その日、森近霖之助は目の前の光景に頭を抱えていた。
いつものように開店休業状態の店の中で読書をしていた時だった。けたたましい音と共に扉が開き四人の子供が入ってきた。
「ここに、アタイがさらに強くなるものがあるのね!」
「おいしそうなのはないのかなー?」
「ここならいろいろそろってるしねー」
「ちょっとみんな、騒いだら店の人に迷惑だよ」
入ってきたのは、チルノ、ルーミア、ミステイア、リグルの四人。いつもやんちゃで騒がしい面々だった。
「いらっしゃい、何をお探しかな?」
霖之助は軽くため息をつくと、四人へと話しかけた。
「アタイが強くなるものをちょうだい」
チルノがふんぞり返るようにして霖之助を見上げながら言う。
「なにか、おもしろくてたのしいものー」
「新しい歌のアイデアを探しにきたの」
「えーと、新しいスペルカードのアイデアを探しに」
チルノに続けとばかりに残りの三人も次々に口を開く。
「落ち着いて、一人ずつ喋ってくれないか」
無駄かもしれないと思いながらも、霖之助は落ち着かせるように言った。
「あらあら、今日はずいぶんと賑やかね。ここはいつから託児所になったのかしらね」
店に女性の声が響き渡ると、天井にスキマが開き、日傘を手にした女性――隙間妖怪の八雲紫が姿を現した。
「あなたたち、新しいスペルカードのアイデアを探しにここへ来たのでしょう」
紫は微笑みを浮かべながら、四人を次々に見つめた。
霖之助はなぜ紫が四人の目的を知っているのかが気になったが、どうせスキマから覗いていたのだろうと考え納得することにした。
「なるほど、確かにここは道具屋だから、アイデアになるものもあるかもしれないね。好きなだけ見ていくといい……でも、商品は壊さないでくれよ」
霖之助は半ばあきらめた口調で言うと、読書へと戻ることにした。
「あら? 諦めが早いのね」
「どうやったとこで、彼女たちや君を止めることは僕にはできないからね」
苦笑しながら言うと読書を再開した。
「ねえあんた、何の用なのよ。アタイたちはあんたに用はないわよ」
チルノは紫を睨みながら訪ねた。
「そうねえ、面白そうだからかしら。だから私からあなたたちにプレゼントよ」
人差し指で宙をなぞるとスキマが開き、そこから本や小さな機械などが次々に流れ出てきた。
「外の世界で、マンガやゲームと呼ばれるものよ。あなたたちの新しいスペルカードのアイデアにはなるんじゃないかしら」
紫は扇子で口元を隠しながら笑みを浮かべた。
「そのかわり、できた時は私にも見せてね。ウフフフフフ……」
そう言い残し紫はスキマの中へと消えていった。四人はしばらく呆然とし立ち尽くしていたが、我に返ると目の前にあるマンガやゲームへと群がっていった。
「へぇー外の世界はこんなにもいろんな人や道具でいっぱいなんだー」
「このゲイムっていうのはなにをするのかしら」
「あ、これが使い方じゃないのかな」
「うーん、アタイの技のアイデアにはイマイチね。次ね次」
再び騒がしくなった四人の姿に霖之助は再び溜息をついた。
この賑やかさは、夜遅くになり四人が騒ぎ疲れて眠るまで続いた。
―――――数日後
四人は新型スペルを完成させ、今日はそのお披露目の日だった。
四人がよく遊ぶ野原には、チルノ、ミスティア、ルーミア、リグルの他に、大妖精と紫が居合わせていた。
「さてと、それじゃあアタイから見せてあげるわ。この最強のアタイにふさわしいスペルだからよく見ておくことね」
チルノは空へと浮かび上がると、カードを取り出し高々と掲げた。
氷剣『冷凍剣』
宣言と共にチルノの手にしたカードが氷でできた大剣へと変化する。
「いくわよ、それっ!」
手にした剣を振るうと、大気中の水分が凍りつきいくつもの弾となって飛んで行った。
「へえ、フランのレーヴァテインと似たような弾幕ね。あの子にしてはいい発想じゃないの、遠近の両方に対応できるなんてなかなかやるわね」
「チルノちゃんすごい……」
採点する紫の横で、大妖精はチルノの姿に感動しながら呟いた。
