Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

親意、子知らず

2008/05/17 07:47:40
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美しいのものに見惚れる事に、理由はいらない。
ただ、遠くから眺めているだけでいい。触れる事は出来なくても、それは感性を磨き英知を授けてくれる。否、触れてはいけないのだ。畏れ、敬い、愛する。真摯であれば、きっと彼女は応えてくれる。これは欠かすことの出来ないしきたり。盲目になり切れない信奉など、しょせんは雑念に濁ったまがいものに過ぎない。私は違う。

(そう、違う……)

心の中で、鈴仙は強く頷いた。
用途の知れない雑多な器具が所狭しと並んだ、薄暗い座敷。昼間だというのに陽の光が入って来ないこの場所は、永遠亭の奥にあった。四隅の壁に灯された燭台の明かりだけが、室内をほのかに照らしている。ここは実験室だった。誰の?何の?そんな事は言うまでもない。
黒塗りの机を挟んで、彼女たちは向かい合っている。互いの視線は一方通行ではあったものの、むしろそれは望むべき状況ではあった。彼女は決して良しとはしないだろうが、鈴仙はそれもまた許容する。
机の中央を占拠する、チューブやフラスコが複雑に組み合わさった実験装置。透明な管の中をかけめぐる蛍光色の青い液体が、二人を中心に淡く神秘的な輝きを発している。神秘、彼女が聞けば苦笑する言葉だろう。しかし鈴仙にとってそれはまさに神がかった天才の所業の結晶だった。
今こうして完成を迎えようとしている新薬を観察し、生成過程を記録するのが鈴仙に与えられた仕事だった。計測器が示す数値を筆で用紙に記入しながら、しかし彼女は装置の方をほとんど見てはいなかった。
腕を組んで、伏目がちな眼差しで装置を見つめる女。この実験室の主人。師、八意 永琳。彼女の顔を、鈴仙は真正面からチラ見していた。

(違う……これは断じて、視姦じゃない)

透き通るような白い肌と、頬から顎の先にかけて鋭利な曲線を描く輪郭。額を陰らせるきめ細かな銀髪。その全てが端正に引き立った知性溢れる師の顔を目に焼き付けながら、頭の中で自身に囁く。真摯であれ。

(あぁ。今日もステキです、師匠。邪な情念が洗われては溢れてきてさながら無限ループするほどに……)

二人きりの部屋。誰も邪魔する者のいない静寂に満ちた時間。気を緩ませれば鼻血が垂れてきそうな自分を流石にどうかとも思うが、永琳に罵られるのならばそれもまた一興とさえ感じていた。
ぽたりと、用紙の上に一滴の雫が落ちる。鈴仙は慌てて鼻の下を拭うが、指には何も付着しない。見れば、紙の端に丸々と染み込んだのは手に持った筆から垂れた墨だった。

「―――ウドンゲ」

師の呼びかけに鈴仙はびくりと肩を震わせ、そのせいで二滴目の墨が今度は用紙の中央に垂れる。冷めた目でこちらを見据える永琳と、恐る恐る視線を交わした。

「記録が台無しね」

「す、すみません師匠……」

「余所見しながら書いたんじゃ、初めから使い物にならないでしょうけど」

「ご、ごめんなさい師匠……」

「投与実験、貴女に受けてもらおうかしら。毒薬だけど」

「も、申し訳ありませんでした師匠……」

「……謝り方の引き出しだけは沢山あるのね」

皮肉を言われるたびに身体を縮こませる鈴仙に対し、眉間にシワを寄せつつも永琳は仕方なさげに溜息をこぼした。

「何に見惚れてたかは知らないけど、次からはもっと集中して……」

師が説教を言い終えようとしていた、その時だった。
部屋の外、廊下の遥か向こうからドタドタと響いてくる足音。それを聞いた鈴仙は内心で舌打ちをする。
出入り口の障子がぴしゃりと音を立てて開かれ、無遠慮に中へと足を踏み入れてきたのは、

「―――姫」

「永琳、こんなところにいたのね!」

黒髪をたなびかせながら、輝夜はいそいそと永琳の元へ歩み寄った。互いの腕と腕を絡ませて、引っ張るように身を寄せる。呆気にとられた表情の永琳に向けて、永遠亭の主人である少女は甘えるような声をあげた。

「酷いのよ、妹紅のやつ!また人を燃やそうとして!」

「あぁ、そうなの」

よく見れば、輝夜の髪や衣服は煤やら焦げ跡やらでところどころ汚れている。かといってあの不死身の人間から敗走して薬師を尋ねてきたにしては、彼女自身に負傷した様子は見られなかった。

「ムカついて消し炭にしてやったから、再生する前に庭の土に埋めようと思うの。手伝って永琳!」

「それはまた容赦のよの字も知らないわねぇ」

キャッチボールでもしたがる子供のようにはしゃぐ姫に対し、永琳は割と穏やかな苦笑を浮かべる。お互い不老不死だからだろうか、本人たちにすればそれほど物騒な話はしていないつもりらしい。何となく疎外感を感じて、鈴仙は唇を尖らせた。

「でもね、姫様。今は大事な実験中なの。藤原の娘ならまた相手してあげればいいじゃない」

輝夜の頭にぽんぽんと掌を触れさせ、永琳は彼女をなだめる。

「嫌よ!実験なんて、イナバに適当にやらせておけばいいじゃない」

(――――――っ!)

