全然探偵ものではありません。
あと、この文は大幅にパロディというかオマージュというかパクリで構成されています。
そういうのが苦手な方は戻っていただけると幸いです。
「治安が悪そうなところね・・・地図見てもごちゃごちゃで何がどこにあるのかもわからないし」
不安げな足取りと顔を気取られぬように地図を見ながらアリス・マーガトロイドはひとりごちる。
霧雨魔理沙がいなくなってからもう3ヶ月も経った。幻想郷ほぼ全土を探し回ったが一向に手がかりは掴めず、
博麗の巫女も何かと忙しいのか何度訪ねても神社はもぬけの殻だった。焦燥に駆られた彼女がすこしでも
可能性のある所をと人間の里の再探索を始めたところに、道端で将棋を指している老人にある情報を聞いたのだ。
「人探し?金はあるのか?ならこの先の探偵事務所に頼むといい。妙なところだが腕は確かだ・・・」
話によると、このあたりに人探しを得意とする興信所があるらしいのだ。藁をもすがる思いで見つけた
耳寄りな情報に気持ちは少し浮き足立った。と同時に彼女の中の憂鬱と冷静を司る脳髄の一部は
即座にこれを否定する。そんな複雑な気持ちで彼女は探偵事務所の門を叩く。
「探偵を雇ったくらいで簡単に見つかるとも思えないけど・・・打てる手はすべて打っておくのよアリス。
ここ・・・よね、探偵事務所」
「ああ・・・魔理沙。いつも泣いてばかりいたアリスは・・・数ヶ月でこんなスラム街を一人で歩けるほどに
強くなりました・・・優しかった魔理沙。たとえ何年かかろうとも必ず見つけ出して・・・」
そのとき、誰かの肩がアリスと激しくぶつかる。まさに擬音を使うなら『ドカッ』と書くのが相応しいほどに。
転ぶほどではなかったが、不躾なその行為に彼女が少し舌打ちをしようとしたそのとき。
「ちょっとここ通るぜー!ったく私以外の人間はもっとはしっこ歩けっつの!」
それはまさしく魔理沙だった。ここまで傲慢な魔法使いは他にいないからだ。
どこぞの恐ろしい田中と付く魔法使いだってもうすこし慎ましく道を歩くだろう。
「はっ!この声!いた―――っ!魔理沙!」
アリスは叫んだ。そして振り向いた魔理沙は一瞬目を合わせるとアリスが訪ねようとしていた扉のなかにひきこもった。
その動き脱兎のごとく、いや・・・泥棒のごとくと言ったほうが彼女らしいだろうか。
「こ、こらー!カギしめんなー!魔理沙!魔理沙ぁー!私よ!アリス!あけてよちょっと!」
彼女は扉を叩き続けるものの、大蝦蛄貝のように硬く閉ざされたそれが開かれる気配は一向にない。
そんな彼女の前にこれまた意外な顔をして紅白が現れた。
「あらアリス、魔理沙所長なら中にいると思うんだけど・・・どしたの?また何かやられたの?」
「魔理沙・・・所長?」
「魔理沙、ただいまー」
開かれざる扉は紅白の鍵によって一瞬で開かれたのだった。そしてアリスも後ろに続く。
「霊夢?なぁ外になんか変なアリスいなかったか?」
「変なアリスって何よ。まぁ変かどうかはわからないけどアリスならいたわよ?」
「わ・・・私は裏口から出かけたって言っといてくれ!」
「魔理沙!」
気まずい沈黙。
「しょ・・・所長は先ほど裏口のほうから出かけられました」
「言ってみるな!」
模範的な突っ込みの後にアリスは白黒に言葉を緋蜂の放つ弾幕のごとく浴びせかける。
「どうしてよ魔理沙!何で私のこと避けるのよ!私、魔理沙がいなくなってから毎日ずっとあなたのこと探して
やっと会えたと思った」
「人違いです人違いです人違いです人違いです人違いです人違いです」
「って聞けー!」
模範的なボケに模範的なツッコミ。いつのまにこんなに漫才がうまくなったのかと言いたい人もいるだろうが我慢していただこう。
「やれやれ、ずいぶん騒がしい感動の再開ね。まぁ二人とも少し落ち着いて欲しいわ・・・
紫いるー?アリスにお茶だししてくれない?」
紅白の呼びかけと同時に空間のスキマとともに紫がけだるそうな顔をして上半身を乗り出してこう言う。
「面倒ねぇ。」
「そうしないと話がすすまないのよ。元ネタ的に」
「あ、別にいい。私がやるぜ。いや・・・私にやらしてほしい」
「おや、なんだかんだいっても」
少し感心した様子で霊夢は目を細める。
「魔理沙・・・」
話の流れ的に来客用の椅子に腰を下ろすことにしたアリスの目がすこし潤んだような気がした。
「お茶です」
