早朝から少し曇り気味の空は悪い知らせだったのだろうか。
守矢神社の巫女、東風谷早苗はあるものを手にして驚愕していた。
「ま、まさか、そんな………」
緑色を基調にした手の平サイズの物体からピーピーという警告音が発せられていた。
それは外の世界ではさほど珍しくない、すなわち“携帯電話”である。
携帯電話の発する音が示すもの。
「電池切れ……」
STAGE 1 東風谷、出陣?
参った。こればかりは参った。
ドタバタしながら幻想郷へ引っ越した早苗は、そこが生きていけるだけの環境があるとは神さまたちから教えられていたものの、近代機器が役に立たなくなるとは知らされていなかったのだ。
現代っ子の早苗は「まあ、大丈夫かな」という気軽な気持ちで携帯電話を持ってきてしまったのだが、この幻想郷。
「どうしよう……神社にはコンセントなんてないのに………」
困り果てたところに二人の神さまが揃ってやってきた。
「なんだい早苗、顔が真っ青じゃないか」
風神、八坂神奈子は「水飲む?」と言いながら早苗に水の入ったコップを差し出した。
厚意を跳ね除けるわけにもいかず、早苗は震える手で「ありがとうございます」と礼を言ってからコップを受け取る。
「あれー? 私にはお水くれないの、神奈子? あれれー?」
早苗とは正反対に顔を真っ赤にしてキャッキャッと子どものようにはしゃいでいるのは本殿に住まう洩矢諏訪子。
元気な人だと思いながら早苗がため息をつくと、神さまたちは一様にぎょっと目を見開いて驚いたのだった。
「どうしたのよ、お腹でも痛いの? 何かあるなら言ってみ?」
「そうよ早苗、神奈子は頼りにならないけど何か悩みがあるなら聞いてあげるからさ」
二人の神に励まされ、おずおずと早苗は問題のものを見せた。
「じ、じつは……」
「「ふむふむ?」」
「アイアプリができなくなってしまって」
神奈子は時間が止まってしまった!!
諏訪子は凍りついてうごけない!!
早苗の手はまるで薬の禁断症状のように震えていて、今にも手のうえにある携帯電話が落ちてしまいそうだった。
「いっそのこと止めたらどう?」
「ギルティをやめるくらいなら滝に飛び込んで死にます!!!」
ギル中毒かよ。神奈子は盛大にため息をついた。
「パソコンとPSPはどうしたのよ? 確か早苗、あっちにもそのゲームが入っていたでしょ?」
「諏訪子様。それは一週間前の話です」
「あーうー……、じゃあその携帯電話が事実上の最後の命綱だったわけね」
苦笑いをする諏訪子。命綱とは大層な物言いだが、今の早苗にはぴったりかもしれない。
「でもさあ、携帯電話とかってそんなに長く持つものだったっけ?」
「予備のバッテリーと乾電池で動く充電器を用意していたのですが、そちらも品切れになってしまいまして」
「手持ちの電力が尽きた、と。よくあのドタバタのあいだに揃えたものねえ」
「常に一か月分の備蓄がありましたから」
そのなかに賽銭で買ったものが入っていないだろうか。少々心配になりながらも二人の神さまは再び思案をめぐらす。
と、外から羽のはためく音がした。
「あややだ」
「洩矢さま、いい加減にその呼び名はやめてもらえます?」
幻想のブンヤは呆れ顔で「はい、どうぞ」と諏訪子に新聞を手渡した。
他所では大胆な彼女もさすがに神が相手では慎ましやかな態度を取るようだ。
「射命丸、いいところに来たね。ちょっと相談にのってくれるかしら」
「いいですよ、働きに見合うものは貰いますが」
「がめついねえ。実は、早苗が困ったことになってね。この幻想郷でコンセントのある家がないか探して欲しいんだけど」
「あ、それなら二件ありますよ。永遠亭と香霖堂です」
あるのかよ、と諏訪子が毒づいたが何より強く反応したのは早苗だった。
