注:残念なお知らせです。今回はあらすじが有りません。なので、
「吾輩は毛玉である」
「吾輩は毛玉であるが」
「吾輩は毛玉でしかない」
「毛玉なんかこわくない」
を先にお読み下さい。
……来たか。
よ、いらっしゃい。三途の川へようこそ。
ああ、そうだよ。お前さんは死んだんだ。
生前どんな生活してたかは知らないし、聞かないけどさ。
でも、三途の川は今実際にここに有るってことは、まず理解してもらおうかね。
そう、死んだ奴はみんなここに来るんだ。霊になってね。
あっちにも霊の集団が居るだろ?あいつらも死んだのさ。
それでだな、三途の川に来た死者は、川の向こうに有る、閻魔様の所に行かなきゃならないんだよ。
でも、川に落ちた者は、それが誰であれ飲み込まれる。
「輪廻の環」って話は知ってるかい?
昔本で読んだ気がする?そうか、なら話が早い。
要は、死者ってのは地獄やら極楽やら外界やらに、姿や形を変えたり変えなかったりで転生するってこと。
で、川に落ちた者は、永久に川の底って訳さ。環の中には永遠に還らない。
それで、川に落ちないように死者を三途の向こうに送るのが、あたいみたいな死神の仕事の一つってね。
自己紹介が遅れたかな?
あたいの名前は小野塚小町。小町でいいよ。
職業は死神、特技は銭投げとかくれんぼ、趣味はサボりと休日返上。少しの間だけど、よろしくな。
ん?
ああ、あんた生前の記憶がそれなりに残ってるんだね。
渡し賃なんてものは無いよ。人間が勝手に作った話さ。
さ、早く乗りな。ちょっとばかり長い船旅だよ。
ああ、船から落ちないように気をつけておくれよ?消すには惜しい魂だからさ。
退屈だろうし、昔話でよければ聞いて欲しいんだけれど。
あたいも死神やって長いからさ。いろいろと目にする機会があるわけよ。
で、その話を死者に聞いてもらうのも、あたいの趣味の一つでね。
そう、ありゃあ冬だった。雪が降ってるのが遠目に見えたからさ。
一週間前から、その日は休暇を取るように、ってきつーく言われてたんだよ。
でも、休日に家でゴロゴロするだけじゃ暇じゃないか。
あたいは普段サボってるけどさ、休みの日でもどうしても仕事がしたくなるって気分になるんだよ。分かる?
で、その日も休日出勤と洒落込んだのさ。
そしたら、驚いたよ。霊の前に、閻魔様が勢揃いしてるんだから。
後で調べてみたら、四季様……あたいの上司で、幻想郷の裁判長な閻魔様が、他の閻魔様を呼び寄せたんだって。
で、周りをよく見たら、三途の川が無かったんだ。
三途の川の幅ってのは、死者の徳が高いほど狭くなる、ってのは知らなかったかい?
以前、外界で「聖人」って呼ばれてて、極楽行き確実だろうって言われてた人でも、二尺程は幅が有ったのに、だよ?
川幅があんなに狭くなるなんて、と思って見てみたらさ。
川が川じゃなくなってた。ありゃあ水滴としか言えないようなもんだったよ。
本当に驚いたよ。夢じゃないか、って思った。
その上、閻魔様方に囲まれてる霊も、普通とは全然違った。
なんだか霞みたいな霊でさ。多分、触ったらそこから消えるんじゃないかってくらいに。
そしたら、四季様が判決を言い渡す、って宣言してね。
信じられなかったよ、あの言葉。あたいは一生忘れない。
無罪にして有罪。よって、かのものを転生させ、再審まで処分保留とする。
四季様って、何でもかんでも白黒はっきりさせる方でね。
その判決は有罪か無罪か、そのどっちかしか無かったんだ。
なのにだよ?今まで聞いたことも無い判決が下されたんだ。
周りの閻魔様もみんな騒ぎだしてね。あたいが顎を落とすくらいなんだから、他の閻魔様からすれば天変地異の先触れでも来たかって勢いだったよ。
そしたら四季様、続けて言うじゃないか。
静粛に。
ここは幻想郷であり、幻想郷で行われている本裁判は私が最上の権限を有します。
この判決に対し、あらゆる異議を却下します。
閻魔様だって、完全な権力を持つわけじゃない。
なのに、まるで法のスキマを突いたみたいなことをしでかしてさ。
何でなんだろう、って思ったよ。今でもそう思ってる。
でも、あの判決ってのは、多分最適に近い答えの一つなんだと思う。