カコン、と乾いたやわらかい金属音がアリスの前に突きつけられる。人はそれを茶筒という。
「こりゃオイシイさすが高級茶葉ね、ってこらぁ!」
売り言葉に買い言葉。意地のためならとたくましく茶葉をそのまま頬張るアリス。こんなところをどこぞの
新聞記者に撮られたならば彼女の自称都会派というイメージは失墜することは間違いない。
「ひいぃぃ嫁姑戦争ー!」
調子に乗って合いの手を入れつつも、このままでは口や手だけでなく弾幕での戦争になると感じた霊夢は
とりあえず二人を落ち着かせて会話をさせようとする。
「まずは話し合いなさい。お互い言いたいことを怒鳴りあってるだけじゃ話は進まないわ。
はい、それじゃアリスから」
「この人は私の夫なんです。数ヶ月前に家が嫌になったって出て行って、それっきりで・・・
いまやっと見つけて、連れ戻しにきたんです」
とりあえずいろいろなノイズは取り払ってみれば、至極なまっとうな話だ、と霊夢は思った。
「じゃあ次魔理沙」
「全部そいつの妄想だぜ」
「話し合おうって言ってるじゃない!どうしてそうやって壁を作るの!心閉ざさないで!
会話はキャッチボールでしょ?!?」
「黙れツンデレ!」
「誰がツンデレよ!わけわかんない罵り言葉つくらないで!」
また会話を脱線させられては困るとばかりに司会役の霊夢は切り札を魔理沙にむかって突きつける。
「半分くらいは妄想っぽいけど、それはともかくとして魔理沙・・・社長に聞いてみる?
どうして雇われ所長になったかアイツなら知ってるでしょ」
うつむく魔理沙。そして次に顔を上げたときには瞳は目薬を差したように潤みきっていた。
「ひ、ひどい霊夢・・・!私の言うことよりこんな素性の知れないアリスを信じるの・・・?
私を信じてくれ・・・霊夢」
「アリスの素性は知っているし、私はそういう『素顔がかわいいキャラだと知ってる人間』の涙は
信用しないことにしてるの」
「じゃあ死ね」
「本性出すの早すぎるわよ!」
「ひどいわパーンチ!泣いてる魔理沙を信じてあげないなんてひどすぎるわ!」
霊夢の腹に対してアリスの一撃が炸裂した。かしがる紅白。そして魔理沙を慰めるかのように手を肩に置く。
「アンタがだまされてどうするの!下見て!下!『こいつチョロイぜ』って顔で笑ってるわよ!?」
魔理沙の顔はまさに「計画通り」といったふうだ。ついでにスカートのポケットには目薬らしきものがはみ出て見える。
『ヤゴコロ製薬特製・兎詐欺の目薬(非売品)』と書いてある。
「とにかく魔理沙、私と一緒に家に帰りましょう!」
もう離さないとばかり抱きしめるように白黒の肩をアリスは揺さぶった。しかし。
「いやだ!」
ペシン、とした乾いた響きとともにそれは拒絶されたのであった。
「魔理沙・・・なんで?なんの不自由もなく暮らせるんだよ?こんなところで無理して働かなくたって・・・
ねぇ帰ろう!魔法の森のあの・・・あったかぃぃぇに・・・」
「尾語が消えていくわぁ」
「あったかくはないのね」
「本当よ!?家庭は温かいし住み心地はいいし庭に家庭菜園はあるし
魔導書千冊あるしお手伝い(人形)さんが100体はいるし」
「小学生か。というか人形が100体も置いてある家なんて私が住んでたら発狂するわ。
所長・・・そろそろ本当のことを言ってくれない?」
霊夢はもう茶番に飽きかけたようなぼやけた顔をしながら魔理沙を見つめる。
「わ、私は最近宇宙大魔王に記憶を操作されたばかりだからな・・・覚てえないぜ!」
「うわ!どっちもどっち!」
「あなたも人のこと言えないんじゃじゃなくて?」
ちゃっかり冷静なツッコミを入れる紫。それを言うならば紫も人のことを言えた義理ではないのだが。
「まぁ待て、ここはひとつ私の心の奥深くに聞いてみるぜ」
白黒は目を閉じ、手を合わせて天の声を聞こうとする。
「神様・・・私の神様・・・この女が言っていることは本当なのですか?」
「(違います、殺っちゃいなさい)」
何か向こう側に紫の長髪をなびかせた人のようなものが親指を下に立てている・・・ように見えたかもしれない。
「わかりました神様!」
「どこの荒神よ!」
「そ・・・そんな脳内神とっとと捨ててきなさいよ!」
「所長・・・さっきから挙動が怪しいのよねぇ」
混乱を諌めるように紫がさくっと急所に言葉を打ち込む。
「魔理沙・・・正直に何があったのか説明してくれない?」
