注:言われなくても分かっておろうな!?
あの子のこと?
ええ、知っているわ。
話せば長くなるわよ。
古い話なんだけれどね。
あなた、知ってる?
幻想郷の住人は3つに分けられるの。
可愛い者、
可愛い者が好きな者、
影の薄い者。
この3つよ。
あの子は……
それは『毛玉』と呼ばれる妖怪。
『彼女』すら知らない存在。
《ねえ椛》
《いい眺めですね》
《どこから見てもどの子も可愛いわ》
私は『毛玉』を知っている。
あれは雪の降る寒い日だったわ。
《『紅魔の丘』で大規模な集団!》
《異変かしら?どこの誰よ!》
《門番隊へ》
《撤退は許可できない》
《だろうな》
《誰が撤退するもんか》
《こちらちびっこ組の夜雀》
《在庫の限り援護するよ》
《食われるなら兎に見えないところで頼む》
この事件には謎が多い。
誰もが正義となり、
誰もが主役となる。
そして誰がゲストで、
誰がホストか。
一体『遠足』とは何か。
《次のお客達が接近》
《全員歓迎し、座席を確保しろ》
《みんなでお出迎えだ》
《宇詐欺狩りよ》
《『暴食の亡霊』だ、油断すんな》
《毒が何よ、私が抱きしめてあげるわ》
宴会にルールは無い。
ただ食べて呑むだけ。
この宴会は、全員倒れるまで終わらない。
《受け入れな、早苗》
《これが宴会よ》
《竹林の不死鳥が!》
《呑めよみんな!》
“Comeoooooon!!”
THERE IS ONLY ONE ULTIMATE RULE IN FESTIVAL-
暗黙の規定は唯一つ。
《行くよ毛玉さん!》
ENJOY
“笑え”
以上、今回までのあらすじ。
吾輩は毛玉である。名前は未だ無い。
とは言え、今は何一つ困る事は無い。
先に結論を言えば、自分は宴会と化した遠足会場から少し離れた木陰で、二人ほどに説教をしているからである。
ちなみに、自分の話が通じているのは、彼女らが蓬莱人と言う、元人間であった存在だからのようである。
原因は、目の前で正座で話を聞いている二人にはいつも通りのことであるらしい行為である。
宴会には華があってこそ、などと言う御託を並べておいて、最早なんと言い表せば良いのか分からなくなった大集団を後目に、揃って殺し合いを始めたのだ。
日々死と隣り合わせに在る毛玉としては、これを黙って見過ごす訳には行かない。
毛玉の命は安いが、だからこそ言える事がある。
死ぬ事を気にせず生きられると言う事が、どれ程までの至福であるか。
明日も必ず生きているのだから殺し合おう、と言う言葉が如何なまでの侮辱であるか。
殺しても死なないのだから殺し合おう、と言う思想が何を生むのか。
そして何より、先程から姫様と呼ばれている女性に関しては、既に筆舌に尽くしがたい傍若無人な振る舞いをしておきながら、反省の色がまるで見られない。
ぜいぜいと全身で息をし、己の心が折れそうになっていることも気にせず、自分は説教を続ける。
既に涙は出尽くし、意識も朦朧として来た。だがここで屈してはいけない。
説教を受けている二人の内、紅白の服を着た銀髪の少女は、目に涙を浮かべ、自分の言葉を噛み締めているように見えた。
しかし、ここで言葉を止めては、彼女は同じ事を繰り返してしまうかもしれない。それでは意味が無いのだ。
もう一方の、姫様とよばれる和服の少女はと言えば、対照的にこちらの言葉を意に介していない。
数多くの死と復活を、文字通り命懸けで続けて来た自分にとっては、これは許されざる悪にしか見えない。
仕方なく、自分は文字通り最期とすべく言葉を続ける。
あの兎達を見ろ、と自分は姫様とやらに言った。
そろそろ説教も終わるのか、と思ったらしく、すんなりと兎の方を向いた。
随分と数が多いな、数え切れないほどだ。と言う自分の言葉に、羨ましいかと言う台詞が返って来た。
それを聞かず、自分はとどめの言葉を告げる。
数え切れないなら、一人や十人や百人程度、殺して行っても構わんだろう、と。
言い終わるが早いか、姫様は一瞬で自分を殺した。
しかし、生憎と自分は今日の昼食のお陰で、まだ生き返る事が出来る。
そう言う事だ。
