『まだ来ぬ主を待ち続けて』の設定で書いてあります。
よろしければそちらを先にお読み下さい。
一応読まなくても読めるとは思います。
生まれながらにして巨大なる魔力を。
生まれながらにして膨大な『知識』を求める。
彼女は『知識』の名、『ノーレッジ』の名を冠する魔女。
パチュリー・ノーレッジ。
彼女は、ただひたすらに知識を求めた。
書を読み、理解し、自分の知識に変え、自らの魔法の糧とした。
ただひたすらに、時間も忘れ、風の匂いも忘れ、日の光も月の光も浴びることなく。
『外』の空気を忘れ、『密室』となった空間で知識を求めた彼女。
貪欲になりすぎた業なのか、それとも生まれつきそうなる運命だったのか。
彼女は喘息を患った。
それでも彼女は知識を求め続ける。
しかし、巨大なる力はいつでも疎まれる存在である。
そして、姿を見せぬ相手には恐怖心を肥大させる。
そして、恐怖心はさらなる恐怖を思わせる。
/ / / / / / / / / / / / / / /
私は思う。
何故人は、持ち得ぬ力に恐怖するのだろう。
何故人は、知らない存在に恐怖するのだろう。
何故人は、理解できないものを排除しようとするのだろう。
何故、他者の力を認めようとしない?
何故、知らない存在を理解しようとしない?
何故、理解することを放棄するのだ?
最初は私の周りにも人はいた。
だが、私が魔女であることを知り、それも巨大な力があると分かるとしだいに私から離れていった。
そして私は独りとなった。
独りになった直後は、寂しさを覚えた。
この寂しさは孤独からくるものだろうか?
それとも、私が『魔女』という理由なだけで裏切られたことからだろうか?
……恐らく両方だろうと私は理解することにした。
どこかココロに空虚なものを残したまま………
私が属性魔法に手を出してから幾年がたったのだろう。
五行の属性以外に、月と日にも手を出すとはなんとも皮肉めいたことだろうか。
憧れからだろうか?
いや、ただ自らの知識に収めたいだけだ。
しかし、属性魔法の制御は難しい。
ここにあるだけの書物で理解し、制御することはできるのだろうか?
別にかまわない。
書が無ければ、得た知識で自ら組み立てればいいだけのこと。
そのとき妙な気配を感じた。
物が焼ける匂い。匂い?
注意を匂いに向けたまま、魔法を展開し外の状況を確認した。
私は驚愕した。
人が私の家に火を放ち、魔女を殺せ。この場所から追い出せと叫んでいる。
私が何をしたというのだろう?
ただ、この場で書を読み、自らの知識に変え、孤独に暮らしているだけではないか。
何故?と私は思った。
だが直ぐに理解した。
人は――
他者の力を認めようとしないのだ。
知らない存在を理解しようとしないのだ。
理解することを自体を放棄しているのだ。
考えず、認めず、妬み、羨み、恐れ、そして排除するのだ。
理解した、だが私のココロに広がる空虚なるものはなんだろうか?
理解を放棄した者への憐れみ?
命を狙われることへの恐怖心?
――また…裏切られた――
一瞬ココロをよぎったものはなんだろう。
理解しようとする、けれど分からない。
何故?ココロに空虚なる広がりは感じるのに?
何故理解できないのだろう。
それとも――理解したくないだけ――?
……いや、今は考えるのはよそう。
ひとまずここから逃げなければ。
そう思い、私は転移魔法の陣を引く。
行き先は――幻想郷。
一度読んだことがある。
私のような、認めざる者や忘れらた者の集う楽園。
実在するかは分からない。
けれども、この『外』の世界をあてにするよりはマシであろう。
そうして私は幻想郷へ飛んだ。
/ / / / / / / / / / / / / / /
目を開ける。
見た事のない風景。
ひとまず転移魔法自体は成功したようだ。
はたしてここが幻想郷かどうかまでは分からない。
だが、『空気』が『外』の世界とまるで違うのだけは分かった。
状況を確認しよう。
目の前に広がるのは非常に大きな湖。
朝だからか霧が掛かっていて見ずらいが、近くに洋館のようなものが見える。
ひとまず洋館を目指してみよう。
ここが幻想郷であれば、そこに住まうものもまた違った存在であろう。
そう思った矢先、突如息苦しくなった。
喘息?何故?煙をすってしまったから?魔法による負担?
