Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ある従者達のお話

2008/06/01 00:19:51
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この作品は少し自分的解釈があります。そこの所をご理解頂けたら幸いです












妖怪は人を襲い、人は妖怪を退治する。そんな殺伐とした世界のはずなのに、此処博麗神社は今日も宴会で大騒ぎをしている。

その中に妖怪や人間、さらには幽霊やら鬼やら魔女やらと種族関係なく皆で騒ぐ。

その辺の村人が見れば恐れ、逃げ出すような光景なのだが此処では当たり前。

だから神社にお賽銭も入らないのはご愛嬌。

七色の人形使いは、人形劇を始めて妖精たちや紅魔館の悪魔の妹などを喜ばせ、

酒豪の鬼が小樽に入った酒を一気飲みをしたり魔砲使いと門番が夜空に大量の星と虹を作り出してばら撒いたりして宴会を盛り上げる。

その大盛り上がりの中で静かに、だけどとても楽しそうに宴会の様子を眺める数人。

幻想郷では極めて珍しい従者という立場に属する人間、十六夜咲夜・魂魄妖夢・八意永琳。

幻想郷では部下や家来や式といった立場は多数存在するが、基本幻想郷では自己中心的な人物が多いために「仕える」といった概念を持つものはあまり居ない。

だから自分と同じ境遇の人間を宴会で見つけたときに意気投合したりした。


「ふぅ、今日は盛り上がってますね」


「そうねえ、姫もあんなに飲むのもめずらしいわ」


「あら、いつものことのような気がするけど?」


「いや、今日は幽々子様20回目のどんぶりご飯のお代わりをするのにいつもよりはやいですから」


「姫もいつもより妹紅に喧嘩を売るのが早いわ」


「そこで判断するものかしらね・・」


自分の主をみつめて、それぞれの思ったことを口にする。お互いに自分の主がいつもよりも楽しんでいる事に微笑ましい気持ちになり、自然とお酒も進む。


「でも、この宴会に出席し始めてから幽々子様の食費が増えに増えて結構大変なんですよね・・・」


「あら、吸血鬼なのに昼真っから神社に出かけようとするのを止める私の身にもなってよ

。こっちは死活問題よ?」


「うちも死活問題ですよぉ・・・」


「死活問題なら家は別かしらね」


「確かに貴方の主は世話をあまりやかなそうよね」


「あら、そうでもないわよ。竹林で消し炭になってまで殺し合う二人をなだめて連れ帰るのも結構大変なのよ?」


「え・・・!消し炭ですか!?」


「ん~・・ミンチよろしく状態もあるけど?」


「う・・・」


「掃除が大変そうね」


「そういう問題でもないんだけど・・・」


お互い主人の話をするのがこの三人で宴会に集まったとき決まりみたいになっている。

従者という立場は、いくら敬愛する主人とはいえやはりストレスという物は溜まる。だが意外にこう言ったものはお互い愚痴り合うだけでもストレス解消になるのだ。

だから、誰かが愚痴りだしたらそれを聞き、次は自分がしゃべって発散したりするのが暗黙の了解となっていた。

ただ今日はいつもより酒が進んでいたためか、変わった話を永琳は切り出した。


「そういえば、貴方たちは自分が主人に仕えた理由を今でも覚えてる?」


「「もちろんよ「ですよ」」


その問いに即答する妖夢と咲夜。

その返事を聞いた永琳はニコリと笑った。


「そう、私少し酔ったみたいだから聞いてくれるかしら?独り言と思って聞き流してくれてもかまわないわ」


そう言って二人の顔を見て、そして語りだす。


「私が姫に仕えるときめた理由は、最初は罪滅ぼしだったのかもしれないわ。私が永夜のときに月を隠して、幻想郷を隔離したのは今では皆知ってのとおり追っ手をまくためよ。まあ、どっちにしろ隔離されたこの世界には来れないことに気づかされたんだけどね。」