そうであって欲しい、そう言う希望的観測も込みだけど。
さ、着いたよ。
この先をずーっとまっすぐ行けばいいんだ。振り返ってもいいし、迷ってもいい。
でも、進むんだ。そうしない奴は、地獄にすら行けない。川の底よりもっと悲惨だから。
行って来なよ。あんたなら、地獄には絶対行かないって。
達者でな。また転生して死んだら、また会うだろうさ。
間違っても自殺なんてするんじゃないよ。
小町は嘘を吐く。
方向感覚が狂うまで船に乗せておいた。あのまま進めば、無事に幻想郷に戻り、生き返るだろう。
小町は呟く。
いったいいつから、あんなモノまで幻想郷に来てしまったのだろうか。
―(極秘)―
かの霊は、生命を持つ存在では無い。
外界に普遍に存在する、概念的な存在が忘れられ、死んだ存在の代表的な姿たる霊として形を取ったものと考えられる。
しかし、外界でも完全に忘れられてしまったものでは無いため、その姿が希薄に見えたと推測できる。
~魔法的・霊的な考察が記述されているが、複雑に暗号化されており読めない~
結論として、かの霊は外界に当然のものとして存在していた「理想」「希望」「正義」等の要素からなる構造体であり、外界においてその存在が希薄になったために、幻想郷の三途の川に現れることとなった様である。
かの霊は妖怪として、幻想郷に転生することが決定された。
また、妖怪の原型たる、『怪しい正体不明の存在』『人を惑わせ、あるいは熱中させるもの』と言う法則に従って形を成した、幻想郷でも最下層の妖怪の姿を取らせ、万が一の為にあらゆる攻撃手段を封じることも併せて定められた。
また、儀式を経由しない転生に対する罰として、不死不滅ならぬ有死不滅の存在とした。
現在も有罪ないし無罪の判決が下されていないため、未だに現状維持を続けている。
~書類の空白部に、鉛筆で書かれたらしい文章がある~
陳腐で忘れ去られた言葉を使って名前をつけるならば、「白馬の王子様」だろうか。
この書類の存在を知るのは、四季映姫をはじめとする閻魔と、例外として八雲紫のみである。
吾輩は毛玉である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかない。
何でも薄暗い日陰でふわふわと撫でられている事だけは把握している。
自分はここで始めて人間や妖怪というものを見た。
しかもあとで聞くと、それは巫女という人間中で一番不思議な種族であったそうだ。
この巫女というのは、しょっちゅう我々妖怪を撃ち落として、時々退治するという話である。
しかし、その当時は何という考えも無かったから、別段恐しいとも思わなかった。
ただ彼女の腕に抱えられて、自分の体を撫でられた時、何だか懐かしい感じがあったばかりである。
縁側の上で、少し落ちついて巫女の顔を見たのが、いわゆる人間というものの見始めであろう。
この時、妙なものだと思った感じが今でも残っている。
時間は少し巻き戻る。
「えーりんさまー!」
「美鈴隊長、あの毛玉が、死んでいます……!」
「そんな!?」
「大丈夫よ、すぐにこっちに戻ってくるから。」
「おいおい、いくら霊夢の勘でも、被弾で撃ち落とされたんじゃなくて、死んだ毛玉がどうなるか……。」
「んー?おー、なんだか酔ってるのかな、この毛玉?」
「萃香、酔ってるのはお前の方だぜ。」
「師匠の薬も有りますし、生き返る事前提で話を続けましょう。」
「そうね、この毛玉を一週間交代で自分たちのものにするんだったわね?」
「じゃんけんだと人数が多い。となれば、どうするかね?」
「弾幕は禁止、賽の目で決める。これでいいわね?」
「よし、イカサマが無いかは私が歴史を見て判断しよう。」
「1なら紅魔館、2なら白玉楼、3なら永遠亭、4なら山の神社、5なら紫のところ、6なら振り直し。じゃ、行くわよ。」
びっ、と指で弾いて六面体を空へと飛ばす。
回転する六面体。
その落下先には、門番隊の用意した弁当のふた。
(奇跡よ、今ここに……!)
ある者は祈り。
(心で斬れば、その念は通じる……!)
ある者は信じ。
(あの回転速度なら、3の目が出る確率は……!)
ある者は考え。
(さあ、どうなるかしら……?)
