あらすじ
紅魔以下略
案内された部屋で館の主、へたレ……失礼
レミリア・スカーレットが待っていた
どうやら待っていたらしい
何でもあの副メイド長からテレパシーとやらで
私の目的を聞いていたそうだ
そしてこちらの質問を受け付けずさっさと話し始めてしまった
まぁいっか
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
私、レミリア・スカーレットが生まれたときにはすでに彼女、紅美鈴は門番長だったと
物心ついたとき父親から聞いた。彼女は現在の副メイド長のルキューレと副門番長のフォールンの
二人と共に放浪していたのをたまたま見つけ屋敷に雇うという形で住まわせたという。
そのときから屋敷の誰に対しても優しく接し周りに笑顔を振りまいていたと
ルキューレは懐かしく語ってくれた。
そして誰よりも屋敷を、屋敷の皆を大事にしていたとフォールンも語った。
彼女は昔からすべてのものに愛情を注いでいた。それは二人共そろって言った。
私が生まれ、世話をする時も同じように愛情を注いでくれたそうだ。
そして成長した今でもそれは変わらない。
私が生まれてからの世話はルキューレがしてくれた。母親が病弱で何かと体調を崩すからだった。
でもこのときの彼女はメイド達の長であり、主である父と母の身の回りの世話もあり忙しく
私の世話に手が回らないことがあった。
そのときに私の世話をしてくれたのが美鈴だった。でもそのときのことは覚えていない。
でも一つだけ覚えているものがある。それは彼女の吸血鬼が感じる事の無い太陽のような温もり。
物心がついてからその温もりを探して屋敷を歩き回り、やがて辿り着いたのが
門の前。そこで立っていた紅髪で特徴的な民族服を着ている彼女。彼女は私に気付くと微笑みを
浮かべてこう言った。
「おや、お嬢様。こんな所までどうしました?」
私はその微笑を今でもはっきりと覚えている。他人を安心させる優しい笑顔と鈴の音のような美しい声。
母親では無いけど、母親のような雰囲気。そのとき彼女があの太陽のような温もりを持っている
のだと感じ、私は彼女に抱きついた。そんな私に彼女は戸惑った顔をしたけどすぐに笑顔に戻り
何も言わずに優しく撫でてくれた。このとき彼女から吸血鬼の感じる事の無い太陽の暖かい温もりと母親の様な
優しさを感じた。
その後、ルキューレが多忙で彼女が代わりに私の世話をしに来ることがとても嬉しく思った。
またあの温もりに触れられるとそう思って。
だから来ない日は妙に寂しくてこっそりと部屋から抜け出して彼女に会いに行ったこともあった。
昼でも日傘を持って出て行った。そのことで彼女に笑顔で叱られたけど、でも嬉しかった。
私のことを大切にしてくれて叱ってると思うと嬉しかった。
やがてフランが生まれて共に面倒を見て貰う様になっても彼女は相変わらず接してくれた。
気が付けば普段の世話を彼女が、教育をルキューレが担当していた。
毎日、彼女とお話をしたり、一緒に食事したり、お風呂に入ったり……。
三人で外を散歩もしたときもあった。まるで親子のように生活した。
もちろん母親も毎日私達の部屋へ来てくれたけど何故か彼女の事を実の母親以上に慕っていた。
それほど好きだった。時が経っても変わらず愛してくれる彼女の事が好きだった。
でもフランの事を撫でたりするのを見て妬いていたのは少し恥ずかしい思い出。
それほど彼女の事が好きだった。
私の能力が始めて発現した日、館の皆は喜んだ。でも大変だった。
今の私から想像出来ないほど振り回されていたあのころ、そんな私を助けてくれたのは彼女だった。
無限の選択肢、その中で手繰り寄せたくも無い見たくも無い運命。目を背ける事が出来ない未来。
自分が殺される運命、父が死ぬ運命、 ルキューレを殺す運命、フランが誰かを殺す運命、
中には彼女が消える運命も見えた。そして私は日常にある死の恐怖を知り部屋に籠った。
廊下を歩いてて、その廊下に飾ってある甲冑が突然倒れて私を押しつぶす運命、
メイドが作った食事に猛毒が入っていてそれを食べて苦しみながら倒れる運命、
昼間に外へ出て日傘が風で飛ばされ太陽にこの身が焼かれ、灰になる運命、
エトセトラエトセトラ……。
私はそれらの恐怖で夜も眠れずただ膝を抱えて怯えるしか無かった。でもそんなとき
彼女が私の元へ訪れた。そのとき見たのは私に触れようとした彼女を突き飛ばそうとして
誤ってこの手で貫いてしまう運命。
私に近付く彼女、それに私は怯えた目で見ることしか出来なかった。拒絶の声を上げることも出来ず
ただ部屋の片隅で震えながら結果を待つ私。ただ現実にならないでと悪魔の私が神に願う事しか出来なかった。
彼女が私に前に立ちしゃがみそして触れようとする。今すぐにでも逃げたかった。でも外へ出ても死から
の恐怖から逃れられたわけではない。このときの私はパニックに陥っていた。そして私に触れようとした手を
振り払おうとしたとき、嫌な運命は消えた。
振り払おうとした私の手を彼女は捕み、ぐいと私を抱き寄せたのだった。そして優しく頭を撫でてくれた。
「大丈夫ですよ」
そう言ってくれた。でもまだあの運命が嘘になったことが信じられなくて、彼女の暖かい温もりが
信じられなくって、ただ目の前の嬉しい現実を受け止められなかった。
そんな私をただ優しく撫でてくれる彼女。
「お嬢様、これは私の考えですがよく聞いてください。運命とは100%決まっているわけではありません。
99%決まっていますが1%は違うんです。この1%は『人の想い』です。そう想いで、信じることで運命は変えられるのです」
このとき顔は見えなかったけど恐らく真剣な顔をして話してくれたんだと思う。でも触れる手は暖かくて
優しくて、昔を少し思い出す。私が落ち込んでいる時、抱きしめてくれた彼女を。
「お嬢様の見た嫌な運命を、未来を、私は現実にさせません。お嬢様がその能力を自在に扱えるようになるまで
私の想いでもって消してみせます。いや私だけではありません。屋敷の皆がそう信じてます。お嬢様の見た
嫌な運命が嘘になることを」
このとき、自分の中で何かが消えていった。運命からの恐怖だ。そして自分の見た現実にしたくない運命も
少し消えていた。
「ですから前を向いてください。そして私を見てください。私はお嬢様が見た運命のように消えていますか?