昔私は月で禁止されていた薬を作り出して服用し、捕まったわ。その時に私にその薬を作るように命令したのが姫様。

私が捕まったとき、姫は自分が主犯だと自白し私の罪を減らそうとした。そのおかげで私は軽罪ですんだわ。姫様はその分重い罪を背負った。

下界に姫は落とされたと知ったときはかなりショックだったわよ。それから長い間自分を責め続けたわね。

それである日姫の罰も終わり、下界に迎えに行くときが来た。そして上からの命令で私に同行を命じたの。

きっと姫様を配慮してのことでしょうね。

当時も私が一番姫様と仲が良かったから、すぐ安心できるようにと。

いざ下界に下りて姫様に会って驚かされたわ。笑顔で「ひさしぶりね、永琳」って言うのよ。正直私は恨まれてるかと思っていたらね。

私は姫様に言ったのよ、「何故、私にそんな笑顔を向けられるんですか?恨んではいないのですか?」ってね。

そしたら姫様はキョトンとした顔をして言ってきたの

「恨んでないわよ?私が招いた結果だしね。それにお互い蓬莱の薬を飲んだもの同士、永遠に生きて行くんだから仲良くしないと損でしょ」ってね。

この時でしょうね、私が姫に忠誠を近い従者になろうと決めたのは。

その後は、一緒に来た使者を始末して現在に至るわね。




小樽を飲み干し、次は大樽一気飲みに挑戦しようと鬼が巨大化し、また大騒ぎが始まった。




「こんな話をごめんなさいね、今日はやっぱり酔っているみたい」


フフっと少し照れた様子で笑う永琳。

静かに永琳の話を聴いてた咲夜と妖夢。話が終わると妖夢はクイっと酒を一口のみ、語りだす。


「どうやら私も酔ってきちゃったみたいですね。聞いていただけますか?」


咲夜は軽く微笑んで頷き、永琳は少し驚いた顔をした後にニッコリと微笑んで咲夜と同じく頷いた。


「私は生まれたときから幽々子様の従者になる決まりでした」



私は白玉楼での二代目庭師なんです。私の前には魂魄妖忌という方が居ました。

この人は私の師匠であり爺だったんですよ。そしてあの白玉楼を300年程も庭師と警備を勤めていた立派な方でした。

当時私はまだ真剣も持てないほど幼かったんです。だけど師匠はとても厳しい方で、その時から私は厳しい剣の修行をさせられていました。

一生懸命やっても、どんなに上手くやっても滅多なことでは褒めてくれない方でしたね。剣も教えるというより、盗めって感じで教える方でしたし・・・。

でも、そんな師匠でも私の主になるお方、幽々子様の話の時には違いました。

ベタ褒めなんですよ、幽々子様を。私は師匠がベタ褒めするくらいなんだから相当な人物なんだろうな、そんな人に仕えられるなんて凄い名誉なことだなって思ってたんですよ。

まあ、第一印象は・・・。コレは内緒にしてくださいね?

なんだかのほほんとして、頼りなさそうだなっておもったんです・・・・。

いつも、ふわふわとした感じの雰囲気。柔らかい言動。正直180度イメージと違いましたよ。

絶対にこれ言わないでくださいね?お願いしますよ?

それで、少しがっかりしちゃってですねある日師匠の稽古をサボってしまったんですよ。

なんと言うか、やってられないなあとおもってしまって・・・。

ああ・・・、今思い出すとなんと情けないことを・・・・・・。

ああ、すいません。話がずれましたね。それで私はいつも近付いてはいけないと言われていた西行妖のところに行ってしまったんです。

何でか分かりませんがその日はむしゃくしゃして入ってしまったんですよ。

それで西行妖の前に立ち、木を見上げたところまでは覚えてるんですけど気がついたら幽々子様にしっかりと抱かれて、木から離れた所にいました。

後で聞かされた話ですけど、あの木には人を惑わして死に誘うほどの力がある木があるんですよ。

まあ、それでですね・・。幽々子様が私を抱いてかなり心配そうに見つめていたんですよ。

幽々子様のあの真剣なお顔はいまでも忘れませんよ。それにそのあとの説教も。

しかも私を助けるために西行妖が操る死を、ご自分の能力を使ったから私を説教した後に倒れてしまって。

目を覚ますまでずっと枕元に居ましたよ。

目を覚まされるその間に何千何万と謝りの言葉を考え、口にしたことか・・・。

しかも、いざ目が覚めたら私を見るなり「お腹すいたわ妖夢―」ですよ?

