから私が貰ってやる。ゴミも減るし、環境にもよろしい事じゃないか」
「どの道持ち帰るつもりだったんでしょう?」
「分かってるじゃないか。決まりだな」
結局キノコはジャイアニズム全開の魔理沙さんの懐へと収まった。
「ところでパチュリーは何処だ?今日は場の空気が重くて見つけるのも一苦労だぜ」
「そうですか?パチュリー様はここから南東方向へ進んだ先にいらっしゃいますよ」
「・・・・・・南東ってどっちだ?」
「こっちです」
「ここでいいわ」
おおっと。
何時の間にかパチュリー様が目の前に。と、これは・・・・・・かなり怒っていらっしゃる様子で御座いますね。
「おう。まさかお前が御出迎えしてくれるとは」
「よく此処まで来れたわね。今日は警備を強化してあったはずなんだけど」
「私にとっちゃ警備なんて無いに等しいぜ。いざとなりゃマスタースパークで館に風穴あけりゃOKだしな」
とう、と正拳突きを繰り出す魔理沙さんはさらっと物騒なことを言う。あんたに今までかかった修理費用教えてやりたいよ・・・・・・。
そんな悠長な心構えで居る私に恐ろしい殺気が襲い掛かってきた!
「・・・・・・本」
「あん?」
「返しなさい。昨日魔理沙が持っていった本を」
ビリビリビリ。
空間に亀裂が走りそうな程の威圧感。これはもしかして本気って奴ですか!?
「あー、あの滅茶苦茶厳重な封印が掛けられたへんちくりんな魔術書か」
「そうよ」
「すまん。あんまり寒くて薪にした」
「●×△@〆鯖↑↑↓↓←→←→BA!?」
「お、落ち着いてくださいパチュリー様!これは魔理沙さん流のジョークです!そもそも今は夏ですよ!!」
「よくぞ見破ったぜ小悪魔」
「ふ・・・ふふ。満足でしょうね魔理沙・・・・・・。しかし、あの本を奪われたことは私にとって屈辱なのよ・・・・・・!」
「所詮貴様とは価値観が、って何て台詞言わせるんだパチュr」
ぷつーん。
その瞬間何かが切れた。瞬間、魔理沙の言葉を遮るほどの魔力がパチュリーから溢れ出す!
「な、なんつう魔力を溜め込んでんだパチュリー。幾らヒキコモリでももう少し有効活用ってもんが」
「分からないでしょうね魔理沙には。この体を通して出る力が!」
「体を通して出る力だと・・・・・・!?ま、まさか今まで本気じゃなかったとでも」
「返しなさい!大事な事だからもう一度言うわ。返しなさい!!」
「う、お・・・・・・わ、分かったぜ。とりあえず今手元には無いんだ。本当だぜ。家に置いてあるから少し待て」
「今日中に必ず持って来なさい。・・・・・・勿論逃げたりした暁には」
パチュリー様の掌から炎と氷の渦が合わさった光の矢が形成されようとしていた!
あれは先日仕入れた魔道書に載っていた極大消滅呪文・・・・・・!
「行って来るぜ!!」
う、ううう・・・ちょっぴりチビっちゃった。怖いよ。パチュリー様怖いよ。
──────そして全てが終わった後の事。
静まり返る図書館へ一通の手紙と新聞が投げ込まれた。
『わり、封印解けちまった。珍しく霊夢が無駄に興味を持ちやがってな。しかも偶然居合わせた天狗の奴が本の内容をそこいら中に言いふらしやがって・・・・・・』
・・・・・・まさかご丁寧にあの烏天狗の新聞とご一緒とはね。流石に本気で殺意を覚えましたよ。
◇
「あれだけ脅しておけば大丈夫ね」
「あの、結局その書物とは一体。・・・・・・まさか魔人や悪魔の類を封印した禁書ではないですよね?」
「・・・・・・咲夜に頼まれたダイエット本。タイトルは『超人ダイエット虎の巻☆胸を落とさず贅肉落とせ』」
「・・・・・・・・・・・・ノーコメントでお願いします」
魔人なんぞより遥かに恐ろしい。やっぱりパチュリー様にも怖いものがあるんですね・・・・・・。
「小悪魔」
「ひゃん!?」
「な、何だ咲夜さんですかぁ。脅かさないd
え?
咲夜さん??
「魔理沙に"ある本"を盗まれた挙句、中身を暴露されたという噂が館中を駆け巡っているのはご存知?」
「え?いえ、あの・・・・・・えーっ!?あの件に関しては一切を全てパチュリー様が・・・・・・って居ないし!」
「見え透いた嘘はいいわ。ちょっとツラ貸しなさい」
ツラ、とかいうその前に何故ナイフを取り出しますか!?
「・・・・・・ひ」
「このナイフ、研ぎ直したのよ。切れ味はどうかしら?」
「ひっ・・・ふぇ・・・・・・・・・・・・助けて・・・・・・」
「最早逃げ道は無い。怯えろ!竦め!逃げ場の無い弾幕の中で墜ちて行け!!」
ひゃん!?お、押し倒され・・・・・・
「お邪魔するわ。魔理沙探してるんだけど此処に居ないかし、らぁぁぁぁあ!?」
・・・・・・その時呼びもしないのに最悪のタイミングで現れたのはご存知金髪美少女。あんた絶対わざとだろ?
ここで分かりきった状況説明を皆様の為に分かりやすく。
──────あ、ありのまま起こった事を話すわよ?本当にいいのね??
『妖絶な笑みを浮かべた咲夜が、ナイフ片手に泣き喘ぐ小悪魔の首筋に噛み付こうとしていた』
──────き、恐怖とかカリスマとかチャチなもんじゃ断じて無いわ!もっと恐ろしいものの片鱗を味わったの!!
──────そうよね。私ももう少し積極的に攻めないと駄目よね。取りあえず上海と蓬莱に仕込みをして・・・・・・ふふふ・・・・・・。
(A.Mさん・後日談)
もう私、お嫁に行けない。
「・・・・・・ご、御免なさい!ごゆっくりぃ!!」
「え?ちょっ!?」
「ふぇぇぇぇぇぇぇん!」
「こ、小悪魔!変な声で泣かないで頂戴!!」
「ふぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・」
小悪魔の愛らしくも悲しみに満ちた泣き声が響くヴワル魔法図書館。
こうして紅魔館に新たな伝説が生まれた。
・・・つまり、某少年の大冒険物語のメ○ローアですね、わかります。
それは兎も角、良い百合でした。
……あれ?
そんなバカな。今から俺がこの目で確かめてくる
ウィンターエレメントでなく?
題名の割に小悪魔が悪魔っぽくない。最後の焦った咲夜さんがいい。