「……それで、どうすれば許してくれると思う?」
霧雨魔理沙がアリスとの関係を相談しにやってきた。
これでもう四回目だ。
今回は、人形を壊してしまい、さらに怒り狂うアリスに対して逆ギレしてしまったのが原因らしい。
「どうするもこうするも、素直に謝ればいいだろう」
「それが出来るような雰囲気だったらお前に相談なんかしに来ないって」
私、上白沢慧音は、よくこんな風に相談を受ける。
特に、恋の悩みが多いのだ。
「阿呆か。そうやって謝ろうとしない態度が、彼女の怒りを助長させているというのがわからないのか」
「……そうか。それもそうだな。
ありがとう。じゃあ早速行ってくる」
「ああ、出来ればもう二度とこんな用事で来ないでくれ」
そう言って、魔理沙を見送る。
魔理沙は、ものすごい速さで森の方角へと消えていった。
いつも、このようになんとか何某かの助言を与えて帰しているのだが、
実は私は恋愛経験などまったくないのだ。
そんな私になぜ恋の相談がくるのかというと、輝夜と妹紅の関係によるところが大きい。
簡潔に説明すると、あの二人を見かねてなんとかしようと色々動いたところ、なんと二人はくっついてしまったのだ。
人生何があるかわからないものだ。
うっかりそんな功績を残してしまったために、私は日々恋の相談に乗ることになってしまっている。
私はそんな状況にはっきり言ってうんざりしている。
悪いことをしたとは思っていないが、やはり微塵も後悔していないと言えば嘘になる。
正直に言うと、そんなことよりも自分の恋がしたい。
恋をする側にも色々トラブルがあるようだが、それでも恋人が居ないよりはずっと良いだろう。
相手は男でも女でもいい。
というか、私の知る幻想郷の人妖たちは下手な男よりもよっぽど魅力的な女ばかりだ。
ああ、恋がしたい。
★★★
教師という立場にあるものでも、たまには愚痴を吐きたい時もある。
そんなわけで、私は夜雀の屋台に来ていた。
「……というわけなんだ、大将……だれか、いい人紹介してくれないか……?」
「なるほど、先生も大変だねぇ……でも、残念ながら特にフリー確定してる人ってのは知らないなぁ……
ルーミアは私の……あ、いや、なんでもない」
落ち着け。
落ち着くんだ私。
ミスティアも悪意があって言った訳ではない。
決して惚気たかったがための発言ではない。そうにきまっているんだ。
「……こほん、えーと……じゃ、そんなけーね先生を元気付けるために、ちょっと一曲」
そう言ってミスティアは歌い始める。
彼女の歌はこの店の名物だ。声は非常によく、歌も上手いのだが、
歌詞が変なのが特徴だ。
「目には目を♪歯には歯を♪鉄の拳にゃクロスカウンター♪」
ほら……ん?
「右の頬をぶたれたら♪左の頬を殴り返せ♪」
聖書の教えと似ているようでまったく違う歌詞を尻目に、私は今の閃きを頭の中で整理する。
目には目を……そうか、なぜそんなことに気がつかなかったんだ!
「ありがとう、大将!釣りはいらない!もし足りなかったらツケておいてくれ!後で必ず払う!」
「あ、ちょ、けーね先生!?」
思い立ったが吉日。
私は金を置いて即座に走り出した。
「……まあいいや、お金はおいていってくれたし……
ひい、ふう、みい……って、ぴったりじゃない」
★★★
いつも相談されて、恋をする暇がないというのなら、
逆にそのことを誰かに相談すればいいじゃないか。
そんな発想に駆り立てられて、気づけばあっという間に永遠亭。
自分の知り合いで、自分と同じような知識人といえば、真っ先に八意永琳の名を思い浮かべた。
何せ彼女の二つ名は月の頭脳だ。
そして生きた時間も、不明ではあるがきっと私をはるかに上回っている。
つまり、恋愛経験もきっと豊富……だといいんだけどなぁ。
しかしきっとそうだということにしておかないと、いったい何のためにここまで飛んできたのかわからなくなるので、
とりあえずそういうことにして永遠亭へ突入する。
私は先に話した一件のおかげで永遠亭で顔が知られており、それも結構歓迎される。
本来なら病人として以外そう簡単に会えるはずもない永琳にも、あっさり会うことが出来る。
あの一件も、自分にとって一概に悪いことばかりでもなかったんだなぁ。
そして、早速永琳に面会。
「こんな時間に何の用?」
「ああ、少々相談に乗ってもらいたいことがあってな……
まあ単刀直入に言うと、出会いがほしいんだ」
一言で簡潔に説明した後、私は詳しい経緯を永琳に話した。
「……なるほどねぇ……あなたも結構、大変なのね」
「ああ、このままじゃ、一生独り身のままかもしれない」
さすがにそれは大げさかもしれないと自分では思うが、とりあえずそう言っておく。
同情を引くというのはあまり好きではないが、
永琳は結構な変わり者なのでこのぐらいしないと引き受けてもらえないだろう。
「最初に思いを寄せてた稗田のお嬢は病弱で、彼女はどう頑張っても先に逝くし……」
あれ。
「妹紅は輝夜にとられるし……」
もしかして。
「……気がつけば、周囲は子供と、その親と、カップル成立者のみ……」
……大げさに言うまでもなく私って悲惨だったのか?