「本当ですか!!?」
「はい。永遠亭では鈴仙さんが“ドライヤー”なるもので耳を乾かしているのを目撃しましたし、香霖堂では冬になると店主が“ストーブ”なるもので暖かく過ごしていますよ」
どちらも電気を必要とする電気用品だ。早苗は胸が躍る気持ちで部屋に戻ると携帯電話を持って一直線に山を降りていった。
取り残された三人は早苗が走り去っていくのをただ呆然と見送った。
STAGE 2 飯が尽きるとも信仰は死せず
神奈子、諏訪子の両名は神社の食事所にて倒れていた。
原因は栄養失調、飢え。しかし喉だけは酒で潤っている奇妙な状況。
あれから一週間。そう、東風谷早苗は一週間も守矢神社に戻ってきていないのだ。
「神奈子~」
「なによ~」
「腹減った~」
「私も~」
このままでは飢えてしまう、早苗カムバックと祈るものの彼女は一向に帰ってこない。
「早苗がいなかったらさ~」
「なんにもできないって~?」
「そう~」
曲がりなりにも神さま。もちろんプライドが高く、何の手も加えられていない野菜を生でかじるなどできない。
諏訪子は別にそんなことはどうでもよかったのだが、神奈子が頑なに拒否するので一緒になって断食しているのであった。
「あややー、こりゃ思ったより重症ですね」
そんなとき、黒い翼の天使が舞い降りた。
射命丸あややである。
「文ですってば」
失敬。
「射命丸~」
「射命丸~ぅ」
「ふふふ、こんなこともあろうかと助っ人を呼んできて正解でしたね!! 人材派遣の射命丸、本領発揮です!!」
「「助っ人?」」
「さあ、どうぞ中へ!!」
じゃーんと口で効果音を出した文が颯爽と鳥居の向こう側へと手を伸ばし、連れてきた誰かを呼んだ。
諏訪子と神奈子ものそのそと這いながらそちらへ目を向けると、階段を上ってやってくる金髪碧眼の少女を見つけた。
「魔理沙に作らされているから和食、洋食なんでもござれ!! 裁縫だってお手の物!! 魔法の森の人形遣い、アリス・マーガトロイドさんでーすっ!!!」
「こんな山奥まで連れていかれて、まさか炊事をやらされるなんて思ってなかったけどね」
文句を言いながらやってくるアリス。そのときの彼女はまるで救いをもたらず女神に見えたと、のちに洩矢諏訪子は言う。
『だって私のアリスちゃんだもの!!』
歩いてお帰り。ともかく神さまたちはアリスのおかげで飢え死にせずに済んだのだった。
そしてこの日をきっかけにアリスは脇巫女に転身することになるのだが、それはまた別のお話。
STAGE 3 連鎖反応っていやらしく聞こえる
アリスが守矢神社に家事で赴くようになってから三日。幻想郷で大変なことが起きた。
家主不在のアリス宅を訪れた魔理沙は「魔理沙、ごめんなさい」という置手紙を見つけてヴワル図書館へスターダストレヴァリエの勢いで飛び込むと。
「アリスが………ひっく、アリスが私とはもう会わないって……ひっく」
と、図書館の主の豊満な胸元へと泣きじゃくりながら飛び込めば、図書館の主は恍惚とした表情で吐血しながら魔理沙の頭を撫でて慰めてやり(2連鎖)
「ちくしょう……ッ、魔理沙さんが、私のエデンを盗んで……!」
本棚の陰から二人を見ていた図書館の司書が門番に抱きついて愚痴をこぼせば。(3連鎖)
「最近美鈴が冷たいと思ったら、小悪魔がたぶらかしていたんですぅ……!!」
建物の陰から門番をストーキングしていたメイド長が紅魔館の主に泣きついて。(4連鎖)
「あのパッド長が私のお姉さまを………くすん」
さらには偶然、ドアの隙間から見ていたフランドールがチルノのところへと駆け込んだ。(5連鎖)
そうして紅魔館は機能を停止。主要人物の全滅に要した時間はたったの三分。
だが連鎖はこれだけでは終わらなかった。フランとチルノの逢瀬を見ていたものが存在したのだ。
