Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ごめんなさい

2008/06/17 00:39:52
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「こらーーー!!」

迷いの竹林のどこかに存在する永遠亭。そこの住人である鈴仙・優曇華院・イナバは長い廊下をドタドタと走りながら前を走って逃げるてゐを追いかけて大声をあげる。

「私の耳を二重結びにしたのあんたでしょーーー!!これなんか全然解けないのよー!!」

「へっへ~ん。それは私が編み出した超かた結びだもん、そう簡単に解けるわけないじゃない。それにそれだけやっても起きない鈴仙がわるいんだよー」

「むきーー!!今日という今日は許さないわよ!!」

指を銃の形に構えて弾幕を発射する鈴仙。しかしてゐはそれをひょいひょいとかわしながら廊下を疾走する。

「当てられるもんなら当ててごら~ん」

あっかんべーと更に鈴仙を挑発までしてみせるてゐ。それを見た鈴仙は顔を真っ赤にしてさらに弾幕の量を増やして対応する。

「もう!当たれ、当たれ!」

大量の弾幕を見たてゐは少し慌てた表情を見せて別の道へと急カーブする。

(たしかこの先は行き止まりだ!)

鈴仙はしめた、とばかりに自分も角を曲がる。思った通りそこは硬い鉄のドアで塞がれていた。

「ふっふっふっふ。もう逃げられないわよ?観念しなさい!」

それなのにてゐはまたあっかんべーと鈴仙を挑発する。
それを見た鈴仙は、ピクピクと額に青筋をたてる。

「もう、謝っても許さないんだから!」

てゐに向かって弾幕を発射した直後に後ろの鉄のドアが開いた。

「ちょっと静かにしなさい。集中できなぎゃう!」

中から永琳が出てきた。しかも見事に顔面に弾幕がヒットして、一瞬で血の気が引いていく。

(しまった、あの部屋は師匠の特別研究室のドアだった・・・)

てゐの方を見ると、手を口に持っていって含み笑いをしている。
謀られた!
てゐに怒りをさらに覚え、文句を言おうとした時にゆっくりと、それはゆっくりと永琳が立ち上がる。

「ひっ!あ、あああああああ、あの師匠・・・・・大丈夫ですか・・・・・?」

「ええ、うどんげ。大丈夫よ」

「そうですか、それはよかっ・・・・、ひいいいいいいいいいいいいいいい!!」

鼻のところを赤く腫らしてものすごい笑顔の永琳を見てびびる鈴仙。

「あら?どうしたの鈴仙。そんなに怯えて」

「し、ししし師匠・・。目が、目がわらってないですぅ・・・・・」

「あらそう?でも、そんなことはいいわ。少し話があるから来て貰えるかしら?」

そういって親指でクイっと先ほどの鉄のドアのほうを指差す。

「ひいいいいいいい!わ、わわわ私は悪くないです!てゐのせいですぅ!!」

「大丈夫。ただ話があるだけだから、だれが悪かろうと関係ないわ」

「いやです!!てゐ!貴方のせいなんだからなんか言ってよ!!」

てゐのほうに涙目で懇願する鈴仙。するとてゐは少し寂しそうな目をして言った。

「鈴仙。弾幕の練習は外でやらないと駄目って言ったのに・・・・」

「ブルータスお前もかああああああああああああああああ!!」

絶叫しながら鈴仙は永琳に引きずられていった。丁度てゐが二重結びした耳をスーパーの袋みたいに持たれながら。




竹林を散歩しながらてゐは鼻歌を歌う。先ほどのいたずらのおかげで上機嫌だ。

「やっぱり鈴仙をからかうのは面白いなあ」

くくくと思い出し笑いをするてゐ。
しばらく思い出し笑いしながら散歩していると、竹篭を担いだ妹紅とあった。

「あ、妹紅だ」

「お、輝夜のとこの因幡じゃないか」

「てゐね、いい加減覚えてよ」

「いやあ、悪いなにせ数が多いもんでなあ」

「まあいいや。でなにしてんの?」

「いや、ちょっと筍を取りにな。なんか上機嫌だな?お前」

「そう見える?」

「ああ、なにがあったんだ?」

「えっとねえ・・・・」

てゐは先ほど自分がした悪戯を妹紅に聞かせた。妹紅も少し笑いながら聞いていたのでてゐは普段よくやる悪戯も話して聞かせた。

「・・・で、鈴仙たら涙目になっちゃってさ」

「そうかい、お前さんは根っから詐欺士だねえ」

「策士といって欲しいわね」

「はいはい、策士さんよ。一つだけ言わせてもらってもいいかい?」

「・・・なによ?」

急に真面目な顔になっててゐの目を離さずに話し出した妹紅に少してゐは身構える

「そうやって悪戯するのは悪いこととは言えないよ、私も慧音をからかったりするのは楽しいからね。でも、そうやって悪戯をした後に怒ってもらえるうちは華だ。それを忘れるなよ?」

「は?どう言う意味よ?」

「やりすぎ注意で愛想つかされるなよってこった。さて、そろそろ私は行くわ。またな策士さんよ」

そう言うと竹篭を背負いなおし、竹やぶの中へと消えていった。

「なんなのよ、あいつ・・・」

さっきまで楽しく話をしていたのに、最後の最後で水を差された気分だ。

「気分転換に鈴仙でも見に行こうっと」

てゐは散歩をやめて永遠亭に帰ることにした。






永遠亭の長い廊下を歩き鈴仙を探すてゐ。鈴仙の自室に行っても居なかったため、先ほどの特別研究室に向かう。

(まだお師匠様につかまってるのかな?)

