Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

巫女と天の娘と古道具屋

2008/05/29 01:07:26
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注:この話には緋想天の新キャラが出ます。

  ネタバレを嫌う方は戻るを推奨。

  既に知ってるから良いよという方、或いはネタバレなんて気にしねーぜという漢気のある方は下にGO。






























「はい、今日の作業は終了よ~!」


 天子の掛け声と共に、博麗神社の復興作業を行っていた天女達が散っていく。

 それを見ていた霊夢が、慌てて天子に詰め寄った。


「ち、ちょっと! 今日は終わりって、まだお昼になったばかりじゃない!?」


 確かに霊夢の言うとおり空はまだまだ明るく、幾らなんでも作業終了には早すぎるだろう。


「え~? だからこそじゃない」


 その言葉に霊夢が文句を言うよりも先に、天子が腕を絡めてくる。


「それよりも、何処か楽しいところに案内してよ!」


「楽しいところって……まさか、その為に!?」


「勿論! 折角地上に来れたのに、ずっと作業してばかりじゃ退屈でしょ?」


 霊夢の腕をぐいぐい引っ張り、楽しげに笑う天子。

 それを見た霊夢には、もう怒る気力は無かった。

 まだお昼を食べておらず、お腹が空いてそれどころじゃないとも言う。


「……そうは言っても、楽しいところなんて急には思い付かないわよ」


「えー! どこか無いの? 面白いものとか珍しいものがある場所」


「ん~……あっ」


 いいところは無いかと考える霊夢の脳裏に、彼女も良く行くある場所が思い浮かんだ。


(……あそこなら珍しいものも多いし、こいつを押し付ける事も出来そうね)


