「魔理沙ー」
「お、何だアリスか?鍵なら開いてるぜ」
「そう。じゃあ遠慮なくあがらせてもらうわ」
「なんだ、俺に何か用か?」
「……にせものー!」
「うわっ!?」
(私が何をした!?今の言葉か?
一人称変えてイメチェンを図っただけなのに、何故だ!?)
★★★
「あれー、みすちー。なにやってるの?」
「あら、ルーミアじゃない。
最近ね、屋台の常連さんが増えたんで、名前と簡単な特徴をメモしてるの」
「へー。なるほどー」
「……にせものー!」
「えっ!?」
(え、私『そーなのかー』しか言っちゃ駄目なの!?)
★★★
「幽々子様、おかわり要りますよね?」
「いや、もういいわ」
「……にせものー!」
「へ!?」
(た、確かに私は今日はどんぶり六杯しか食べてないけど!)
★★★
「霊夢ー……あっ!?」
ドテッ ジャラジャラジャラ
「どうしたの、萃香!?」
「いたた……!しまった、小銭が!早く拾わないと……」
「萃香、大丈夫?」
「……にせものー!」
「どんだけ貪欲なのよあんたの中の私は!」
★★★
「うう、これは完璧に風邪だ……どうしよう……」
「ウドンゲ、大丈夫?」
「しっ、師匠!?」
「風邪薬、作ってきたの。飲んでみなさい」
「は、はい……」
(う、うう……本当はいったい何の薬やら……
かといって飲まないとおしおきだしなぁ……)
「……あ、あれ?なんともない?
どころか、むしろ風邪よくなってる?」
「どう?」
「……にせものー!」
「…………」
(たまには弟子にまともに接してみようと思ったのに……もう遅かったのかしら……)
★★★
「幽香……」
「……な、なに?リグル」
「その……キス、してほしいんだけど……」
「……うん、いいわよ……」
「…………」
「……ど、どうしたの?」」
「……にせものー!」
「え!?」
「だって、幽香は経験豊富で、そういうことは自分からリードするほうだって自分で言ってたもん!」
(……どうしよう、いまさらそんなの嘘で、
キスどころか手を繋ぐことすらリグルが初めてだなんて言えない……)
★★★
「咲夜さん」
「美鈴……」
「……脱がし、ますよ……」
「ん……」
「……にせものー!」
「まだバレてなかったの!?公然の秘密と化してると思ってたのに!?」
★★★
「輝夜ー」
「ん、どしたの妹紅?また殺し合い?」
「い、いや、今日はそうじゃないんだ」
「じゃあ、もしかして私に会いに来てくれたとか?」
「……ああ、そうなんだ」
「……にせものー!」
「んなっ!?」
「妹紅はこんなに素直じゃないわ!」
「悪かったな!たまには普通に一緒に居たいって思ったんだよ!」
「そんな偽者はこうしてやるわ!」
「うわ、ちょ、何をするくぁwせdrftgyふじこlp;@:」
(妹紅がフルネッチョにされたので放送はそこまでよ!です)
★★★
八雲藍は一人、台所で冷たい空気に身をさらしていた。
ちょうど年が明け、冬の寒さもますます厳しくなるころであった。
風もそれなりに強く、戸を閉めなければ雪を伴う冷風が藍を襲うところであった。
しかし気温的な寒さならその尻尾を使って暖を取れば幾らでも凌げる。
今はそれをしていなかったが、たとえそうしていたとしても藍の心は寒かった。
藍は昔から、冬が大嫌いであった。
理由は明白だ。自分の主であり最愛の人である、八雲紫が居ないから。
紫の下で修行を積み、立派な九尾狐となり、橙という式神まで持っても、
強大な力を持ち、気に入らないことがあれば大抵は力でどうにかなるほどになっても、
こればかりはどうしようもなかった。
橙と二人で食べるための御節作りが一段落すると、ふぅ、とため息をつく。
吐き出した白いもやは、すぐに虚空へと消えた。
その料理は、二人で三日がかりで食べるとしても、相当量が多い。
毎年、その余った料理を色々な所へお裾分けしているのだが、