魔理沙にとって戦況はかなり不利になっているようだ。こうなれば、することはただひとつだろう。
「うぅ・・・、ふ・・・ふんっ。なんだみんなで乗せられちゃって。つきあってられないぜ。あばよ馬糞ども!」
どこぞに隠していた箒を手に取るやいなや、窓ガラスを突き破り空へと消えていった。
「まぐそー!?私が馬糞ですって!?いやぁぁぁ!」
魔理沙からの最大級?の罵りに頭を抱えて嘆くアリス。
「逃げた!」
そんなことはお構いなしに冷静な霊夢である。天を仰ぐと逃げた白黒に対して大きな声を張る。
「こら魔理沙!話し合いくらいきちんとできないの!」
もう霊夢は呆れるのを一回りして説教をする母親のようになっていた。
「話の続きがしたけりゃ捕まえてみな!」
そういうと、魔理沙は白い空のふもとに消えてゆく。
「ちっ、このままフケられると事務所の仕事も片付かないわね・・・手助けするわアリス!」
「あ・・・ありがとう・・・霊夢」
「まぁ見てのとおり私はウチの探偵事務所の腋担当よ。腋チラ場面なら任せといて!」
「頼もしい(?)発言ね。霊夢!」
そういうと霊夢は割れた窓を飛び越えて外に駆け出す。が。
「ぐあっ!・・・最近お茶しか胃に入れてないのに全力疾走したんでお腹が・・・」
「は、走り始めて6行で!」
しかし霊夢も空腹には慣れている。すぐに気を確かに持つと魔理沙を飛んで追いかけ始める。
「まりさー!」
「所長!」
物陰に潜む黒い三角帽を見つけるやいなや飛び掛る。もちろん腕を大きく広げ、腋を見せるのを怠ったりはしない。
「いたー!魔理沙っ!あんなところに!捕獲っ!」
それをしっかりと掴んで満足げな霊夢。
「ふふふ、もう逃げられないわよ・・・って風船じゃない!」
そして時報のような電子音がどことなくウザかわいい風船の下から聞こえる。
「こっこれは!」
地面が光り輝き爆ぜた。
「時限式の魔方陣・・・アイツは本気ね。あいつが本気になったらもっとヤバイわ・・・」
巫女からはしゃがれたボソボソとした声が漏れる。これが所謂「やられいむ」というやつか。と誰かが思ったとか思わないとか。
「一生つかまらないかもしれないわねぇ」
どこをどう見てもやる気など微塵もない紫がまさにやる気のないと呼ぶにふさわしい声で呟く。
スキマを使えば一瞬にして捕まえられるはずなのだが。
「そ・・・そんなぁ頼むわよぉ!」
アリスは二人にだだっ子のように懇願する。魔理沙のこととなれば当然である。
と、そのときほんのりと上手に焼けた霊夢が立ち上がり、アリスにささやく。
「もうヤツにゆっくりなこの風船の顔だけでいいんじゃない?ほら」
風船は無傷だった。
「いいわけあるか!」
たまらずツッコむアリス。ひしゃげる霊夢の鼻骨。もはやその速さはどこぞの鴉天狗をも超えたかもしれない。
しかし鼻血を垂らしつつもまだ霊夢の言葉は続く。
「ふふ・・・でも奴はひとつ大きなミスを犯したようね。この状態は私たちに有利よ」
「え・・・なんで?それって」
さすが博麗の巫女。私にさえ思いつかないようなブレイクスルーが浮かんだのね。
と思わせぶりな顔で霊夢の次の言葉を待つアリス。だが。
「これを見せて聞き込みをすれば人相書きがいらないわ。すみません、こんな白黒見ませんでしたか?」
と言って霊夢は道端の子供に風船を見せて聞き込みを始めた。
「いやぁぁぁ!変質しゃぁぁぁ!」
「目も合わさずに逃げていってるじゃない」
鼻血を垂らして奇妙なまんじゅうおばけの風船を持って子供に話しかけるのは紛う事無き変質者にしか見えない。
アリスはもう考えるのをやめた。
「あーぁっ・・・完璧に逃げられたわ」
霊夢がぐったりとうなだれる。
「こりゃ本腰入れて探さなきゃならないわねぇ・・・ねぇ、なぜ魔理沙はアリスから逃げてここにきたのかしら?」
早く本腰を入れてくれればこんな徒労もせずに済んだのに、とアリスは思ったが口には出さず疑問に対し疑問で返す。
「あれ、何も聞いてないの?」
「私達はそんなことががあったなんて全く知らなかったのよ、本当に。そうよね?紫。」
紫は珍しく素直に首を縦に振った。そしてアリスは神妙な面持ちで今までの経緯を語る。
「魔理沙がウチを飛び出していったのは3ヶ月ほど前よ。多分、私が四六時中べったりなのがイヤだったんでしょう・・・
今までの人生をすべて捨ててでも自由がほしかったのよ」
