「まったく・・・どうして貴女はいつもいつも無茶ばかりするのかしら・・・」
血の付いた包帯を変えながら私は目の前の少女へとこれまでに何回もした質問を繰り返す。
「だっていつもいつも向こうから仕掛けてくるんだぜ?こっちだってたまにはゆっくりさせてほしいもんだぜ。」
と、こちらもまたいつものように決まり切った返答を返してくる。
「この包帯や傷薬だってタダではないのよ?貴女が来るようになってから消費量がどれだけ増えたと思っているの?」
「わかってるってば。だからコレは借りてるだけだ、無論返すさ。私が死んだ時にな♪」
「・・・まぁいいわ。その時が来たら本当に返してもらうわよ?」
「もちろんだぜ、私は嘘を付いたことがないからな!」
よくもまぁ・・・と思いつつ、決して顔には出さずに私は手当を進める。
「・・・と、こんな所かしらね。」
「おう、いつもいつも悪いな。」
「そう思うならもうちょっと来る頻度を下げるなりなんなりしたら如何?」
「そういう訳にもいかないぜ。ここにはまだ私が読んでない本がまだまだあるからな。
んじゃあ、手当も終わったし、私は帰るぜ。またなー!」
と、言い終わるや否や彼女は箒に跨って物凄い速度で空へと飛び出して行った。
「・・・この修繕費も返してもらえるのかしらね・・?」
私はたった今出来た仕事を片付けるべく椅子から立ち上がった――
私、十六夜咲夜が彼女、霧雨魔理沙と出会ってからまだ日は浅い。
知り合う原因となったのは我がお嬢様―レミリア・スカーレットが起こした騒動の所為だ。
その騒動を止めるべくやってきたのが博霊神社の巫女、博霊霊夢とあの魔法使い、霧雨魔理沙だった。
結果だけを述べるなら私たちが負け、彼女たちが勝った。
その事件以降、お嬢様は偶に巫女の処へ行くようになり、彼女は度々館に訪れるようになった。
そして彼女は余計なことまでしてくれた。
フランドール・スカーレット――お嬢様の妹であるがその気性ゆえ、お嬢様が地下に閉じ込めていた妹様が暴れだした時も
彼女が打ち負かした・・・のはよかったのだが、どうにも彼女には人を引き付けるというか、ジゴロの気があるらしい。
妹様はどこを気に入ったのか、彼女の事を大層気に入り、事あるごとに彼女を呼ぶようになった。
いかに弾幕”ごっこ”とはいえ、妹様の能力は強大で、彼女の体にはいつも生傷が絶えなかった。
そして冒頭の一幕へと繋がるのだが――
「ふぅ、こんな所かしらね。」
壊れた屋根を美鈴と一緒に直し終わり、私は一息ついた。
「しっかし、あの怪我はもう少しどうにかならないのかしら・・・」
どうにもならない愚痴を零す。
彼女は人間なのだ。お嬢様や妹様のような吸血鬼とはワケが違う。傷の治りだって遅いし、
せっかくいい肌をしているのに、痕が残ったらとは――
「・・・何を考えているのかしら、私。」
頭を振って考えを飛ばす。ジゴロの気があるとは言ったが、自分が当てられては目も当てられない。
それに。
「パチュリー様もどうやら気に入ってるらしいのよねぇ・・・」
メイド達がキャーキャー騒いでいるので何事かと聞いてみれば
曰く
『彼女が来た時にだけ出す紅茶のグレードが違う』とか、
『彼女と話している時のパチュリー様の頬が染まってる』とか、
『そんな二人を見てる小悪魔様が怖すぎる』とか。
そしてまた思考する。
「お二方とも彼女の何がいいのかしら・・・」
確かに彼女は凄いと思う。人の身でありながら独学であそこまでの力を得、なお且つ、私でさえ太刀打ちできなかった
妹様を打ち負かしたのだから。
それにあの笑顔。見る者全てを引き付ける眩しいほどの笑顔。裏表もなく、自分の感情をそのままにぶつけてくる。
その真っ直ぐさが、見る者全てを魅了するのだろう。
そして肌。きめ細かく、すべすべとしたあのさわり心地は――
「だから・・・何を考えているのよ・・・」
今日の私はどうかしている。さっきといい、今といい、何故こんなにも彼女の事を考えているのか。
以前はこうではなかったはずだ。あの程度の人間の事など歯牙にもかけなかっただろう。
なのに何故、最近の私は彼女の分のお茶とお菓子まで用意しているのだろうか。
そしてあまつさえ、それが飲んでもらえなくてショックを受けているなんて―
「・・・私も当てられた?まさかね・・・」
しかし、鏡で見た自分の頬は何故か紅に染まり――
「まるで恋する乙女ね・・・」
そう自嘲気味に呟くと、まだ大量に残っている仕事を片付ける為、部屋を後にした。