自分で言ってて、軽く涙目になってきた。
「……お願いだ!誰か、いなくなったり人にとられたりする心配のない人を紹介してくれ!」
気づけば私は、真剣に声を張り上げ、永琳の肩を掴んでいた。
多分、涙目どころか本気で泣いていただろう。
私を取り巻く状況は、思ったよりも深刻だった。
一刻も早くなんとかしたい。
永琳は、私のそんな様子にうろたえもしないばかりか、にやりとして口を開いた。
「……そうね、それならいい人がいるわ」
「!?だ、誰だ!?教えてくれ!」
ものすごく必死に、永琳にしがみつく。
そんな私を、永琳は抱きしめ返した。
「わ・た・し♪」
どきん、と胸が高鳴り、そのまま私の体は強張る。
その隙を永琳は見逃さず、私を床に組み伏せた。
★★★
私はまた、夜雀の屋台に来ている。
愚痴を吐きに来たのではない。
はたまた、相談事に来たのでもない。
ただなんだか、ひたすら酔いたい気分なのだ。
私は、何とはなしにため息をついた。
傍から見ると永琳に迫られたのが嫌だったように見えるだろうが、そうではない。
あのときからなぜかぼぅっとして、何もかもがおぼつかない。
私の肌にはまだ、永琳に抱きしめられた感覚が残っている。
あんなに積極的に迫られたのは初めてだ。
そして今感じている気持ちも、初めてのものだ。
これが、恋というものだろうか。
ふと、ぼんやりとした意識をミスティアの方に向けると、歌が聞こえてきた。
「フトン~♪マジあったかい~♪フトン~♪マジ気持ちいい~♪」
私はその歌に顔を赤くし、思わず伏せた。
霧雨魔理沙がアリスとの関係を相談しにやってきた。
これでもう四回目だ。
今回は、人形を壊してしまい、さらに怒り狂うアリスに対して逆ギレしてしまったのが原因らしい。
「どうするもこうするも、素直に謝ればいいだろう」
「それが出来るような雰囲気だったらお前に相談なんかしに来ないって」
私、上白沢慧音は、よくこんな風に相談を受ける。
特に、恋の悩みが多いのだ。
「阿呆か。そうやって謝ろうとしない態度が、彼女の怒りを助長させているというのがわからないのか」
「……そうか。それもそうだな。
ありがとう。じゃあ早速行ってくる」
「ああ、出来ればもう二度とこんな用事で来ないでくれ」
そう言って、魔理沙を見送る。
魔理沙は、ものすごい速さで森の方角へと消えていった。
いつも、このようになんとか何某かの助言を与えて帰しているのだが、
実は私は恋愛経験などまったくないのだ。
そんな私になぜ恋の相談がくるのかというと、輝夜と妹紅の関係によるところが大きい。
簡潔に説明すると、あの二人を見かねてなんとかしようと色々動いたところ、なんと二人はくっついてしまったのだ。
人生何があるかわからないものだ。
うっかりそんな功績を残してしまったために、私は日々恋の相談に乗ることになってしまっている。
私はそんな状況にはっきり言ってうんざりしている。
悪いことをしたとは思っていないが、やはり微塵も後悔していないと言えば嘘になる。
正直に言うと、そんなことよりも自分の恋がしたい。
恋をする側にも色々トラブルがあるようだが、それでも恋人が居ないよりはずっと良いだろう。
相手は男でも女でもいい。
というか、私の知る幻想郷の人妖たちは下手な男よりもよっぽど魅力的な女ばかりだ。
ああ、恋がしたい。
★★★
教師という立場にあるものでも、たまには愚痴を吐きたい時もある。
そんなわけで、私は夜雀の屋台に来ていた。
「……というわけなんだ、大将……だれか、いい人紹介してくれないか……?」
「なるほど、先生も大変だねぇ……でも、残念ながら特にフリー確定してる人ってのは知らないなぁ……
ルーミアは私の……あ、いや、なんでもない」
落ち着け。
落ち着くんだ私。
ミスティアも悪意があって言った訳ではない。
決して惚気たかったがための発言ではない。そうにきまっているんだ。
「……こほん、えーと……じゃ、そんなけーね先生を元気付けるために、ちょっと一曲」
そう言ってミスティアは歌い始める。
彼女の歌はこの店の名物だ。声は非常によく、歌も上手いのだが、
歌詞が変なのが特徴だ。
「目には目を♪歯には歯を♪鉄の拳にゃクロスカウンター♪」
ほら……ん?