「そこまで魔理沙の気持ちがわかっているのに何故あなたはアイツを連れ戻そうとするのよ?」
「魔理沙がいなきゃ、私がおはようのキスといってらっしゃいとおかえりのキスとおやすみなさいのキス、
それに付随するネチョが出来なくなるじゃないの」
「すがすがしいまでに自己中心的ね。あなた達って」
「あと、大好きな魔理沙がここにいると聞いて矢も立てもたまらず」
「つけたし臭いつけたし臭い」
ここに至って霊夢と紫は魔理沙とアリスは表面的には違うものの内面的には似たもの同士だということを確信したのであった。
ここで一拍を置いて霊夢が真剣な口調でアリスに語りかけた。
「アリス、あなたが魔理沙を探していた3ヶ月で、アイツはウチの事務所になくてはならない存在になってしまった・・・
今私達にはアイツの能力が必要なのよ。無事も確認できたことだし、このまま帰ってもらうわけにはいかないかしら」
アリスも一拍を置いて真剣に言葉を返す。
「魔理沙は・・・あなたたちにとっても大切な人なのね」
「いや、あなたより魔理沙との付き合いは長いし深いからね?」
しかし霊夢が我慢できずにツッコミを入れてしまった。雰囲気台無しである。と、そこへ。
「やぁ諸君」
「うわ!魔理沙!」
「自分が優勢と見るやいなや現れたわ、まったく狡いやつね。」
自分が散々な目にあったこともあってか、霊夢はいつもより皮肉を多めに盛って帰ってきた魔理沙を迎えた。
「つー訳だよアリス。私はもう家にはしばらく戻れない。その代わり、財産やら何やらも全部いらないから
アリスには私は死んだとか逃げたとか言っておいてくれ」
「いや、アリス今そこにいるから!というかじゃあアンタと話してるのは誰なのよ!」
もはや支離滅裂な会話に私はちゃんとしたツッコミも出来るのよと言いたげに返す霊夢。
「いやよ!私だってあんな家戻りたくもない!魔理沙をフルネッチョできないなら意味がないわ!」
「おことわりだ!私は絶対帰らないぜ!」
「そんなこと言って!あのラブラブな暮らしを完璧に忘れられるの?ほら
(ここから先はいやらしいので心の眼でゆっくり見ていってね!!)」
「何ていやらしい攻撃!いーからお前が帰れ!私は探偵事務所の所長!変える気もないしやめられないんだぜ!」
感極まったのかアリスの顔が紅潮して潤みだす。そして。
「じゃ・・・じゃあ魔理沙を連れ帰るまで私もここで働く!」
「んなっ・・・!」
「へぇ・・・いいんじゃないのそれなら!?」
してやったりとした顔の霊夢は、なぜか肌も艶々として満足げだ。
「あら、良かったわ、ちょうどバイト募集してたのよ」
紫も何事も無かったかのように話を合わせ、のほほんとした表情で魔理沙に目を配らせる。
「な、なんでそうなるんだよ!わ・・・私は認めないぜ!帰れアリス!お前は帰れ!」
一人抗う魔理沙だが、もはや砂上の楼閣であり、それは既に形骸だ。
「断る!一人で帰るくらいならここに住み込んでやるわ!」
アリスの意気揚々な返事がそれをさらに推し進めた。
「霊夢!魔理沙!社長にお伺いしたところぜんぜんOKだそうよ」
「経営者には逆らえないわねぇ?雇われ所長?」
「うわぁぁー!ちくしょー!私はみとめねーぜ!」
さんさんと降り注ぐ日光の雨とリリーの空に舞う姿が、春の訪れを告げていた。
あと、この文は大幅にパロディというかオマージュというかパクリで構成されています。
そういうのが苦手な方は戻っていただけると幸いです。
「治安が悪そうなところね・・・地図見てもごちゃごちゃで何がどこにあるのかもわからないし」
不安げな足取りと顔を気取られぬように地図を見ながらアリス・マーガトロイドはひとりごちる。
霧雨魔理沙がいなくなってからもう3ヶ月も経った。幻想郷ほぼ全土を探し回ったが一向に手がかりは掴めず、
博麗の巫女も何かと忙しいのか何度訪ねても神社はもぬけの殻だった。焦燥に駆られた彼女がすこしでも
可能性のある所をと人間の里の再探索を始めたところに、道端で将棋を指している老人にある情報を聞いたのだ。
「人探し?金はあるのか?ならこの先の探偵事務所に頼むといい。妙なところだが腕は確かだ・・・」
話によると、このあたりに人探しを得意とする興信所があるらしいのだ。藁をもすがる思いで見つけた
耳寄りな情報に気持ちは少し浮き足立った。と同時に彼女の中の憂鬱と冷静を司る脳髄の一部は