「チルノちゃん……そんな、そんなことって……!?」
チルノの親友の大妖精である。(6連鎖)
さらに連鎖は続く。
「大妖精が、大妖精が、小柄と貧乳とボーイッシュな顔立ちで私のお茶目なバッドボーイなリグルを………!!」
大妖精が蟲の王に相談に訪れれば愛を求めてさまようフラワーマスターがそれを目撃して。(7連鎖)
「幽香が……霊夢がぁぁ……」
博麗神社に駆け込んだフラワーマスターを、面倒くさそうな顔をしながらもしっかりと慰めている巫女を鬼とスキマ妖怪がそろって目撃してしまい涙腺がポロロッカ。(8連鎖)
「藍さまぁ……かまってよぉぉ……」
挙句の果てには「藍、慰めてー!!」と飛び込んできた主と鬼に狐の式神を占拠されてしまった黒猫がマヨヒガを飛び出してしまった。(9連鎖)
マヨヒガ、博麗神社崩壊。所要時間はわずか十分。
これを見て「まずいわ」と唸ったのが最初にアリスを守矢神社に派遣した射命丸あやや。彼女は一連の騒動のすべてを見ていた。
「文ですってば」
これはまた失敬。
「このままでは被害が拡大していく一方……。まだ親交の浅い山側の面々には被害が及んでいないようですが、急いで早苗さんを見つけ出す必要がありますね」
神妙な面持ちで文は空を翔る。
行く先は二つ。香霖堂と永遠亭だ。
ここにしか電気はない。早苗が行くとすればその二つしかないのだ。
「あややややー!! 霖之助さん、いますかーっ!!?」
「ノックもしないで戸を蹴破るなんてひどいことをする。で、何の用かな」
「早苗さーんっ、いたら返事をしてくださーいっ!!」
呼ばれて出てきた店主を無視して店を荒らす天狗。これには店主も渋い顔。
「早苗さんなら来たけどすぐに永遠亭へ行ってしまったよ。なんでも気軽に充電できる方法が知りたいだとか」
「早苗さんっ!!!」
店主の言葉を聞くや否や、文は疾風の如く店の外へと飛び出してすぐに消えていった。
残された店主の心も知らず、今度は竹林のなかにひっそりと佇む永遠亭へと飛び込んでいった。
「早苗さんはいますか!!?」
「てゐが……くすん、私のふわふわ抱き枕が……」
「ここにも連鎖反応の波がッッッ!!?」
ちなみに橙→ミスティア(ルーミアが目撃)、ルーミア→慧音(妹紅)、妹紅→輝夜(永琳)、永琳→てゐ(鈴仙)で13連鎖目。
泣いている鈴仙は「助けて妖夢―!!!」と泣き叫びながら空高くへと飛び去っていった。
「まずい……まさかこんなに早く侵蝕が進むなんて……!?」
永遠亭はもうダメだ。鈴仙が向かった先があの庭師であるのなら次は白玉楼、そして霊魂つながりで彼岸塚へと及ぶだろう。
西行寺の主からマヨヒガへとループは考えたくない。そして他所との親交がほとんどない彼岸塚から被害の及ぶ場所がないとは言い切れない。
「早苗さん!! いたら返事をしてください!! って、うわぁっ!!?」
統率者を失ったウサギたちが永遠亭の色んな部屋から飛び出して外へと逃げ出していく。
食べる飯がなくなれば外へ求める。永遠亭、なんというサバイバル魂。
「文さーんっ!!」
空から飛んでくる声に振り向けば、部下の天狗がひらりと竹林に舞い降りる。
「椛!!」
「文さん! 早苗さんが見つかりました!!」
「本当ですか!? して、場所は!!」
「谷河童のにとりさんと自家発電ができる機械を製作していました」
守矢神社の巫女、東風谷早苗はあるものを手にして驚愕していた。
「ま、まさか、そんな………」
緑色を基調にした手の平サイズの物体からピーピーという警告音が発せられていた。
それは外の世界ではさほど珍しくない、すなわち“携帯電話”である。
携帯電話の発する音が示すもの。
「電池切れ……」
STAGE 1 東風谷、出陣?