死んでいますか?今、目の前にお嬢様の見た運命が現実となっていますか?」
彼女は抱きしめていた私を放すと顔を覗き込む。私の目の前には決意を秘めた目で優しく微笑む彼女の顔。
このときやっと目の前のことが夢で無く現実だとやっと解って、嬉しくて泣き出してしまった。
そんな私を彼女はまた優しく抱きしめてくれた。
次の日から能力を扱う特訓が始まった。と言ってもただ投げたコインが表裏どちらかになる運命を決めるだけ。
考えたのはルキューレだったけど、毎日やってくれたのは彼女だった。そしてしつこくこう言ってくれた。
『小さい事の積み重ねこそ大事』なんだと。そして彼女の想いに答えようと必死になってやったおかげで私はすぐに
能力を自分の思いのままに扱えるようになり、屋敷の誰かが悲しむような運命すべては消してしまった。
でも扱える様になったことで生まれた油断が一つの悲劇を生んだ。妹のフランが母を殺してしまう運命。
もしかしたらこれは回避出来たのかもしれない。でも出来なかった。
その運命を夢で見て、そんなの嘘だと母の部屋に行くと母親の服を着た物体と血まみれのフランドール。
現実を見た時はただ絶望した。そして妹の行動を止めることが出来なかったのが悔しかった。
そして、愛する母が死んでしまったことがとても悲しかった。
そのせいで私は心に深い傷を負った。昔の、能力が発現したころのようにまた引篭もり、ただ悲しむことしか
出来なかった。そんなとき元気づけてくれたのも彼女。心配そうな顔で部屋に入ってきた彼女は
ベッドの上でただ力無く壁に背を預けて座っている私に近付き『ご気分はどうですか?』と聞いた。
このときの私は首を横に振った。振ることしか出来なかった。
もう生きているのも辛いほど傷付いていたのだから。
そんな私を見た彼女は何も言わずに、また私を抱きしめてくれた。
「お嬢様、お母様が亡くなられて辛いのは解ります。しかし落ち込んでいるだけでは何も始まりません」
そう言って優しく撫でるその手は昔と何も変わらない。変わったのは状況と私の背だけ。
「そして妹様を止められなかったことも辛いのでしょう。妹様も自分がお母様を殺したことに傷付いていました。
しかし今、お嬢様のように落ち込んでいません。前に進もうとしています」
力強く私に言い聞かせるような話し方。でも声は美しい鈴の音。その声が気持ちよかった。
そしてこの時、自分の中の何かが崩れ落ちていく感じがした。
「今、妹様は自分の能力をお嬢様のように扱えるようになろうと必死になっています。
前のように姉妹で仲良く暮らせる日を夢見て頑張っています。それなのにお嬢様はいまだに
落ち込んでいます。それでは妹様に笑われしまいすよ?