血の付いた包帯を変えながら私は目の前の少女へとこれまでに何回もした質問を繰り返す。
「だっていつもいつも向こうから仕掛けてくるんだぜ?こっちだってたまにはゆっくりさせてほしいもんだぜ。」
と、こちらもまたいつものように決まり切った返答を返してくる。
「この包帯や傷薬だってタダではないのよ?貴女が来るようになってから消費量がどれだけ増えたと思っているの?」
「わかってるってば。だからコレは借りてるだけだ、無論返すさ。私が死んだ時にな♪」
「・・・まぁいいわ。その時が来たら本当に返してもらうわよ?」
「もちろんだぜ、私は嘘を付いたことがないからな!」
よくもまぁ・・・と思いつつ、決して顔には出さずに私は手当を進める。
「・・・と、こんな所かしらね。」
「おう、いつもいつも悪いな。」
「そう思うならもうちょっと来る頻度を下げるなりなんなりしたら如何?」
「そういう訳にもいかないぜ。ここにはまだ私が読んでない本がまだまだあるからな。
んじゃあ、手当も終わったし、私は帰るぜ。またなー!」
と、言い終わるや否や彼女は箒に跨って物凄い速度で空へと飛び出して行った。
「・・・この修繕費も返してもらえるのかしらね・・?」
私はたった今出来た仕事を片付けるべく椅子から立ち上がった――
私、十六夜咲夜が彼女、霧雨魔理沙と出会ってからまだ日は浅い。
知り合う原因となったのは我がお嬢様―レミリア・スカーレットが起こした騒動の所為だ。
その騒動を止めるべくやってきたのが博霊神社の巫女、博霊霊夢とあの魔法使い、霧雨魔理沙だった。
結果だけを述べるなら私たちが負け、彼女たちが勝った。
その事件以降、お嬢様は偶に巫女の処へ行くようになり、彼女は度々館に訪れるようになった。
そして彼女は余計なことまでしてくれた。
フランドール・スカーレット――お嬢様の妹であるがその気性ゆえ、お嬢様が地下に閉じ込めていた妹様が暴れだした時も
彼女が打ち負かした・・・のはよかったのだが、どうにも彼女には人を引き付けるというか、ジゴロの気があるらしい。
妹様はどこを気に入ったのか、彼女の事を大層気に入り、事あるごとに彼女を呼ぶようになった。
いかに弾幕”ごっこ”とはいえ、妹様の能力は強大で、彼女の体にはいつも生傷が絶えなかった。
そして冒頭の一幕へと繋がるのだが――
「ふぅ、こんな所かしらね。」
壊れた屋根を美鈴と一緒に直し終わり、私は一息ついた。
「しっかし、あの怪我はもう少しどうにかならないのかしら・・・」
どうにもならない愚痴を零す。
彼女は人間なのだ。お嬢様や妹様のような吸血鬼とはワケが違う。傷の治りだって遅いし、
せっかくいい肌をしているのに、痕が残ったらとは――
「・・・何を考えているのかしら、私。」
頭を振って考えを飛ばす。ジゴロの気があるとは言ったが、自分が当てられては目も当てられない。
それに。
「パチュリー様もどうやら気に入ってるらしいのよねぇ・・・」
メイド達がキャーキャー騒いでいるので何事かと聞いてみれば
曰く
『彼女が来た時にだけ出す紅茶のグレードが違う』とか、
『彼女と話している時のパチュリー様の頬が染まってる』とか、
『そんな二人を見てる小悪魔様が怖すぎる』とか。
そしてまた思考する。
「お二方とも彼女の何がいいのかしら・・・」
確かに彼女は凄いと思う。人の身でありながら独学であそこまでの力を得、なお且つ、私でさえ太刀打ちできなかった
妹様を打ち負かしたのだから。
それにあの笑顔。見る者全てを引き付ける眩しいほどの笑顔。裏表もなく、自分の感情をそのままにぶつけてくる。
その真っ直ぐさが、見る者全てを魅了するのだろう。
そして肌。きめ細かく、すべすべとしたあのさわり心地は――
「だから・・・何を考えているのよ・・・」
今日の私はどうかしている。さっきといい、今といい、何故こんなにも彼女の事を考えているのか。
以前はこうではなかったはずだ。あの程度の人間の事など歯牙にもかけなかっただろう。
なのに何故、最近の私は彼女の分のお茶とお菓子まで用意しているのだろうか。
そしてあまつさえ、それが飲んでもらえなくてショックを受けているなんて―
「・・・私も当てられた?まさかね・・・」
しかし、鏡で見た自分の頬は何故か紅に染まり――
「まるで恋する乙女ね・・・」
そう自嘲気味に呟くと、まだ大量に残っている仕事を片付ける為、部屋を後にした。
こうして紅魔館は魔理沙色に染まっていくのですね