いくら謝りの言葉を言っても、ごはんごはんって聞いてくれないし・・・。

まあ、後で約束を破った罰でからかってたって教えていただいたんですけどね。

それからは幽々子様の事を考え改めて、本質を見抜こうと必死でした。今でも出来てませんけど・・。

それから師匠が白楼剣と楼観剣を残し、白玉楼から姿を消した時ですね。幽々子様から師匠が居なくなったことを聞かされたときのお顔がとてもさびしそうに見えて・・。

そしてなんかこう・・・幽々子様をなにがなんでも御守りしたくなったといいますか・・・。う~ん難しいですね。とにかく私はその時でしょうか。従者になって、この人を守りたいと思ったのは・・。







魔砲使いが夜空に巨大なレーザーを打ち出し、そらに虹をかける。宴会場にいた人妖達が大きい拍手を贈り、宴会場が歓喜に包まれる。





「っとまあ、私の話はこんな感じです。あの・・お粗末さまでした」


語り終わってから、少し恥ずかしくなったのかペコリと頭を下げる妖夢。


「さて、最後は私かしらね」


持っていたお酒をコトリと置いて一つコホンと咳をして話し出す咲夜。

妖夢と永琳は体を咲夜のほうに向けて話を聞く姿勢になる。


「私は、お嬢様に会う前は人に仕えるはおろか人間らしい心が無かったと思うわね」








私の能力はご存知、時を操る程度の能力よ。この力は人間が扱うにしては、あまりに強大で強力すぎる力よ。

人間という物は、自分たちに理解できないものは拒絶するもの。私の力もまさにそれだったわ。

悪魔だの妖怪だの言って何度迫害されたか数えるのも面倒な程にね。

・・・・妖夢、そんな泣きそうな顔しないでよ。昔の話なんだから我慢して聞いて頂戴ね。

それでね、私は昔から手先が器用だったのよ。手品とかも得意だしね、種無しの手品だけど。

その器用さを利用して私はナイフを使った。迫害されて尚生きるには力が必要だったから。

そして、道中襲ってくる妖怪はすべて葬ったわ。

気がつけば妖怪退治の専門家とハンターとか呼ばれるほどにまでなったわ。それほどまでに私はナイフと能力の扱の腕を上げていた。

ある日紅魔館の吸血鬼の話を小耳に挟んだの。とても強い吸血鬼がその館にいるってね。

私はその日のうちに紅魔館へ向かったわ。自分が負けるなどと微塵も思わなかったから。

時を止めて門をくぐり玉座まで一気に駆けて行ったわ、途中いた妖怪や妖精達は私にとって人形も当然だったわ。動かないしね。

でも、その館の主は見ておこうと思いたった私は玉座で力を解いたの。

玉座を見てビックリ、座っていたのは小さな女の子なのよ?。聞いていた話では凶暴な吸血鬼と聞いてたから、もっとゴツイのが出てくるかと思っていた私は正直拍子抜けしたわ。

でも、念のため聞いてみたわ。貴方はこの館の主のレミリア・スカーレットか?って。

そのとうりよ、って返事をしてきたときには私は笑ってしまってたわね。噂を流した奴はとんでもない馬鹿者なんだろうなっておもって。

笑い終わった後はもう私は彼女に興味が無かったわ。時を止めてさっさと殺してしまおうとナイフを取り出した所でお嬢様は嬉しそうに笑ったのよ。

それがその時の私にとって癪に障るものだった。能力を一気に展開してお嬢様の方を見て驚いたわ。

止めたときの中で悠々と歩いて来たのよ。とても、とても嬉しそうに。

怖かった、今までこの世界で動けるのは私だけだったから。

わけもわからずに私はナイフを大量に投げつけたわ。持っているナイフすべてをね。

でも、そのとき既に後ろに回りこまれていたの。

「捕まえた」そう後ろから聞こえ、振り向こうとした瞬間私は気を失ったいたわ。

目が覚めたとき、まだ生きてるのを何度も確認したのを覚えてるわ。だって普通生きているとは思わないでしょ?そんなことがあったら。

お嬢様ときたら紅茶を飲みながら私が起きるのをずっと待ってたみたいなのよ。

それで私が落ち着いたところでお嬢様は言ってきたわ。

貴方は私のために仕えなさいって。

正直意味が分からなかった。殺しに来た相手を自分の所に受け入れようっていってるのよ?