もしかしたら妹様は運命を操れるあなたを恨んでいるかもしれません。何故こんな運命を消さなかったのかと。
でもまた二人で、屋敷の皆と笑って過ごすために必死に前へと歩んでいます。
なのにお嬢様はいつまで後ろを見ているつもりですか?皆が前で待っています。お嬢様がまた歩まれるのを」
その言葉を黙って聞く私。でも気が付くと体が熱く、震えていた。
「もし辛いのであれば何でも私に言ってください。どんな相談にも乗ります、甘えさせてあげます。
私に出来るのならお母様の代わりにだってなります。ですから前を向いてまた歩んでください。
そして共に進みましょう未来に。それが今お嬢様に出来ることです」
この言葉で完全に何かが崩れた。止め処なく溢れ出す涙。私は彼女に抱きついて大声を上げて泣いていた。
そんな私をただ抱きしめて撫でる彼女。昔と変わらずに私を見てくれる、愛情を注いでくれる、優しくしてくれる。
そんな彼女に私はただ泣きすがった。甘えるように、温もりを感じるように。
それからしばらくは彼女に甘えていた。今となっては出来ないような甘え方だったと恥ずかしく思う。
でも私が立ち直るまでフランの世話もしながら毎日会いに来てくれたことはとても嬉しくて母親のように慕っていた。
彼女の優しさに暖かい温もりに、ただ甘えた。
そして彼女がフランのほぼ専属の世話係になる前にはほぼ元に戻ることが出来た。このときは彼女に感謝した。
それからは余り甘えることは出来なかったけど暇があれば私の所へやってきて話をしてくれた。
時には添い寝もして貰った。それくらい彼女と共にいるのが幸せだと思った。
やがて幻想郷に来て私がこの紅魔館の主になった時、彼女は離れていった。それが従者としての、主である
私のためになる選択だと、ルキューレに聞いた。館の主が一人の従者に甘えることは私の地位に傷を及ぼすと、
そう考えたそうだ。私も仕方が無いとは思った。でも気が付けば寂しくなって急に彼女に会いたくなっていた。
このときはただ甘えたいだけで彼女の元へ行くたびに困ったように苦笑いをしていた彼女。でも結局は撫でてくれるのが
嬉しかった。
でも甘えたい気持ちが気が付けば恋心として彼女と一緒にいたいという思いに変わっていたことには驚いた。
最初に気付いたルキューレが笑ってそれを指摘したときは恥ずかしかった。でも今彼女が好きだと言うことに
恥ずかしさを感じない。それが私の想いであり、事実なのだから。
私にとっての彼女は
『太陽のような温もりを持つ優しい母親みたいな従者』と
『元気をくれて、大切な事を教えてくれる人生の先輩』と
『甘えることが出来る恋人みたいな憧れの人』
の三つ。これは変わることなくいつまでもそうあり続ける。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
話し終えたレミリアはカップに入った紅茶を一口飲む。その様子を文は呆然と見ていた。
「あらどうしたの?あなたのお望みのお話をしたつもりなんだけど?」
「あ、いやぁまさか紅い悪魔の住む館の主が門番にメロメロだったなんて……」
「悪いかしら?」
そう言いまた口へとカップへ運ぶレミリア。恥ずかしさなどは無いのだろうか?
そう思いながらも慣れない紅茶を飲む文。ふと今まで話を聞いてきたこの館の住民を
思い出す。図書館の魔女に始まりメイド長、妹様、そして館の主。そして他、数人の一般メイド。
何故こうもここの門番が好きなのか今まで聞いた話で少し解った気がした。
「言っとくけど、彼女の事が好きなのは紅魔館の主ではなく一人の吸血鬼『レミリア・スカーレット』
として好きなだけだからね?」
「はいはい。解りました。しかし昔はベタベタだったんですね」
「子供の頃なんて皆そんなものよ。ただ言わないだけで恥ずかしい頃なんて誰にでもあるわ」
「そうですか」
「でもなんであなたはこんなことを聞きにきたのかしら?」
「いやそれがですね。最近、魔理沙さんが良く紅魔館の門番と話しているってのを聞きまして、
それで魔理沙さんにそのことを聞いたら顔を赤らめまして……で試しに門番隊の一人に
聞きましたら『紅魔館に住む人は皆美鈴さんの事が大好き』とか言うもんですから」
「で、その中でも力のある私達に聞いたと」
「そういうことです。しかしここまでとは……」
「すごいでしょ彼女の人気」
「えぇ、驚きですよ」
そういい溜息をつく文。それを見て微笑むレミリアはまたカップを口に運ぶ。
そこで文はふと疑問に思うことがあった。
「ところでどうして美鈴さんは誰に対してもこうなんですか?それに怒るようなことも無いし、
いくらなんでも優しすぎるような気がしますが?」
「それが彼女が自分に与えた罰なのよ」
「罰?」
「おっと、今のことは忘れなさい。部外者のあなたは関係無いわ」
「はぁ……」
今の言葉にレミリアはしまったという顔をしてすぐに取り繕う。ここで退いては記者の名前が泣くが
仕方無く退く文。実はレミリアからの威圧感が一瞬強くなったのだ。ここで問おうものなら何をされるか
解らない。なので仕方無く退いたのだ。
「それともう一つ質問が。これは前から思っていたのですが美鈴さんは弱くありませんか?