本当はそれを誰に食べてほしいのかは明白であった。
藍は一休みするために、隣の部屋の畳に腰を下ろす。
普通なら橙の主人という立場上あまりだらしない格好はしないのだが、
今日ばかりは足を投げ出して座っていた。
もう御節作りを投げ出して、ごろりと横になって、
何にも考えずに眠ってしまいたいぐらいの気分であったが、
自分ひとりのための御節ではないのでそれはできない。
(……紫様なら、投げたいと思ったら即、投げ捨てるんだろうな……)
紫にもやはり欠点があった。
だらしがないとか、すぐ人にちょっかいを出すとか、怠け者であるとか。
それこそ、掃いて捨ててしまいたいほどに。
しかし、そんな紫さえも藍は愛していた。
そんな欠点など気にならなくなるほど、本当はやさしい人物であることを、藍は誰よりも知っていた。
紫は、自分の式が悲しんでいるのを一度たりとも見逃したことがなかった。
春、春告精の集団に巻き込まれたとき、颯爽と現れて助けてくれた。
夏、夕立に見舞われて帰れなくなったとき、スキマから迎えに来てくれた。
秋、大きな術に失敗して負傷したとき、甲斐甲斐しく看病してくれた。
しかし冬、このときだけは紫でもどうすることもできなかった。
たとえ藍が涙を流しても、紫は眠ってしまっている。
クリスマスの日も。年明けの時も。バレンタインデイも。
冬には特別な日が色々とあるのに、そのいずれにも紫の姿はない。
そのことを思うとますます悲しくなる。
藍も、もう子供ではない。
紫との付き合いだって、十年や二十年ではない。
だからもう平気だと、普段から藍は言っていた。
――それでも、たまに、どうしようもなく寂しいときがある。
そう、ちょうど今みたいに。
ガタガタと音を立てる戸の音が、やけに小さく聞こえる。
そのことに気がつくと、藍は目を見開く。
するといつの間にやら自分は天井を見上げていた。
いかん、つい横になってしまったか。
そう思って身を起こそうとしたとき、藍は頭の下に何かがあることに気がついた。
柔らかく、そして温かいその感触。
藍の良く知る、しかし今は有り得ないはずのもの。
でも彼女は確かに居た。
「……紫、さま?」
恋焦がれていた主人の名を、つぶやく。
いや、口からこぼれた、といったほうが正しいか。
驚きと喜びのあまり、口をあけたまましばらくこれ以上音を発せない。
「……にせもの、では、ありませんよね……」
思わず発してしまった自分の言葉に、怒られるか、と思ったが、
彼女は微笑でそれに返した。
「あら。私みたいな美少女が二人も居たら、たまんないわ。色々と」
「……それもそうですね。『色々と』」
皮肉っぽく、『色々と』を強調して藍は言う。
先ほどまで感じてた寂しさを、悟られないためか。
しかし、そんな藍の頬に紫の指先が触れる。
「そんなこと言っちゃって。寂しかったんじゃない?」
「……わかりますか、やっぱり」
耳元で囁く紫に、藍はすがりつくように抱きつく。
「あら、案外素直なのね」
「こんなところで意地を張るほど、子供ではありません」
「……まあ、そうかもね」
紫は藍の行動に応え、頭をかき撫でる。
藍も、されるがままに頭を撫でられていた。
跳ね上がる自分の髪や紫の手そのものが耳に当たり、少々くすぐったい。
しかしそれさえも非常に心地の良いものであった。
「でも、私からしてみればあなたはずっと私の大事な子供よ」
「……子供、ですか」
その言葉を聞いて、自分の顔が少々歪むのがわかる。
子供、という言葉。
それを、紫はどういう意図で言ったのだろうか。
――自分は彼女の『子供』であり、それ以上でも以下でもないのだろうか。
「あら、不服そうね。恋人、とでも言ってほしかった?」
「…………」
しかし、藍が自分自身でも気づいている変化を、紫が見逃すはずは当然なかった。
そして紫は、やはり藍の心を見透かしていた。
そんな紫から、藍は思わず視線をそらす。