 相変わらず纏わり付いている天子を横目に、霊夢は何処に行くかを決めた。


「……そうね、いいところがあったから、今から案内してあげるわ。付いてきなさい」


「りょうかい~」


 そうして二人は、魔法の森に向かって飛んで行った。






 * * *






 魔法の森に佇む香霖堂。

 その店内で霖之助は、今日も今日とて勘定台で本を読んでいた。

 彼にとっては、この静かな時間が何よりも望んでいるものだ……商売人としてそれはどうかと思うが。

 しかし、それも長くは続かなかった。




「霖之助さんいるー?」




 香霖堂の常連――それも、客じゃない人物がやってきたからだ。

 見れば、その後ろには霖之助の見覚えの無い人物も居た。


「やぁ、霊夢。……おや、後ろの人は初めてだね」


「あら? 折角お客さんが来たのに『いらっしゃいませ』の一言も無いのかしら?」


「商品の代金を払わない奴を客とは呼ばないね」


「お賽銭が入ったら全部まとめて払うわよ。魔理沙と一緒にしないでもらえる?」


「僕にしてみれば、どっちも同じだがね……。それより、彼女は誰なんだい?」


 霖之助が指差した人物――天子は二人の会話など気にもせず、店内の様子に目を輝かせていた。


「わー色んな物があるわねー!」


 どうやら幻想郷、外の世界問わず様々な物が溢れる香霖堂を、彼女は一発で気に入ったらしい。


「あぁ、あれね……比那名居天子って天人よ。それよりも、お腹が空いたからお昼食べさせて」


 それだけ言って、霊夢は店の奥に入っていく。

 まだ許可は出していないが、何時もの事なので霖之助は一々気にしない。

 それよりも、フラフラと店内をうろつく少女が、商品を壊さないかの方が心配だった。


「ねぇ、これは何?」


 ――と思っていたら、霖之助の目の前に天子が来ていた。

 何やらその手には、長方形の物体が握られている。


「あぁ、それは『携帯電話』という物だよ。遠くの人と会話が出来るらしい」


「ふ~ん」


 それだけ訊くと、天子は携帯電話を元あった場所に置く。

 どうやら、名前が気になっただけらしい。

 霖之助の元に戻ってきた天子は、何かを思い出したように口を開いた。


「あ、そういえば名乗ってなかったわね。私は――」


「比那名居天子、だろう? 霊夢から聞いたよ。僕は森近霖之助、この香霖堂の店主でもある」


「霖之助、ね……それで此処は何のお店なの?」


 天子が周囲をぐるっと見渡す。

 確かに、幻想郷には無い物で埋め尽くされた香霖堂は、初見で何の店か判断するのは難しいだろう。


「此処では、外の世界の品を中心に扱っている。幻想郷では珍しい物ばかりだから、一つどうだい?」


「ん~後でゆっくり見させてもらうわ」


「そうか。……ところで、君は天人なんだって?」


 霖之助の言葉に、近くの商品を眺めていた天子が顔を上げる。


「そうよ。それも霊夢が言ってたの?」


「あぁ……けど、その割には君は俗っぽいな。天人というのはもっと神々しくて、かつ暢気な人間だと聞いていたんだが」


 以前、稗田阿求が持ってきた幻想郷縁起に書いてあった事だ。


「……何事にも例外があるって事よ。それよりも霊夢は? 何時の間にかいないんだけど」


 どこか吐き捨てるように言い切る天子。

 不良天人と呼ばれ、何より退屈な天界の事は余り考えたくないのだろう。


「霊夢なら奥で昼食の用意をしていると思うよ。そろそろ出てくるんじゃないかな」


 霖之助の言葉通り、霊夢がひょっこり顔を出す。


「お昼出来たわよ~。二人とも食べるでしょう?」


 その言葉に、霖之助と天子も奥に上がるのだった。






 * * *






「やっぱ、夏といったら冷やし中華よねー」


 満面の笑顔を浮かべ、霊夢は麺をずるずると啜る。

 今、三人は香霖堂の一室で冷やし中華を食べていた。


「素麺の時もそう言って無かったっけ?」


「毎年、毎日のように食べるからすぐに飽きているけどね……どっちも」


 天子と霖之助のツッコミに、霊夢が顔を顰める。


「うっ……別にいいじゃない! 素麺は安いから懐にも優しいのよ!」


「この冷やし中華も、僕の食材を使ったから君の懐は痛まないしね」


「でも、霖之助さんもそのおかげで美味しいもの食べられるんだから、問題は無いわよね?」


 霊夢が霖之助に笑顔を向ける。

 だが、その笑顔はどこか引きつっていた。

 それを見ていた天子が、唐突に噴出す。




「ふふ、二人とも仲良いわね」




「はぁっ!?」


「……そりゃ、それなりに長い付き合いだからね」


 天子の言葉に、霊夢は『心外だ」と言わんばかりの表情をし、霖之助は苦笑いを浮かべて返す。

 しかし二人の抗議を無視し、天子は更に攻める。


「何だかんだ言って二人とも楽しそうだし……もしかして、見せ付けられてる?」


 ニヤニヤと笑う天子。

 その視線の先の霊夢は、自身の服の如く顔を真っ赤に染めていた。

 正に瞬間沸騰。


「そそそそそそそんな訳無いでしょう!? わ、私と霖之助さんが……だなんて!!」


「その割には随分な慌てようだけど?」


 天子の笑みは益々深くなっていく。

 それに比例して、霊夢の顔もまた更に赤くなっていく。

 このまま放って置いたら、何か不味い気がして霖之助が口を開いた。


「二人とも落ち着け。霊夢の言うとおり、僕らはそんな関係ではないよ」


