私は夢を見た。
輝夜と漫才をしている夢。
輝夜がボケで、私がツッコミ。
これがなかなか客に受けているらしく、私がツッコミを入れるたびに客席に爆笑が沸き起こる。
輝夜が私をもこたんと呼び、それに対して私が輝夜をそのまま輝夜と呼ぶ。
二人のその掛け合いは、さながら夫婦漫才で。
二人の息は、なぜかぴったりと合っていた。
「……なんでやねん!」
私はそう叫んで目を覚ました。
輝夜のボケに対するツッコミだったか、それともこの異様な夢そのものに対するツッコミであったか。
どちらにせよ、妙な夢である。
私と輝夜の仲は、はっきり言って悪くはない。
なんだかんだで一番良く話すのは輝夜とだし、
手持ち無沙汰になると、特に何もなくても輝夜の元へ向かう。
二人で起こした火事を共同で消したこともあった。
だが、自分で、夢の中のとはいえ自分の漫才を評してこう言うのもなんだが、
あんな凄い漫才をできるような仲では間違いなく、ない。
あの漫才は、まるで十年単位でコンビとして苦楽を共にした漫才師のようだった。
しかし現実の私はコンビで息を合わしてお笑いをやるどころか一人で道化ることも不可能である。
輝夜もおそらく同様だ。
外を見ると、まだ日も昇っていない。
まあ、何百年、何千年も生きていればこんなこともあるだろう、と大して気に留めず再び私は横になった。
★★★
私は輝夜とデートをしていた。
もちろん、夢の話だ。
昨日と同じく、また変な夢を見たのだ。
輝夜とデート、と言う点において明らかにおかしいというのは言うまでもないが、
その舞台も異様であった。
どうも人里の一つであるようなのだが、見たこともないような石の建物がたくさん建っている。
それも、そのどれもこれもが目の眩むような高さだ。
幻想郷の人妖はたいがい浮遊能力を持っており、私もその例に漏れないのだが、
あの建物ほど高く飛んだことはこれまで一度もなかった。
そして、人がものすごく多い。
目に見える周囲一帯に、慧音のいる人里の人をすべて集めても足りるか足りないかぐらいの人数がいる。
それが、ずっと先まで続いているのだ。
さらに道の中央は柵で区切られ、そこには鉄のイノシシが走っていた。
まあイノシシという形容は意図的なもので、あれが自動車と呼ばれるものであることは知っているのだが。
これらを総合すると、どうもここは外の世界であるらしい。
慧音から、紫の話を又聞きしたそのイメージそのまんまだ。
外の世界の観察はこれぐらいにして、自分たちの服装へと目を遣る。
自分は赤い半袖の洋服に深い青のズボン――たしかこれはジーンズといったはずだ――を着ていた。
普段穿いているもんぺと比べてずいぶんと細いが、同じズボンに分類される衣服なのでそこまで違和感はなかった。
しかしジーンズが少々破れていてみっともないと思ったが、
よくよく回りを見渡してみると周りの人間はみんなそんなズボンを穿いていた。
輝夜は白い服、たしかワンピースと呼ばれるものを着ていた。
普段のこいつは黒髪ロングに和服で正に日本の美人、という感じなのに、
洋服もかなり似合っていて女として悔しい。
実を言うと少々輝夜に見惚れてしまったのだから尚更だ。
再び周囲に目を遣ると、妙に視線を感じる。
正確には輝夜への視線。
男たちからは羨望の、女たちからは嫉妬のまなざし。
現代に至っても、こいつは男どもを惹きつけているのだ。
何から何まで、腹の立つ奴。
だから思い切って、見せ付けるように輝夜に身を寄せ、腕を組んでやった。
するとどうだ、こいつは嫌がるどころか嬉しそうに頬を緩ませた、
一方私の顔は自分でも分かるほどに紅潮する。
私は輝夜に一矢報いるどころか、逆にしてやられてしまったのだった。
まあどうせ夢の中なのだからと開き直り、暫く歩いていると、
輝夜が建物のひとつを指し示した。
良く分からない英字や意味の分からないカタカナの単語が書かれ、
