Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

妹紅たん、遅れて幻想郷にインしたお!!

2008/05/10 11:11:23
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長く続いた戦争、それは私たち、日本国民の敗北という形で終わりを告げた。



仲の良かった友人たちも、戦場へ出向き、行方知れずになったものが多数。



体が弱かった私は、今日1日をどうにか生きる。

それ以外にはすることもないという悲惨な生活をしていた。



もちろん、私だけが苦労しているわけではない。

国全体が、飢えていた。



戦時中。

芸術や娯楽が規制され、私の趣味であり、仕事である絵を描くことも規制された。



それは戦争が終わってからも同じ、人々が絵を楽しむような余裕。

私自身にも、絵の具を買う余裕などは一切存在しなかった。

それでも私は絵が好きで、絵で飯が食える日が来るのを夢見ていた。







私が絵を描くようになった理由。

それは酷く単純なことだった。



祖父の影響である。



私の祖父は、界隈では割と名の知られた絵描きだった。

彼は好んで、鳳凰や朱雀を描いた。



その題材を何故描くのか。

祖父は、私以外には漏らしたことがなかったという。



妻である、私の祖母にも。

祖父の娘である、私の母にも。











ある夜、私が絵描きを志し、祖父へと教えを請いにいった日。

今から15年前ほど前のことだ。



その頃の祖父というのは、長年連れ添った祖母も既に亡く

家の離れで、一人ぼうっとしていることが多かった。



その日の祖父も、これ以上なく美味そうに、ぷかぷかタバコをくゆらせていた。





「じいさん、なんでじいさんはヒノトリを描くんだ?」



常々疑問に思っていたことである。

祖父は、燃え盛る鳥と少女という題材を非常に好んだ。

というよりも、これ以外の題材で描いた作品を、私の知る限りは一つもなかった。



「俺はなぁ、魂を喰われちまったのよ」



くくく、と心底可笑しそうに笑う祖父。



「俺が、お前よりもまだ小さかった頃、冒険と称して山に登ったんだ。

 運悪く、俺は妖怪に襲われた。妖怪なんてのはよぉ、その頃にはトンと見なくなっててな、もしかすると俺は相当運が良かったのかもしんねぇな」



いまどき妖怪なんてものを信じているなんて口に出せば

それこそ頭がどこかおかしいと揶揄されるだろう。

祖父も、あるいはどうかしていたのかもしれない。



「綺麗、だったなぁ。もんぺ姿の女が、背に鳳凰を従えて空を飛んでたんだぁ。

 それで、あっという間に、俺を食おうとしていた妖怪は焼き尽くされてな。

 腰を抜かしてた俺に、男だろう、シャキっとしろ!! って叱咤したんだ」



それでも、私は、祖父のことが大好きだった。

絵を描くきっかけも祖父に憧れてのことだったし

このような、まるっきり真実味のないことでも信じるに価した。

祖父の言葉は現実のことだと今でも思うし、嘘をついているようには見えなかった。



「誰にも言うなよ、俺は約束したんだ。あのもんぺの女と。

 そのとき起こった出来事は、一切口外しないって、墓の中まで、持って行くってな」



そういうと、祖父は静かに目を閉じた。

話疲れたのだろうと、私はさほど気にも留めなかった。





それが昭和8年、1933年のことである。













あれから数年して、祖父は旅立った。

一度話してくれた日以来、祖父はヒノトリの女の話はしてくれなかった。



そんな折に、戦争である。

私の筆は折れた。



いつかまた、絵を書ける日が来るだろうか?

絵描きとして習熟することができたならば、私はヒノトリの少女を描きたいと思う。



さて、今日もどうにか飯の当てを探さなければ。






囲炉裏を囲み、酒をたしなむ女が二人。



「へぇ、妹紅は結界が出来てすぐにこっちに来たわけじゃぁないんだな」

「結界が出来たのは明治17年なんだろう? それなら少なくとも、50年かそこらは向こうにいたよ」

「幻想郷は、忘れ去られたものがたどり着く場所だからな。 妹紅、お前にほれた男が向こうにいたのかもしれないぞ?」

「よせよ慧音、心当たりがない」

「そうかそうか、まぁ飲もう飲もう」

「うん」



――――――――





3kbでSSを書いてみる企画。

初期タイトル「60年の呪縛」。

重すぎると友人から指摘を受けたので、こんなのにしました。反省してます。



劣化PYTHONさん? 情景描写が足りない?

偉大さを思い知るぜwwww



そして手塚先生吹いた
電気羊
http://ayayayayayayayaya.blog43.fc2.com/
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
面白かったです。

短さの中に過不足無く内容が詰められていると感じました。

ただ、シリアスな題材でこのタイトルはちょっと……(苦笑)。
2.名前が無い程度の能力削除
素晴らしい作品でした。

なのにタイトルwww
3.P削除
蟲師に通ずるものがあって面白いです。

タイトルWW
4.六分蜜削除
一人になってしまって死を身近に感じた祖父は、なんとなく孫に伝えてみたいと思ったんでしょうなあ

約束したにも関わらず話したのは、信じるはずがないと思ってのことなのか。



一度、戯言と流されかけた言葉がそれでも僅かに残り、孫のヒノトリの絵になる(未定)という、

こういう細々とした今にも切れそうな因果関係はちょっと好きです
5.名前が無い程度の能力削除
うーん若干劣化PYTHON氏かなと思ったけど。

これはこれでありかな
6.名前が無い程度の能力削除
確かに「60年の呪縛」は重いですが、だからと言ってwwww
7.名前が無い程度の能力削除
心情描写は良くやってる。

もう少し風景描写がうまくなると絶対にポイント付きでも成功すると思う。

人物の心情を仕草等で表現できるようになればもっと深い作品になる。



期待してます。

がんばってください。
8.名前が無い程度の能力削除
手塚先生の話かとオモタ