参った。こればかりは参った。
ドタバタしながら幻想郷へ引っ越した早苗は、そこが生きていけるだけの環境があるとは神さまたちから教えられていたものの、近代機器が役に立たなくなるとは知らされていなかったのだ。
現代っ子の早苗は「まあ、大丈夫かな」という気軽な気持ちで携帯電話を持ってきてしまったのだが、この幻想郷。
「どうしよう……神社にはコンセントなんてないのに………」
困り果てたところに二人の神さまが揃ってやってきた。
「なんだい早苗、顔が真っ青じゃないか」
風神、八坂神奈子は「水飲む?」と言いながら早苗に水の入ったコップを差し出した。
厚意を跳ね除けるわけにもいかず、早苗は震える手で「ありがとうございます」と礼を言ってからコップを受け取る。
「あれー? 私にはお水くれないの、神奈子? あれれー?」
早苗とは正反対に顔を真っ赤にしてキャッキャッと子どものようにはしゃいでいるのは本殿に住まう洩矢諏訪子。
元気な人だと思いながら早苗がため息をつくと、神さまたちは一様にぎょっと目を見開いて驚いたのだった。
「どうしたのよ、お腹でも痛いの? 何かあるなら言ってみ?」
「そうよ早苗、神奈子は頼りにならないけど何か悩みがあるなら聞いてあげるからさ」
二人の神に励まされ、おずおずと早苗は問題のものを見せた。
「じ、じつは……」
「「ふむふむ?」」
「アイアプリができなくなってしまって」
神奈子は時間が止まってしまった!!
諏訪子は凍りついてうごけない!!
早苗の手はまるで薬の禁断症状のように震えていて、今にも手のうえにある携帯電話が落ちてしまいそうだった。
「いっそのこと止めたらどう?」
「ギルティをやめるくらいなら滝に飛び込んで死にます!!!」
ギル中毒かよ。神奈子は盛大にため息をついた。
「パソコンとPSPはどうしたのよ? 確か早苗、あっちにもそのゲームが入っていたでしょ?」
「諏訪子様。それは一週間前の話です」
「あーうー……、じゃあその携帯電話が事実上の最後の命綱だったわけね」
苦笑いをする諏訪子。命綱とは大層な物言いだが、今の早苗にはぴったりかもしれない。
「でもさあ、携帯電話とかってそんなに長く持つものだったっけ?」
「予備のバッテリーと乾電池で動く充電器を用意していたのですが、そちらも品切れになってしまいまして」
「手持ちの電力が尽きた、と。よくあのドタバタのあいだに揃えたものねえ」
「常に一か月分の備蓄がありましたから」
そのなかに賽銭で買ったものが入っていないだろうか。少々心配になりながらも二人の神さまは再び思案をめぐらす。
と、外から羽のはためく音がした。
「あややだ」
「洩矢さま、いい加減にその呼び名はやめてもらえます?」
幻想のブンヤは呆れ顔で「はい、どうぞ」と諏訪子に新聞を手渡した。
他所では大胆な彼女もさすがに神が相手では慎ましやかな態度を取るようだ。
「射命丸、いいところに来たね。ちょっと相談にのってくれるかしら」
「いいですよ、働きに見合うものは貰いますが」
「がめついねえ。実は、早苗が困ったことになってね。この幻想郷でコンセントのある家がないか探して欲しいんだけど」
「あ、それなら二件ありますよ。永遠亭と香霖堂です」
あるのかよ、と諏訪子が毒づいたが何より強く反応したのは早苗だった。
「本当ですか!!?」
「はい。永遠亭では鈴仙さんが“ドライヤー”なるもので耳を乾かしているのを目撃しましたし、香霖堂では冬になると店主が“ストーブ”なるもので暖かく過ごしていますよ」
どちらも電気を必要とする電気用品だ。早苗は胸が躍る気持ちで部屋に戻ると携帯電話を持って一直線に山を降りていった。
取り残された三人は早苗が走り去っていくのをただ呆然と見送った。