何かの煽り文句らしきものが添えられている看板がそこにはあった。
どうもこれは話に聞いたことのある映画館というものらしい。
これも慧音から又聞きした話だ。
簡単に言えば、動く写真を大きな壁に写したものらしい。
河童の作るテレビというものの巨大なもの、と考えれば分かりやすいそうだ。
仕組みはぜんぜん異なるものらしいが。
どうも私たちはこの映画を見るためにここに来たらしく、
二人で腕を組んだまま、その建物に入ろうとした。
しかしそこで目が覚める。
輝夜ぐらいいつでも会えるから別に残念でもなんともないが、
映画というものが見れなかったのは心残りだ。
しかし、どうして見たこともない外の世界を夢に見たのだろうか。
見たことがないのだから合っているのかどうかも分からないが、間違っているという気はしない。
まあおそらく紫か誰かの仕業だろうとさして気にも留めなかった。
その後、私はなんとなく眠れなかった。
決して逢引の夢から覚めてしまったのが残念だったわけではない。ない。本当にない。
★★★
こんな夢を見たあとだから、輝夜に戦いを挑む気にもなれず。
かといって、人里に出かける気にもなれなかった。
そんなわけで、今日はほとんど一日ごろごろしていた。
また変な夢を見るんだろうなと思って床につくと、案の定であった。
今日は輝夜と殺し合いをしていた。
輝夜は小手調べとばかりに小さな弾をばら撒くが、私は炎の一閃でそれを掻き消す。
今度は私が仕掛けるが、輝夜は皮衣でそれを打ち消す。
何のことはない、いつもの殺し合い。
まあ強いて違う点を挙げるとしたら、それがずいぶんと久しぶりであることぐらいか。
そう思っていたのだが、なにやら様子がおかしい。
輝夜の弾幕が、妙に薄い。
私の攻撃も、我ながらやけにぬるい。
そこにあるべき緊迫感が、明らかに欠けていた。
気がつけば、二人ともが笑みをこぼしていた。
それも、以前のような狂気に歪んだ笑みではない。
この撃ち合いが心から楽しく、まるでスポーツでもしているような心地だった。
現実でも、輝夜とこんなに楽しく勝負ができたら。
どれだけ幸せなことだろうか。
やがて避けきれず、私は被弾する。
すぐに受身を取り体勢を立て直したが、これ以上戦う気にはなれず、
私はそのまま仰向けに倒れた。
服が土で汚れるのも気にならない。
竹林を吹き抜ける風が、火照った身体に当たって気持ちがいい。
やがて、輝夜の土を踏む足音が聞こえてくる。
どうするのだろうと思って暫くそのまま倒れていると、輝夜はそのまま覆いかぶさってきた。
私の勝ちね、と耳元で囁き、じゃあ今日は私が、と顔を近づけ――
そこで目が覚めた。
目覚めて、しばらく私は呆けていた。
夢の中で輝夜の手がさりげなく私の太腿に触れていた、
夢ながらリアルであったその感触が忘れられない。
ここ数日、私はおかしい。
多分、この一連の夢の所為で。
輝夜と顔をあわせられない。
一度行こうとしたことはあったが、輝夜の姿を遠目に見ただけでもう赤くなって、
それ以上近づくことができなかった。
このままでは、私は輝夜一色に染められてしまうかもしれない。
現に私は、夢の中で殺し合いをしていた時の、輝夜のあの笑顔が頭から離れない。
しかし、この夢には何者かの意図を感じる。
少々思うところがあって私は昼寝をした。
★★★
昼寝のときは、思ったとおり何も夢を見なかった。
そして私の予想通りなら、今夜もまた夢を見るのだろう。
この連日の夢の状況はばらばらだが、すべて私と輝夜がいい感じになっている。
正直なところ、私はそれらの夢に対してあまり嫌悪感はないのだが、
やはり不自然な状況であることは間違いない。
なので、放っておく訳にもいかないのだ。
しかし今はまだどうすることもできないので、私はまた床につく。
そして予想通り、私は再び夢を見た。
夢の中においても、私は布団に潜っていた。