「……そんな大それたこと、とても」
「ずいぶん謙虚なのね」
そう言って微笑みながら、紫は藍の頭に手を伸ばす、
しかしそれは直前で止まる。
すると藍は、紫に懇願するような視線を向けた。
それに対し紫は何も言わない。
ただ、少々意地の悪い笑みを見せて、藍の頭を撫でるだけ。
しかし何が言いたいのかは明白であった。
「……まあいいわ。このことは、私が本当に起きてからゆっくり話しましょう」
「え?」
「今の私はね、夢の中の私なのよ」
紫は、藍に事情を説明した。
紫が言うには、夢と現の境界を利用して、夢の彼女を外に引っ張り出す。
そうすれば、眠ったまま藍に会うことが出来る、ということだ。
とはいえ、当然これは力を使って行うため、起きていられるのはもって一日だということなのだが。
つまり。
先ほどの藍の言葉は、半分だけ当たっていた。
すなわち、今の彼女はにせものだがにせものではない。
「それでね、冬に特別な日は色々あるからいつ起きるか悩んだんだけど、
時期的にもちょうど良いから起きるのは元旦にしたの」
目の前の偽者は、本物とまったく同じ声で藍に語りかける。
それにより藍は、なんともおかしな心地がしていた。
「きっと、元旦ぐらいがあなたの寂しさのピークなんじゃないか、と思ってね」
しかし、彼女はしっかりと藍の心を見透かしている。
こんなことが出来るのは、幻想郷、いや、世界ひろしといえど紫だけである。
二人と居ない、本物の紫だけ。
そしてこの式を気遣う行動も、紛れもなく紫本人の意思なのだ。
紫の言葉に、藍はただうなずくのみ。
何も言うことは出来なかった。
藍は、その顔を朱に染めて。
紫は、その顔に微笑をたたえて。
二人は見つめ合っていた。
しばらく、静けさが場を支配する。
しかし紫の微笑みのためか、それはそう冷たいものではなかった。
いつの間にか、あれほど五月蝿かった戸の音がほとんど聞こえなくなっている。
そして紫は、おもむろに口を開いた。
「……さて、藍。あんまり時間がないわ。
私に、あなたの御節とお雑煮を食べさせて頂戴」
「……はい!」
藍は、足どり軽く台所へと向かう。
作りかけの御節を完成させるために。
本当に食べてもらいたかった相手のために、心を込めて。
風はいつの間にか止んでいたが、まだ雪は静かに降り積もっていた。
冬はまだまだ終わりそうもない。
でももう大丈夫だ。
藍は、紫が本当に起きてくる日を今から楽しみにしながら、包丁を振るっていた。
「お、何だアリスか?鍵なら開いてるぜ」
「そう。じゃあ遠慮なくあがらせてもらうわ」
「なんだ、俺に何か用か?」
「……にせものー!」
「うわっ!?」
(私が何をした!?今の言葉か?
一人称変えてイメチェンを図っただけなのに、何故だ!?)
★★★
「あれー、みすちー。なにやってるの?」
「あら、ルーミアじゃない。
最近ね、屋台の常連さんが増えたんで、名前と簡単な特徴をメモしてるの」
「へー。なるほどー」
「……にせものー!」
「えっ!?」
(え、私『そーなのかー』しか言っちゃ駄目なの!?)
★★★
「幽々子様、おかわり要りますよね?」
「いや、もういいわ」
「……にせものー!」
「へ!?」
(た、確かに私は今日はどんぶり六杯しか食べてないけど!)
★★★
「霊夢ー……あっ!?」
ドテッ ジャラジャラジャラ
「どうしたの、萃香!?」
「いたた……!しまった、小銭が!早く拾わないと……」
「萃香、大丈夫?」
「……にせものー!」
「どんだけ貪欲なのよあんたの中の私は!」
★★★
「うう、これは完璧に風邪だ……どうしよう……」
「ウドンゲ、大丈夫?」
「しっ、師匠!?」
「風邪薬、作ってきたの。飲んでみなさい」
「は、はい……」
(う、うう……本当はいったい何の薬やら……
かといって飲まないとおしおきだしなぁ……)
「……あ、あれ?なんともない?