全身が総毛立つほどの震えが、忍耐のタガを緩ませる。
激情にまかせて、鈴仙はだん、と机に両腕を突いてその上に身を乗り出した。その揺れで実験装置が傾きかけるが、それには構わず。音に反応してこちらを振り向く輝夜―――と、永琳―――をきつく睨みつける。

「師匠と私は今忙しいんです!子供の喧嘩みたいな事は、外でやってください」

「…………」

唾を飛ばして叫ぶ鈴仙を、輝夜は平然と見返していた。彼女の落ち着き払った態度に圧されて言葉に詰まり、沈黙のなかで鈴仙はようやく自分のした事を理解する。輝夜―――月の貴族にして彼女の主人は自分の前髪を払うような仕草をして、一瞬だけその表情を隠した。

「誰に向かって言ったの?あなた」

永琳に組ませていた腕をあっさりと解き、輝夜は一歩進み出る。机越しに対峙する彼女の雰囲気に不安を感じて、鈴仙は乗り出していた身体を引っ込める。ただし、目だけは逸らさずに。心底つまらなそうな双眸を湛える輝夜の口の端が、いやらしく歪められていく。

「まさか兎に手を噛まれるなんて思わなかったわ。許してあげるから外で遊んでなさい?」

犬や猫を相手にするように、しっしっと掌を振ってみせる輝夜。それを受けて、とても単純な事実を心で理解する。姫は私が嫌いなのだ。この不遜で理不尽な態度も、こうやって私と師匠の仲を裂くのも、全ては私に対する嫌悪がゆえ。貴女が私を嫌うのならば、私もまた。拳を握り込む力に、一層の力が注がれる。私の主人?わかっている。わかっているうえで、鈴仙は口を開いた。

「……邪魔だって言ってるの」

「ん?」

「師匠がいないと何も出来ない道楽女は、邪魔だって言ってるの!」

輝夜の表情が、みるみるうちに怒気に彩られる。その変化に何を思う間もなく、彼女の腕が振り上げられた。その平手が鈴仙の頬を勢いよく打ち、かわいた音が室内に響く。まっさきに反応したのは、傍観していた永琳だった。焦りを含んだ声音で、

「姫っ!」

叱られた。馬鹿な女め。
ビンタのせいで視界はぐらついたものの、鈴仙の手は迷わずそれを掴みとる。二人の間に鎮座する実験装置に組み込まれた、コポコポと泡立つ青い液体に満たされた丸底フラスコ。がしゃりと崩れる装置を気にも留めず無理矢理外したそれを振りかぶり、中の液体―――どんな大妖怪でも三秒で息絶える、新作の毒薬―――が輝夜の顔に降りかかった。

「――――――」

輝夜はほんの一瞬、呆気にとられたように沈黙した。勝った、と胸中でほくそ笑む鈴仙のネクタイが突如としてふん掴まれ、頭ごと机のほぼ中央まで引っ張られる。輝夜の手を払い除けて、二人は一寸の隙間も無いほど顔を突きつけ合ったまま視線を衝突させた。眉間が割れそうなほどにきつく目を吊り上げた輝夜の黒い瞳の奥に、まったく似通った表情を浮かべる自分の虚像が映っている。
鈴仙と輝夜は―――忌々しくも―――揃えて口を開いた。

「大っっっ嫌いっ!」

視界の端がかろうじて捉えていた、愛しき師。永琳は彼女たちに割って入るでもなく、やれやれとかぶりを振っていた。





その日から、永遠亭は戦争状態へと突入した。
といっても、その静けさは以前と変わらず何らかの破壊活動が行われているわけではない。鈴仙と輝夜が屋敷の中で遭遇する事はほとんどなく、お互い部屋に篭りきりでいる。それでも食事や用事があって部屋を出る事は多々あり、すれ違った兎たちや外からの来客にはいたって普通の対応をしていた。何事もなく過ぎていくように見える日々の裏で、戦いは繰り広げられていた。
ある日、鈴仙が廊下を歩いていると、

「こ、これは……!」

目に見えるいたる場所に仕掛けられた、数々の罠。落とし穴や吊り天井、竹ヤリにトラバサミ。そのどれもがまるで子供相手の嫌がらせのように雑に設えられていて、気付けば引っ掛かる者はまずいないだろう。トリモチに捕まってもがいている幼稚な兎を見下ろしながら、鈴仙は頬をひくつかせていた。
一方。ある日、輝夜が食卓につくと、