自分の言葉と同時に、姫様はがくりと膝をつき、倒れ伏した。
もう何も語るまい、そう思ってその場を後にする自分の背後から届く、声にならぬ声と兎達の怪訝そうな言葉。
それを聞く必要も無い。自分はもう、すべき事は全て終えたのだ。
そう思うと、くらりと視界が揺れた。
ああ、そうだった。そんな思いが心に在った。
暗黙の規定は唯一つ。
自分は、少々掟破りが過ぎたのだな。そんな思い出が頭に浮かんだ。
そして、自分はまた死んだ。
毛玉は、難題を解いてはならない。
残機など、もう、無い。
宴会場にて。
「ねえウドンゲ。さっきのあの毛玉が永遠亭に居たら、とても良いと思わない?」
「そうですねえ。兎のみんなも気に入ったみたいですし。」
「いや、それは駄目だな。あの毛玉は私のものだぜ?」
「誰がいつそんなこと決めたんですか。」
「おや、門番の仕事はいいのかい?」
「あら。隊長が居ないと門番隊じゃない、って言っていたのはどこの誰だったかしら?」
「白玉楼の幽々子様でしょう。自分で言ったのに忘れないで下さい。」
「はいはい、毛玉争奪戦なら他所でやってちょうだい。楽しい宴の席なんだから。」
『霊夢が言うなら仕方が無いわね』(語尾に雑音含む)
「その異議を却下します!」
『げ、閻魔!?』(盛大に雑音含む)
同時刻、地下の大図書館。
「ちょっと、そこに座りなさい。あなたに言う事があるから。」
「はい、何でしょうか?」
「結論から言えば、あなたの悪事は全てお見通しよ。具体的には、自分が業務日誌を書くのが面倒だからあの毛玉に任せたり、私のお手製の道具を毎日大事に使うあの毛玉に嫉妬してゴミ箱代わりにしたり、あの毛玉が掃除の担当になる場所のシフトを書き換えてあの毛玉が必要以上に痛い目を見るようにしたり、あの毛玉が休暇を取るのは特別に用意された自室でと決まっていた筈なのに勝手に洗濯物干し場に連れて行って天日干しにして殺そうとしていたり、万が一にも逃げ出さないように洗濯バサミできっちり固定して行ったり。余罪を追及すれば幾らでも出て来そうだから、今回はスペルカード1枚の直撃で許してあげる。」
「今日は喘息の調子がいいんですね、パチュリー様。」
「誤魔化そうとしても無駄よ。あの毛玉を抱き枕にして寝るために、私が業務日誌用の三点セットにいろいろな魔法をかけておいたり、森の道具屋や永遠亭の薬に頼ったり、少しくらいは体を丈夫にしようとちょっとだけ運動を始めたり、その他もろもろの努力を水の泡にするのが嫌なら、大人しく被弾しなさい。」
「分かりました。ところで、その手の中の本は何なんですか?」
「新作スペルカードよ。『正義を体現する為に作られた書』の真価、その身に刻み込みなさい。」
律符「六法全書~Hardcover~」
表現不能な音がした。
あの子のこと?
ええ、知っているわ。
話せば長くなるわよ。
古い話なんだけれどね。
あなた、知ってる?
幻想郷の住人は3つに分けられるの。
可愛い者、
可愛い者が好きな者、
影の薄い者。
この3つよ。
あの子は……
それは『毛玉』と呼ばれる妖怪。
『彼女』すら知らない存在。
《ねえ椛》
《いい眺めですね》
《どこから見てもどの子も可愛いわ》
私は『毛玉』を知っている。
あれは雪の降る寒い日だったわ。
《『紅魔の丘』で大規模な集団!》
《異変かしら?どこの誰よ!》
《門番隊へ》
《撤退は許可できない》
《だろうな》
《誰が撤退するもんか》
《こちらちびっこ組の夜雀》
《在庫の限り援護するよ》
《食われるなら兎に見えないところで頼む》
この事件には謎が多い。
誰もが正義となり、
誰もが主役となる。
そして誰がゲストで、
誰がホストか。
一体『遠足』とは何か。
《次のお客達が接近》
《全員歓迎し、座席を確保しろ》
《みんなでお出迎えだ》
《宇詐欺狩りよ》
《『暴食の亡霊』だ、油断すんな》
《毒が何よ、私が抱きしめてあげるわ》
宴会にルールは無い。
ただ食べて呑むだけ。
この宴会は、全員倒れるまで終わらない。
《受け入れな、早苗》
《これが宴会よ》
《竹林の不死鳥が!》
《呑めよみんな!》
“Comeoooooon!!”