ある者は見て。
(しばらく、お別れなんでしょうか……。)
ある者は見ず。
かん。
澄んだ音がした。
「サイコロが割れたんじゃ決められないわね。一週間この毛玉は博麗神社で預かるわ。」
怒号の嵐。
「吾輩は毛玉である」
「吾輩は毛玉であるが」
「吾輩は毛玉でしかない」
「毛玉なんかこわくない」
を先にお読み下さい。
……来たか。
よ、いらっしゃい。三途の川へようこそ。
ああ、そうだよ。お前さんは死んだんだ。
生前どんな生活してたかは知らないし、聞かないけどさ。
でも、三途の川は今実際にここに有るってことは、まず理解してもらおうかね。
そう、死んだ奴はみんなここに来るんだ。霊になってね。
あっちにも霊の集団が居るだろ?あいつらも死んだのさ。
それでだな、三途の川に来た死者は、川の向こうに有る、閻魔様の所に行かなきゃならないんだよ。
でも、川に落ちた者は、それが誰であれ飲み込まれる。
「輪廻の環」って話は知ってるかい?
昔本で読んだ気がする?そうか、なら話が早い。
要は、死者ってのは地獄やら極楽やら外界やらに、姿や形を変えたり変えなかったりで転生するってこと。
で、川に落ちた者は、永久に川の底って訳さ。環の中には永遠に還らない。
それで、川に落ちないように死者を三途の向こうに送るのが、あたいみたいな死神の仕事の一つってね。
自己紹介が遅れたかな?
あたいの名前は小野塚小町。小町でいいよ。
職業は死神、特技は銭投げとかくれんぼ、趣味はサボりと休日返上。少しの間だけど、よろしくな。
ん?
ああ、あんた生前の記憶がそれなりに残ってるんだね。
渡し賃なんてものは無いよ。人間が勝手に作った話さ。
さ、早く乗りな。ちょっとばかり長い船旅だよ。
ああ、船から落ちないように気をつけておくれよ?消すには惜しい魂だからさ。
退屈だろうし、昔話でよければ聞いて欲しいんだけれど。
あたいも死神やって長いからさ。いろいろと目にする機会があるわけよ。
で、その話を死者に聞いてもらうのも、あたいの趣味の一つでね。
そう、ありゃあ冬だった。雪が降ってるのが遠目に見えたからさ。
一週間前から、その日は休暇を取るように、ってきつーく言われてたんだよ。
でも、休日に家でゴロゴロするだけじゃ暇じゃないか。
あたいは普段サボってるけどさ、休みの日でもどうしても仕事がしたくなるって気分になるんだよ。分かる?
で、その日も休日出勤と洒落込んだのさ。
そしたら、驚いたよ。霊の前に、閻魔様が勢揃いしてるんだから。
後で調べてみたら、四季様……あたいの上司で、幻想郷の裁判長な閻魔様が、他の閻魔様を呼び寄せたんだって。
で、周りをよく見たら、三途の川が無かったんだ。
三途の川の幅ってのは、死者の徳が高いほど狭くなる、ってのは知らなかったかい?
以前、外界で「聖人」って呼ばれてて、極楽行き確実だろうって言われてた人でも、二尺程は幅が有ったのに、だよ?
川幅があんなに狭くなるなんて、と思って見てみたらさ。
川が川じゃなくなってた。ありゃあ水滴としか言えないようなもんだったよ。
本当に驚いたよ。夢じゃないか、って思った。
その上、閻魔様方に囲まれてる霊も、普通とは全然違った。
なんだか霞みたいな霊でさ。多分、触ったらそこから消えるんじゃないかってくらいに。
そしたら、四季様が判決を言い渡す、って宣言してね。
信じられなかったよ、あの言葉。あたいは一生忘れない。
無罪にして有罪。よって、かのものを転生させ、再審まで処分保留とする。
四季様って、何でもかんでも白黒はっきりさせる方でね。
その判決は有罪か無罪か、そのどっちかしか無かったんだ。
なのにだよ?今まで聞いたことも無い判決が下されたんだ。
周りの閻魔様もみんな騒ぎだしてね。あたいが顎を落とすくらいなんだから、他の閻魔様からすれば天変地異の先触れでも来たかって勢いだったよ。
そしたら四季様、続けて言うじゃないか。
静粛に。
ここは幻想郷であり、幻想郷で行われている本裁判は私が最上の権限を有します。
この判決に対し、あらゆる異議を却下します。
閻魔様だって、完全な権力を持つわけじゃない。
なのに、まるで法のスキマを突いたみたいなことをしでかしてさ。
何でなんだろう、って思ったよ。今でもそう思ってる。
でも、あの判決ってのは、多分最適に近い答えの一つなんだと思う。
そうであって欲しい、そう言う希望的観測も込みだけど。
さ、着いたよ。
この先をずーっとまっすぐ行けばいいんだ。振り返ってもいいし、迷ってもいい。
でも、進むんだ。そうしない奴は、地獄にすら行けない。川の底よりもっと悲惨だから。
