この作品を見るにあたってこんなチルノはいやだ!という思いがある人は
見ないことをお勧めします。それでもよろしければ下へどうぞ!
きょうもそらはいいてんき・・だけど・・
「あつい・・」
もうすぐ夏だからしかたないかもしれないけど、これじゃあ氷の妖精である あたい が かいてきにすごせないじゃない!
あつさのあまり力をつかう気にもならないし・・
「いったいぜんたい、あたいにどうしろってんのよ!夏は・・はぅ!ぱたっ・・」
※チルノが暑さの為、倒れました。
いつもの霧の湖の真ん中に人が二人、乗れるか乗れないかわからないほど大きくもなく小さくもない氷を浮かべ、その上で舌を出しながらだらしなくチルノは寝そべっていた。そしてこの暑い中、立ち上がり、大声で叫び、目を回し、倒れたのである
今現在、霧の湖はチルノが力を抑えている為か霧がまったく出ていない。チルノは直射日光を浴びている状態なのである。
「早く・・冬がきてほしい・・」
寝言のようにそれを繰り返す。チルノは冬になると活発になる。もとい暴れだす。気温も低く、尚且つ彼女がいるからである。
彼女は4つの四季の中で1つの季節でしか会うことができず、チルノは彼女と会うことをもっとも楽しみにしているである。
その彼女の名は、冬の妖怪レティ・ホワイトロック。毎年冬になると現れ、チルノやチルノの周りに集まる妖怪と共に短い冬を過ごし、そして、季節の変わり目になると春告精に季節を譲り、冬にしか出てこられない彼女はどこへともなく去ってゆくのである。親友との別れは悲しいことではあるが、チルノはさほど気にしてはいないようだ。
『一年経てばまた会える。また来年の冬に逢いましょう。』
別れ際に必ずと言ってもいいほどレティはそう言う。彼女も寂しいだろう。それでもチルノが泣かないように、悲しい思いをしないように必死だった。そうしてチルノに一つ、二つの約束を残してレティは去ってゆく。
チルノは皆によくバカといわれる。物覚えが悪い、常識がない、簡単な問題も解けない、漢字もほとんど書けない・・などとよく言われているのを耳にする。だが、たとえ物覚えが悪くて常識がなくて簡単な問題も解けず、漢字がほとんど書けないほどのバカであったとしても、チルノは忘れない。レティと冬に交わす最後の約束を。
大切な約束だから、大切な思い出があるから、夢を見た。内容は勿論レティと過ごした日々の夢。チルノ本人はまったく覚えていなかったが・・。
それは、幻想郷が冬入りした次の日の朝。普段どおり薄く霧のかかる湖の真ん中に氷を浮かべ寝ていたチルノは、何者かの手によってその眠りから覚まされた。チルノの安眠を妨害した人物は当然レティ。冬のこの寒い朝、チルノに会うため、約束を果たすためにやってきたのだ。
チルノが目を覚ますと同時にレティが言う。
「おはよう、チルノ。今日もいい朝ね。」
レティが軽く挨拶する・・が、チルノはまだ寝惚けている様だ。そこでレティがとった行動は一つ。
「バカ」
「あたいはバカじゃない!!あたいは最強よ!!」
目を細め、涎を垂らしながら座っていたチルノは、立ち上がり大声で空に向かって「バカ」という単語を大きく否定した。
そうしてチルノは完全に覚醒した。たった一言の単語だけで完全に目が覚めるチルノはやはり、バ・・コホン!
「目は覚めた?」
レティがチルノに聞く。
「あ!レティ!おはよう!」
レティの言葉にチルノは元気よく答える。その出会ったときの初めの答えにチルノの「逢いたかった!」という気持ちが込められていることをレティは知っている。冬の短い期間にしか一緒にいられないレティだが、チルノのことを一番理解しているのはレティなのかもしれない。
「今日は何をする?」
それは帰ってきたときに必ず聞く、お決まりの言葉。
「今日?今日は・・・。」
「・・・ちゃん!・・ルノちゃん!・・チルノちゃん!」
だれかがあたいをよんでる・・。
目を覚ますと、そこには大妖精がいた。チルノの額には冷たい布が乗っている。暑さにやられて倒れていたチルノを介抱してくれたのだ。
「今回はたまたま私が通りかかったから良かったけど、暑いときは日陰にいないとだめだよ?私たちは妖精だから暑さでは死なないけど、体調は崩すんだから・・。」
大妖精の言葉を聞いてチルノは自分の周りを見る。チルノは湖の近くにある大きな木の下で横になり、大妖精と共に暑さを凌いでいるところだった。そして、先ほど見ていた夢を思い出そうと試みた・・が、はっきりと思い出すことができなかった。ただ唯一、思い出せたことはその夢にレティがいたことだけだった。
「チルノちゃん?」
大妖精が心配してチルノの顔を覗き込む。チルノはそれに応えるようににかっと笑い、「あたいは最強!」と一言。そんなチルノを見て安心したのか、大妖精はほっと胸を撫で下ろした。その時、チルノが呟くように空を見上げて言った。
「あたい、レティのゆめをみた。」
「レティちゃんの?どんな夢だったの?」
あんましおぼえてない。そういうと大妖精はチルノと同じく空を見上げて「そっか。」と呟いた。大妖精もチルノとレティの約束を知っている。だから、レティのことについては冬がくるまでは深く話さない。何より、大妖精自身がそう決めていた。
「けど」
突然のチルノの言葉に大妖精は振り向き、チルノの次の言葉を待つ。チルノは何時も通り笑いながら、
「いままでみたゆめのなかでいちばんたのしいゆめだった!」
そう、氷の妖精はこの幻想郷のどこかにいるであろう冬の妖怪に向けて誇らしげに空に向かって叫んだ。
一年はあっという間に過ぎる。
春が過ぎ、夏が終わり、秋が来て、冬になり、そしてまた春が来て。
春になれば悪戯をして、
夏になれば水浴びをして、
秋になればみんなで遊び、
そして冬が来れば・・
やはり氷の妖精は冬の妖怪と遊ぶのだろう。
おしまい
次回作も楽しみにさせていただきますw