THERE IS ONLY ONE ULTIMATE RULE IN FESTIVAL-
暗黙の規定は唯一つ。
《行くよ毛玉さん!》
ENJOY
“笑え”
以上、今回までのあらすじ。
吾輩は毛玉である。名前は未だ無い。
とは言え、今は何一つ困る事は無い。
先に結論を言えば、自分は宴会と化した遠足会場から少し離れた木陰で、二人ほどに説教をしているからである。
ちなみに、自分の話が通じているのは、彼女らが蓬莱人と言う、元人間であった存在だからのようである。
原因は、目の前で正座で話を聞いている二人にはいつも通りのことであるらしい行為である。
宴会には華があってこそ、などと言う御託を並べておいて、最早なんと言い表せば良いのか分からなくなった大集団を後目に、揃って殺し合いを始めたのだ。
日々死と隣り合わせに在る毛玉としては、これを黙って見過ごす訳には行かない。
毛玉の命は安いが、だからこそ言える事がある。
死ぬ事を気にせず生きられると言う事が、どれ程までの至福であるか。
明日も必ず生きているのだから殺し合おう、と言う言葉が如何なまでの侮辱であるか。
殺しても死なないのだから殺し合おう、と言う思想が何を生むのか。
そして何より、先程から姫様と呼ばれている女性に関しては、既に筆舌に尽くしがたい傍若無人な振る舞いをしておきながら、反省の色がまるで見られない。
ぜいぜいと全身で息をし、己の心が折れそうになっていることも気にせず、自分は説教を続ける。
既に涙は出尽くし、意識も朦朧として来た。だがここで屈してはいけない。
説教を受けている二人の内、紅白の服を着た銀髪の少女は、目に涙を浮かべ、自分の言葉を噛み締めているように見えた。
しかし、ここで言葉を止めては、彼女は同じ事を繰り返してしまうかもしれない。それでは意味が無いのだ。
もう一方の、姫様とよばれる和服の少女はと言えば、対照的にこちらの言葉を意に介していない。
数多くの死と復活を、文字通り命懸けで続けて来た自分にとっては、これは許されざる悪にしか見えない。
仕方なく、自分は文字通り最期とすべく言葉を続ける。
あの兎達を見ろ、と自分は姫様とやらに言った。
そろそろ説教も終わるのか、と思ったらしく、すんなりと兎の方を向いた。
随分と数が多いな、数え切れないほどだ。と言う自分の言葉に、羨ましいかと言う台詞が返って来た。
それを聞かず、自分はとどめの言葉を告げる。
数え切れないなら、一人や十人や百人程度、殺して行っても構わんだろう、と。
言い終わるが早いか、姫様は一瞬で自分を殺した。
しかし、生憎と自分は今日の昼食のお陰で、まだ生き返る事が出来る。
そう言う事だ。
自分の言葉と同時に、姫様はがくりと膝をつき、倒れ伏した。
もう何も語るまい、そう思ってその場を後にする自分の背後から届く、声にならぬ声と兎達の怪訝そうな言葉。
それを聞く必要も無い。自分はもう、すべき事は全て終えたのだ。
そう思うと、くらりと視界が揺れた。
ああ、そうだった。そんな思いが心に在った。
暗黙の規定は唯一つ。
自分は、少々掟破りが過ぎたのだな。そんな思い出が頭に浮かんだ。
そして、自分はまた死んだ。
毛玉は、難題を解いてはならない。
残機など、もう、無い。
宴会場にて。
「ねえウドンゲ。さっきのあの毛玉が永遠亭に居たら、とても良いと思わない?」
「そうですねえ。兎のみんなも気に入ったみたいですし。」
「いや、それは駄目だな。あの毛玉は私のものだぜ?」
「誰がいつそんなこと決めたんですか。」
「おや、門番の仕事はいいのかい?」