「やってくれたわね……!」

配膳された料理のあらゆる部分に、毒とおぼしき薬品が混入していた。醤油の瓶には緑色の液体が、白身魚の刺身の下に透けて見える紫の物体、茶碗一杯によそわれた錠剤やカプセル。ついでに食器の縁はどれも妙にてかりを帯びている。つまみ食いをしたせいで泡を吹いて昏倒する兎を半眼で見やりながら、輝夜は手に握った箸をへし折った。
水面下での戦いは次第に卑劣さと悪質さを増していき、永遠亭の中には常に不穏な空気が蔓延するようになった。以前、鈴仙と輝夜が不運にも遭遇してしまった場面に居合わせたという兎は、精神的ショックが原因で今も昏睡している。兎たちの被害は甚大だ。偵察にも限界が生じてきた。次は私の番だ。この報告書が読まれている時、きっと既に私は……

「―――なるほど」

汚い字で書かれた数枚の書類で顔を仰ぎながら、てゐはうんうんと頷いた。

「私が神社から賽銭箱かついで逃げたり、魔法の森で剥製にされそうになって逃げたり、冥界で桜の枝を折って素直に謝りつつ逃げたり、鈴蘭をごっそり摘み取って逃げたり、山の上に生えてた柱に落書きして逃げたり、まだ見ぬ地底に思いを馳せつつ逃げたりしている間に、そんな事があったのね」

「……貴女も大概になさいな、てゐ」

布団に寝かされうなされる数匹の兎を看病しながら、呆れた口調で永琳は言う。
彼女たちがいるのは、てゐを含めた地上の兎たちの寝床として使われている大広間だった。てゐには個室が与えられているものの、おしくら饅頭のように身体を寄せ合って寝るのは嫌いでない為、彼女はいつもここに居座っている。ただし今は部屋の住人のほとんどは外の竹林に疎開してしまい、広々とした室内は床に伏せたわずかな兎たちの病棟となっていた。なので、永琳がこの場所にいるのも珍しいといえば珍しい。
てゐは書類を丸めて適当に投げ捨てると、座ったまま永琳の方へと身体を引き摺った。

「私がいたら絶対その場で賭場開いて大儲け出来たんですけど……」

「それは残念だったわね」

「あー二人が心配だわー」

「心にも姿にも表れてない事は言うものじゃないわ」

「……それにしたって、師匠も隅に置けないですよねぇ」

「は?」

不思議そうに振り返る永琳の背中を肘で小突き、てゐは顔をにやつかせる。

「師匠を巡って言い争う二人の女。やめて私の為に争わないでーってなもんなじゃいですか。愛ですよ愛。きゃー」

ごろごろと転がりながら茶化すように嬌声を上げる。永琳は困ったような笑みを浮かべると、再び患者達の方に顔を向けてしまった。

「……そんなものじゃないわ」

兎の額に載せられた濡れタオルを手に取り、冷水の浸った洗面器に付ける。てゐは転がるのをぴたりと止めて、仰向けの姿勢のまま逆さの視界で師の丸まった背中を見据えた。

「師匠は卑怯ですね」

「…………」

竹林の夜景が望む静寂の中で、水の滴る音が何とも密やかめいて聞こえる。頭に血が上るの感じながらも、辛くなるまでてゐはその姿勢を保とうと思った。外から入り込んだひんやりとした夜風が顎の先を掠める。

「師匠がそんな煮え切らない態度だから、鈴仙ちゃんと姫様はあんなに苛立つ羽目になったんじゃないですか?」

「…………」

「それなのに今も二人を放ってこんな所で兎のお守り。鈴仙ちゃん達が可愛そうです」

白くしなやかな腕でタオルを絞り、広げたそれを優しく患者の額に載せる、永琳。うなされていた兎たちは、いつの間にか安らかな寝息をたてていた。あの二人はどうしているだろうか。沈黙のなか、てゐは未だいがみ合い、部屋に篭りきりでいる少女達の事を思う。少なくともこの兎たちのような呑気な寝顔ではいないだろう。
恐れている。きっと彼女たちは孤独に震えている。だからこの女を求めているんだ。手拭を握り締め、背中を向けたまま永琳はようやく言葉を紡いだ。

「そういうのじゃないのよ。私にとってあの娘たちは……」

「…………」

「……まぁ」

嘆息とともに、永琳はてゐへと振り返る。

「もうそろそろ仲直りしてもらわないとならないわね。実験の続きもしたいし」

何かをねだるような含みのある笑みを湛え、師は首を傾げてみせた。
まったくもって、宇宙人の考えというものはわからない。頼られているのか、利用されようとしているのか。きっと一生理解できないのだろう。それでも、私にはわかる事がある。あの二人が抱く、永琳への思慕。だから、たまには騙されたっていいと、思う事にする。
てゐは再びごろりとうつ伏せになり、帽子の唾のように耳をつまんで片目を隠した。