今回のお話を聞く限りでは長命の様ですが、それなのに妖怪としては弱すぎる気がします。
彼女の特徴といったら体が無駄に頑丈な事と武術に精通していることなんですが?」
「確かにそうね。弾幕は薄いし、格闘にしても妖怪としての妖力や魔力を使った戦闘だと弱いわね。
いい所を挙げるとしたら経験とただ肉体の力のみの格闘と能力の汎用性かしらね」
「なのによく門番をしてこれましたね」
「そうかもしれないわね。でも外の世界で屋敷に来るのは命知らずの小物だったし、それぐらいには
普通に勝てる力を持っていたから」
「はぁ」
その言葉に少し腑抜ける文。外の世界で問題無かったとしてもこの幻想郷ではどうだ?それこそ美鈴より力が
強いの妖怪はごまんといる。例えば花の妖怪などだ。それなのに彼女を門番に置く理由が解らない。
「あら、美鈴を門番に置く理由が解らないといった顔ね?」
「あう、解りました?」
「解りやすい顔をしてたわ。ならば教えてあげるわ。彼女を門番に置く理由。それは彼女の意思よ」
「……ってそれだけですか?」
「冗談よ。まぁそれもあるけど……。彼女には一つだけ誰にも負けない物があるの」
「それは……何かしらの武術ですか?」
「いいえ違うわ。彼女が誰にも負けないもの、それは心よ」
「心?」
「えぇ」
心という言葉にきょとんとなる文。それを無視して話続けるレミリア。
「彼女の心は、想いは誰にも曲げられないし壊すことも出来ない。彼女がこの館を守ると一度決めたら
相手が隙間妖怪だろうと神だろうと死んででも守りきる。それが彼女の心。そして誰にも覆せない想いよ」
「…………」
その言葉にまた唖然となる文だがすぐに真剣な顔になる。レミリアの目にそれを信じて疑わない強い意志が見えたから。
「でももしその彼女の想いを笑う奴がいたら私はそいつを許さない。全身全霊を持って灰一つとしてこの世に
残さないわ。そして彼女の優しさを踏みにじるような奴もそう。地獄以上の苦痛を与えて殺してやる」
このとき文はただならぬ覇気と殺気を出すレミリアに恐怖した。目が本気なのだ。もし本当に
美鈴の想いを踏みにじった者がいたら間違いなく消す、そう訴えていた。
「私は彼女の優しさを、この館を守りきるという想いを館の主として誰よりも理解している。
だから私は彼女を信頼している。解ったかしら?」
「……(こくこく)」
いつの間にか立ち上がり選挙演説のように熱く語るレミリア。それに圧倒され文はただ頷くしか出来なかった。
「まぁあなたは平気でしょう。この館の住人に美鈴の話を聞いたからよく解っているだろうし」
「そ、そうですよ。私は美鈴さんのことなんて笑いませんよ」
「そう、ならよかった」
「で、ではこれで失礼しようかなと」
「もう帰るの?もうちょいお話してもいいでしょうに」
「あ、いや、急用を思い出して」
文の言葉が嘘なのは明らかだった。突然帰るといったのはレミリアの威圧感に圧倒され居心地が悪くなったからだった。
まさかここまで門番のことを思っているなんて……そう心の中で思った。
「それは残念……ところで私達が話したことって記事にするの?」
「あー……する気になったらしますね多分」
「そう。じゃあ最後にあなたに忠告を」
「はい?」
「これから余りここに近寄らない方が身の為よ」
「……ここに来るなってことですか?」
「違うわ。あなたの身の安全のためよ。まぁ安心なさい、塵一つ残さず消されるようなことは無いから」
「はぁ……そうですか。ならばなるべくここに来ないことにします」
「それが懸命よ。それじゃあ。出口への案内は適当なメイドに頼みなさい」
「解りました。それでは取材にご協力して下さって有難うございました。またいつかお会いしましょう」
「どういたしまして。それと今度は何か美味しい和菓子を持ってきなさい」
席を立ちながらレミリアの言葉に苦笑いした文は綺麗な足取りで部屋を後にした。
それを確認したレミリアはカップに僅かに残った紅茶に目を落とし『色々しゃべりすぎちゃったなぁ』
と赤面し、自分が話したことが記事にならないか心配し始めた。
「む~~紅魔館外勤メイド隊隊長、紅美鈴か」
紅魔館からの帰り道、文はふと先ほどまで話されていた人物の名前を呟く。
今回話を聞いて、誰もが言った印象は『優しく母親みたいな人物』だった。しかも他の一般メイドから聞いた話だと
料理が上手かったり、マッサージ出来たりと結構色々なことが出来るということも知り、そのせいか嫁に欲しいと
言う者が多数いることも知った。この人気っぷりには正直舌を巻くほどだ。
「なんていうかアイドルですね。しかし……」
そう言いながら止まる彼女は指で顎を触れしばらく思案顔になる。そして何か結論を導き出したのだろう、
はっとした顔で手を叩きそして
「あそこだと色々危ないでしょうし私が嫁として貰いましょう!」
こう言った。『うん、いい考えだ』と呟きこの後、妖怪の山へと文はまだ食べたことの無い彼女の手料理と
気持ちのいいだろうマッサージを夢見て上機嫌に鼻歌を歌いながら帰っていった。
<終わり>
紅魔以下略
案内された部屋で館の主、へたレ……失礼
レミリア・スカーレットが待っていた
どうやら待っていたらしい
何でもあの副メイド長からテレパシーとやらで
私の目的を聞いていたそうだ
そしてこちらの質問を受け付けずさっさと話し始めてしまった
まぁいっか
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
私、レミリア・スカーレットが生まれたときにはすでに彼女、紅美鈴は門番長だったと
物心ついたとき父親から聞いた。彼女は現在の副メイド長のルキューレと副門番長のフォールンの
