あらすじ
リーンカーネーションゴースト
「―――――――髪の毛が伸びるくすりってないものでしょうか?」
梅雨入りを少し前に終えた、長雨の続くある日。
つくろいものをしていた早苗さんがほっこり漏らすと、神奈子様と諏訪子様は即座にまず互いの肩をぶつけ合い、次に土下座をした。
-肩をぶつけて約一秒-
(ちょちょちょちょっと諏訪子、早苗が抜け毛で悩んでるなんて聞いてないわよ!?)
(私だって聞いてない! でもまさか早苗、日々の生活へのストレスから抜け毛が増えたんじゃ……)
(だ、ダメよ! 早苗は華も恥じらう女子高校生の年頃なのよ!? 抜け毛だなんて!)
(うわん早苗ー、幻想郷での暮らしがそんなにつらかっただなんて……)
(はっ、まさか!)
(ど、どうしたの神奈子?)
(……私たちがあまりにも早苗に甘えて野放図かつ放埓に過ごしていたからストレスが溜まったんじゃ……)
(ケロー!? ありえるかも!?)
(ああ、早苗は麓でしっかりとカレー屋の店長として頑張ってるのに私たちと来たら……!)
(うう、炊事洗濯家事掃除も週五でしかやってない……)
(本当は神社のことは私たちが全部引き受けて早苗に楽をさせてあげないといけないというのについつい……!)
(早苗のごはんがおいしいから料理をおねだりしたり……!)
(掃除や洗濯をしている早苗が可愛いから……)
(ついつい任せてしまったり……! あ、でも早苗、全部楽しそうにしてるよ?)
(おバカ! それは早苗なりの気遣い、きっと内面ではストレスをためていて、それを私たちに悟らせまいと!)
(さ、早苗ー! ごめんね、そんなことに気づけなくて!)
(まさか早苗がそこまで追い込まれていたなんて……!)
-神様たちは目で語る-
長年連れ添った夫婦である神奈子様と諏訪子様、必殺のアイコンタクトである。
傍目にはぶつかって土下座しただけのようにしか見えない。
それはもう早苗さん、面喰って目を白黒させるだけである。
「あ、あの……」
「ご、ごめんね、早苗!」
「髪は女の命なのにごめんねー!!」
ぶわわっと涙を散らしながら面を上げる神様二柱。
とりあえず盛大な勘違いをしているのは間違いないが
どうにも自分のことでひどく心を痛めて涙をちょちょ切らせてくれているのを感じた早苗さん。
面映ゆい気持ちで戸惑いながらも、ぎゅんと信仰ポイントが上昇したのは言うまでもない。
▽髪の毛の話▽
「なんだ、ロングヘアーに憧れてただけなのね」
「ふー、早苗の髪が無事でよかった……」
バシラー、ケローと安堵に胸をなでおろす神様二柱。
とんだ愛すべき早とちりさんたちである。
ふふふと笑う早苗さんに照れ隠しも兼ねて理由を尋ねる神奈子様。
曰く、先日、博麗神社で巫女さんと八雲さんちの紫さんと会ったときのこと。
二人が髪の毛を結い合ったりしているのを見て「うらやましいなあ」と思ったそうである。
「それはユカレイムなの?」
「諏訪子ズレてるズレてる」
即座に合いの手を入れる神奈子様。
息もぴったり。
「いえ、普通に暇つぶしにお互いに髪の毛で遊んでたみたいです」
「またまたあ。あの神社の巫女は誰も相手がいないから怪しいと思ってたんだけど、隅に置けないわねえ」
「けろぉ~けろぉ~♪」と頬に手を当てて熱い妄想に耽る諏訪子様。
こうなると無理につつけば喧嘩になる、と心得ている神奈子様、慣れたもの。
早苗さんに目配せ。すると、早苗さん、諏訪子様に追加情報を申し渡す。
「霊夢さん、紫さんの髪の毛を鎖帷子状にしてました」
愛のかけらもない。
「―――――。でも女の子同士で髪の毛結いっこするのはいいよねー♪」
「ねー♪」
現実を即座に見つめ直した諏訪子様、とりあえず美談だけすくい上げることにした。
即応する神奈子様は打ちひしがれた諏訪子様を抱きあげるとよしよしとあやしてやる。
巫女さんはちょっと日常生活にセメント入っているが、やはり女の子である。