「二番手は私ね~見てなさいよ、私の新しい歌を~」
鼻歌交じりにミスティアは空へと飛んで行き、カードを掲げた。
剛歌『G・リサイタル』
ミスティアから波紋のように小型弾が広がっていき、大玉や中玉があちらこちらへとばらまかれた。だが、それ以上に強烈なものがあった。
「ボエ~~~~~~~~~~~~……」
普段のミスティアの歌からは想像できない、耳を塞ぎたくなる不快な声が発せられた。
「なるほど、この不快な声で相手の動きを鈍らせて、弾を避け辛くするのね。相手を鳥目にして夜に使ったらかなり強い技ね」
「そんなのはどうでもいいよ、それよりいくらなんでもこの声は反則だよ」
平然とする紫とは対照的に他の四人は耳を塞いでいた。
「うー、まだ声が頭の中に残ってるのだー」
少しフラフラしながら三番手のルーミアがスペルカード宣言をした。
暗闇『はどうほう』
ルーミアの周囲に闇が集まっていき雲のような塊となって纏わりつく。同時に妖力が高まっていった。
「いっけーーーっ!」
両手を前方にかざすと、広範囲へとエネルギー波が放たれた。
「ひえええっ」
「うわあ」
「なによあれ」
その光景に驚きを隠せない仲間たちを尻目にエネルギー波は空の彼方へと消えていった。
「まるで魔理沙のマスタースパークね。まあ彼女みたいに強力じゃなくて持続力もないけど、その分連射がききそうね。でも、あの子がこんな力をもっているなんて少し危険かもしれないわね」
意気揚々と戻ってくるルーミアを見詰めながら紫は眉をひそめた。
「最後はボクだね。よーし頑張るぞー」
少し緊張した面持ちで飛び上がったリグルはカードを取り出した。
黒歴『ムーンライトバタフライ』
宣言と共にリグルの背中に虹色に輝く巨大な蝶の羽が広がった。
「いけないわ! みんな私の後ろに隠れて!」
その光景を見た紫は叫ぶと共に四重結界を張った。次の瞬間、虹色の蝶の羽から無数の弾幕が放たれ周囲に降り注いだ。
「くうっ……」
まるで豪雨のように降り注ぐ弾幕の衝撃に紫は顔をしかめた。後ろに隠れた四人は、ばらまかれる弾幕の光景に声を失い座り込んでいた。
「リグル! リグル! やめなさいリグル!」
紫の叫び声にリグルは驚くとスペルカードを強制的に止めた。そして、変わり果てた周囲の光景を目にし、愕然とした。
「ああ、ボクはなんてことを……」
力なく地面へと降りていくリグル。そこはもはや野原と呼べる場所ではなく、荒れ果てた荒野と化していた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
泣きながら謝るリグルに紫たちか近寄って行った。
「リグル、あなたが悪いわけじゃないわ。こんなことになってしまったのは、私の責任よ」
紫はそっとリグルの頭に手を置き撫でた。
「あなた達の力を少し過小評価していた事と、外の世界の物が与える影響を軽く考えていた、私に責任があるわ」
紫は一度深呼吸すると、みんなを見渡した。
「このことに関する出来事はハクタクに消してもらうことにするわ。それがあなた達のためにもなるから、ごめんなさいね」
紫は謝るとスキマの中へと消えていった。
四人は自分たちの考えた新スペルが無くなるのは残念だと思った。けれどそれ以上に手にした知識と力が危険なものだと身をもって体験したので、無かったことになるほうがいいと納得したのだった。
その後、四人が思いついたスペルカードは、紫から事情を聞いた慧音の手によりその歴史ごと消え去った。
いつものように開店休業状態の店の中で読書をしていた時だった。けたたましい音と共に扉が開き四人の子供が入ってきた。
「ここに、アタイがさらに強くなるものがあるのね!」
「おいしそうなのはないのかなー?」
「ここならいろいろそろってるしねー」
「ちょっとみんな、騒いだら店の人に迷惑だよ」
入ってきたのは、チルノ、ルーミア、ミステイア、リグルの四人。いつもやんちゃで騒がしい面々だった。
「いらっしゃい、何をお探しかな?」
霖之助は軽くため息をつくと、四人へと話しかけた。