「あら。隊長が居ないと門番隊じゃない、って言っていたのはどこの誰だったかしら?」
「白玉楼の幽々子様でしょう。自分で言ったのに忘れないで下さい。」
「はいはい、毛玉争奪戦なら他所でやってちょうだい。楽しい宴の席なんだから。」
『霊夢が言うなら仕方が無いわね』(語尾に雑音含む)
「その異議を却下します!」
『げ、閻魔!?』(盛大に雑音含む)
同時刻、地下の大図書館。
「ちょっと、そこに座りなさい。あなたに言う事があるから。」
「はい、何でしょうか?」
「結論から言えば、あなたの悪事は全てお見通しよ。具体的には、自分が業務日誌を書くのが面倒だからあの毛玉に任せたり、私のお手製の道具を毎日大事に使うあの毛玉に嫉妬してゴミ箱代わりにしたり、あの毛玉が掃除の担当になる場所のシフトを書き換えてあの毛玉が必要以上に痛い目を見るようにしたり、あの毛玉が休暇を取るのは特別に用意された自室でと決まっていた筈なのに勝手に洗濯物干し場に連れて行って天日干しにして殺そうとしていたり、万が一にも逃げ出さないように洗濯バサミできっちり固定して行ったり。余罪を追及すれば幾らでも出て来そうだから、今回はスペルカード1枚の直撃で許してあげる。」
「今日は喘息の調子がいいんですね、パチュリー様。」
「誤魔化そうとしても無駄よ。あの毛玉を抱き枕にして寝るために、私が業務日誌用の三点セットにいろいろな魔法をかけておいたり、森の道具屋や永遠亭の薬に頼ったり、少しくらいは体を丈夫にしようとちょっとだけ運動を始めたり、その他もろもろの努力を水の泡にするのが嫌なら、大人しく被弾しなさい。」
「分かりました。ところで、その手の中の本は何なんですか?」
「新作スペルカードよ。『正義を体現する為に作られた書』の真価、その身に刻み込みなさい。」
律符「六法全書~Hardcover~」
表現不能な音がした。
兎も角、この毛玉は良い毛玉ですね。なんか死亡フラグってますが。
自作はシリアスなんでしょうか?正直想像できません。
あと、パチュリー様。そのスペルは多分、映姫様に怒られます。
GJ
なるほどこれは良いあらすじだ……
と思ったら更に素敵な毛玉さんが……
命の価値を知るモノは格好良い。
そして毛玉の戯言と思わず話を聞けるもことぐやにも地味に感動いたしました。
大事だよなぁこういうの。
毛玉かっこいいけど、残機なしってピンチ?
この毛玉なら取り合いたくなるのも分かる。
>数え切れないなら、一人や十人や百人程度、殺して行っても構わんだろう
プレーヤーにとっては毛玉(この話では残機あり)も妖精(わりと死んでも平気)も兎(残機なし)も同じだからなあ。
>律符「六法全書~Hardcover~」
映姫様にはきかなそうですね。
Easyは全てひらがなで書いてあるんですね、わかります。
ところでこの毛玉…愛されてるな…
広辞苑にて迎撃!
なんかもう最近、毛玉のためにプチを見に来ているような気が。
蓬莱人に命の尊さを説くとか、この毛玉かっこよすぎ!
これは全力で笑う、ぜんぜんあらすじじゃねぇよとか突っ込みどころ満載。
まさかこれで終わりませんよね?
最初に読んだ途端「ち●んこの人」を思い出してしまった私は・・・
ニコ中かな・・・
あらすじのお陰で神曲と
毛玉が垂直バレルロールする姿が浮かんでふいてしまうwwwww
毛玉なんてただのふわふわもこもこクッションなんだからっ!
け、毛玉あああ!!??
《毛玉よ、君はここにいるべきではなかった》
コメント見てて結構知ってる人がいて驚いた