即座にこれを否定する。そんな複雑な気持ちで彼女は探偵事務所の門を叩く。
「探偵を雇ったくらいで簡単に見つかるとも思えないけど・・・打てる手はすべて打っておくのよアリス。
ここ・・・よね、探偵事務所」
「ああ・・・魔理沙。いつも泣いてばかりいたアリスは・・・数ヶ月でこんなスラム街を一人で歩けるほどに
強くなりました・・・優しかった魔理沙。たとえ何年かかろうとも必ず見つけ出して・・・」
そのとき、誰かの肩がアリスと激しくぶつかる。まさに擬音を使うなら『ドカッ』と書くのが相応しいほどに。
転ぶほどではなかったが、不躾なその行為に彼女が少し舌打ちをしようとしたそのとき。
「ちょっとここ通るぜー!ったく私以外の人間はもっとはしっこ歩けっつの!」
それはまさしく魔理沙だった。ここまで傲慢な魔法使いは他にいないからだ。
どこぞの恐ろしい田中と付く魔法使いだってもうすこし慎ましく道を歩くだろう。
「はっ!この声!いた―――っ!魔理沙!」
アリスは叫んだ。そして振り向いた魔理沙は一瞬目を合わせるとアリスが訪ねようとしていた扉のなかにひきこもった。
その動き脱兎のごとく、いや・・・泥棒のごとくと言ったほうが彼女らしいだろうか。
「こ、こらー!カギしめんなー!魔理沙!魔理沙ぁー!私よ!アリス!あけてよちょっと!」
彼女は扉を叩き続けるものの、大蝦蛄貝のように硬く閉ざされたそれが開かれる気配は一向にない。
そんな彼女の前にこれまた意外な顔をして紅白が現れた。
「あらアリス、魔理沙所長なら中にいると思うんだけど・・・どしたの?また何かやられたの?」
「魔理沙・・・所長?」
「魔理沙、ただいまー」
開かれざる扉は紅白の鍵によって一瞬で開かれたのだった。そしてアリスも後ろに続く。
「霊夢?なぁ外になんか変なアリスいなかったか?」
「変なアリスって何よ。まぁ変かどうかはわからないけどアリスならいたわよ?」
「わ・・・私は裏口から出かけたって言っといてくれ!」
「魔理沙!」
気まずい沈黙。
「しょ・・・所長は先ほど裏口のほうから出かけられました」
「言ってみるな!」
模範的な突っ込みの後にアリスは白黒に言葉を緋蜂の放つ弾幕のごとく浴びせかける。
「どうしてよ魔理沙!何で私のこと避けるのよ!私、魔理沙がいなくなってから毎日ずっとあなたのこと探して
やっと会えたと思った」
「人違いです人違いです人違いです人違いです人違いです人違いです」
「って聞けー!」
模範的なボケに模範的なツッコミ。いつのまにこんなに漫才がうまくなったのかと言いたい人もいるだろうが我慢していただこう。
「やれやれ、ずいぶん騒がしい感動の再開ね。まぁ二人とも少し落ち着いて欲しいわ・・・
紫いるー?アリスにお茶だししてくれない?」
紅白の呼びかけと同時に空間のスキマとともに紫がけだるそうな顔をして上半身を乗り出してこう言う。
「面倒ねぇ。」
「そうしないと話がすすまないのよ。元ネタ的に」
「あ、別にいい。私がやるぜ。いや・・・私にやらしてほしい」
「おや、なんだかんだいっても」
少し感心した様子で霊夢は目を細める。
「魔理沙・・・」
話の流れ的に来客用の椅子に腰を下ろすことにしたアリスの目がすこし潤んだような気がした。
「お茶です」
カコン、と乾いたやわらかい金属音がアリスの前に突きつけられる。人はそれを茶筒という。
「こりゃオイシイさすが高級茶葉ね、ってこらぁ!」
売り言葉に買い言葉。意地のためならとたくましく茶葉をそのまま頬張るアリス。こんなところをどこぞの
新聞記者に撮られたならば彼女の自称都会派というイメージは失墜することは間違いない。
「ひいぃぃ嫁姑戦争ー!」
調子に乗って合いの手を入れつつも、このままでは口や手だけでなく弾幕での戦争になると感じた霊夢は
とりあえず二人を落ち着かせて会話をさせようとする。
「まずは話し合いなさい。お互い言いたいことを怒鳴りあってるだけじゃ話は進まないわ。
はい、それじゃアリスから」
「この人は私の夫なんです。数ヶ月前に家が嫌になったって出て行って、それっきりで・・・
いまやっと見つけて、連れ戻しにきたんです」
とりあえずいろいろなノイズは取り払ってみれば、至極なまっとうな話だ、と霊夢は思った。
「じゃあ次魔理沙」
「全部そいつの妄想だぜ」
「話し合おうって言ってるじゃない!どうしてそうやって壁を作るの!心閉ざさないで!