「……いい方法がありますけど、乗りますか?師匠」






永遠亭の庭が一望できる吹き抜けの廊下の途中で、鈴仙はぎしりと重く軋みを立てて踏みとどまった。
何があったわけでもない。大した事では決してない。歩き去ってしまっても良かったのというのに、彼女はそこに足を揃えて屹立した。
平然としていた自身の表情が、みるみるうちに険しくなるのを感じる。しかし、それは相手も同じだ。向かい合って廊下を塞いでいる輝夜に、しかし意地でも言葉など掛けてやるものかとねめつける。蓬莱の姫の目はただ一言を物語っていた。

(邪魔よ)

鈴仙は唐突に、廊下の右側にさっと身体を逸らした。と同時に、輝夜もまた左斜め寄りに前方へと突き進もうとする。即ち、鈴仙にとっての右側へ。ぶつかりそうになって二人は咄嗟に顔を引き、彼女たちは更に間近で対峙する事となった。

「…………」

「…………」

無言のまま、鈴仙は姿勢をそのままに左側へとスライドする。ほぼ同じタイミングで、輝夜も同じ方向へと移動した。みたび、二人は向かい合う。段々と増してくる苛立ちに負けて鈴仙が口を開こうとした、その時だった。

「鈴仙ちゃーん、姫様ー!」

どたどたと(体格の為かでそこまでうるさくはないものの)廊下を駆けて、押し退けるように二人の間に割って入ってきたのは、何時からか姿を見せずにいた妖怪兎の少女だった。呆気にとられながら、鈴仙は少女へと声を掛ける。

「てゐ……?」

「どうしたのよ……?」

輝夜もまた怪訝な顔をし、戸惑うような声を上げる。てゐは二人を見回して、息を切らした様子もなく嘆くように言葉を紡いだ。

「師匠が……」

誰かが―――あるいは自分が―――ごくりと息を呑む。

「師匠がさらわれちゃったの!」





「はーはっはっはっ」

「きゃー。助けてー」

大げさな笑い声と気の抜けた悲鳴を聞いて、鈴仙と輝夜は盛大にずっこけた。
迷いの竹林から少々離れた距離にある小高い丘の上、欠けた月の掲げられた星空を背景に二人の人影が立っている。
長い白髪をたなびかせて、両手を腰に当てるようにポケットに突っ込んで高笑いする少女。不老不死の人間、輝夜の宿敵。その名前を鈴仙は胸中で呟いた。

(藤原 妹紅……消し炭から元に戻ったんだ)

が、そちらには対して関心を示さず、妹紅の隣に立つもう一方の人影を鈴仙は見据えた。拘束されたように両腕を背中に回して、そらとぼけた悲鳴を上げる……

「……永琳」

むっと横を睨むと、早々に起き上がった輝夜が理解不可能といった視線を丘の上の二人に向けている。鈴仙もまた立ち上がり袖についた葉を払っていると、遠く―――妹紅たちとは正反対の離れた場所から声が聞こえた。てゐだ。

「何てこと!師匠があんな目に遭ってしまうなんてウサ!」

「ウサって……」

何処から取り出したのかハンカチを目に当てながら、てゐはわざとらしく泣き崩れた。半眼でそれを見下ろす。

「どう考えてもあんたの差し金よね、これって……」

「あぁ、悲しみのあまり鈴仙ちゃんの指摘がまったく聞こえないウサ。まさか姫様に勝てないと悟った不老不死の人間が、師匠に狙いを定めたなんて……」

「悟っちゃいないわよ!」

激昂して叫びながら、妹紅は永琳の腕を引き寄せてその首に手を掛けた。

「……ただし、この女に狙いを定めたってのは間違ってないけどね」

「どういう事よ、妹紅!?」

妹紅の言葉を受けた輝夜が、肩をわななかせて一歩前に出る。普段から食って掛かられているうえ、永琳を乱雑に扱う妹紅に対して彼女は怒りを露にしていた。そして、苛立ちを覚えるのは鈴仙も同様だった。輝夜に張り合うように、彼女もまた進み出る。