STAGE 2 飯が尽きるとも信仰は死せず
神奈子、諏訪子の両名は神社の食事所にて倒れていた。
原因は栄養失調、飢え。しかし喉だけは酒で潤っている奇妙な状況。
あれから一週間。そう、東風谷早苗は一週間も守矢神社に戻ってきていないのだ。
「神奈子~」
「なによ~」
「腹減った~」
「私も~」
このままでは飢えてしまう、早苗カムバックと祈るものの彼女は一向に帰ってこない。
「早苗がいなかったらさ~」
「なんにもできないって~?」
「そう~」
曲がりなりにも神さま。もちろんプライドが高く、何の手も加えられていない野菜を生でかじるなどできない。
諏訪子は別にそんなことはどうでもよかったのだが、神奈子が頑なに拒否するので一緒になって断食しているのであった。
「あややー、こりゃ思ったより重症ですね」
そんなとき、黒い翼の天使が舞い降りた。
射命丸あややである。
「文ですってば」
失敬。
「射命丸~」
「射命丸~ぅ」
「ふふふ、こんなこともあろうかと助っ人を呼んできて正解でしたね!! 人材派遣の射命丸、本領発揮です!!」
「「助っ人?」」
「さあ、どうぞ中へ!!」
じゃーんと口で効果音を出した文が颯爽と鳥居の向こう側へと手を伸ばし、連れてきた誰かを呼んだ。
諏訪子と神奈子ものそのそと這いながらそちらへ目を向けると、階段を上ってやってくる金髪碧眼の少女を見つけた。
「魔理沙に作らされているから和食、洋食なんでもござれ!! 裁縫だってお手の物!! 魔法の森の人形遣い、アリス・マーガトロイドさんでーすっ!!!」
「こんな山奥まで連れていかれて、まさか炊事をやらされるなんて思ってなかったけどね」
文句を言いながらやってくるアリス。そのときの彼女はまるで救いをもたらず女神に見えたと、のちに洩矢諏訪子は言う。
『だって私のアリスちゃんだもの!!』
歩いてお帰り。ともかく神さまたちはアリスのおかげで飢え死にせずに済んだのだった。
そしてこの日をきっかけにアリスは脇巫女に転身することになるのだが、それはまた別のお話。
STAGE 3 連鎖反応っていやらしく聞こえる
アリスが守矢神社に家事で赴くようになってから三日。幻想郷で大変なことが起きた。
家主不在のアリス宅を訪れた魔理沙は「魔理沙、ごめんなさい」という置手紙を見つけてヴワル図書館へスターダストレヴァリエの勢いで飛び込むと。
「アリスが………ひっく、アリスが私とはもう会わないって……ひっく」
と、図書館の主の豊満な胸元へと泣きじゃくりながら飛び込めば、図書館の主は恍惚とした表情で吐血しながら魔理沙の頭を撫でて慰めてやり(2連鎖)
「ちくしょう……ッ、魔理沙さんが、私のエデンを盗んで……!」
本棚の陰から二人を見ていた図書館の司書が門番に抱きついて愚痴をこぼせば。(3連鎖)
「最近美鈴が冷たいと思ったら、小悪魔がたぶらかしていたんですぅ……!!」
建物の陰から門番をストーキングしていたメイド長が紅魔館の主に泣きついて。(4連鎖)
「あのパッド長が私のお姉さまを………くすん」
さらには偶然、ドアの隙間から見ていたフランドールがチルノのところへと駆け込んだ。(5連鎖)
そうして紅魔館は機能を停止。主要人物の全滅に要した時間はたったの三分。
だが連鎖はこれだけでは終わらなかった。フランとチルノの逢瀬を見ていたものが存在したのだ。
「チルノちゃん……そんな、そんなことって……!?」
チルノの親友の大妖精である。(6連鎖)
さらに連鎖は続く。
「大妖精が、大妖精が、小柄と貧乳とボーイッシュな顔立ちで私のお茶目なバッドボーイなリグルを………!!」
大妖精が蟲の王に相談に訪れれば愛を求めてさまようフラワーマスターがそれを目撃して。(7連鎖)
「幽香が……霊夢がぁぁ……」