そう考える時間も惜しく、ただひたすらに発作を抑えるのに集中した。
すぐに抑えるのに集中したおかげか、どうにか喘息は治まった。
しかし、視界がぐらついた。
―いけない、こんなところで倒れては…
薄れていく意識の中、視界に何か入った。
少女?でもこの『気』流れは…?
そう思ったところで私は意識を手放した。
/ / / / / / / / / / / / / / /
再び目を覚ます。
目に入ったのは高い天井。
体に感じるのは軟らかい感触。
ああ、私はベッドの上にいるのだなと分かった。
「目を覚ましたのかしら?」
驚いた。
気配など感じなかったし、回りには誰もいないのだ。
どこから声が?
そう思った矢先、目の前の椅子に蝙蝠が集まった。
そして、姿を現したのは私よりも背の低い少女であった。
私は直ぐに少女がどういった存在か理解した。
少女は――吸血鬼だ。
「ええ、まずは御礼をさせていただくわ。
倒れているところを助けてくれてありがとう」
「別に構わないわ。あなたはどうやら魔女のようだったから助けただけ。
人間だったらわからないけれど」
そう言って少女は口の端をニヤリとした。
だが私はそれに動じず直ぐに返した。
「そういうあなたは吸血鬼ね。それも真正の」
「そうよ。それにしても驚かないのね。
私が吸血鬼であること、まだ命の危険があるかもしれないのに」
「あなたが吸血鬼であることは私の知識が教えてくれたわ。
そして驚かなかったのは簡単。私はまだ生きている、それだけよ」
「声を掛けた時驚いたのに?」
私は、少女のからかう様な言葉につい動揺してしまった。
「そ、それは回りに誰も居ないのに声が掛かるからよ。誰でも驚くわ、普通」
「ふふ、面白いわ、貴女。
そういえば自己紹介がまだだったわね。
私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の当主よ」
こんな幼いのに当主?いや彼女は吸血鬼。
私の何倍も生きていてもおかしくは無い。
「私はパチュリー・ノーレッジ。
あなたの言った通り魔女よ」
「じゃあよろしくね、パチェ」
「パチェ?」
「ええ、愛称よ
友人を呼ぶのに親しみを込めてね。
貴女はパチュリー、だからパチェよ」
あまりのことに呆然としてしまった。
まだ出合ったばかりなのに、話したことも自己紹介くらいなのに。
彼女は、私のことを友人といってくれた。
「わ、私達はまだ出合ったばかりよ?」
「あら、友人となるのに時間は必要かしら?」
笑顔で向けてくる言葉。
彼女の言葉に翻弄される。
そういえば会話をしたのはいつ以来だろう?
友人という言葉を向けられたことはあっただろうか?
彼女の当然と言わんばかりの言葉。
胸が熱くなる。
視界が揺れる。
何故?
ああ、涙か。
涙を流したことなんて在っただろうか?