「し、師匠を放してください!」

「口で言ってわかる仲じゃないでしょ?あんたも、あんたも」

鼻で笑ってみせる、妹紅。

「もとはといえば、蓬莱の薬を作ったのはこの女だそうじゃない。あんたとの決着は、こいつを屠ってからつける事に決めたわ」

「……姫、ウドンゲ」

妹紅に拘束され不安定な姿勢になりながら、永琳は二人の方へ首を向けた。何故か後光が差してきそうなほど穏やかな笑顔を浮かべて、

「このままでは私は殺されてしまうわ。二人で、協力して、この悪い妹紅を退治して頂戴」

「……永琳、昔からベタなお芝居が下手だったわ」

「とらわれのヒロインを完全に履き違えてます、師匠……」

うんざりと呻く二人。鈴仙は横に立つ輝夜の顔をちらりと覗きこみ、それに対して相手から怪訝な表情を返される。
二人で、協力?ようは仲直りでもさせようという魂胆だろう。そんな事、誰がしてやるものか。いくら師を救う為であっても、このわがまま女と連携を取るつもりなどさらさらない。妹紅も妹紅だ、こんな三文芝居に付き合って……

(妹紅……彼女が姫様に恨みを抱いているのは、紛れもない事実)

姫との共同戦線を張るなど、それこそ三文芝居だ。そして妹紅と戦う輝夜を背後から討てば、あるいは莫大なおひねりが得られるかも知れない。

(いける……不老不死の女を利用して、姫様を亡き者にする!)

胸の内に宿る確信と共に、鈴仙は輝夜に向けてにやりと笑いかけた。てゐに習い、反吐が出るほどの欺瞞を信頼という形に捏ね上げて。見つめられた月の姫が、諦めの境地に達したかのような親しげな苦笑を浮かべる。

「……しょうがないわね。鈴仙、一時休戦よ」

「はい。師匠を助けましょう、姫様」

頷き合う二人。その腕と腕を肘の辺りでがしりと組ませて、彼女たちは揃って丘の上へと顔を向けた。あくまで真っ直ぐな敵意の視線に見据えられて、しかしそれをまるで待っていたとばかりに妹紅はにんまりと微笑む。彼女は捕らえていた永琳をあっさりと横へ押しやり、

「始めましょうか、弾幕ごっこ」

その背後から、目を焼くほどの光が立ち上った。夜景を覆い隠すほどの巨大な炎が、聖者を礼賛する群集のように不死の少女を囲んで燃えさかる。それは丘を優に越えるほどの幅を有する一対の翼だった。大仰な動作で首をもたげる火の鳥が両翼を翻らせると、その正面に立つ少女の身体がふっと浮き上がる。その腕を鈴仙たちに向けて振り下ろし、妹紅は高らかに宣言した。

「パゼストバイフェニックス!」

瞬間、丘の全域を無数の火の粉が覆い尽くした。
永遠亭の住人として、輝夜に仇なす敵の手段はあらかじめ心得ている。が、その中でもこのスペルカードはもっとも厄介な攻撃だった。鳥形の炎に包まれ護られた妹紅には如何なる者の弾幕も届かず、カードの発動時間が経過するのを待つほか、彼女の弾幕を突破する方法はない。それは横にいる輝夜の方がよく知っている筈だ。

(この機に乗じて、本気で殺しにきた……私は巻き添え!?)

輝夜を謀殺する前に自分が焼殺させられては元も子もない。周囲に蔓延する高熱の飛沫のせいだけでなく、鈴仙は汗を滴らせた。
上空に浮かび上がった火の鳥が、鈴仙たちへと狙いを定めるように頭を向ける。威嚇するように翼を掲げると共に、火の鳥はこちらへ目掛けて降下を始めた。

(轢かれる……!)

咄嗟に真横へと跳ぼうとした鈴仙の身体が、がくりと引き寄せられる。振り向けば、先ほどから組まれたままの腕に力を込めて解けないよう押さえ込む、輝夜の微笑と眼が合った。嫌な予感と共に、尋ねる。

「姫様……離してくれません?」

「私は、灰からでも蘇る事ができるけど」

「……まさか」

「貴女はどうかしらね、イナバ?」

やられた。苦渋に顔を歪ませて、鈴仙は自分でもわからない何かを叫ぶ。大地を抉り草木を焦がす轟音と燃えさかる怪鳥の咆哮が、彼女の悲鳴を掻き消した。





黒く煤けた傷痕を残す、もはや丘とは呼べなくなった焼け野原に、妹紅は降り立った。

「……やりすぎた?」

両手をポケットに突っ込んだまま、少女はきょろきょろと辺りを見回す。頼りとなる光源が月明かりのほか無いせいか、非常に見辛そうにしていた。

「あの宇宙兎も燃やしてしまったか……しかし、輝夜を抹殺する為には仕方なかったしまぁいいや」

さらっと非道な事を呟きながら、妹紅は更に遠くを眺めるように首を伸ばす。

「あの薬師は……ちゃんと避難したみたいだな」

「それを聞いて安心したわ」

足元―――白髪の少女が立つ灰燼の山の真下から、鈴仙は声を掛けた。妹紅がはっとして見下ろすよりも早く、叫ぶ。

「マインドエクスプロージョン!」

真上へと放たれた銃弾型の弾幕が、地面を貫通して妹紅の顎の下へと突き刺さる。着弾と同時に赤く丸い爆炎が発生し、その直撃を受けた少女の身体が宙へと舞い上がった。地面に衝突して一度大きくバウンドし、糸の切れた人形のようにだらりと焼け跡に転がる。白目をむいて時折ぴくぴくと震える妹紅の意識が完全に断たれているのを確認して、鈴仙は灰燼の中からのそりと這い出た。灰まみれのブレザーを脱ぎ捨てて、ついでに頭をぶんぶんと振り煤を払う。