どころか、むしろ風邪よくなってる?」
「どう?」
「……にせものー!」
「…………」
(たまには弟子にまともに接してみようと思ったのに……もう遅かったのかしら……)
★★★
「幽香……」
「……な、なに?リグル」
「その……キス、してほしいんだけど……」
「……うん、いいわよ……」
「…………」
「……ど、どうしたの?」」
「……にせものー!」
「え!?」
「だって、幽香は経験豊富で、そういうことは自分からリードするほうだって自分で言ってたもん!」
(……どうしよう、いまさらそんなの嘘で、
キスどころか手を繋ぐことすらリグルが初めてだなんて言えない……)
★★★
「咲夜さん」
「美鈴……」
「……脱がし、ますよ……」
「ん……」
「……にせものー!」
「まだバレてなかったの!?公然の秘密と化してると思ってたのに!?」
★★★
「輝夜ー」
「ん、どしたの妹紅?また殺し合い?」
「い、いや、今日はそうじゃないんだ」
「じゃあ、もしかして私に会いに来てくれたとか?」
「……ああ、そうなんだ」
「……にせものー!」
「んなっ!?」
「妹紅はこんなに素直じゃないわ!」
「悪かったな!たまには普通に一緒に居たいって思ったんだよ!」
「そんな偽者はこうしてやるわ!」
「うわ、ちょ、何をするくぁwせdrftgyふじこlp;@:」
(妹紅がフルネッチョにされたので放送はそこまでよ!です)
★★★
八雲藍は一人、台所で冷たい空気に身をさらしていた。
ちょうど年が明け、冬の寒さもますます厳しくなるころであった。
風もそれなりに強く、戸を閉めなければ雪を伴う冷風が藍を襲うところであった。
しかし気温的な寒さならその尻尾を使って暖を取れば幾らでも凌げる。
今はそれをしていなかったが、たとえそうしていたとしても藍の心は寒かった。
藍は昔から、冬が大嫌いであった。
理由は明白だ。自分の主であり最愛の人である、八雲紫が居ないから。
紫の下で修行を積み、立派な九尾狐となり、橙という式神まで持っても、
強大な力を持ち、気に入らないことがあれば大抵は力でどうにかなるほどになっても、
こればかりはどうしようもなかった。
橙と二人で食べるための御節作りが一段落すると、ふぅ、とため息をつく。
吐き出した白いもやは、すぐに虚空へと消えた。
その料理は、二人で三日がかりで食べるとしても、相当量が多い。
毎年、その余った料理を色々な所へお裾分けしているのだが、
本当はそれを誰に食べてほしいのかは明白であった。
藍は一休みするために、隣の部屋の畳に腰を下ろす。
普通なら橙の主人という立場上あまりだらしない格好はしないのだが、
今日ばかりは足を投げ出して座っていた。
もう御節作りを投げ出して、ごろりと横になって、
何にも考えずに眠ってしまいたいぐらいの気分であったが、
自分ひとりのための御節ではないのでそれはできない。
(……紫様なら、投げたいと思ったら即、投げ捨てるんだろうな……)
紫にもやはり欠点があった。
だらしがないとか、すぐ人にちょっかいを出すとか、怠け者であるとか。
それこそ、掃いて捨ててしまいたいほどに。
しかし、そんな紫さえも藍は愛していた。
そんな欠点など気にならなくなるほど、本当はやさしい人物であることを、藍は誰よりも知っていた。
紫は、自分の式が悲しんでいるのを一度たりとも見逃したことがなかった。
春、春告精の集団に巻き込まれたとき、颯爽と現れて助けてくれた。
夏、夕立に見舞われて帰れなくなったとき、スキマから迎えに来てくれた。
秋、大きな術に失敗して負傷したとき、甲斐甲斐しく看病してくれた。
しかし冬、このときだけは紫でもどうすることもできなかった。
たとえ藍が涙を流しても、紫は眠ってしまっている。
クリスマスの日も。年明けの時も。バレンタインデイも。
冬には特別な日が色々とあるのに、そのいずれにも紫の姿はない。
そのことを思うとますます悲しくなる。
藍も、もう子供ではない。
紫との付き合いだって、十年や二十年ではない。
だからもう平気だと、普段から藍は言っていた。
――それでも、たまに、どうしようもなく寂しいときがある。
そう、ちょうど今みたいに。
ガタガタと音を立てる戸の音が、やけに小さく聞こえる。
そのことに気がつくと、藍は目を見開く。
するといつの間にやら自分は天井を見上げていた。
いかん、つい横になってしまったか。
そう思って身を起こそうとしたとき、藍は頭の下に何かがあることに気がついた。
柔らかく、そして温かいその感触。
藍の良く知る、しかし今は有り得ないはずのもの。