空虚だったココロ。
すべてでは無いがその半分が埋まった気がする。
求めていたのだ、『友人』を、『友情』を。
涙が止まらない、胸が満たされていく。
「パチェ?」
彼女が心配した表情になる。
いけない、私も彼女に答えてあげなければ。
「な…なんでもない…わ。
ただ…、ただ嬉しかったの。
私のことを友人と言ってくれる相手がいることが。
よろしくね、レミリア…、いえレミィ?」
「ええ、よろしくねパチェ」
そういって私達は握手を交わした。
友人としての第一歩を、親友となれると信じて。
レミィも涙をながした。
驚いた、思わず訊いてしまった。
そして彼女も孤独であったのだ。
妹はいる。部下と呼べる妖怪や妖精もいる。
だが彼女には、対等な相手がいなかったのだ。
その力ゆえに、種族ゆえに。
だが、今は違う。
対等な存在、友といえる存在。
いずれ友が親友となり、心友といえる存在となる者が今この目の前にいる。
孤独で無くなった自分が今ここにいる。
それだけが、ただ嬉しくて涙をながしたのだ。
レミィは、これからここに住んでいけばいいと言ってくれた。
地下には図書館があると聞いたので、そこに住ませてもらうと言った。
そのときのレミィのキョトンとした顔が可愛らしかった。
―さすが、ノーレッジの名を冠するだけあるわね?パチェ
―もちろんよ。知識を得ることは私の生命と同義だわ
私はレミィを裏切らない。
彼女と喧嘩をすることもあるだろう。
意見が合わない時もあるだろう。
けれども私は彼女が困ったとき力を貸そう。
そして――たがいに笑い合おう。
些細なことでも、共に―――
/ / / / / / / / / / / / / / /
レミィのところの図書館に住み込んで幾年がすぎた。
あるときレミィとお茶をしているとき、満たされてるはずなのに何か足りない気がするともらしてしまった。
私は直ぐにしまったと思った。
親友となれる相手がいるだけでも幸せなのに、これではレミィだけでは足りないと言ってるのと同じではないか。
自分の言ってしまった言葉に後悔しながら恐る恐るレミィの顔を見る。
するとそこにはニヤニヤしている顔があった。
―それはね、愛情を求めてるのよ。
私達は親友、けれども親友では愛情を与えることはできないわ。
なぜなら『友』だから。
パチェ、貴女は『共』にいてくれる人を望んでるのよ。
それは私もそう。
でも、私にはわかるわ。
いずれ私の目の前に私と『共』にいてくれる人が現れるのが。
そして貴女の前にも現れのがね。
―それは貴女の能力によるものかしら?レミィ。
―いいえ、まだ視えないわ。けれども変化が訪れることだけはわかるわ。
―そう。でも…そうね、確かに私は求めてると思うわ。
私を愛してくれる相手を。
私なりに愛情を送れる相手が現れるのを。
『共』に居てくれる相手を。
―ふふ、私とパチェ。
どちらが先に現れるかしらね?
―どちらでも構わないわ。
たとえその相手が現れて私達の心が満たされることがあっても―
私達は変わらないわ。
親友となったあの日、あのときから…ね。
そう、たとえ私に特別な存在ができても、私と貴女の関係は変わらない。
そう言って私達は静かに笑いあった。
いずれ現れる相手を思って。
さらに幾年が過ぎたある日。
ここにある書物のおかげで五行と月、日の属性魔法は制御できるようになった。
最後は目標であり幻とされる『賢者の石』。
正直、ここの書物と私の知識を以ってしても、まるで到達できる兆しがみえない。
そんなとき、書物の中にヴワル魔法図書館なる存在が書かれた本が見つかった。
賢者の石と同様に幻とされ、次元の狭間にあると言われている魔法図書館。
書物によると適任者を待ち続けているのではないかと書かれている。
『純粋に『知識』を求めるもの』
レミィに地下に図書館を召還することを伝え、私は今の図書館に転移召還魔法陣を引いた。
このとき何故かお茶会のときの会話を思い出した。
なぜだろうと思ったが、今は集中しなければならない。
――今の私は『知識』をただ自分のためだけに得てはいない。
それはもう純粋ではないかもしれない。
けれども私はあなたを求めよう。
あなたの持つ『知識』が欲しい。
ひたすらに、親友のために自分のために。
得た『知識』を必要とするもののために。
ただひたすらに、あなたのもつ『知識』を私に。
私はパチュリー・ノーレッジ。
『知識』の名を冠するもの。
さあ、答えて―――
―――――声が聞こえます。
私は魔法図書館を管理するもの。
私達を呼ぶ貴女、貴女の名前はなんですか?