「ぐっ……」


「ふ~ん……」


 霖之助の言葉に、天子は訝しげな視線を送り、霊夢は何やら複雑そうな表情をしている。

 そんな霊夢の様子に気付かず、霖之助は更に言葉を続ける。


「さしずめ、霊夢は僕にとって娘とか妹とかそういう感じだよ」


 その瞬間、霊夢が爆発した。 


「むきーーーーっ!!」


 愛用のお払い棒で、霖之助の頭を叩きだしたのだ。


「うわっ!? いたっ、いきなり何を!?」


「何だか解らないけど無償にむかつくのよーーー!!」


 手加減できない精神状態なのか、割と大変な事になっている霖之助。

 それを、天子は慌てて止めるのだった。






 * * *






 夕日に照らされた香霖堂。

 その入り口に三人は立っていた。


「え~と……その、ごめんなさい霖之助さん……」


 流石にばつが悪いのか、普段からは想像できないしおらしさを見せる霊夢。

 それに霖之助は、怒るわけでもなく普段どおりの表情を見せる。


「まぁいい。これぐらいは何時もの事だしね。むしろ、普段誰よりも暢気で周りを気にしない君がそんな風にしていたら、こっちが心配してしまう」


 最後に薄く微笑み、霊夢の頭をポンポンと叩く。


「なっ……何よ! 折角人が謝ってるのに! ふんだ、さっさと帰るわよ天子」


 霖之助の言葉が気に食わなかったのか、先程のしおらしさは何処へやら、霊夢はそっぽを向いて飛び立つ。


「という訳なんで、霖之助またね!」


 ウィンクを飛ばし、天子も香霖堂を後にする。

 二人が見えなくなるまで見送り続けた霖之助が店に戻る。


「やれやれ……今日も騒がしい一日だったな」


 しかし、そう言う彼の顔はどこか楽しそうであった。






 * * *






「あーやっと追いついた……」


 今だ修復途中の博麗神社。

 此処でようやく天子は霊夢に追いついた。


「もう、置いてかなくても良いじゃない」


「別にそんなつもりじゃないわよ。気楽な天界暮らしで、あんたの方が鈍ってんじゃないの?」


 そうニヤリと笑う霊夢は、何時も通りに見えた。

 しかし、天子は知っている。

 香霖堂を去る時、その顔が天子の持つ緋想の剣の如く、赤く染まっていた事を。

 けれどその事を指摘したりはしない。

 本当は言ってやった方が面白い事になりそうなのだが、今やったら全力でぶっ飛ばされる気がするからだ。


(とはいえ、何もしないのも面白くないわね……そうだ!)


 一瞬、天子の顔が霊夢と霖之助をからかっていた時の如く、ニンマリとしたものになる。


「ごめんごめん! 霖之助と話し込んでたらつい、ね」


 ピクッ、と霊夢の肩が震える。

 その様子に笑いを堪えつつ、天子は続ける。


「それにしても、霖之助って良い人ですね。香霖堂も面白いところだし……私気に入ったわ」


 最後に、ニヤリと笑う。

 そのしてやったり顔に、それまで不安気にしていた霊夢は、今度は真っ赤になって叫ぶのだった。




「あ、あんたって奴はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」










てっちん可愛いよてっちん。

どうも、新キャラに変な渾名を付ける程度の能力が最近開花したはみゅんです。



それはそうと、やっちまいました緋想天の新キャラ話です。

それなのに、てっちんが余り目立ってないです霊夢が完全ヒロインです。

霊夢可愛いよ霊夢。

最初霊夢はチョイ役だった筈ですが、何時の間にか三角関係みたいな話になってました。

毎度の事ながら電波は怖いですね。



多分続きます。

次回はもっと、てっちんの我儘っぷりを出せるようにしたいです。



それでは最後に、ここまで読んで頂きありがとうございます!
はみゅん
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
素敵なニックネームと思いますよ。『てっちん』。はっちゃけ振りも良い感じですし。

それにしても霊夢が少女チックで、りんりんが朴念仁でニヤニヤしまくりです。

次回を楽しみにお待ちしてます。
2.名前が無い程度の能力削除
俺は何回こーりんを殺せばいいんだー!
それにしても霊夢EDの天子の馴染みっぷりは異常。お茶を並べてのんびり最高です。
天子にとって初めてのズケズケ言い合える友達だと勝手に妄想。霊天(友愛)拡まれー
とにかくGJ!次回も期待してるぜ。
3.名前が無い程度の能力削除
素敵な作品どうもありがとう

これからも是非がんばってください

それはそうと緋想の剣は霖之助が欲しがりそうだ

あの手この手を使って手に入れそうwww(魔理沙から草薙の剣を譲り受けたとき見たく
4.名無し妖怪削除
今後も霖之助関連で霊夢をおちょくる天子の姿が見えました



次回も期待しているので是非霖之助の出番を!
5.名前が無い程度の能力削除
新キャラ絡ませるのHAEEEEEEE

自分はまだ完全に天子のイメージが固まっておりません…(汗

それにしても朴念仁すぎるぞ霖之助w
6.#15削除
やべぇ…。もう『てっちん』としか、認識できないww
7.名無し削除
これからも天子におちょくられる霊夢に乾杯!!そして、こーりん殺す!!



↓と同じく広まれ霊天(友愛)~
8.名前が無い程度の能力削除
てっちんの建ててる神社がこの後再び壊されるのか・・・



それにしても霖之助の朴念仁っぷりは凄まじいですね