「右の頬をぶたれたら♪左の頬を殴り返せ♪」
聖書の教えと似ているようでまったく違う歌詞を尻目に、私は今の閃きを頭の中で整理する。
目には目を……そうか、なぜそんなことに気がつかなかったんだ!
「ありがとう、大将!釣りはいらない!もし足りなかったらツケておいてくれ!後で必ず払う!」
「あ、ちょ、けーね先生!?」
思い立ったが吉日。
私は金を置いて即座に走り出した。
「……まあいいや、お金はおいていってくれたし……
ひい、ふう、みい……って、ぴったりじゃない」
★★★
いつも相談されて、恋をする暇がないというのなら、
逆にそのことを誰かに相談すればいいじゃないか。
そんな発想に駆り立てられて、気づけばあっという間に永遠亭。
自分の知り合いで、自分と同じような知識人といえば、真っ先に八意永琳の名を思い浮かべた。
何せ彼女の二つ名は月の頭脳だ。
そして生きた時間も、不明ではあるがきっと私をはるかに上回っている。
つまり、恋愛経験もきっと豊富……だといいんだけどなぁ。
しかしきっとそうだということにしておかないと、いったい何のためにここまで飛んできたのかわからなくなるので、
とりあえずそういうことにして永遠亭へ突入する。
私は先に話した一件のおかげで永遠亭で顔が知られており、それも結構歓迎される。
本来なら病人として以外そう簡単に会えるはずもない永琳にも、あっさり会うことが出来る。
あの一件も、自分にとって一概に悪いことばかりでもなかったんだなぁ。
そして、早速永琳に面会。
「こんな時間に何の用?」
「ああ、少々相談に乗ってもらいたいことがあってな……
まあ単刀直入に言うと、出会いがほしいんだ」
一言で簡潔に説明した後、私は詳しい経緯を永琳に話した。
「……なるほどねぇ……あなたも結構、大変なのね」
「ああ、このままじゃ、一生独り身のままかもしれない」
さすがにそれは大げさかもしれないと自分では思うが、とりあえずそう言っておく。
同情を引くというのはあまり好きではないが、
永琳は結構な変わり者なのでこのぐらいしないと引き受けてもらえないだろう。
「最初に思いを寄せてた稗田のお嬢は病弱で、彼女はどう頑張っても先に逝くし……」
あれ。
「妹紅は輝夜にとられるし……」
もしかして。
「……気がつけば、周囲は子供と、その親と、カップル成立者のみ……」
……大げさに言うまでもなく私って悲惨だったのか?
自分で言ってて、軽く涙目になってきた。
「……お願いだ!誰か、いなくなったり人にとられたりする心配のない人を紹介してくれ!」
気づけば私は、真剣に声を張り上げ、永琳の肩を掴んでいた。
多分、涙目どころか本気で泣いていただろう。
私を取り巻く状況は、思ったよりも深刻だった。
一刻も早くなんとかしたい。
永琳は、私のそんな様子にうろたえもしないばかりか、にやりとして口を開いた。
「……そうね、それならいい人がいるわ」
「!?だ、誰だ!?教えてくれ!」
ものすごく必死に、永琳にしがみつく。
そんな私を、永琳は抱きしめ返した。
「わ・た・し♪」
どきん、と胸が高鳴り、そのまま私の体は強張る。
その隙を永琳は見逃さず、私を床に組み伏せた。
★★★
私はまた、夜雀の屋台に来ている。
愚痴を吐きに来たのではない。
はたまた、相談事に来たのでもない。
ただなんだか、ひたすら酔いたい気分なのだ。
私は、何とはなしにため息をついた。
傍から見ると永琳に迫られたのが嫌だったように見えるだろうが、そうではない。
あのときからなぜかぼぅっとして、何もかもがおぼつかない。
私の肌にはまだ、永琳に抱きしめられた感覚が残っている。
あんなに積極的に迫られたのは初めてだ。
そして今感じている気持ちも、初めてのものだ。
これが、恋というものだろうか。
ふと、ぼんやりとした意識をミスティアの方に向けると、歌が聞こえてきた。
「フトン~♪マジあったかい~♪フトン~♪マジ気持ちいい~♪」
私はその歌に顔を赤くし、思わず伏せた。
けーねの貞s(アポロ13
ラストの歌 …毎月七日はルーミアの日。ですかな。
大分きてるなー
手の早さも天才級。