会話はキャッチボールでしょ?!?」
「黙れツンデレ!」
「誰がツンデレよ!わけわかんない罵り言葉つくらないで!」
また会話を脱線させられては困るとばかりに司会役の霊夢は切り札を魔理沙にむかって突きつける。
「半分くらいは妄想っぽいけど、それはともかくとして魔理沙・・・社長に聞いてみる?
どうして雇われ所長になったかアイツなら知ってるでしょ」
うつむく魔理沙。そして次に顔を上げたときには瞳は目薬を差したように潤みきっていた。
「ひ、ひどい霊夢・・・!私の言うことよりこんな素性の知れないアリスを信じるの・・・?
私を信じてくれ・・・霊夢」
「アリスの素性は知っているし、私はそういう『素顔がかわいいキャラだと知ってる人間』の涙は
信用しないことにしてるの」
「じゃあ死ね」
「本性出すの早すぎるわよ!」
「ひどいわパーンチ!泣いてる魔理沙を信じてあげないなんてひどすぎるわ!」
霊夢の腹に対してアリスの一撃が炸裂した。かしがる紅白。そして魔理沙を慰めるかのように手を肩に置く。
「アンタがだまされてどうするの!下見て!下!『こいつチョロイぜ』って顔で笑ってるわよ!?」
魔理沙の顔はまさに「計画通り」といったふうだ。ついでにスカートのポケットには目薬らしきものがはみ出て見える。
『ヤゴコロ製薬特製・兎詐欺の目薬(非売品)』と書いてある。
「とにかく魔理沙、私と一緒に家に帰りましょう!」
もう離さないとばかり抱きしめるように白黒の肩をアリスは揺さぶった。しかし。
「いやだ!」
ペシン、とした乾いた響きとともにそれは拒絶されたのであった。
「魔理沙・・・なんで?なんの不自由もなく暮らせるんだよ?こんなところで無理して働かなくたって・・・
ねぇ帰ろう!魔法の森のあの・・・あったかぃぃぇに・・・」
「尾語が消えていくわぁ」
「あったかくはないのね」
「本当よ!?家庭は温かいし住み心地はいいし庭に家庭菜園はあるし
魔導書千冊あるしお手伝い(人形)さんが100体はいるし」
「小学生か。というか人形が100体も置いてある家なんて私が住んでたら発狂するわ。
所長・・・そろそろ本当のことを言ってくれない?」
霊夢はもう茶番に飽きかけたようなぼやけた顔をしながら魔理沙を見つめる。
「わ、私は最近宇宙大魔王に記憶を操作されたばかりだからな・・・覚てえないぜ!」
「うわ!どっちもどっち!」
「あなたも人のこと言えないんじゃじゃなくて?」
ちゃっかり冷静なツッコミを入れる紫。それを言うならば紫も人のことを言えた義理ではないのだが。
「まぁ待て、ここはひとつ私の心の奥深くに聞いてみるぜ」
白黒は目を閉じ、手を合わせて天の声を聞こうとする。
「神様・・・私の神様・・・この女が言っていることは本当なのですか?」
「(違います、殺っちゃいなさい)」
何か向こう側に紫の長髪をなびかせた人のようなものが親指を下に立てている・・・ように見えたかもしれない。
「わかりました神様!」
「どこの荒神よ!」
「そ・・・そんな脳内神とっとと捨ててきなさいよ!」
「所長・・・さっきから挙動が怪しいのよねぇ」
混乱を諌めるように紫がさくっと急所に言葉を打ち込む。
「魔理沙・・・正直に何があったのか説明してくれない?」
魔理沙にとって戦況はかなり不利になっているようだ。こうなれば、することはただひとつだろう。
「うぅ・・・、ふ・・・ふんっ。なんだみんなで乗せられちゃって。つきあってられないぜ。あばよ馬糞ども!」
どこぞに隠していた箒を手に取るやいなや、窓ガラスを突き破り空へと消えていった。
「まぐそー!?私が馬糞ですって!?いやぁぁぁ!」
魔理沙からの最大級?の罵りに頭を抱えて嘆くアリス。
「逃げた!」
そんなことはお構いなしに冷静な霊夢である。天を仰ぐと逃げた白黒に対して大きな声を張る。
「こら魔理沙!話し合いくらいきちんとできないの!」