博麗神社に駆け込んだフラワーマスターを、面倒くさそうな顔をしながらもしっかりと慰めている巫女を鬼とスキマ妖怪がそろって目撃してしまい涙腺がポロロッカ。(8連鎖)
「藍さまぁ……かまってよぉぉ……」
挙句の果てには「藍、慰めてー!!」と飛び込んできた主と鬼に狐の式神を占拠されてしまった黒猫がマヨヒガを飛び出してしまった。(9連鎖)
マヨヒガ、博麗神社崩壊。所要時間はわずか十分。
これを見て「まずいわ」と唸ったのが最初にアリスを守矢神社に派遣した射命丸あやや。彼女は一連の騒動のすべてを見ていた。
「文ですってば」
これはまた失敬。
「このままでは被害が拡大していく一方……。まだ親交の浅い山側の面々には被害が及んでいないようですが、急いで早苗さんを見つけ出す必要がありますね」
神妙な面持ちで文は空を翔る。
行く先は二つ。香霖堂と永遠亭だ。
ここにしか電気はない。早苗が行くとすればその二つしかないのだ。
「あややややー!! 霖之助さん、いますかーっ!!?」
「ノックもしないで戸を蹴破るなんてひどいことをする。で、何の用かな」
「早苗さーんっ、いたら返事をしてくださーいっ!!」
呼ばれて出てきた店主を無視して店を荒らす天狗。これには店主も渋い顔。
「早苗さんなら来たけどすぐに永遠亭へ行ってしまったよ。なんでも気軽に充電できる方法が知りたいだとか」
「早苗さんっ!!!」
店主の言葉を聞くや否や、文は疾風の如く店の外へと飛び出してすぐに消えていった。
残された店主の心も知らず、今度は竹林のなかにひっそりと佇む永遠亭へと飛び込んでいった。
「早苗さんはいますか!!?」
「てゐが……くすん、私のふわふわ抱き枕が……」
「ここにも連鎖反応の波がッッッ!!?」
ちなみに橙→ミスティア(ルーミアが目撃)、ルーミア→慧音(妹紅)、妹紅→輝夜(永琳)、永琳→てゐ(鈴仙)で13連鎖目。
泣いている鈴仙は「助けて妖夢―!!!」と泣き叫びながら空高くへと飛び去っていった。
「まずい……まさかこんなに早く侵蝕が進むなんて……!?」
永遠亭はもうダメだ。鈴仙が向かった先があの庭師であるのなら次は白玉楼、そして霊魂つながりで彼岸塚へと及ぶだろう。
西行寺の主からマヨヒガへとループは考えたくない。そして他所との親交がほとんどない彼岸塚から被害の及ぶ場所がないとは言い切れない。
「早苗さん!! いたら返事をしてください!! って、うわぁっ!!?」
統率者を失ったウサギたちが永遠亭の色んな部屋から飛び出して外へと逃げ出していく。
食べる飯がなくなれば外へ求める。永遠亭、なんというサバイバル魂。
「文さーんっ!!」
空から飛んでくる声に振り向けば、部下の天狗がひらりと竹林に舞い降りる。
「椛!!」
「文さん! 早苗さんが見つかりました!!」
「本当ですか!? して、場所は!!」
「谷河童のにとりさんと自家発電ができる機械を製作していました」
ヤバイ方向でwww
まぁアリスも神の子だから腋巫女転身は大丈夫として・・・問題は他ですなw
ばっよえーん!
ばっよえーん!
>小柄と貧乳とボーイッシュな顔立ちで私のお茶目なバッドボーイ
なんだこの最大限に失礼な絶賛はww
同時消しは連鎖1つでカウントされませんでしたっけ?
ホントだ、忘れてた!! ご指摘ありがとうございます。
ぷよぷよの連鎖は同時消しで1連鎖としてカウントされましたよね、対戦のときに間違えて連鎖の回数が減ったときは泣くしかなかった。
東方ぷよ伝?
被害が拡大し続けたとすれば、幽々子→映姫様(小町)
小町→メディー or ルナサ(スーさん→リリー or リリカ→リリー)
そして秋姉妹へ、みたいな感じでしょうか
いやー風が吹けば~みたいな連鎖のテンポとオチが良かったです