衣装は私がいつも使っている寝巻きだ。
この状況から予想はしていたのだが、やはり隣には輝夜がいた。
まさか逢い見た直後かと思ったが、輝夜も私も衣服が乱れている様子はないので、それはない。
ではいったい何なのかと思案を巡らせている私の気も知らずに、輝夜は眠っている。
思えば、私は輝夜の寝顔というものを初めて見た。
それは、意地を張っていた私の心をあっさり篭絡させるほどに愛らしく、
こういうのも存外悪くはないなという心境になった。
暫く輝夜に見惚れていると、畳を踏む足音が聞こえてくる。
永琳か、それとも慧音か。はたまたイナバの誰かか。
そもそもここはどこなのか分からないので、誰が来るかはわからない。
私は急いで輝夜から目をそらし、眼を瞑って寝た振りをする。
だが暫く眼を瞑っていると、布団が動いた。
そして何者かが布団の中へ侵入してくる。
目を薄く開けてその何者かを見ると、それは長い銀髪の童女であった。
それは、まるで私の幼いころのようで。
何か、物凄く嫌な予感がする。
頼むから、この予感を肯定する一言だけは言ってくれるな、と切に願っていたのだが、
「……かぐやママ……」
あっさりとその祈りはへし折られる。
「ん、あれ、もこママ、おきてるの?」
さらにその童女は私のことまでも母と呼ぶ。
その二つの符号が意味するものは……ひとつ……
(私と、輝夜の子供……)
私の理解を超えたものが目の前にあった。
そりゃ、夢であるのだから、どんなことがあっても変じゃないはずだが。
ものには限度というものがある。
「……ん、ちょっと目が覚めてね。さあ、私ももう寝るから、さっさと寝なさい」
「はーい」
しかし、心中とは裏腹に行動は妙に冷静であった。
傍から見れば、別段何もおかしなことは起こらずに、ただ子供を寝かしつけただけに見えるだろう。
夢だから、夢だから仕方ないと、強引に自分を納得させる。
すると意外とどうでも良くなってくる。
むしろ、今の状況が幸せにさえ感じてくるのだ。
恋人と子供と、親子三人、川の字で眠る。
そんな事に憧れた時期も、確かに私にあった。
人を捨てて、蓬莱人になったあたりからそれを失っていったけど。
まさか、こんな形でとはいえ叶うとはつゆほども思わなかった。
そうして、だんだんと私は眠りに落ちていく。
夢の中で眠りに落ちるというのがどういうことかは、いまいちよく分からないが。
しかし、何者かの声が私の眠りを妨げた。
★★★
「輝夜のことが……好きにな~る、好きにな~る」
「……なにやってんの慧音」
目を覚ますと、慧音が私の耳元でなにやらまじないの言葉らしきものを囁いていた。
「! 駄目だ、ずらかるぞ永琳!」
「おかしいわね……睡眠薬は確かに飲ませたはずなのに……」
それだけ吐き捨てると、二人は瞬く間に逃げ去ってしまった。
どうも、あの一連の夢は慧音が私の枕元であんなことを囁いていたために見たものらしい。
常日頃、慧音は私たちの殺し合いについて案じていたから理由も容易に推測できる。
しかもご丁寧に永琳の協力を得て、私を眠らせてまで。
もしかしたら夢に作用する薬も盛られていたのかもしれない。
さて、これで謎も洗脳も解けたし、輝夜のところへ行くか……
「……ってなんでやねん!」
どうやら私は、あのまじないにしっかりと洗脳されていたようだ。
今はもう、逢いたくて仕方ない。
というかもうゴールインまでのカウントダウンが始まっている気がしてなりません。ww
にやけが抑えれませんよ!
二人の子供には吹いたwww
朝からステキなモノをありがとうございました!
けーねの物凄いチンピラ臭に吹いた
で、これなんていうマッドスプリry
数日間ずっと耳元でささやいてたのか?w
と思ったら犯人はこの二人だったかw 慧音先生何してるんですかw
タネがシンプルすぎるwww
あと牛と藪医者は自重しろw
>ずらかるぞ永琳!
ずらかるぞじゃねーよ、先生wwwww