勢いだけです。
幽香好きな方、ごめんなさい。
※ ※ ※
「じゃあ、またね」
私は小川で遊んでいた子供達に手を振る。
「また寺子屋に来てね! 厄神様~!!」
子供達も、私に向かって手を振り、里へと帰っていく。
ここ最近よくある光景。
そんな光景を嫉妬と羨望の目で見ていた一人の女性がいた。
「チッ」
その女性は舌打ちをし、苦虫を潰した様な表情を浮かべていた。
※ ※ ※
自分の居場所に戻ったその女性……
風見 幽香は、先程の厄神と子供達の光景を思いだしていた。
「フン、いい気になっているんじゃないわよ……」
と、ボソッとつぶやく。
そして、何を思いついたのか、いきなり鏡に向かう。
鏡に映った自分を見つめ、鏡の中の自分の目線をにらみつける。
「クッ……」
何か悔しそうな表情を浮かべ、櫛を手に取る。
ジッとその手にとった櫛を見つめる。
そして、目を瞑り何かを思案する。
………
…………
「よし!」
何かを思い立った幽香は、手に取った櫛を自分の髪の毛に当てる。
その表情は、何か決意をした表情だった。
真剣な顔つきで鏡を見つめ、櫛を丁寧に扱う。
一連の作業が終わるまで、その真剣な顔は崩れる事はなかった。
そして、一刻ほど時間が過ぎる。
「よし、これでいいわ……」
※ ※ ※
翌日。
「あ、厄神様だ!!」
「本当だ!!」
小川で遊んでいた子供達が、小川に掛かる橋の上を歩いている厄神を見つけ、声を掛ける。
「厄神様~!!」
手を振りながら橋の上を歩いている厄神のそばに子供達が近寄ってくる。
『来たわ、来たわ! さて、どうしたらいいのかしら?』
橋の上を歩いていた厄神…… いや、変装した風見 幽香は、滅多に見せない様な笑顔を作り、
両手を前で組みながら歩くという厄神のマネをしていた。
『けど、やっぱり本物みたいに厄を体の周りに漂わせる事は出来ないわよね……、これでバレたらどうしようかしら?』
そんな心配をしながら、こちらに向かってくる子供達を笑顔で迎える。
『ああ、なんか新鮮ね! こういうのもいいかもしれないわ』
笑顔でこちらに向かってくる子供達の笑顔をみて、幽香は悦に浸っていた。
「あれ? 厄神様! 今日は厄はどうしたの?」
橋の手前で一人の子供がそれに気づき、歩みを止める。
『やっぱり~!! どうしよう!! え~っと、え~っと……』
幽香の顔は笑顔でも、心の中では大汗。
「き、今日は厄が取れなかったのよ……、 め、珍しい事もあるのよ……」
と、苦し紛れな言葉が口から漏れる。
「ふ~ん、珍しいね! それと厄神様! 風邪ですか? 声がいつもと違うよ?」
また違う子供が突っ込んできた。
『クッ……痛い所を! そうよ、風邪よ風邪! これでいいわ!』
心の中では、「このガキが!」と思いながらも、顔には出さず、笑顔で子供に答える。
「え、ええ、ちょっと風邪をひいたみたいなのよ……、 ヘンな声でゴメンね」
幽香の背中に、何か冷たい物が走る。
「ふ~ん」
何か子供達の目線がおかしいわ。
疑ってる?
偽者ってバレた?
幽香の背中の冷たい物は全身に広がっていた。
『バレたら……、どうしよう……』
幽香は少し後悔していた。
ただ、子供達となかよくお話してみたかった。
昨日の厄神と子供達の光景をみて、素直に「羨ましい」と思ったのよ。
だって、私は里の人間や他の妖怪からも「危険」と言われて、誰も近寄ってこないのよ。
まあ、リグルくらいよね……
だからいいじゃない……、 たまには人恋しくなったって……
一時の夢を私にも見させてよ!!