「アタイが強くなるものをちょうだい」
チルノがふんぞり返るようにして霖之助を見上げながら言う。
「なにか、おもしろくてたのしいものー」
「新しい歌のアイデアを探しにきたの」
「えーと、新しいスペルカードのアイデアを探しに」
チルノに続けとばかりに残りの三人も次々に口を開く。
「落ち着いて、一人ずつ喋ってくれないか」
無駄かもしれないと思いながらも、霖之助は落ち着かせるように言った。
「あらあら、今日はずいぶんと賑やかね。ここはいつから託児所になったのかしらね」
店に女性の声が響き渡ると、天井にスキマが開き、日傘を手にした女性――隙間妖怪の八雲紫が姿を現した。
「あなたたち、新しいスペルカードのアイデアを探しにここへ来たのでしょう」
紫は微笑みを浮かべながら、四人を次々に見つめた。
霖之助はなぜ紫が四人の目的を知っているのかが気になったが、どうせスキマから覗いていたのだろうと考え納得することにした。
「なるほど、確かにここは道具屋だから、アイデアになるものもあるかもしれないね。好きなだけ見ていくといい……でも、商品は壊さないでくれよ」
霖之助は半ばあきらめた口調で言うと、読書へと戻ることにした。
「あら? 諦めが早いのね」
「どうやったとこで、彼女たちや君を止めることは僕にはできないからね」
苦笑しながら言うと読書を再開した。
「ねえあんた、何の用なのよ。アタイたちはあんたに用はないわよ」
チルノは紫を睨みながら訪ねた。
「そうねえ、面白そうだからかしら。だから私からあなたたちにプレゼントよ」
人差し指で宙をなぞるとスキマが開き、そこから本や小さな機械などが次々に流れ出てきた。
「外の世界で、マンガやゲームと呼ばれるものよ。あなたたちの新しいスペルカードのアイデアにはなるんじゃないかしら」
紫は扇子で口元を隠しながら笑みを浮かべた。
「そのかわり、できた時は私にも見せてね。ウフフフフフ……」
そう言い残し紫はスキマの中へと消えていった。四人はしばらく呆然とし立ち尽くしていたが、我に返ると目の前にあるマンガやゲームへと群がっていった。
「へぇー外の世界はこんなにもいろんな人や道具でいっぱいなんだー」
「このゲイムっていうのはなにをするのかしら」
「あ、これが使い方じゃないのかな」
「うーん、アタイの技のアイデアにはイマイチね。次ね次」
再び騒がしくなった四人の姿に霖之助は再び溜息をついた。
この賑やかさは、夜遅くになり四人が騒ぎ疲れて眠るまで続いた。
―――――数日後
四人は新型スペルを完成させ、今日はそのお披露目の日だった。
四人がよく遊ぶ野原には、チルノ、ミスティア、ルーミア、リグルの他に、大妖精と紫が居合わせていた。
「さてと、それじゃあアタイから見せてあげるわ。この最強のアタイにふさわしいスペルだからよく見ておくことね」
チルノは空へと浮かび上がると、カードを取り出し高々と掲げた。
氷剣『冷凍剣』
宣言と共にチルノの手にしたカードが氷でできた大剣へと変化する。
「いくわよ、それっ!」
手にした剣を振るうと、大気中の水分が凍りつきいくつもの弾となって飛んで行った。
「へえ、フランのレーヴァテインと似たような弾幕ね。あの子にしてはいい発想じゃないの、遠近の両方に対応できるなんてなかなかやるわね」
「チルノちゃんすごい……」
採点する紫の横で、大妖精はチルノの姿に感動しながら呟いた。
「二番手は私ね~見てなさいよ、私の新しい歌を~」
鼻歌交じりにミスティアは空へと飛んで行き、カードを掲げた。
剛歌『G・リサイタル』
ミスティアから波紋のように小型弾が広がっていき、大玉や中玉があちらこちらへとばらまかれた。だが、それ以上に強烈なものがあった。
「ボエ~~~~~~~~~~~~……」
普段のミスティアの歌からは想像できない、耳を塞ぎたくなる不快な声が発せられた。
「なるほど、この不快な声で相手の動きを鈍らせて、弾を避け辛くするのね。相手を鳥目にして夜に使ったらかなり強い技ね」