『知識』を望む貴女。
過去、現在、そしてこれからも増え続ける『知識』を望む貴女。
私達は貴女を待ち続けました。
貴女が真に私達を必要とするなら答えましょう。
さあ、私達を望む貴女、貴女の名前を私達に示してください――
よろしければそちらを先にお読み下さい。
一応読まなくても読めるとは思います。
生まれながらにして巨大なる魔力を。
生まれながらにして膨大な『知識』を求める。
彼女は『知識』の名、『ノーレッジ』の名を冠する魔女。
パチュリー・ノーレッジ。
彼女は、ただひたすらに知識を求めた。
書を読み、理解し、自分の知識に変え、自らの魔法の糧とした。
ただひたすらに、時間も忘れ、風の匂いも忘れ、日の光も月の光も浴びることなく。
『外』の空気を忘れ、『密室』となった空間で知識を求めた彼女。
貪欲になりすぎた業なのか、それとも生まれつきそうなる運命だったのか。
彼女は喘息を患った。
それでも彼女は知識を求め続ける。
しかし、巨大なる力はいつでも疎まれる存在である。
そして、姿を見せぬ相手には恐怖心を肥大させる。
そして、恐怖心はさらなる恐怖を思わせる。
/ / / / / / / / / / / / / / /
私は思う。
何故人は、持ち得ぬ力に恐怖するのだろう。
何故人は、知らない存在に恐怖するのだろう。
何故人は、理解できないものを排除しようとするのだろう。
何故、他者の力を認めようとしない?
何故、知らない存在を理解しようとしない?
何故、理解することを放棄するのだ?
最初は私の周りにも人はいた。
だが、私が魔女であることを知り、それも巨大な力があると分かるとしだいに私から離れていった。
そして私は独りとなった。
独りになった直後は、寂しさを覚えた。
この寂しさは孤独からくるものだろうか?
それとも、私が『魔女』という理由なだけで裏切られたことからだろうか?
……恐らく両方だろうと私は理解することにした。
どこかココロに空虚なものを残したまま………
私が属性魔法に手を出してから幾年がたったのだろう。
五行の属性以外に、月と日にも手を出すとはなんとも皮肉めいたことだろうか。
憧れからだろうか?
いや、ただ自らの知識に収めたいだけだ。
しかし、属性魔法の制御は難しい。
ここにあるだけの書物で理解し、制御することはできるのだろうか?
別にかまわない。
書が無ければ、得た知識で自ら組み立てればいいだけのこと。
そのとき妙な気配を感じた。
物が焼ける匂い。匂い?
注意を匂いに向けたまま、魔法を展開し外の状況を確認した。
私は驚愕した。
人が私の家に火を放ち、魔女を殺せ。この場所から追い出せと叫んでいる。
私が何をしたというのだろう?
ただ、この場で書を読み、自らの知識に変え、孤独に暮らしているだけではないか。
何故?と私は思った。
だが直ぐに理解した。
人は――
他者の力を認めようとしないのだ。
知らない存在を理解しようとしないのだ。
理解することを自体を放棄しているのだ。
考えず、認めず、妬み、羨み、恐れ、そして排除するのだ。
理解した、だが私のココロに広がる空虚なるものはなんだろうか?
理解を放棄した者への憐れみ?
命を狙われることへの恐怖心?
――また…裏切られた――
一瞬ココロをよぎったものはなんだろう。
理解しようとする、けれど分からない。
何故?ココロに空虚なる広がりは感じるのに?
何故理解できないのだろう。
それとも――理解したくないだけ――?
……いや、今は考えるのはよそう。
ひとまずここから逃げなければ。
そう思い、私は転移魔法の陣を引く。
行き先は――幻想郷。
一度読んだことがある。
私のような、認めざる者や忘れらた者の集う楽園。
実在するかは分からない。
けれども、この『外』の世界をあてにするよりはマシであろう。
そうして私は幻想郷へ飛んだ。
/ / / / / / / / / / / / / / /
目を開ける。
見た事のない風景。
ひとまず転移魔法自体は成功したようだ。
はたしてここが幻想郷かどうかまでは分からない。
だが、『空気』が『外』の世界とまるで違うのだけは分かった。
状況を確認しよう。
目の前に広がるのは非常に大きな湖。
朝だからか霧が掛かっていて見ずらいが、近くに洋館のようなものが見える。
ひとまず洋館を目指してみよう。
ここが幻想郷であれば、そこに住まうものもまた違った存在であろう。
そう思った矢先、突如息苦しくなった。
喘息?何故?煙をすってしまったから?魔法による負担?