(いくら不老不死だって……ジョーを強打して脳を揺らしてやれば、死んで即蘇生される事なく気絶させられる)

顔の前に垂れた耳を手で除けながら、鈴仙は勝利の予感を噛みしめた。

(只のチャージショットでさえ、やれる。あの女を……)

「―――イナバ、危ない!」

予想だにしない声の聞こえた方向へ振り返る。刹那、視界いっぱいに閃光が広がった。

「ブディストダイアモンド!」

離れた場所に悠然と構える、黒髪の少女。彼女を起点にあらゆる方向へ伸びる純白の光線群のうち、こちらへと向かってくるその何本かに鈴仙は意識を集中した。タイミングを見計らって、彼女もまたスペルカードを発動する。

「月面波紋(ルナウェーブ)!」

鈴仙を護るように円を描いて展開する、無数の小型弾。それら全てが一斉に射出され、輝夜の光線と真っ向からぶつかり合い相殺……

(……しない、押し負ける!?)

下手に横に避ければ他の光線群の餌食になる。弾幕の衝突により多少その威力を落とした正面の光線から、鈴仙は咄嗟に屈んで身をかわした。耳の先端がちりちりと焼けるのを苛立たしく思いながら、四方八方から轟く破壊音が止むのを待つ。
弾幕が完全に途切れるのを見届けて、鈴仙は立ち上がった。睨みつける先、所々焼け焦げた衣装の裾を引き摺りながら、こちらへと歩み寄ってる輝夜へ問いかける。

「さっき、危ないって言いましたよね……?」

「えぇ。下手に避けると一思いに死ねないから危ないわよっていう意味」

「……お優しいことで、ご主人様」

口の端を引きつかせながら述べた皮肉を意にも介さず、輝夜は顔一杯に嘲りを浮かべた。

「あんな弾幕も満足に防げないなんて、ずいぶんと脆弱な兎なのね」

「加減してさしあげたんです」

「本当に?」

念を押してくる輝夜に、鈴仙は言葉を濁す。加減をしたのも事実だが、その程度を見誤ったのもまた事実。蓬莱の姫の力は予想以上に強大であり、なおかつ未だ本気を出してはいないであろう事は明白だった。

「貴女は弱い」

「…………」

「私よりも弱い貴女を、私より永琳に近いところにいさせるわけにはいかないの」

「それは……不老不死だからですか?師匠や、姫様が」

「そうよ」

彼女はもう笑ってはいなかった。むしろその表情には諭すような慈悲の念が込められている。ゆっくりと腕を掲げ、鈴仙へと向けられた掌からは光の波動が迸った。

「私なら永琳と永遠に生きていける。寿命のある貴女じゃ、彼女とは決して相容れないのよ」

「そんなの……!」

輝夜の口上に思わず反論してしまう。もう少し相手の油断を誘いたかったが、仕方が無い。
自身の赤い双眸に神経を集中して、鈴仙は輝夜の瞳を覗き込んだ。その波長を狂わせる事で彼女の体感時間を停止させ、その隙を突いて鈴仙は相手の背後へ回り込む。銃を象った指先を輝夜の後頭部に向けて、口早に叫んだ。

「生神停止(マインドストッパー)!」

幻視に惑わされ詠唱すら聞こえていない筈の輝夜めがけて、白い弾丸が放たれる。外れるはずのない距離、弾速、精度。しかし鈴仙はその一撃に微塵の確信も抱けなかった。弾丸の先端が届くよりも早く、輝夜が動く。わずかな所作で身をよじったかと思えば、なびく黒髪の端を掠めて弾丸は何処かへと消えていった。輝夜の動きに追随するように、掲げられたままの腕が再び鈴仙へと狙いを定める。

「ライフスプリングインフィニティ!」

輝夜がスペルを唱えるよりも早く、鈴仙は動いていた。相手の実力を見誤っていた先刻とは違う。輝夜を中心に展開される光線で編まれた幾何学模様、その隙間に身体を滑り込ませ、鈴仙は彼女との距離を詰めるべく疾駆した。