幽香は心の中で叫んだ。
……
「ねえ、厄神様…… どうしたの? 今日はおかしいよ?」
目が泳いでいた幽香は、子供のその言葉で我を取り戻す。
「え、ええ、やっぱり風邪なのかしらね……、 あまり調子がよくないみたいなの」
そろそろ限界なのかしら?
それともやっぱり、無茶だったのかしら?
幽香の頭の中で、色々な思いが交錯する。
たんなる思いつきで始めたこの変装。
ただ、髪の色が同じなだけで、髪型と服装だけ同じにすれば大丈夫だと思っていたわ。
けど、やっぱり対象となる相手の細かいクセやしゃべり方なんかも勉強するべきだったわ。
……やっぱり思いつきは良くないわ……
そう思った幽香は、急いでこの場を立ち去ろうと決めた。
「じゃ、ゴメンね。 調子が悪いから今日は早く帰るね」
そう言い、子供達に手を振りながら、帰って行く。
「厄神様~!! そっちは山じゃないよ!」と子供達に突っ込まれていたけど、
もういいわ…… 疲れたわ……
何かいつもと違う厄神を見ていた子供達は、「おかしいの……」と思いながら、その背中を見つめていた。
※ ※ ※
「どうだった? おもしろかった?」
橋の下の河原で、厄神…… 今度は本物の鍵山 雛が笑いを堪えながら子供達に聞いていた。
「うん、とってもヘンなの!!」
「あれで変装していると思っているのかな?」
子供達は、好き勝手に言い放題。
「あやや、これはいい記事になりますね! ご協力感謝します!!」
と、カメラ片手に射命丸も笑いを堪えていた。
そう、最初から全部分かっていたの。
昨日の段階で、幽香がこちらを見ているという事も。
だって、あんなに殺気立っていたら分からない方がおかしいわよ?
それに、中途半端な変装。
いくら、髪の色が同じでも、長さが違うのよ。
前髪のリボンの先が、小筆の先にみたいにチョッピリしかないのよ!!
それに、スカートの「厄」の文字!!
つけている場所が逆よ逆!
それに、ただグルグルと丸を描いているだけじゃないの。
それと後、私が左腕につけているリボン!!
幽香は、右腕につけていたわ。
これも逆よ!
なんか他にも色々と突っ込み所があったけど、それは後日出る「文々。新聞」で細かく書かれるでしょうね。
あ~、面白かったわ。
「僕も、笑いを堪えるのが大変だったんだよ~」
「僕も~!!」
「いつもの様に話すのが難しかった~!!」
子供達も、大変だったようね。
「さ、今日はもう帰りましょう。 笑いを堪えていたからお腹が痛いわ……」
「は~い、じゃあ厄神様! また明日ね~!!」
「新聞が出来たら、すぐに持ってきますね、じゃあご協力感謝いたします!!」
そう言い、それぞれが自宅へ帰って行った……
※ ※ ※
「幻想郷に、2人の厄神が!?」
後日出た「文々。新聞」の見出しには、大きくこう書かれていた。
見開きには、「本物」と「偽者」との対比した写真が大きく掲載されており、
いかに偽者の方が陳腐であるかが一目瞭然だった。
「風の噂によると、幻想郷にあの「厄神」の偽者が出現したらしい。
見た目は、この新聞に載せている写真を参考にして欲しい。 ただ、決して
幽霊などではない。あと見極める手段として、匂いがある。 とてもいい花の
香りがするとの話もある。
でも、正体が分からないので、無闇に近づくのは危険である。
すばやい博麗の巫女の対応が望まれる」
※ ※ ※
それから数日後。
ひまわり畑にいる幽香の所に遊びに行ったリグルは、笑いを堪えるのに必死だった。
新聞を見ていない幽香は、訳が分からなかった。
……そう、幽香以外の幻想郷の住人は、知ってしまった……
……幽香が中途半端な厄神の変装をしていたという事を……
その事に幽香が気づくのは、当分先の話であった。
幽香好きな方、ごめんなさい。