「そんなのはどうでもいいよ、それよりいくらなんでもこの声は反則だよ」
平然とする紫とは対照的に他の四人は耳を塞いでいた。
「うー、まだ声が頭の中に残ってるのだー」
少しフラフラしながら三番手のルーミアがスペルカード宣言をした。
暗闇『はどうほう』
ルーミアの周囲に闇が集まっていき雲のような塊となって纏わりつく。同時に妖力が高まっていった。
「いっけーーーっ!」
両手を前方にかざすと、広範囲へとエネルギー波が放たれた。
「ひえええっ」
「うわあ」
「なによあれ」
その光景に驚きを隠せない仲間たちを尻目にエネルギー波は空の彼方へと消えていった。
「まるで魔理沙のマスタースパークね。まあ彼女みたいに強力じゃなくて持続力もないけど、その分連射がききそうね。でも、あの子がこんな力をもっているなんて少し危険かもしれないわね」
意気揚々と戻ってくるルーミアを見詰めながら紫は眉をひそめた。
「最後はボクだね。よーし頑張るぞー」
少し緊張した面持ちで飛び上がったリグルはカードを取り出した。
黒歴『ムーンライトバタフライ』
宣言と共にリグルの背中に虹色に輝く巨大な蝶の羽が広がった。
「いけないわ! みんな私の後ろに隠れて!」
その光景を見た紫は叫ぶと共に四重結界を張った。次の瞬間、虹色の蝶の羽から無数の弾幕が放たれ周囲に降り注いだ。
「くうっ……」
まるで豪雨のように降り注ぐ弾幕の衝撃に紫は顔をしかめた。後ろに隠れた四人は、ばらまかれる弾幕の光景に声を失い座り込んでいた。
「リグル! リグル! やめなさいリグル!」
紫の叫び声にリグルは驚くとスペルカードを強制的に止めた。そして、変わり果てた周囲の光景を目にし、愕然とした。
「ああ、ボクはなんてことを……」
力なく地面へと降りていくリグル。そこはもはや野原と呼べる場所ではなく、荒れ果てた荒野と化していた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
泣きながら謝るリグルに紫たちか近寄って行った。
「リグル、あなたが悪いわけじゃないわ。こんなことになってしまったのは、私の責任よ」
紫はそっとリグルの頭に手を置き撫でた。
「あなた達の力を少し過小評価していた事と、外の世界の物が与える影響を軽く考えていた、私に責任があるわ」
紫は一度深呼吸すると、みんなを見渡した。
「このことに関する出来事はハクタクに消してもらうことにするわ。それがあなた達のためにもなるから、ごめんなさいね」
紫は謝るとスキマの中へと消えていった。
四人は自分たちの考えた新スペルが無くなるのは残念だと思った。けれどそれ以上に手にした知識と力が危険なものだと身をもって体験したので、無かったことになるほうがいいと納得したのだった。
その後、四人が思いついたスペルカードは、紫から事情を聞いた慧音の手によりその歴史ごと消え去った。
剛歌『G・リサイタル』 ネズミの駆除も可能な歌ですねw
暗闇『はどうほう』 これだけはネタが分からなかったんだよねぇ…1レスの人の感想を見る限りでは…ゾディアーク?
黒歴『ムーンライトバタフライ』 みんなー!幻想郷はいいところだー!早くおいでよー!!
R-○YPEじゃないかw
FFⅢ くらや○のくも…また懐かしいものをwww
あ、リメイクされたから、懐かしくもないのかも。
パピヨンかと思ったけど、黒歴が……と思ったらそっちかよ!
氷剣『冷凍剣』 ロマンシング・サガより、アイスソードとその最強技の冷凍剣。な、何をするキサマらー!
剛歌『G・リサイタル』 ドラえもんのジャイアン(剛田 武)の歌とそのリサイタルのこと。コンサートではないw
暗闇『はどうほう』 FFⅢのラスボス、くらやみのくもの攻撃方法。宵闇のルーミアと暗闇(くらやみ)をかけてみました。
黒歴『ムーンライトバタフライ』 ∀ガンダムより、世界を滅ぼした兵器、月光蝶のことです。月光蝶を直訳するとムーンライトバタフライ
紫が止めてなければ幻想郷が滅んでいたかもw
以上です。
この作品を読んでくれた皆様に感謝します。