二人と共に放浪していたのをたまたま見つけ屋敷に雇うという形で住まわせたという。
そのときから屋敷の誰に対しても優しく接し周りに笑顔を振りまいていたと
ルキューレは懐かしく語ってくれた。
そして誰よりも屋敷を、屋敷の皆を大事にしていたとフォールンも語った。
彼女は昔からすべてのものに愛情を注いでいた。それは二人共そろって言った。
私が生まれ、世話をする時も同じように愛情を注いでくれたそうだ。
そして成長した今でもそれは変わらない。
私が生まれてからの世話はルキューレがしてくれた。母親が病弱で何かと体調を崩すからだった。
でもこのときの彼女はメイド達の長であり、主である父と母の身の回りの世話もあり忙しく
私の世話に手が回らないことがあった。
そのときに私の世話をしてくれたのが美鈴だった。でもそのときのことは覚えていない。
でも一つだけ覚えているものがある。それは彼女の吸血鬼が感じる事の無い太陽のような温もり。
物心がついてからその温もりを探して屋敷を歩き回り、やがて辿り着いたのが
門の前。そこで立っていた紅髪で特徴的な民族服を着ている彼女。彼女は私に気付くと微笑みを
浮かべてこう言った。
「おや、お嬢様。こんな所までどうしました?」
私はその微笑を今でもはっきりと覚えている。他人を安心させる優しい笑顔と鈴の音のような美しい声。
母親では無いけど、母親のような雰囲気。そのとき彼女があの太陽のような温もりを持っている
のだと感じ、私は彼女に抱きついた。そんな私に彼女は戸惑った顔をしたけどすぐに笑顔に戻り
何も言わずに優しく撫でてくれた。このとき彼女から吸血鬼の感じる事の無い太陽の暖かい温もりと母親の様な
優しさを感じた。
その後、ルキューレが多忙で彼女が代わりに私の世話をしに来ることがとても嬉しく思った。
またあの温もりに触れられるとそう思って。
だから来ない日は妙に寂しくてこっそりと部屋から抜け出して彼女に会いに行ったこともあった。
昼でも日傘を持って出て行った。そのことで彼女に笑顔で叱られたけど、でも嬉しかった。
私のことを大切にしてくれて叱ってると思うと嬉しかった。
やがてフランが生まれて共に面倒を見て貰う様になっても彼女は相変わらず接してくれた。
気が付けば普段の世話を彼女が、教育をルキューレが担当していた。
毎日、彼女とお話をしたり、一緒に食事したり、お風呂に入ったり……。
三人で外を散歩もしたときもあった。まるで親子のように生活した。
もちろん母親も毎日私達の部屋へ来てくれたけど何故か彼女の事を実の母親以上に慕っていた。
それほど好きだった。時が経っても変わらず愛してくれる彼女の事が好きだった。
でもフランの事を撫でたりするのを見て妬いていたのは少し恥ずかしい思い出。
それほど彼女の事が好きだった。
私の能力が始めて発現した日、館の皆は喜んだ。でも大変だった。
今の私から想像出来ないほど振り回されていたあのころ、そんな私を助けてくれたのは彼女だった。
無限の選択肢、その中で手繰り寄せたくも無い見たくも無い運命。目を背ける事が出来ない未来。
自分が殺される運命、父が死ぬ運命、 ルキューレを殺す運命、フランが誰かを殺す運命、
中には彼女が消える運命も見えた。そして私は日常にある死の恐怖を知り部屋に籠った。
廊下を歩いてて、その廊下に飾ってある甲冑が突然倒れて私を押しつぶす運命、
メイドが作った食事に猛毒が入っていてそれを食べて苦しみながら倒れる運命、
昼間に外へ出て日傘が風で飛ばされ太陽にこの身が焼かれ、灰になる運命、
エトセトラエトセトラ……。
私はそれらの恐怖で夜も眠れずただ膝を抱えて怯えるしか無かった。でもそんなとき
彼女が私の元へ訪れた。そのとき見たのは私に触れようとした彼女を突き飛ばそうとして
誤ってこの手で貫いてしまう運命。
私に近付く彼女、それに私は怯えた目で見ることしか出来なかった。拒絶の声を上げることも出来ず
ただ部屋の片隅で震えながら結果を待つ私。ただ現実にならないでと悪魔の私が神に願う事しか出来なかった。
彼女が私に前に立ちしゃがみそして触れようとする。今すぐにでも逃げたかった。でも外へ出ても死から
の恐怖から逃れられたわけではない。このときの私はパニックに陥っていた。そして私に触れようとした手を
振り払おうとしたとき、嫌な運命は消えた。
振り払おうとした私の手を彼女は捕み、ぐいと私を抱き寄せたのだった。そして優しく頭を撫でてくれた。
「大丈夫ですよ」
そう言ってくれた。でもまだあの運命が嘘になったことが信じられなくて、彼女の暖かい温もりが
信じられなくって、ただ目の前の嬉しい現実を受け止められなかった。
そんな私をただ優しく撫でてくれる彼女。
「お嬢様、これは私の考えですがよく聞いてください。運命とは100%決まっているわけではありません。
99%決まっていますが1%は違うんです。この1%は『人の想い』です。そう想いで、信じることで運命は変えられるのです」
このとき顔は見えなかったけど恐らく真剣な顔をして話してくれたんだと思う。でも触れる手は暖かくて
優しくて、昔を少し思い出す。私が落ち込んでいる時、抱きしめてくれた彼女を。
「お嬢様の見た嫌な運命を、未来を、私は現実にさせません。お嬢様がその能力を自在に扱えるようになるまで
私の想いでもって消してみせます。いや私だけではありません。屋敷の皆がそう信じてます。お嬢様の見た
嫌な運命が嘘になることを」
このとき、自分の中で何かが消えていった。運命からの恐怖だ。そして自分の見た現実にしたくない運命も
少し消えていた。
「ですから前を向いてください。そして私を見てください。私はお嬢様が見た運命のように消えていますか?
