*以下には、東方緋想天のネタバレがあります。
前作「○ちゃんのグルメツアー」の続きでもあります。
前作を読まれていなくてもさほど問題はありませんが!
ネタバレ改行をいたします。
ご注意ください。
「あ! いいところにいるじゃない、いっちゃん。ちょっと協力して」
「おや、総領娘様ではないですか。また地上に向かわれるので?」
「そうなのよ。いっちゃんなら、地上の人間とも多少交流があるでしょ。だから地上の人間役やって」
「はあ?」
「あいつらケチだから、天人さまが目の前に現れたっていうのにタダじゃごはんも出してくれないのよ。そこで私も一歩だけ歩み寄ってやろうってわけ。その練習。じゃ、やるよ」
「はあ。よくわかりませんが」
よし、と天子は息を吐く。
目を光らせて、声のトーンを一段低くした。
「人よ……未だ欲と争いに囚われた世界の住民よ……」
「……」
「いっちゃん、それっぽいリアクション、リアクション」
「はあ。――こ、この声は一体!? 何者だ!?」
「汝、力を欲するか。何者をも蹂躙する力を。汝が望めば、私はお前にそれを与えよう」
「力……? ふん、まずは姿を見せろ。何者ともわからぬ者と話はできぬ」
「よかろう。――私は天の使い。お前……違う、汝のことはよく知っている。最強を望むか? 汝は、この桃を一つ食べるだけで、より強靭な身体を精神を手に入れることができる」
「美味すぎる話だな。代償は何だ? 何を望む?」
「何……知れたこと。私は我々の命の源を与えるのだ。ならば汝、私に人の命の源を与えよ」
「やはり魂、寿命を奪うというのか」
「え、いや、違」
「……?」
「……こほん。人の……血や骨やエネルギーなどのもとになるものを与えよ」
「……ああ。なるほど、条件はわかった。いいだろう。だがその前に確認しておこう」
「うむ、言え」
「好き嫌いはあるか? アレルギーは? 一人分でいいのか? 和洋中の好みは?」
「好きにするが良い」
「健康的で良いことだ。30分ほどそのソファでくつろいで待つがいい」
「くく。契約成立だな」
「……」
「……」
「凄いわ! 完璧じゃない!」
「はあ。ありがとうございます。ところで私はいつからいっちゃんと呼ばれるようになったのでしょう」
「今更そこに!?」
■天ちゃんのグルメツアー りべんじ
「妖怪どもはダメね。プライドが高いから誰かの力なんて受け取らないだろうし。力に執着があって、かつ手段は選ばなさそうな子……うん、あいつだわ」
ターゲットを決めて、天子は地に舞い降りる。
美しく、華麗に、木の枝にスカートをひっかけて――
「いたいた。よおし、思い切り脅かしてやるわうふふ」
ん、ん、ん。あーあー。発声練習。
気配を消して、木陰に姿を隠しながら、少しずつ、庭で何やら草抜きをしている魔理沙に近づく。
「人よ……未だ欲と争いに囚われた世界の住民よ……」
「んぁ?」
魔理沙は顔を上げた。
きょろきょろ。周囲を見渡す。天子のことには気付いていないようだ。
「んー……」
目を閉じて、頭に手を当てている。
天子は一人満足そうににんまりと笑って、次の言葉に入る。
「汝、力を」
「そこか」
「え」
ばしゅ……ぼんっ
魔理沙から放たれた星型の弾は、木を貫き、砕き、天子の顔面に直撃した。
そして爆発した。
「……」
あれ?
何が?
起きたんだろう?