そう考える時間も惜しく、ただひたすらに発作を抑えるのに集中した。
すぐに抑えるのに集中したおかげか、どうにか喘息は治まった。
しかし、視界がぐらついた。
―いけない、こんなところで倒れては…
薄れていく意識の中、視界に何か入った。
少女?でもこの『気』流れは…?
そう思ったところで私は意識を手放した。
/ / / / / / / / / / / / / / /
再び目を覚ます。
目に入ったのは高い天井。
体に感じるのは軟らかい感触。
ああ、私はベッドの上にいるのだなと分かった。
「目を覚ましたのかしら?」
驚いた。
気配など感じなかったし、回りには誰もいないのだ。
どこから声が?
そう思った矢先、目の前の椅子に蝙蝠が集まった。
そして、姿を現したのは私よりも背の低い少女であった。
私は直ぐに少女がどういった存在か理解した。
少女は――吸血鬼だ。
「ええ、まずは御礼をさせていただくわ。
倒れているところを助けてくれてありがとう」
「別に構わないわ。あなたはどうやら魔女のようだったから助けただけ。
人間だったらわからないけれど」
そう言って少女は口の端をニヤリとした。
だが私はそれに動じず直ぐに返した。
「そういうあなたは吸血鬼ね。それも真正の」
「そうよ。それにしても驚かないのね。
私が吸血鬼であること、まだ命の危険があるかもしれないのに」
「あなたが吸血鬼であることは私の知識が教えてくれたわ。
そして驚かなかったのは簡単。私はまだ生きている、それだけよ」
「声を掛けた時驚いたのに?」
私は、少女のからかう様な言葉につい動揺してしまった。
「そ、それは回りに誰も居ないのに声が掛かるからよ。誰でも驚くわ、普通」
「ふふ、面白いわ、貴女。
そういえば自己紹介がまだだったわね。
私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の当主よ」
こんな幼いのに当主?いや彼女は吸血鬼。
私の何倍も生きていてもおかしくは無い。
「私はパチュリー・ノーレッジ。
あなたの言った通り魔女よ」
「じゃあよろしくね、パチェ」
「パチェ?」
「ええ、愛称よ
友人を呼ぶのに親しみを込めてね。
貴女はパチュリー、だからパチェよ」
あまりのことに呆然としてしまった。
まだ出合ったばかりなのに、話したことも自己紹介くらいなのに。
彼女は、私のことを友人といってくれた。
「わ、私達はまだ出合ったばかりよ?」
「あら、友人となるのに時間は必要かしら?」
笑顔で向けてくる言葉。
彼女の言葉に翻弄される。
そういえば会話をしたのはいつ以来だろう?
友人という言葉を向けられたことはあっただろうか?
彼女の当然と言わんばかりの言葉。
胸が熱くなる。
視界が揺れる。
何故?
ああ、涙か。
涙を流したことなんて在っただろうか?