でも彼女は確かに居た。
「……紫、さま?」
恋焦がれていた主人の名を、つぶやく。
いや、口からこぼれた、といったほうが正しいか。
驚きと喜びのあまり、口をあけたまましばらくこれ以上音を発せない。
「……にせもの、では、ありませんよね……」
思わず発してしまった自分の言葉に、怒られるか、と思ったが、
彼女は微笑でそれに返した。
「あら。私みたいな美少女が二人も居たら、たまんないわ。色々と」
「……それもそうですね。『色々と』」
皮肉っぽく、『色々と』を強調して藍は言う。
先ほどまで感じてた寂しさを、悟られないためか。
しかし、そんな藍の頬に紫の指先が触れる。
「そんなこと言っちゃって。寂しかったんじゃない?」
「……わかりますか、やっぱり」
耳元で囁く紫に、藍はすがりつくように抱きつく。
「あら、案外素直なのね」
「こんなところで意地を張るほど、子供ではありません」
「……まあ、そうかもね」
紫は藍の行動に応え、頭をかき撫でる。
藍も、されるがままに頭を撫でられていた。
跳ね上がる自分の髪や紫の手そのものが耳に当たり、少々くすぐったい。
しかしそれさえも非常に心地の良いものであった。
「でも、私からしてみればあなたはずっと私の大事な子供よ」
「……子供、ですか」
その言葉を聞いて、自分の顔が少々歪むのがわかる。
子供、という言葉。
それを、紫はどういう意図で言ったのだろうか。
――自分は彼女の『子供』であり、それ以上でも以下でもないのだろうか。
「あら、不服そうね。恋人、とでも言ってほしかった?」
「…………」
しかし、藍が自分自身でも気づいている変化を、紫が見逃すはずは当然なかった。
そして紫は、やはり藍の心を見透かしていた。
そんな紫から、藍は思わず視線をそらす。
「……そんな大それたこと、とても」
「ずいぶん謙虚なのね」
そう言って微笑みながら、紫は藍の頭に手を伸ばす、
しかしそれは直前で止まる。
すると藍は、紫に懇願するような視線を向けた。
それに対し紫は何も言わない。
ただ、少々意地の悪い笑みを見せて、藍の頭を撫でるだけ。
しかし何が言いたいのかは明白であった。
「……まあいいわ。このことは、私が本当に起きてからゆっくり話しましょう」
「え?」
「今の私はね、夢の中の私なのよ」
紫は、藍に事情を説明した。
紫が言うには、夢と現の境界を利用して、夢の彼女を外に引っ張り出す。
そうすれば、眠ったまま藍に会うことが出来る、ということだ。
とはいえ、当然これは力を使って行うため、起きていられるのはもって一日だということなのだが。
つまり。
先ほどの藍の言葉は、半分だけ当たっていた。
すなわち、今の彼女はにせものだがにせものではない。
「それでね、冬に特別な日は色々あるからいつ起きるか悩んだんだけど、
時期的にもちょうど良いから起きるのは元旦にしたの」
目の前の偽者は、本物とまったく同じ声で藍に語りかける。
それにより藍は、なんともおかしな心地がしていた。
「きっと、元旦ぐらいがあなたの寂しさのピークなんじゃないか、と思ってね」
しかし、彼女はしっかりと藍の心を見透かしている。
こんなことが出来るのは、幻想郷、いや、世界ひろしといえど紫だけである。
二人と居ない、本物の紫だけ。
そしてこの式を気遣う行動も、紛れもなく紫本人の意思なのだ。
紫の言葉に、藍はただうなずくのみ。
何も言うことは出来なかった。
藍は、その顔を朱に染めて。
紫は、その顔に微笑をたたえて。
二人は見つめ合っていた。
しばらく、静けさが場を支配する。
しかし紫の微笑みのためか、それはそう冷たいものではなかった。
いつの間にか、あれほど五月蝿かった戸の音がほとんど聞こえなくなっている。
そして紫は、おもむろに口を開いた。
「……さて、藍。あんまり時間がないわ。
私に、あなたの御節とお雑煮を食べさせて頂戴」
「……はい!」
藍は、足どり軽く台所へと向かう。
作りかけの御節を完成させるために。
本当に食べてもらいたかった相手のために、心を込めて。
風はいつの間にか止んでいたが、まだ雪は静かに降り積もっていた。
冬はまだまだ終わりそうもない。
でももう大丈夫だ。
藍は、紫が本当に起きてくる日を今から楽しみにしながら、包丁を振るっていた。
この辺が詳しく知りたいw
暖かいお話ありがとうございます
しかし、その実は星一徹のちゃぶ台返しと同じなんですよね。
そして霊夢が可愛いw
普段どんだけー!
そうかけだもの・・・なのか・・・
俺魔理沙は偽者だと思うべさw