「いいか、レミリア。お前の能力はフランドールに迫る危機を回避するもの・・・・・・。
お前のほうが先に生まれはしたが、スカーレット家はフランドールが継ぐことになるだろう。
お前は善き姉として、善き従者としてフランドールに仕えるのだ」
「はい、お父様。心得ております」
「そうか、レミリアは聞き分けの良い子だ。フランドールが道を違えるようなことがあれば・・・・・・。
レミリア、お前が姉として、従者として進むべき道を教え。
フランドールに危機が迫れば、お前があの娘の盾となりなさい」
―嬢―ま、お―様、お嬢様。
曇った思考が段々とクリアになってくる。
遠い、昔の夢を見ていた。
まだ、お父様やお母様が生きていた時代。
吸血鬼が夜の王として君臨していた時代の夢だ。
「お嬢様、お疲れだったのですか? テラスでウトウトしているだなんて珍しい・・・・・・」
「・・・・・・そうね、少し疲れが溜まっているのかしら。昼間は博麗神社に遊びにいったし」
疲れているから、昔の夢を見たのだろうか。
「そうでしたか、今夜は少し早めに休まれたほうが良いのでは」
「そうね・・・・・・。とりあえず紅茶を一杯頂こうかしら」
「かしこまりました、お嬢様」
『スカーレット家当主、レミリア・スカーレット』に仕える十六夜咲夜は
そのことを疑うことなく、淹れたての紅茶をカップに注いだ。
咲夜も、パチェも、美鈴も、誰も知らない。
紅魔館の本当の主は、妹、フランドール・スカーレットのほうだと言うことを。
そして、私は今でも・・・・・・父の言葉を頑なに守り続けているということを。
ところで、レミリアの能力は見るだけじゃなかったような