髪の毛の結いっこで遊んだりもするのだ。最後は、まあ、ちょっとしたいじわるの範疇だろう。
ひとしきり髪の毛の話で盛り上がると、なるほど確かに。
ちょっと結いっこがしたくなってくる。
「髪の毛が伸びるくすりか、確かに欲しいね」
「でしょう?」
「私たちの神徳だとそういうご利益はないからねー」
出来ることと出来ないことを弁えているお二柱。
早苗さんも交えて、何かよい知恵はないものかと考える。
三人寄れば文殊の知恵。三人の視線は一冊の書物に吸い寄せられた。
幻想郷に来たばかりの頃、ずいぶんお世話になった幻想ライフのお供決定版。
稗田さんちの阿求さん著「幻想郷縁起」である。
「餅は餅屋ということだし」
「永遠亭の薬師さんに頼んでみよう」
「ですね」
早苗さんはお仕事で忙しいので、神奈子様と諏訪子様で永遠亭に出かけることにした。
「髪の毛が伸びるくすりですか? ありますよ」
道中、山もなく谷もなく徒然と大事もなく進み。
永遠亭にたどり着いた二柱はあっさりと、髪の毛が伸びる薬を手に入れた。
去り際に八意先生、有名な神様夫婦に、にっこりと笑って、こう告げた。
「―――少し、サービスしておきましたから。ごゆっくり」
「ただいまー」
「あ、おかえりなさい神奈子様、諏訪子様」」
「早苗、先に帰ってたんだね」
「はい」
「あっさり見つかったよー、はいこれ」
「わー、ありがとうございます♪ さっそく使ってみますね」
さて、髪の毛の伸びるくすりを使い、美しい翠の髪をなびかせた早苗さんが
いつもはそっと巫女服の中に押し込めているスタイル抜群の肢体をさりげなくも惜しげもなくアピールし
普段の清楚さの中に匂いたつ色気を交えて、色っぽい勝負巫女服で里に降りようとするのを二柱の神様が必死に止めなければならなくなるのは
「早苗まってー!」
「――――あ! そう言えば“髪の毛が伸びるのが早いとその人はえっちだ”っていう迷信が!」
「そんなのどうでもいいから手伝ってよ神奈子ー!!」
「夫婦だからってそういうサービスはいらないのよー!!」
「うふふ、いってきまーす♪」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
もー少し、後のことである。
では行ってきます
勝負巫女服kwsk!
でも今はそれよりも早苗さんを見に行かないとー!
バシラーって何?
しかしバシラーとは
このセンスは素晴らしい
いや、別の方向で楽しかったんですが。
男か!男なのか!ダメだ!ダメダメ!
早苗にはまだ男なんて早い(わ)よ!
・・・とか2柱は必死に止めるんだろうなぁ・・・
しかし勝負巫女服とは如何なるものなのだろうか。
只でさえ腋やらサラシやらのチラつく素敵衣装がさらなる進化を遂げた
となると、早苗さんが降り立った瞬間、人里がそりゃもうエラいことに。
>抜群のスタイルの肢体
私も気づくとやってしまっているんですが、「の」を続けて使うと文章に違和感が
出てしまうことがあります。私のように全体のレベルが低い文章であればそうでも
ないんですが、じょにーずさんのような、非常に高い文章力をお持ちの方が
書き上げた文章では、それが悪目立ちしてしまう場合も。
単純に、「抜群なスタイルの肢体を」や「スタイル抜群の肢体を」などと
するだけで印象が変わってきます。
我ながら独り善がりな意見だとは思いますが、よろしければご一考を。
八意先生は神様夫婦な二柱が使うと思った訳ね
>紫さんの髪の毛を鎖帷子状にしてました
最後の早苗さんも見たいけどこっちもぜひ見たい!
>コマさん
あやややや、ありがとうございますーシューセーシマシタorz
そうかな? たしかにのを続けて使うのは本当はよくないとは思うけど、
読んでみて修正前の方が文にリズムがあった気がするんですが?
バシラー
二柱夫婦への愛がアップ!
それはともかく勝負巫女服が気になってしかたありません