死んでいますか?今、目の前にお嬢様の見た運命が現実となっていますか?」
彼女は抱きしめていた私を放すと顔を覗き込む。私の目の前には決意を秘めた目で優しく微笑む彼女の顔。
このときやっと目の前のことが夢で無く現実だとやっと解って、嬉しくて泣き出してしまった。
そんな私を彼女はまた優しく抱きしめてくれた。
次の日から能力を扱う特訓が始まった。と言ってもただ投げたコインが表裏どちらかになる運命を決めるだけ。
考えたのはルキューレだったけど、毎日やってくれたのは彼女だった。そしてしつこくこう言ってくれた。
『小さい事の積み重ねこそ大事』なんだと。そして彼女の想いに答えようと必死になってやったおかげで私はすぐに
能力を自分の思いのままに扱えるようになり、屋敷の誰かが悲しむような運命すべては消してしまった。
でも扱える様になったことで生まれた油断が一つの悲劇を生んだ。妹のフランが母を殺してしまう運命。
もしかしたらこれは回避出来たのかもしれない。でも出来なかった。
その運命を夢で見て、そんなの嘘だと母の部屋に行くと母親の服を着た物体と血まみれのフランドール。
現実を見た時はただ絶望した。そして妹の行動を止めることが出来なかったのが悔しかった。
そして、愛する母が死んでしまったことがとても悲しかった。
そのせいで私は心に深い傷を負った。昔の、能力が発現したころのようにまた引篭もり、ただ悲しむことしか
出来なかった。そんなとき元気づけてくれたのも彼女。心配そうな顔で部屋に入ってきた彼女は
ベッドの上でただ力無く壁に背を預けて座っている私に近付き『ご気分はどうですか?』と聞いた。
このときの私は首を横に振った。振ることしか出来なかった。
もう生きているのも辛いほど傷付いていたのだから。
そんな私を見た彼女は何も言わずに、また私を抱きしめてくれた。
「お嬢様、お母様が亡くなられて辛いのは解ります。しかし落ち込んでいるだけでは何も始まりません」
そう言って優しく撫でるその手は昔と何も変わらない。変わったのは状況と私の背だけ。
「そして妹様を止められなかったことも辛いのでしょう。妹様も自分がお母様を殺したことに傷付いていました。
しかし今、お嬢様のように落ち込んでいません。前に進もうとしています」
力強く私に言い聞かせるような話し方。でも声は美しい鈴の音。その声が気持ちよかった。
そしてこの時、自分の中の何かが崩れ落ちていく感じがした。
「今、妹様は自分の能力をお嬢様のように扱えるようになろうと必死になっています。
前のように姉妹で仲良く暮らせる日を夢見て頑張っています。それなのにお嬢様はいまだに
落ち込んでいます。それでは妹様に笑われしまいすよ?