もう霊夢は呆れるのを一回りして説教をする母親のようになっていた。
「話の続きがしたけりゃ捕まえてみな!」
そういうと、魔理沙は白い空のふもとに消えてゆく。
「ちっ、このままフケられると事務所の仕事も片付かないわね・・・手助けするわアリス!」
「あ・・・ありがとう・・・霊夢」
「まぁ見てのとおり私はウチの探偵事務所の腋担当よ。腋チラ場面なら任せといて!」
「頼もしい(?)発言ね。霊夢!」
そういうと霊夢は割れた窓を飛び越えて外に駆け出す。が。
「ぐあっ!・・・最近お茶しか胃に入れてないのに全力疾走したんでお腹が・・・」
「は、走り始めて6行で!」
しかし霊夢も空腹には慣れている。すぐに気を確かに持つと魔理沙を飛んで追いかけ始める。
「まりさー!」
「所長!」
物陰に潜む黒い三角帽を見つけるやいなや飛び掛る。もちろん腕を大きく広げ、腋を見せるのを怠ったりはしない。
「いたー!魔理沙っ!あんなところに!捕獲っ!」
それをしっかりと掴んで満足げな霊夢。
「ふふふ、もう逃げられないわよ・・・って風船じゃない!」
そして時報のような電子音がどことなくウザかわいい風船の下から聞こえる。
「こっこれは!」
地面が光り輝き爆ぜた。
「時限式の魔方陣・・・アイツは本気ね。あいつが本気になったらもっとヤバイわ・・・」
巫女からはしゃがれたボソボソとした声が漏れる。これが所謂「やられいむ」というやつか。と誰かが思ったとか思わないとか。
「一生つかまらないかもしれないわねぇ」
どこをどう見てもやる気など微塵もない紫がまさにやる気のないと呼ぶにふさわしい声で呟く。
スキマを使えば一瞬にして捕まえられるはずなのだが。
「そ・・・そんなぁ頼むわよぉ!」
アリスは二人にだだっ子のように懇願する。魔理沙のこととなれば当然である。
と、そのときほんのりと上手に焼けた霊夢が立ち上がり、アリスにささやく。
「もうヤツにゆっくりなこの風船の顔だけでいいんじゃない?ほら」
風船は無傷だった。
「いいわけあるか!」
たまらずツッコむアリス。ひしゃげる霊夢の鼻骨。もはやその速さはどこぞの鴉天狗をも超えたかもしれない。
しかし鼻血を垂らしつつもまだ霊夢の言葉は続く。
「ふふ・・・でも奴はひとつ大きなミスを犯したようね。この状態は私たちに有利よ」
「え・・・なんで?それって」
さすが博麗の巫女。私にさえ思いつかないようなブレイクスルーが浮かんだのね。
と思わせぶりな顔で霊夢の次の言葉を待つアリス。だが。
「これを見せて聞き込みをすれば人相書きがいらないわ。すみません、こんな白黒見ませんでしたか?」
と言って霊夢は道端の子供に風船を見せて聞き込みを始めた。
「いやぁぁぁ!変質しゃぁぁぁ!」
「目も合わさずに逃げていってるじゃない」
鼻血を垂らして奇妙なまんじゅうおばけの風船を持って子供に話しかけるのは紛う事無き変質者にしか見えない。
アリスはもう考えるのをやめた。
「あーぁっ・・・完璧に逃げられたわ」
霊夢がぐったりとうなだれる。
「こりゃ本腰入れて探さなきゃならないわねぇ・・・ねぇ、なぜ魔理沙はアリスから逃げてここにきたのかしら?」
早く本腰を入れてくれればこんな徒労もせずに済んだのに、とアリスは思ったが口には出さず疑問に対し疑問で返す。
「あれ、何も聞いてないの?」
「私達はそんなことががあったなんて全く知らなかったのよ、本当に。そうよね?紫。」
紫は珍しく素直に首を縦に振った。そしてアリスは神妙な面持ちで今までの経緯を語る。
「魔理沙がウチを飛び出していったのは3ヶ月ほど前よ。多分、私が四六時中べったりなのがイヤだったんでしょう・・・
今までの人生をすべて捨ててでも自由がほしかったのよ」
「そこまで魔理沙の気持ちがわかっているのに何故あなたはアイツを連れ戻そうとするのよ?」