「もとはといえば、貴女が師匠を巻き込んだんじゃない!」

途切れては紡がれる光線をかいくぐる。死角から跳んできた弾幕が、シャツの袖をわずかに焼いた。

「師匠が不老不死になったのも、逆賊の汚名を着せられたのも、竹林の奥でコソコソ暮らす事になったのも……!」

「―――そうね。全て私の責任だわ」

光熱と轟音の真っ只中で、輝夜の言葉はやけに小さく、しかし凛と響いた。

「死を恐れて仲間を見捨てた、臆病な兎を保護してやる羽目にもならなかったでしょうね」

「…………っ!」

その姿を間近に捉える。激情のままに手刀を振りかぶり突進する鈴仙を迎え撃つように、輝夜は懐から何かを取り出した。虹色に輝く実をつける、蓬莱の玉の枝。その枝分かれした部分と鈴仙の手刀とがぶつかり合い、力の均衡を生む。

「私と貴女は似てる……」

腕に込めた力はそのままに、側頭部めがけて蹴り上げられた鈴仙の脚を、輝夜は空いている腕の肘で受け止める。

「口惜しいけど認めるわ。あるべき場所での生活を嫌って逃げ出した、卑怯者同士」

「そんな私に、師匠は手を差し伸べてくれたわ!恩人に尽くす事を貴女に邪魔される言われはない!」

互いの均衡を利用して、二人は跳ねるように後退する。輝夜の弾幕はいつの間にか止んでいた。再び背後を取るべく、鈴仙は輝夜と距離を保ったまま円を描くように駆け出す。視線を繋ぎとめるように、輝夜もまたこちらをおって身体を向き直らせた。

「えぇ、永琳は私を助けてくれた。だから私は、彼女の優しさに応えなければならない。永久を以って、彼女の愛を全て受け入れなければならない」

走りながら、鈴仙は自身の通過した軌跡に沿って次々に弾丸を浮かべていく。中央へ収束するように射出された弾幕を、輝夜は手に持った枝の一払いで全て叩き落してみせた。

「それが……私が私自身に科した、永琳への贖罪!」

「罰を受けるような心がけで、師匠の優しさに応える事なんて……!」

出来ない。息が切れて続かなかった言葉の端を、意中で紡いで。
鈴仙は大きく跳躍した。紅い瞳を見開いて、跳びかかる先にいる相手を見据える。幻視を食らう事を予期してか、輝夜は服の袖でその視界を覆い隠した。が、初めから狂気の瞳を用いるつもりなどない。全身の精根を脚力へと注ぎ、輝夜の口がスペルの詠唱を紡ぐより早く、彼女に掴みかかる。そのまま二人は地面に横転し、鈴仙が跨るような体勢で組み合った。
土にまみれただれた黒髪をそのままに、輝夜が呻く。

「どうせ、永琳は貴女を月への諜報手段としか見てないわ……!」

「違う」

息を切らせながらも、威勢だけは失う事のない声音で鈴仙は断定した。

「師匠が私に向けてくれた笑顔は、決して幻視じゃない。信じて……信じきってみせる」

輝夜はぽかん、としばらく口を開いたままにしていた。そして、我慢できずといったように噴き出す。

「……なるほどね」

押さえつけていた輝夜の両肩に、不意にに力が込められる。それに応えるように、鈴仙もまた全体重をかけて彼女に対抗した。
二人を中心に、ぽつり、ぽつりと無数の弾幕が浮かび上がっていく。湧き上がる激情を代弁するかのように、空気がピリピリと張りつめだした。

「貴女の覚悟はわかった。だけど、譲るわけにはいかないのよ……」

「私だって、負けない……」

螺旋を描いて展開する、白い弾丸。虹色に輝く宝石のような光弾。それら全てが一斉に動き出し、激突するのと重なるように、二人はまったく同じ言葉を叫んでいた。

「この気持ちだけは!」






「やってるわね、二人とも」

近づく事さえ叶いそうにない弾幕の奔流を、遠巻きに眺めながら永琳は呟いた。
丘を中心に広がる焼け野原から幾分か離れた、竹林の陰。竹のひとつに背中を預け平然と弾幕勝負を観戦する師の隣に腰を下ろしたまま、てゐは溜息をつく。

「あーぁ」

見つめる先は永琳と同じ、盛大な喧嘩に明け暮れる二人の少女。

「巨悪・共闘・友情の三連コンボ『復活のフュージョン!!輝夜と鈴仙』作戦が台無しだわ」

笹の葉をくるくると弄びながら、てゐは誰にともなく毒つく。

「二人ともいつまでやってるつもりかしら……」

「良いのよ、いつまでもやっていれば」

「え?」

てゐは疑問符と共に永琳を見上げる。師の表情はあくまで穏やかで、決して無感動に少女たちを眺めてはいなかった。

「部屋の中に閉じこもって、鬱憤を溜め込んでいたからいけないのよ。弾幕ごっこでも何でもいいけれど、ああやって衝突して、お互いの感情を吐露し合えばわかるわ。愛情の背比べなんて無意味だって事が」

彼方を見据えるその瞳の奥は、夜空の下で繰り広げられる激闘の光も、音も、全てを包み込んでしまいそうなほど底知れない。しかし、それ対しててゐが抱いた感慨は畏怖の類ではなかった。