空虚だったココロ。
すべてでは無いがその半分が埋まった気がする。
求めていたのだ、『友人』を、『友情』を。
涙が止まらない、胸が満たされていく。
「パチェ?」
彼女が心配した表情になる。
いけない、私も彼女に答えてあげなければ。
「な…なんでもない…わ。
ただ…、ただ嬉しかったの。
私のことを友人と言ってくれる相手がいることが。
よろしくね、レミリア…、いえレミィ?」
「ええ、よろしくねパチェ」
そういって私達は握手を交わした。
友人としての第一歩を、親友となれると信じて。
レミィも涙をながした。
驚いた、思わず訊いてしまった。
そして彼女も孤独であったのだ。
妹はいる。部下と呼べる妖怪や妖精もいる。
だが彼女には、対等な相手がいなかったのだ。
その力ゆえに、種族ゆえに。
だが、今は違う。
対等な存在、友といえる存在。
いずれ友が親友となり、心友といえる存在となる者が今この目の前にいる。
孤独で無くなった自分が今ここにいる。
それだけが、ただ嬉しくて涙をながしたのだ。
レミィは、これからここに住んでいけばいいと言ってくれた。
地下には図書館があると聞いたので、そこに住ませてもらうと言った。
そのときのレミィのキョトンとした顔が可愛らしかった。
―さすが、ノーレッジの名を冠するだけあるわね?パチェ
―もちろんよ。知識を得ることは私の生命と同義だわ
私はレミィを裏切らない。
彼女と喧嘩をすることもあるだろう。
意見が合わない時もあるだろう。
けれども私は彼女が困ったとき力を貸そう。
そして――たがいに笑い合おう。
些細なことでも、共に―――
/ / / / / / / / / / / / / / /
レミィのところの図書館に住み込んで幾年がすぎた。
あるときレミィとお茶をしているとき、満たされてるはずなのに何か足りない気がするともらしてしまった。
私は直ぐにしまったと思った。
親友となれる相手がいるだけでも幸せなのに、これではレミィだけでは足りないと言ってるのと同じではないか。
自分の言ってしまった言葉に後悔しながら恐る恐るレミィの顔を見る。
するとそこにはニヤニヤしている顔があった。
―それはね、愛情を求めてるのよ。
私達は親友、けれども親友では愛情を与えることはできないわ。
なぜなら『友』だから。
パチェ、貴女は『共』にいてくれる人を望んでるのよ。
それは私もそう。
でも、私にはわかるわ。
いずれ私の目の前に私と『共』にいてくれる人が現れるのが。
そして貴女の前にも現れのがね。
―それは貴女の能力によるものかしら?レミィ。
―いいえ、まだ視えないわ。けれども変化が訪れることだけはわかるわ。
―そう。でも…そうね、確かに私は求めてると思うわ。
私を愛してくれる相手を。
私なりに愛情を送れる相手が現れるのを。
『共』に居てくれる相手を。
―ふふ、私とパチェ。
どちらが先に現れるかしらね?
―どちらでも構わないわ。
たとえその相手が現れて私達の心が満たされることがあっても―
私達は変わらないわ。
親友となったあの日、あのときから…ね。
そう、たとえ私に特別な存在ができても、私と貴女の関係は変わらない。
そう言って私達は静かに笑いあった。
いずれ現れる相手を思って。
さらに幾年が過ぎたある日。
ここにある書物のおかげで五行と月、日の属性魔法は制御できるようになった。
最後は目標であり幻とされる『賢者の石』。
正直、ここの書物と私の知識を以ってしても、まるで到達できる兆しがみえない。
そんなとき、書物の中にヴワル魔法図書館なる存在が書かれた本が見つかった。
賢者の石と同様に幻とされ、次元の狭間にあると言われている魔法図書館。
書物によると適任者を待ち続けているのではないかと書かれている。
『純粋に『知識』を求めるもの』
レミィに地下に図書館を召還することを伝え、私は今の図書館に転移召還魔法陣を引いた。
このとき何故かお茶会のときの会話を思い出した。
なぜだろうと思ったが、今は集中しなければならない。
――今の私は『知識』をただ自分のためだけに得てはいない。
それはもう純粋ではないかもしれない。
けれども私はあなたを求めよう。
あなたの持つ『知識』が欲しい。
ひたすらに、親友のために自分のために。
得た『知識』を必要とするもののために。
ただひたすらに、あなたのもつ『知識』を私に。
私はパチュリー・ノーレッジ。
『知識』の名を冠するもの。
さあ、答えて―――
―――――声が聞こえます。
私は魔法図書館を管理するもの。
私達を呼ぶ貴女、貴女の名前はなんですか?
『知識』を望む貴女。
過去、現在、そしてこれからも増え続ける『知識』を望む貴女。
私達は貴女を待ち続けました。
貴女が真に私達を必要とするなら答えましょう。
さあ、私達を望む貴女、貴女の名前を私達に示してください――
あと、いい友人をお持ちのようで
まあ、そういった理由がなくても、個人的には曲名であるヴワル魔法図書館が図書館の名称として馴染んじゃってますがw
けどこの理由はこれはこれでよかったです