もしかしたら妹様は運命を操れるあなたを恨んでいるかもしれません。何故こんな運命を消さなかったのかと。
でもまた二人で、屋敷の皆と笑って過ごすために必死に前へと歩んでいます。
なのにお嬢様はいつまで後ろを見ているつもりですか?皆が前で待っています。お嬢様がまた歩まれるのを」
その言葉を黙って聞く私。でも気が付くと体が熱く、震えていた。
「もし辛いのであれば何でも私に言ってください。どんな相談にも乗ります、甘えさせてあげます。
私に出来るのならお母様の代わりにだってなります。ですから前を向いてまた歩んでください。
そして共に進みましょう未来に。それが今お嬢様に出来ることです」
この言葉で完全に何かが崩れた。止め処なく溢れ出す涙。私は彼女に抱きついて大声を上げて泣いていた。
そんな私をただ抱きしめて撫でる彼女。昔と変わらずに私を見てくれる、愛情を注いでくれる、優しくしてくれる。
そんな彼女に私はただ泣きすがった。甘えるように、温もりを感じるように。
それからしばらくは彼女に甘えていた。今となっては出来ないような甘え方だったと恥ずかしく思う。
でも私が立ち直るまでフランの世話もしながら毎日会いに来てくれたことはとても嬉しくて母親のように慕っていた。
彼女の優しさに暖かい温もりに、ただ甘えた。
そして彼女がフランのほぼ専属の世話係になる前にはほぼ元に戻ることが出来た。このときは彼女に感謝した。
それからは余り甘えることは出来なかったけど暇があれば私の所へやってきて話をしてくれた。
時には添い寝もして貰った。それくらい彼女と共にいるのが幸せだと思った。
やがて幻想郷に来て私がこの紅魔館の主になった時、彼女は離れていった。それが従者としての、主である
私のためになる選択だと、ルキューレに聞いた。館の主が一人の従者に甘えることは私の地位に傷を及ぼすと、
そう考えたそうだ。私も仕方が無いとは思った。でも気が付けば寂しくなって急に彼女に会いたくなっていた。
このときはただ甘えたいだけで彼女の元へ行くたびに困ったように苦笑いをしていた彼女。でも結局は撫でてくれるのが
嬉しかった。
でも甘えたい気持ちが気が付けば恋心として彼女と一緒にいたいという思いに変わっていたことには驚いた。
最初に気付いたルキューレが笑ってそれを指摘したときは恥ずかしかった。でも今彼女が好きだと言うことに
恥ずかしさを感じない。それが私の想いであり、事実なのだから。
私にとっての彼女は
『太陽のような温もりを持つ優しい母親みたいな従者』と
『元気をくれて、大切な事を教えてくれる人生の先輩』と
『甘えることが出来る恋人みたいな憧れの人』
の三つ。これは変わることなくいつまでもそうあり続ける。
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話し終えたレミリアはカップに入った紅茶を一口飲む。その様子を文は呆然と見ていた。
「あらどうしたの?あなたのお望みのお話をしたつもりなんだけど?」
「あ、いやぁまさか紅い悪魔の住む館の主が門番にメロメロだったなんて……」
「悪いかしら?」
そう言いまた口へとカップへ運ぶレミリア。恥ずかしさなどは無いのだろうか?
そう思いながらも慣れない紅茶を飲む文。ふと今まで話を聞いてきたこの館の住民を
思い出す。図書館の魔女に始まりメイド長、妹様、そして館の主。そして他、数人の一般メイド。
何故こうもここの門番が好きなのか今まで聞いた話で少し解った気がした。
「言っとくけど、彼女の事が好きなのは紅魔館の主ではなく一人の吸血鬼『レミリア・スカーレット』
として好きなだけだからね?」
「はいはい。解りました。しかし昔はベタベタだったんですね」
「子供の頃なんて皆そんなものよ。ただ言わないだけで恥ずかしい頃なんて誰にでもあるわ」
「そうですか」
「でもなんであなたはこんなことを聞きにきたのかしら?」
「いやそれがですね。最近、魔理沙さんが良く紅魔館の門番と話しているってのを聞きまして、
それで魔理沙さんにそのことを聞いたら顔を赤らめまして……で試しに門番隊の一人に
聞きましたら『紅魔館に住む人は皆美鈴さんの事が大好き』とか言うもんですから」
「で、その中でも力のある私達に聞いたと」
「そういうことです。しかしここまでとは……」
「すごいでしょ彼女の人気」
「えぇ、驚きですよ」
そういい溜息をつく文。それを見て微笑むレミリアはまたカップを口に運ぶ。
そこで文はふと疑問に思うことがあった。
「ところでどうして美鈴さんは誰に対してもこうなんですか?それに怒るようなことも無いし、
いくらなんでも優しすぎるような気がしますが?」
「それが彼女が自分に与えた罰なのよ」
「罰?」
「おっと、今のことは忘れなさい。部外者のあなたは関係無いわ」
「はぁ……」
今の言葉にレミリアはしまったという顔をしてすぐに取り繕う。ここで退いては記者の名前が泣くが
仕方無く退く文。実はレミリアからの威圧感が一瞬強くなったのだ。ここで問おうものなら何をされるか
解らない。なので仕方無く退いたのだ。
「それともう一つ質問が。これは前から思っていたのですが美鈴さんは弱くありませんか?