前が見えず、正常な思考が吹き飛んだ中、天子は後方に倒れそうになるのを下半身だけで堪えながら、ただ疑問を脳内に浮かべていた。
「いや、いきなり攻撃する奴が」
ごす。
やっと視界が空けて、とりあえずお説教でもしようと思ったその瞬間、今度は全身に激しい衝撃を受けていた。目の前が茶色に染まっていた。
さっきの木がまともにこっち側に倒れてきたんだなあと。
気付いた頃には、さすがの天子も木に押し倒されて、KOされていた。
(わ、私が……地上の木などに……)
「……ポピュラス!?」
がばっ。
「お、すぐに起きたか。さすが天人、回復は早いな」
「……うえ? ……んーと……」
天子は状況を確認する。
まず目に入ったのは魔法使いの姿。そして自分の隣に横たわっている太い木。
頭上を覆いつくす木々。わずかに隙間から見える青い空。
「……ってそうよ! 殺す気かお前は! まったく、地上の人間は想像以上に野蛮だわ……!」
「こそこそ姿を隠す奴は悪い奴だから遠慮なく退治していい、ってエドワード3世も言ってたんだぜ」
「言ってないわよ!」
「で、何の用なんだ?」
「え? ……んー……と。……ああ、そうそう。ん、ん」
とりあえず、立ち上がる。
土を払う。
「汝、力を欲するか」
「ん、なんだいきなり。元ネタがよくわからん」
「何の物真似でもない! とにかく大人しく聞け……ってあああああ! お前! 何食べてる!」
「おお。この桃なかなか美味いぜ。お土産を持って来てくれるなんて、天人はさすが気が効くじゃないか」
「ばかー! 返せ! 泥棒ー!」
「なんだ? もしかして商品だったか。返せって言われてももう割と消化されてるだろうしなあ」
むしゃむしゃ。
そう言いながら、食べるのをやめもしない魔理沙。
「あ、お前も食べるか? なかなか美味いぜ」
「私のだー!」
「そか。さんきゅ」
「礼の意味がわからんー!?」
「ごちそうさまでした」
「ああああああ」
がくり。
天子は肩を落として、アルファベット3文字くらいで表せそうな姿勢で地面に膝をつく。
そんな天子の肩を、魔理沙はぽんと叩く。
「まあ、元気出せよ。明日にはいいことあるさ」
「ぐっ……」
むくり。
魔理沙の手を払って、天子はゆっくりと立ち上がった。
「明日だな!? また明日来てやる! 今度はちゃんと私の思い通りに動けよー!」
「ん? そか、またな。気をつけて帰れよー」
「うっさい! お前に心配されることなんかのわああああああ!?」
一つ勉強になったことがある。
森の中で、後ろ向きに飛ぶと、木の枝に何かしらが引っかかる恐れがある。
びりびりびり。
「……あーあー」
「……っ! うわあああああああああああああ!!」
天子はほぼ完全に破れに破れた服を手で支えながら、猛スピードでその場を離脱した。
「いっちゃん! 話が違うじゃない!」
「あ、総領娘様。お帰りなさい」
「いきなり攻撃されるなんて聞いてないわよっ」
「はあ。まあいきなり脅しにかかるようでしたらそれも仕方ないかもしれませんね」
「どうしろっていうのよ」
「友好的にいけばいいのではないでしょうか」
「友好的……?」
むむむむむむ。
天子はこめかみに手をやって、考える。
テスト勉強のときと同じくらいちょっと真面目に考えてみる。
ぴっかーん。
「よし! いっちゃん、また人間役やって!」
「はあ」
「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい! なんと本日お持ちしましたのは天界の桃! これを一つ食べればそこのあなたも最強の力を手に入れられますよ! どうですか奥さん!」
「まあ素敵! 一つ欲しいわあ。でも高いんじゃないかしら?」
「いいえいいえ。今日は何と特別お試し価格! あなたのお家の一番の贅沢の晩御飯をおごっていただけたらお一つサービスいたしましょう!」
「すごーい! お買い得だわ! さっそく家に来て頂戴!」
「おやおや奥さん、旦那さんのことはよろしいので?」
「あらやだ……そういうことはお互いいいっこなしですわ、うふふ」
「……完璧ね! ありがとういっちゃん!」
「はあ。うまくいくといいですね」
総領娘様はお腹が空いているのかしら、と心の中で首をかしげながらも、これ以上つっこむと何かと面倒そうなのでとりあえずお願いされたことだけ適当に受け流しておく衣玖だった。
次は明日の夕方くらいかしら、明日は巻き込まれないように適当に遠くを散歩でもしていよう、と思いながら……
前作「○ちゃんのグルメツアー」の続きでもあります。
前作を読まれていなくてもさほど問題はありませんが!