「そして気付くの。譲る事の出来ない純粋な気持ちは、自分も相手も等しく持っているものなんだって」

「……自己完結しろって事ですか?師匠はどちらの気持ちにも応えられない?」

懇願するように、てゐは問い詰めた。あの大規模な弾幕は、鈴仙や輝夜の想いの大きさを象徴している。彼女らの友人を気取るつもりはないものの、いつまでも眺めているのは気が咎めた。それを受け入れるだけの器量を持ちながら、永琳はそれをしないのか。
彼女はやんわりと苦笑を浮かべる。

「違うのよ」

「……またそれですか?」

「言葉にするのは難しいけれど、それでも私は確かに彼女たちを愛しているわ。たった一人にしか向けられない愛なんて、悲し過ぎるから。誰にも等しく、精一杯気持ちを注いでいるつもりよ」

言いながら、永琳はこちらを見下ろした。

「もちろん、貴女にもね。てゐ」

「…………っ」

その眼差しが急に気恥ずかしく思えて、てゐはさりげなく顔を俯かせ視線を逸らした。永琳がくすりと笑ったが、仕方が無い。

「いずれきっと、全てはあるべき姿へと落ち着くわ。だから私は見守っている。姉妹みたいに仲の悪い、彼女たちを」

初めて会ったその時から、てゐは彼女の事を理解できないだろうという予感があった。その理由に、おぼろげながら気付く。彼女は、海だ。この幻想郷にはない海を、自分に理解できるはずがない。遥か昔に忘れてしまったはずの心地良さを、彼女は与えてくれる。

「そして、全部終わったら……少しだけ叱ってあげないとね」

弾幕の爆砕音は、もうしばらく止みそうにはなかった。






「えいりーん!」

「しーしょおー!」

重なるように響いた二つの声に呼び止められ、永琳は振り返った。
木漏れ日のあたる永遠亭の渡り廊下を競い合うようにどたどたと走ってきた、少女たちと向かい合う。。

「どうしたの、二人とも?」

ぜぇぜぇと肩を揺らす二人の息が整うのを待って、永琳は微笑みかけた。先に顔を上げたのは、耳を揺らめかせる玉兎の少女。

「あの、明日お暇じゃありませんか?実は、」

「兎たちを連れてピクニックに行こうと思うの。すごく綺麗な場所があるって聞いたから」

鈴仙の言葉も身体も遮って、輝夜が一歩進み出る。両手を胸の前で合わせながら、

「来てくれるでしょう、永琳?」

「あー、私がお誘いするって言ったじゃないですか!」

輝夜の肩をぐいと引き寄せ、鈴仙は獣のように歯を見せて相手を威嚇する。それを受け流すように輝夜は掌ををぶらぶらと振り鼻で笑った。

「貴女の喋り方が回りくどいのよ。用件は簡潔に、おわかり?」

「礼節を欠いた態度でお願いする方が、よっぽど迷惑ですよ!お姫様のくせにそんな事もわからないんですか?」

「くせにって何よ?この下っ端ヘタレ兎!」

「盆栽警備員!」

「はぁ!?」

「はぁ!?」

いつの間にか向かい合い、顔を間近に寄せてにらみ合う二人に、永琳は苦笑を浮かべながら近寄っていく。

「こらこら、貴女たち。喧嘩しないの……」

全てはあるべき姿に帰る。
その先にあるのが喪失であっても。永久に続くものなどない。だからといって、失う事を恐れてはいけない。
望むがままに愛すればいい。自由奔放に泣き、笑う幼い少女たちを。
たったひとつだけ、決して消える事のない思い出の中に、彼女たちは永遠に生き続けるのだから。
竹林の彼方から吹くそよ風が前髪を揺らし、永琳は手をかざしてその風を遮った。


「もごもご(噛ませ犬以下の扱いってこういうのを言うのよね)」
「そうだな。不老不死とはいえ顎の骨の治癒は遅いようだ」


長くてまどろっこしいですけど、要するに、こう、そんな話です。
永遠亭組って何考えてるかわからないんで筆が進まない事進まない事。
本当はもっとふざけた話にしたかったんです。旧題「人造鈴仙マカロニゲイン」がどうしてこんな事に……
転寝
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
旧題から想像するものと本編のギャップがすごそうだ

皆永琳が大好きなんだなぁ

2.名前が無い程度の能力削除
これは視姦じゃないとか確認する時点で、鈴仙ちゃんは邪ま兎です。

そういう人(兎)のことをムッツリっていうんですよね。

その視線に永琳が気づいていて、その上で何に見とれていたのか知らないけど、なんて言っていたのだとしたら!

これはとんでもない永琳ですよ・・・!

いや、ごめんなさい。普通にアガペ溢れるいい親意永琳でした。