今回のお話を聞く限りでは長命の様ですが、それなのに妖怪としては弱すぎる気がします。
彼女の特徴といったら体が無駄に頑丈な事と武術に精通していることなんですが?」
「確かにそうね。弾幕は薄いし、格闘にしても妖怪としての妖力や魔力を使った戦闘だと弱いわね。
いい所を挙げるとしたら経験とただ肉体の力のみの格闘と能力の汎用性かしらね」
「なのによく門番をしてこれましたね」
「そうかもしれないわね。でも外の世界で屋敷に来るのは命知らずの小物だったし、それぐらいには
普通に勝てる力を持っていたから」
「はぁ」
その言葉に少し腑抜ける文。外の世界で問題無かったとしてもこの幻想郷ではどうだ?それこそ美鈴より力が
強いの妖怪はごまんといる。例えば花の妖怪などだ。それなのに彼女を門番に置く理由が解らない。
「あら、美鈴を門番に置く理由が解らないといった顔ね?」
「あう、解りました?」
「解りやすい顔をしてたわ。ならば教えてあげるわ。彼女を門番に置く理由。それは彼女の意思よ」
「……ってそれだけですか?」
「冗談よ。まぁそれもあるけど……。彼女には一つだけ誰にも負けない物があるの」
「それは……何かしらの武術ですか?」
「いいえ違うわ。彼女が誰にも負けないもの、それは心よ」
「心?」
「えぇ」
心という言葉にきょとんとなる文。それを無視して話続けるレミリア。
「彼女の心は、想いは誰にも曲げられないし壊すことも出来ない。彼女がこの館を守ると一度決めたら
相手が隙間妖怪だろうと神だろうと死んででも守りきる。それが彼女の心。そして誰にも覆せない想いよ」
「…………」
その言葉にまた唖然となる文だがすぐに真剣な顔になる。レミリアの目にそれを信じて疑わない強い意志が見えたから。
「でももしその彼女の想いを笑う奴がいたら私はそいつを許さない。全身全霊を持って灰一つとしてこの世に
残さないわ。そして彼女の優しさを踏みにじるような奴もそう。地獄以上の苦痛を与えて殺してやる」
このとき文はただならぬ覇気と殺気を出すレミリアに恐怖した。目が本気なのだ。もし本当に
美鈴の想いを踏みにじった者がいたら間違いなく消す、そう訴えていた。
「私は彼女の優しさを、この館を守りきるという想いを館の主として誰よりも理解している。
だから私は彼女を信頼している。解ったかしら?」
「……(こくこく)」
いつの間にか立ち上がり選挙演説のように熱く語るレミリア。それに圧倒され文はただ頷くしか出来なかった。
「まぁあなたは平気でしょう。この館の住人に美鈴の話を聞いたからよく解っているだろうし」
「そ、そうですよ。私は美鈴さんのことなんて笑いませんよ」
「そう、ならよかった」
「で、ではこれで失礼しようかなと」
「もう帰るの?もうちょいお話してもいいでしょうに」
「あ、いや、急用を思い出して」
文の言葉が嘘なのは明らかだった。突然帰るといったのはレミリアの威圧感に圧倒され居心地が悪くなったからだった。
まさかここまで門番のことを思っているなんて……そう心の中で思った。
「それは残念……ところで私達が話したことって記事にするの?」
「あー……する気になったらしますね多分」
「そう。じゃあ最後にあなたに忠告を」
「はい?」
「これから余りここに近寄らない方が身の為よ」
「……ここに来るなってことですか?」
「違うわ。あなたの身の安全のためよ。まぁ安心なさい、塵一つ残さず消されるようなことは無いから」
「はぁ……そうですか。ならばなるべくここに来ないことにします」
「それが懸命よ。それじゃあ。出口への案内は適当なメイドに頼みなさい」
「解りました。それでは取材にご協力して下さって有難うございました。またいつかお会いしましょう」
「どういたしまして。それと今度は何か美味しい和菓子を持ってきなさい」
席を立ちながらレミリアの言葉に苦笑いした文は綺麗な足取りで部屋を後にした。
それを確認したレミリアはカップに僅かに残った紅茶に目を落とし『色々しゃべりすぎちゃったなぁ』
と赤面し、自分が話したことが記事にならないか心配し始めた。
「む~~紅魔館外勤メイド隊隊長、紅美鈴か」
紅魔館からの帰り道、文はふと先ほどまで話されていた人物の名前を呟く。
今回話を聞いて、誰もが言った印象は『優しく母親みたいな人物』だった。しかも他の一般メイドから聞いた話だと
料理が上手かったり、マッサージ出来たりと結構色々なことが出来るということも知り、そのせいか嫁に欲しいと
言う者が多数いることも知った。この人気っぷりには正直舌を巻くほどだ。
「なんていうかアイドルですね。しかし……」
そう言いながら止まる彼女は指で顎を触れしばらく思案顔になる。そして何か結論を導き出したのだろう、
はっとした顔で手を叩きそして
「あそこだと色々危ないでしょうし私が嫁として貰いましょう!」
こう言った。『うん、いい考えだ』と呟きこの後、妖怪の山へと文はまだ食べたことの無い彼女の手料理と
気持ちのいいだろうマッサージを夢見て上機嫌に鼻歌を歌いながら帰っていった。
<終わり>
ですが氏のお陰で満足しました>ω<
文ちゃんは何故自分から悪鬼羅刹の佇む混沌(アルカディア)へ進んでしまったのか…………。
美鈴の強さはの真髄は心じゃよ!
書いてみたい作品のイメージがあるのにかけないのって辛いよね
分かります
ってこの天狗なんてことをwwwwwwwwwwwwww