ネタバレ改行をいたします。
ご注意ください。
「あ! いいところにいるじゃない、いっちゃん。ちょっと協力して」
「おや、総領娘様ではないですか。また地上に向かわれるので?」
「そうなのよ。いっちゃんなら、地上の人間とも多少交流があるでしょ。だから地上の人間役やって」
「はあ?」
「あいつらケチだから、天人さまが目の前に現れたっていうのにタダじゃごはんも出してくれないのよ。そこで私も一歩だけ歩み寄ってやろうってわけ。その練習。じゃ、やるよ」
「はあ。よくわかりませんが」
よし、と天子は息を吐く。
目を光らせて、声のトーンを一段低くした。
「人よ……未だ欲と争いに囚われた世界の住民よ……」
「……」
「いっちゃん、それっぽいリアクション、リアクション」
「はあ。――こ、この声は一体!? 何者だ!?」
「汝、力を欲するか。何者をも蹂躙する力を。汝が望めば、私はお前にそれを与えよう」
「力……? ふん、まずは姿を見せろ。何者ともわからぬ者と話はできぬ」
「よかろう。――私は天の使い。お前……違う、汝のことはよく知っている。最強を望むか? 汝は、この桃を一つ食べるだけで、より強靭な身体を精神を手に入れることができる」
「美味すぎる話だな。代償は何だ? 何を望む?」
「何……知れたこと。私は我々の命の源を与えるのだ。ならば汝、私に人の命の源を与えよ」
「やはり魂、寿命を奪うというのか」
「え、いや、違」
「……?」
「……こほん。人の……血や骨やエネルギーなどのもとになるものを与えよ」
「……ああ。なるほど、条件はわかった。いいだろう。だがその前に確認しておこう」
「うむ、言え」
「好き嫌いはあるか? アレルギーは? 一人分でいいのか? 和洋中の好みは?」
「好きにするが良い」
「健康的で良いことだ。30分ほどそのソファでくつろいで待つがいい」
「くく。契約成立だな」
「……」
「……」
「凄いわ! 完璧じゃない!」
「はあ。ありがとうございます。ところで私はいつからいっちゃんと呼ばれるようになったのでしょう」
「今更そこに!?」
■天ちゃんのグルメツアー りべんじ
「妖怪どもはダメね。プライドが高いから誰かの力なんて受け取らないだろうし。力に執着があって、かつ手段は選ばなさそうな子……うん、あいつだわ」
ターゲットを決めて、天子は地に舞い降りる。
美しく、華麗に、木の枝にスカートをひっかけて――
「いたいた。よおし、思い切り脅かしてやるわうふふ」
ん、ん、ん。あーあー。発声練習。
気配を消して、木陰に姿を隠しながら、少しずつ、庭で何やら草抜きをしている魔理沙に近づく。
「人よ……未だ欲と争いに囚われた世界の住民よ……」
「んぁ?」
魔理沙は顔を上げた。
きょろきょろ。周囲を見渡す。天子のことには気付いていないようだ。
「んー……」
目を閉じて、頭に手を当てている。
天子は一人満足そうににんまりと笑って、次の言葉に入る。
「汝、力を」
「そこか」
「え」
ばしゅ……ぼんっ
魔理沙から放たれた星型の弾は、木を貫き、砕き、天子の顔面に直撃した。
そして爆発した。
「……」
あれ?
何が?
起きたんだろう?