ちょ~っとやりすぎちゃったかな?っと思いつつも、次にからかう事を考えていたらそんな心配もどこかへ消えてしまった。
研究室の扉前に着いたとき、丁度鈴仙が出て来た。

「あ・・」

鈴仙はてゐの見つけた途端すこし口を開いて、閉じる。そしていつもの様な感じでてゐに話しかける。

「どこにいってたの?」

「ん、散歩だよ」

「そう」

いつもなら真っ先に文句を言ってくる鈴仙なのに何だか今日は少し感じが違う。

「鈴仙は大丈夫だった?」

「別に、少し師匠と話しただけよ。じゃあ私は晩御飯の用意があるから」

そのままてゐの横を通り過ぎる鈴仙。
慌てててゐは振り返って呼び止める。

「れ、鈴仙!」

「何?」

足は止まったものの、振り返りもしないで返事をする。

「あ、あの。怒らないの?」

「いいの、師匠に弾幕を当てたのは私だから」

「でも、私がからかったせいでしょ?それなのに怒らないの?」

「きにしないでいいわよ。じゃあ私忙しいから行くね」

そして再び歩き出す鈴仙。その後ろ姿を見て妹紅の言葉を思い出す。

(やりすぎ注意で愛想つかされるなよってこった)

ズキリと胸が痛む。

愛想つかされた?

私が?

悪戯をしすぎたから?

嫌われた?

誰に?

鈴仙に?

ジワリと視界が滲む。鈴仙の後姿が霞んで見える。
嫌われたくない。
そう思ったときにはてゐは鈴仙の背中に後ろからしがみ付いていた。

「・・・てゐ?」

「れいせん・・・、鈴仙ごめんなさい!」

「・・てゐ」

「お願い!悪戯したのは謝るから愛想つかさないで!嫌わないで!」

「き、急にどうしたのよ?」

「だって・・・、だって鈴仙。私が悪戯したのに怒らないなんて今までなかったじゃない・・・。だから私に愛想つかしたんでしょ?謝るから許して鈴仙・・・」

「てゐ・・・」

「ごめん・・・なさい・・鈴仙」

いまだに泣きじゃくりながら謝るてゐを見て、ふぅとため息を吐き、てゐの正面を向きなおしてゐの腰に手を回して軽く抱きつく。
そしててゐの髪をゆっくりと撫でる。

「鈴仙・・・・?」

「てゐ、あなたのしてきた悪戯はとても悪いことだわ」

「ご、ごめんなさい・・」

その言葉を聞いてビクッと体を震わして謝るてゐ。

「いいから聞いて。それに今回は謝ったけど、今までしてきた悪戯が許されるわけじゃあないわよ」

「うん・・・」

「それにこれからも、悪戯しないとは限らないわ。」

「・・・・」

「でもね、てゐが真剣に謝ってくれたことは本当に嬉しいの」

「鈴仙・・・」

「いい、今回の事は許してあげる。でも次に悪戯したときは許さないわよ?」

「ありがとう・・」

「もうこの事は気にしないの。さっそくだけど一緒に料理の手伝いしない?手が足りないのよ」

「うん!」

そう言って体を離し、手をつなぎながら台所に向かう。

「私、もう鈴仙に悪戯しないからね?」

「あはは、期待してるね」

その日から一週間程、永遠亭では鈴仙の叫び声は聞こえなかったと言う。



~一週間後~

「こらーーーーーーーーーーーーーー!!!待ちなさいてゐ!!」

「あはははははははは、こっちだよ~~!」


今日も元気な永遠亭
小学生の頃あたりに母親に「愛想つかされてもしらないわよ」と怒られまして、かなり心に残ってます。
怒ってもらえるっていいですよね。
てゐかわいいよてゐ。
あとがき

「でも、あんな方法でてゐをおとなしく出来るなんて、師匠の作戦はすごいですね」

「あら、うどんげ。しらないの?」

「なにがですか?」

「ウサギは寂しいと死んでしまうのよ?」
ミヤギ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
うどんげとてゐはこういう関係が一番好きだ。しかしやっぱり師匠の差し金か。
2.名前が無い程度の能力削除
同じ事を言われた事がありますが、やはり心に残っていますね。

この年になって怒られることが少なくなり、なんだか羨ましくなるようなSSでした。
3.名前が無い程度の能力削除
心にくる話でした
最後に怒られたのいつだったかなぁ
4.名前が無い程度の能力削除
誤字報告
ビクット体を震わして謝るてゐ→ビクッと

うーん、あまりいたずらはしなかったから言われたことは無いなあ。迷惑はかけまくったが。
5.名前が無い程度の能力削除
てゐはそこら辺把握して計算してると思う。長寿だし。
6.ミヤギ削除
誤字修正しました。
ご指摘本当にありがとうございました。