「魔理沙がいなきゃ、私がおはようのキスといってらっしゃいとおかえりのキスとおやすみなさいのキス、
それに付随するネチョが出来なくなるじゃないの」
「すがすがしいまでに自己中心的ね。あなた達って」
「あと、大好きな魔理沙がここにいると聞いて矢も立てもたまらず」
「つけたし臭いつけたし臭い」
ここに至って霊夢と紫は魔理沙とアリスは表面的には違うものの内面的には似たもの同士だということを確信したのであった。
ここで一拍を置いて霊夢が真剣な口調でアリスに語りかけた。
「アリス、あなたが魔理沙を探していた3ヶ月で、アイツはウチの事務所になくてはならない存在になってしまった・・・
今私達にはアイツの能力が必要なのよ。無事も確認できたことだし、このまま帰ってもらうわけにはいかないかしら」
アリスも一拍を置いて真剣に言葉を返す。
「魔理沙は・・・あなたたちにとっても大切な人なのね」
「いや、あなたより魔理沙との付き合いは長いし深いからね?」
しかし霊夢が我慢できずにツッコミを入れてしまった。雰囲気台無しである。と、そこへ。
「やぁ諸君」
「うわ!魔理沙!」
「自分が優勢と見るやいなや現れたわ、まったく狡いやつね。」
自分が散々な目にあったこともあってか、霊夢はいつもより皮肉を多めに盛って帰ってきた魔理沙を迎えた。
「つー訳だよアリス。私はもう家にはしばらく戻れない。その代わり、財産やら何やらも全部いらないから
アリスには私は死んだとか逃げたとか言っておいてくれ」
「いや、アリス今そこにいるから!というかじゃあアンタと話してるのは誰なのよ!」
もはや支離滅裂な会話に私はちゃんとしたツッコミも出来るのよと言いたげに返す霊夢。
「いやよ!私だってあんな家戻りたくもない!魔理沙をフルネッチョできないなら意味がないわ!」
「おことわりだ!私は絶対帰らないぜ!」
「そんなこと言って!あのラブラブな暮らしを完璧に忘れられるの?ほら
(ここから先はいやらしいので心の眼でゆっくり見ていってね!!)」
「何ていやらしい攻撃!いーからお前が帰れ!私は探偵事務所の所長!変える気もないしやめられないんだぜ!」
感極まったのかアリスの顔が紅潮して潤みだす。そして。
「じゃ・・・じゃあ魔理沙を連れ帰るまで私もここで働く!」
「んなっ・・・!」
「へぇ・・・いいんじゃないのそれなら!?」
してやったりとした顔の霊夢は、なぜか肌も艶々として満足げだ。
「あら、良かったわ、ちょうどバイト募集してたのよ」
紫も何事も無かったかのように話を合わせ、のほほんとした表情で魔理沙に目を配らせる。
「な、なんでそうなるんだよ!わ・・・私は認めないぜ!帰れアリス!お前は帰れ!」
一人抗う魔理沙だが、もはや砂上の楼閣であり、それは既に形骸だ。
「断る!一人で帰るくらいならここに住み込んでやるわ!」
アリスの意気揚々な返事がそれをさらに推し進めた。
「霊夢!魔理沙!社長にお伺いしたところぜんぜんOKだそうよ」
「経営者には逆らえないわねぇ?雇われ所長?」
「うわぁぁー!ちくしょー!私はみとめねーぜ!」
さんさんと降り注ぐ日光の雨とリリーの空に舞う姿が、春の訪れを告げていた。
凄く笑ったwww
元ネタが面白いのもありますが改造の仕方も面白かったです
話もス●プラの一話をほぼなぞってるだけだし、何よりキャラが合ってません。霊夢とか、腋キャラっていう扱いだけしか継承して無くて無重力な性格が一切無視されてますよね?口調を霊夢っぽく変えただけの美●にしか見えません。霊夢っぽさがゼロです。紫は出番自体が少なかったのでそうでもありませんでしたが、魔理沙も巧●の言動が混ざった変な人になっていて魔理沙っぽさがかなり失われてしまっています。
勢いで書いただけで推敲をちゃんとしていない中途半端なものを投稿するのではなく、やるなら徹底的にやって下さい。東方もス●プラも好きなので、是非お願いします。