混乱している私にお嬢様は続けていってきたわ。貴方が「必要」だと。あなたが「ほしい」と。

その時私は涙を流していたわ。今でこそ分かるけど、そのときは全く泣いている意味が分からなかったわね。

お嬢様が改めて貴方が必要なの、っと言ったときには私はもう本気で泣いていたわ。

生まれて初めて必要とされたのを知ったから。こんな私を受け入れてくれたから。

はっきり覚えているわ、私が忠誠を誓い仕えようと決めたのはその時。そして理由は恩返し。私に居場所を、存在意義を与えてくれた主人えの感謝。

これが私の従者でいる理由ね。









ほとんどの人妖が酔いつぶれ始め、境内は静かになっていく。









「ふう、こんなに前の話をしたのは始めてかしらね・・・・・」


話続けて喉が渇いたのか、クイっと残りのお酒を飲み干す咲夜。

続けて妖夢と永琳も残っていたお酒をグイっと一気に飲む。


「私も人にこんな話をしたのは初めてかもしれないわね、お酒に酔ったせいかしら」


「ぐすっ・・・・、私は皆さんからいい話がきけてよかったですよ?」


「あらあら、そうねえ。妖夢の話も面白かったわよ。ねえ咲夜?」


「ええ、いい脅迫ネタも自白してもらったしね」


「わわっ!あれは本当に内緒にしといてくださいよ~~~~!!」


くすくすと二人は笑い、妖夢はわたわたと慌ててふたりに懇願する。

周りは既に酔いつぶれたらしく、とても静かだ。

酔いつぶれた連中の中に3人の従者の主人達ももちろん埋もれていた。

それに気がついた3人は顔を合わせ苦笑いをしながらそれぞれの主人を起こす。


「幽々子さま~?こんな所で寝たら風邪を引かれてしまいますよ~?」


「う~ん・・・妖夢・・・。まだ、まだ食べれるわ・・・・ウップ・・」


「わわ、幽々子様しっかりしてくださいよ~!」





「姫、起きてください。そろそろ帰りますよ?」


「えーりん・・・。おんぶ~~・・・」


「・・・・・まったく・・。ご自分で歩けないのですか?」


「酒と妹紅のボディーブローがキレイに決まっててむり~・・。うう・・・」


「はあ・・・」





「お嬢様、早く帰らないと日が昇ってしまいますよ?」


「う~ん・・・。夜の帝王たる私が太陽など恐れたりはしないわ~~・・・」


「いや、死んでしまいますよ。起きてください」


「かかってこい~・・・」


「・・・・・・」





それぞれの従者がそれぞれの主を背負い帰路の支度をする。

お互いあわせる顔は苦笑いながらも、とても嬉しそうな顔。


「それじゃあ」


「ええ」


「はい、皆さんお気をつけて」


三人の従者が大好きな主を連れていつもの、だけど幸せな日常へと戻る。

そんないつもの、だけど特別なある日の宴会での毎日幸せな従者さん達のお話。


「妖夢~~」


「なんですか?」



「えーりーん・・・」


「はい?」



「咲夜?」


「どうしました?」





「「「ありがとう」」」

私的なイメージの宴会風景をそのまま書いて見ました。

いつも主人に振り回されてる従者達にスポットライトを当ててみたくなりましたて・・・。

ミヤギ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
何というか・・・

三人以外に気が行っちゃってしょうがないw
2.名前が無い程度の能力削除
誤字報告:お嬢様が改めて貴方が必要となの、っと言ったとき→必要なの

萃香と魔理沙が気になる。何してるんだ二人とも。
3.ミヤギ削除
誤字修正しました。

なんだか投稿する度に誤字が出ててすいません。

ご指摘ありがとうございました
4.名前が無い程度の能力削除
藍様がいない……だと?