行って来なよ。あんたなら、地獄には絶対行かないって。
達者でな。また転生して死んだら、また会うだろうさ。
間違っても自殺なんてするんじゃないよ。
小町は嘘を吐く。
方向感覚が狂うまで船に乗せておいた。あのまま進めば、無事に幻想郷に戻り、生き返るだろう。
小町は呟く。
いったいいつから、あんなモノまで幻想郷に来てしまったのだろうか。
―(極秘)―
かの霊は、生命を持つ存在では無い。
外界に普遍に存在する、概念的な存在が忘れられ、死んだ存在の代表的な姿たる霊として形を取ったものと考えられる。
しかし、外界でも完全に忘れられてしまったものでは無いため、その姿が希薄に見えたと推測できる。
~魔法的・霊的な考察が記述されているが、複雑に暗号化されており読めない~
結論として、かの霊は外界に当然のものとして存在していた「理想」「希望」「正義」等の要素からなる構造体であり、外界においてその存在が希薄になったために、幻想郷の三途の川に現れることとなった様である。
かの霊は妖怪として、幻想郷に転生することが決定された。
また、妖怪の原型たる、『怪しい正体不明の存在』『人を惑わせ、あるいは熱中させるもの』と言う法則に従って形を成した、幻想郷でも最下層の妖怪の姿を取らせ、万が一の為にあらゆる攻撃手段を封じることも併せて定められた。
また、儀式を経由しない転生に対する罰として、不死不滅ならぬ有死不滅の存在とした。
現在も有罪ないし無罪の判決が下されていないため、未だに現状維持を続けている。
~書類の空白部に、鉛筆で書かれたらしい文章がある~
陳腐で忘れ去られた言葉を使って名前をつけるならば、「白馬の王子様」だろうか。
この書類の存在を知るのは、四季映姫をはじめとする閻魔と、例外として八雲紫のみである。
吾輩は毛玉である。名前はまだ無い。
どこで生れたかとんと見当がつかない。
何でも薄暗い日陰でふわふわと撫でられている事だけは把握している。
自分はここで始めて人間や妖怪というものを見た。
しかもあとで聞くと、それは巫女という人間中で一番不思議な種族であったそうだ。
この巫女というのは、しょっちゅう我々妖怪を撃ち落として、時々退治するという話である。
しかし、その当時は何という考えも無かったから、別段恐しいとも思わなかった。
ただ彼女の腕に抱えられて、自分の体を撫でられた時、何だか懐かしい感じがあったばかりである。
縁側の上で、少し落ちついて巫女の顔を見たのが、いわゆる人間というものの見始めであろう。
この時、妙なものだと思った感じが今でも残っている。
時間は少し巻き戻る。
「えーりんさまー!」
「美鈴隊長、あの毛玉が、死んでいます……!」
「そんな!?」
「大丈夫よ、すぐにこっちに戻ってくるから。」
「おいおい、いくら霊夢の勘でも、被弾で撃ち落とされたんじゃなくて、死んだ毛玉がどうなるか……。」
「んー?おー、なんだか酔ってるのかな、この毛玉?」
「萃香、酔ってるのはお前の方だぜ。」
「師匠の薬も有りますし、生き返る事前提で話を続けましょう。」
「そうね、この毛玉を一週間交代で自分たちのものにするんだったわね?」
「じゃんけんだと人数が多い。となれば、どうするかね?」
「弾幕は禁止、賽の目で決める。これでいいわね?」
「よし、イカサマが無いかは私が歴史を見て判断しよう。」
「1なら紅魔館、2なら白玉楼、3なら永遠亭、4なら山の神社、5なら紫のところ、6なら振り直し。じゃ、行くわよ。」
びっ、と指で弾いて六面体を空へと飛ばす。
回転する六面体。
その落下先には、門番隊の用意した弁当のふた。
(奇跡よ、今ここに……!)
ある者は祈り。
(心で斬れば、その念は通じる……!)
ある者は信じ。
(あの回転速度なら、3の目が出る確率は……!)
ある者は考え。
(さあ、どうなるかしら……?)
ある者は見て。
(しばらく、お別れなんでしょうか……。)
ある者は見ず。
かん。
澄んだ音がした。
「サイコロが割れたんじゃ決められないわね。一週間この毛玉は博麗神社で預かるわ。」
怒号の嵐。
何はともあれ毛玉様、強く、剛く生きて下され。
続きか新作お待ちしてるので無理無い程度にガンバテクダサーイ
GJといわざるを得ない。
いつになってもいいのでちゃんと帰ってきてくださることをお祈りしております。
お帰りをお待ちしています。
まったりと次回作にも期待!
どうすれば見れるのでしょうか?
なんと言うかきっちり収まった感じですね。
いつかまた、続きでも別の作品でもいいので貴方の作品が読みたいです。