※ ※ ※
「じゃあ、またね」
私は小川で遊んでいた子供達に手を振る。
「また寺子屋に来てね! 厄神様~!!」
子供達も、私に向かって手を振り、里へと帰っていく。
ここ最近よくある光景。
そんな光景を嫉妬と羨望の目で見ていた一人の女性がいた。
「チッ」
その女性は舌打ちをし、苦虫を潰した様な表情を浮かべていた。
※ ※ ※
自分の居場所に戻ったその女性……
風見 幽香は、先程の厄神と子供達の光景を思いだしていた。
「フン、いい気になっているんじゃないわよ……」
と、ボソッとつぶやく。
そして、何を思いついたのか、いきなり鏡に向かう。
鏡に映った自分を見つめ、鏡の中の自分の目線をにらみつける。
「クッ……」
何か悔しそうな表情を浮かべ、櫛を手に取る。
ジッとその手にとった櫛を見つめる。
そして、目を瞑り何かを思案する。
………
…………
「よし!」
何かを思い立った幽香は、手に取った櫛を自分の髪の毛に当てる。
その表情は、何か決意をした表情だった。
真剣な顔つきで鏡を見つめ、櫛を丁寧に扱う。
一連の作業が終わるまで、その真剣な顔は崩れる事はなかった。
そして、一刻ほど時間が過ぎる。
「よし、これでいいわ……」
※ ※ ※
翌日。
「あ、厄神様だ!!」
「本当だ!!」
小川で遊んでいた子供達が、小川に掛かる橋の上を歩いている厄神を見つけ、声を掛ける。
「厄神様~!!」
手を振りながら橋の上を歩いている厄神のそばに子供達が近寄ってくる。
『来たわ、来たわ! さて、どうしたらいいのかしら?』
橋の上を歩いていた厄神…… いや、変装した風見 幽香は、滅多に見せない様な笑顔を作り、
両手を前で組みながら歩くという厄神のマネをしていた。
『けど、やっぱり本物みたいに厄を体の周りに漂わせる事は出来ないわよね……、これでバレたらどうしようかしら?』
そんな心配をしながら、こちらに向かってくる子供達を笑顔で迎える。
『ああ、なんか新鮮ね! こういうのもいいかもしれないわ』
笑顔でこちらに向かってくる子供達の笑顔をみて、幽香は悦に浸っていた。
「あれ? 厄神様! 今日は厄はどうしたの?」
橋の手前で一人の子供がそれに気づき、歩みを止める。
『やっぱり~!! どうしよう!! え~っと、え~っと……』
幽香の顔は笑顔でも、心の中では大汗。
「き、今日は厄が取れなかったのよ……、 め、珍しい事もあるのよ……」
と、苦し紛れな言葉が口から漏れる。
「ふ~ん、珍しいね! それと厄神様! 風邪ですか? 声がいつもと違うよ?」
また違う子供が突っ込んできた。
『クッ……痛い所を! そうよ、風邪よ風邪! これでいいわ!』
心の中では、「このガキが!」と思いながらも、顔には出さず、笑顔で子供に答える。
「え、ええ、ちょっと風邪をひいたみたいなのよ……、 ヘンな声でゴメンね」
幽香の背中に、何か冷たい物が走る。
「ふ~ん」
何か子供達の目線がおかしいわ。
疑ってる?
偽者ってバレた?
幽香の背中の冷たい物は全身に広がっていた。
『バレたら……、どうしよう……』
幽香は少し後悔していた。
ただ、子供達となかよくお話してみたかった。
昨日の厄神と子供達の光景をみて、素直に「羨ましい」と思ったのよ。
だって、私は里の人間や他の妖怪からも「危険」と言われて、誰も近寄ってこないのよ。
まあ、リグルくらいよね……
だからいいじゃない……、 たまには人恋しくなったって……
一時の夢を私にも見させてよ!!
幽香は心の中で叫んだ。
……
「ねえ、厄神様…… どうしたの? 今日はおかしいよ?」
目が泳いでいた幽香は、子供のその言葉で我を取り戻す。
「え、ええ、やっぱり風邪なのかしらね……、 あまり調子がよくないみたいなの」
そろそろ限界なのかしら?