前が見えず、正常な思考が吹き飛んだ中、天子は後方に倒れそうになるのを下半身だけで堪えながら、ただ疑問を脳内に浮かべていた。
「いや、いきなり攻撃する奴が」
ごす。
やっと視界が空けて、とりあえずお説教でもしようと思ったその瞬間、今度は全身に激しい衝撃を受けていた。目の前が茶色に染まっていた。
さっきの木がまともにこっち側に倒れてきたんだなあと。
気付いた頃には、さすがの天子も木に押し倒されて、KOされていた。
(わ、私が……地上の木などに……)
「……ポピュラス!?」
がばっ。
「お、すぐに起きたか。さすが天人、回復は早いな」
「……うえ? ……んーと……」
天子は状況を確認する。
まず目に入ったのは魔法使いの姿。そして自分の隣に横たわっている太い木。
頭上を覆いつくす木々。わずかに隙間から見える青い空。
「……ってそうよ! 殺す気かお前は! まったく、地上の人間は想像以上に野蛮だわ……!」
「こそこそ姿を隠す奴は悪い奴だから遠慮なく退治していい、ってエドワード3世も言ってたんだぜ」
「言ってないわよ!」
「で、何の用なんだ?」
「え? ……んー……と。……ああ、そうそう。ん、ん」
とりあえず、立ち上がる。
土を払う。
「汝、力を欲するか」
「ん、なんだいきなり。元ネタがよくわからん」
「何の物真似でもない! とにかく大人しく聞け……ってあああああ! お前! 何食べてる!」
「おお。この桃なかなか美味いぜ。お土産を持って来てくれるなんて、天人はさすが気が効くじゃないか」
「ばかー! 返せ! 泥棒ー!」
「なんだ? もしかして商品だったか。返せって言われてももう割と消化されてるだろうしなあ」
むしゃむしゃ。
そう言いながら、食べるのをやめもしない魔理沙。
「あ、お前も食べるか? なかなか美味いぜ」
「私のだー!」
「そか。さんきゅ」
「礼の意味がわからんー!?」
「ごちそうさまでした」
「ああああああ」
がくり。
天子は肩を落として、アルファベット3文字くらいで表せそうな姿勢で地面に膝をつく。
そんな天子の肩を、魔理沙はぽんと叩く。
「まあ、元気出せよ。明日にはいいことあるさ」
「ぐっ……」
むくり。
魔理沙の手を払って、天子はゆっくりと立ち上がった。
「明日だな!? また明日来てやる! 今度はちゃんと私の思い通りに動けよー!」
「ん? そか、またな。気をつけて帰れよー」
「うっさい! お前に心配されることなんかのわああああああ!?」
一つ勉強になったことがある。
森の中で、後ろ向きに飛ぶと、木の枝に何かしらが引っかかる恐れがある。
びりびりびり。
「……あーあー」
「……っ! うわあああああああああああああ!!」
天子はほぼ完全に破れに破れた服を手で支えながら、猛スピードでその場を離脱した。
「いっちゃん! 話が違うじゃない!」
「あ、総領娘様。お帰りなさい」
「いきなり攻撃されるなんて聞いてないわよっ」
「はあ。まあいきなり脅しにかかるようでしたらそれも仕方ないかもしれませんね」
「どうしろっていうのよ」
「友好的にいけばいいのではないでしょうか」
「友好的……?」
むむむむむむ。
天子はこめかみに手をやって、考える。
テスト勉強のときと同じくらいちょっと真面目に考えてみる。
ぴっかーん。
「よし! いっちゃん、また人間役やって!」
「はあ」
「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい! なんと本日お持ちしましたのは天界の桃! これを一つ食べればそこのあなたも最強の力を手に入れられますよ! どうですか奥さん!」
「まあ素敵! 一つ欲しいわあ。でも高いんじゃないかしら?」
「いいえいいえ。今日は何と特別お試し価格! あなたのお家の一番の贅沢の晩御飯をおごっていただけたらお一つサービスいたしましょう!」
「すごーい! お買い得だわ! さっそく家に来て頂戴!」
「おやおや奥さん、旦那さんのことはよろしいので?」
「あらやだ……そういうことはお互いいいっこなしですわ、うふふ」
「……完璧ね! ありがとういっちゃん!」
「はあ。うまくいくといいですね」
総領娘様はお腹が空いているのかしら、と心の中で首をかしげながらも、これ以上つっこむと何かと面倒そうなのでとりあえずお願いされたことだけ適当に受け流しておく衣玖だった。
次は明日の夕方くらいかしら、明日は巻き込まれないように適当に遠くを散歩でもしていよう、と思いながら……
衣玖さん空気読みすぎww
衣玖さんは空気読んだ上でこういう役なのねw
また誰かに桃だけ食われそう。
まぁ、「強い奴ほど、緊張感が無い」という、幻想郷の法則からみれば、それはそれで良いのではないかと。
衣玖さんは、もしかしたら幻想郷の救世主たりえるのではwww
それはそうと、決して黒くはないけど限りなくグレーに近い白な衣玖さんふしぎ!
衣玖のキャラ良すぎwwwww
いくさんは
くうきがよめる
な