それともやっぱり、無茶だったのかしら?
幽香の頭の中で、色々な思いが交錯する。
たんなる思いつきで始めたこの変装。
ただ、髪の色が同じなだけで、髪型と服装だけ同じにすれば大丈夫だと思っていたわ。
けど、やっぱり対象となる相手の細かいクセやしゃべり方なんかも勉強するべきだったわ。
……やっぱり思いつきは良くないわ……
そう思った幽香は、急いでこの場を立ち去ろうと決めた。
「じゃ、ゴメンね。 調子が悪いから今日は早く帰るね」
そう言い、子供達に手を振りながら、帰って行く。
「厄神様~!! そっちは山じゃないよ!」と子供達に突っ込まれていたけど、
もういいわ…… 疲れたわ……
何かいつもと違う厄神を見ていた子供達は、「おかしいの……」と思いながら、その背中を見つめていた。
※ ※ ※
「どうだった? おもしろかった?」
橋の下の河原で、厄神…… 今度は本物の鍵山 雛が笑いを堪えながら子供達に聞いていた。
「うん、とってもヘンなの!!」
「あれで変装していると思っているのかな?」
子供達は、好き勝手に言い放題。
「あやや、これはいい記事になりますね! ご協力感謝します!!」
と、カメラ片手に射命丸も笑いを堪えていた。
そう、最初から全部分かっていたの。
昨日の段階で、幽香がこちらを見ているという事も。
だって、あんなに殺気立っていたら分からない方がおかしいわよ?
それに、中途半端な変装。
いくら、髪の色が同じでも、長さが違うのよ。
前髪のリボンの先が、小筆の先にみたいにチョッピリしかないのよ!!
それに、スカートの「厄」の文字!!
つけている場所が逆よ逆!
それに、ただグルグルと丸を描いているだけじゃないの。
それと後、私が左腕につけているリボン!!
幽香は、右腕につけていたわ。
これも逆よ!
なんか他にも色々と突っ込み所があったけど、それは後日出る「文々。新聞」で細かく書かれるでしょうね。
あ~、面白かったわ。
「僕も、笑いを堪えるのが大変だったんだよ~」
「僕も~!!」
「いつもの様に話すのが難しかった~!!」
子供達も、大変だったようね。
「さ、今日はもう帰りましょう。 笑いを堪えていたからお腹が痛いわ……」
「は~い、じゃあ厄神様! また明日ね~!!」
「新聞が出来たら、すぐに持ってきますね、じゃあご協力感謝いたします!!」
そう言い、それぞれが自宅へ帰って行った……
※ ※ ※
「幻想郷に、2人の厄神が!?」
後日出た「文々。新聞」の見出しには、大きくこう書かれていた。
見開きには、「本物」と「偽者」との対比した写真が大きく掲載されており、
いかに偽者の方が陳腐であるかが一目瞭然だった。
「風の噂によると、幻想郷にあの「厄神」の偽者が出現したらしい。
見た目は、この新聞に載せている写真を参考にして欲しい。 ただ、決して
幽霊などではない。あと見極める手段として、匂いがある。 とてもいい花の
香りがするとの話もある。
でも、正体が分からないので、無闇に近づくのは危険である。
すばやい博麗の巫女の対応が望まれる」
※ ※ ※
それから数日後。
ひまわり畑にいる幽香の所に遊びに行ったリグルは、笑いを堪えるのに必死だった。
新聞を見ていない幽香は、訳が分からなかった。
……そう、幽香以外の幻想郷の住人は、知ってしまった……
……幽香が中途半端な厄神の変装をしていたという事を……
その事に幽香が気づくのは、当分先の話であった。
思わず抱きしめたくなりますw
今回のことで子供たちが幽香はそれほど怖くないとわかって話しかけるくらいになってくれるといいな
このあと新聞に気付いてキレた幽香が文へとお礼まいりする姿を想像してしまい身震いしたよ。
花薫る厄神様も良いかもね~。
今の季節なら「つづじ」かな??。
ギャグではなく良い話として読んでも素敵だと思う。