Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

博麗の巫女といふものありけり

2008/03/16 23:32:01
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 幻想郷の博麗神社というところに一人の巫女がいました。
 この巫女はお茶が大好きで、いつも仕事をさぼっては幸せそうに縁側でお茶を飲んでいました。
 けれどもお茶は嗜好品。お金がなくては飲めません。
 残念なことにこの巫女は現金収入が少ないという特徴があり、いつでも好きなときに新鮮なお茶を飲むということはできません。
 だから茶の葉を少しずつ大切に使ったり、何度も同じ葉を使うなど涙ぐましい努力をしていました。
 それほどまでにお茶が好きなのです。

 あるとき、ほぼ透明なお茶を飲む巫女を見て、友達の魔法使いが言いました。

「そんなに好きなら自分で作ればいいじゃないか。
 それならお金はかからず、飲み放題だぜ?」

 それを聞いて巫女は落ち込みました。
 友達が帰ったことにすら気づかないほど落ち込みました。
 なぜ、もっと早く気づけなかったのかと。

 日が暮れ、夜が明け、我に返った巫女は早速行動に移ります。
 といってもそこらの雑草を引き抜くわけではありません。
 毒草なんか選ぶと大変ですし、せっかく作るのだから美味しいお茶を飲みたいからです。
 それには知識が必要だと考えます。
 
 ここで巫女の頭上に選択肢が二つ現れます。
 図書館目当てで紅魔館へ行くか、それともお茶は薬でもあったので薬師のいる永遠亭へと行くかの二択です。
 紅魔館では食べたことのないお菓子が出ますが、館主に好かれていることが原因でメイド長の視線が痛い。
 永遠亭は溜まっているツケがあるので懐が痛い。
 どちらにしても痛いので、棒を投げて向いた方向へと行くことにします。

 棒は永遠亭を示します。
 紅魔館方面から落ち込んだような気配が漂ってきたような気がしますが、きっと気のせいでしょう。
 運命操作に失敗したせいなどではありません。
 巫女は空を飛んで永遠亭を目指します。
 向かう間にツケに対する言い訳を考えていました。

 永遠亭に到着した巫女はウサギに聞きます。

「永琳はいる?」
「ツケ払え~」

 挨拶よりも先にツケのことを言われてしまいました。
 いったいどれほどのツケが溜まっているのでしょうか。
 巫女は懇切丁寧に頼みます。

「いいから永琳いるか答えろや」

 兎はがくがくと震え、いらっしゃいますと答えました。
 どこにいるかも聞いた巫女はずんずんと永遠亭内を進みます。

「いらっしゃい。ツケを払いに来たのかしら?」

 ここでもツケのことを言われています。
 それをさらりと無視して聞きました。

「お茶の作り方を教えてくれない?」
「お茶?」

 無視されたことを気にせず薬師は首を傾げています。
 巫女に収入が少ないということを知っているので、ツケに関して半分諦めているのかもしれません。

「自作できるとわかったけど、どうやって作るのか、どんな種類の草が使えるのかわからないのよ。
 薬師のあんたなら知ってると思ってきたんだけど」
「薬としても効果があるから知ってはいるけど、どうしようかしら。
 そこまで暇じゃないのよ私も」

 そう言ってあまり乗り気ではない薬師に巫女はここにくるまでに思いついたことを話します。

「私はお茶にうるさいわ。その私が作るんだもの、妥協はしない。それはきっと美味しいお茶になるはず。
 そしたらそれを売ってツケを払うわよ?」

 薬師は一理あるなと考えました。
 薬師自身はそこまでお茶に思い入れはありません。そんな自分がお茶を作ってもある程度以上の品質にはならない。
 その点、この巫女ならば有り余る時間を使い、追求し納得したものを作れるだろう。
 そのお茶には少し興味ある、そしてツケがなくなるなら教えてもいいかなと思いました。

「わかったわ。教えましょう。
 品質のいいものならうちで買い取ってもいいわよ」
「本当ね!?」
 
 薬師の言葉に巫女は気合が高まりました。
 薬師は早速素晴らしい頭脳から知識を引き出して、口頭で説明しながら紙に書いていきます。
 教えたのはこの季節にあったタンポポ茶。ついでにタンポポコーヒーの作り方も書いていきます。
 ほかにもヨモギ、ナズナ、オオバコといったそこらに生えている草を使ったお茶も書き込まれています。
 どれも体にいい効能をもったお茶ばかりです。
 丁寧な絵まで描き込まれたメモを握り締め、巫女は神社へと帰ります。

 その日のうちに神社周辺の草を見て回り、絵と同じ草を集めていきます。
 はじめはメモのとおりに作っていきます。いきなり創意工夫しようと思うほどチャレンジャーではありませんでした。
 なにしろ生活もかかっていますし、基本がわからないと美味しいお茶はできないと思ったからです。

 できあがったお茶は巫女の大好きな緑茶ではありませんでしたが、お茶ならば大抵好きなので問題無しと喜んで飲みます。
 初めて作ったお茶は市販のものと比べることができないできでしたが、手間がかかった分だけは美味しく感じられたようです。
 
 この日から巫女のお茶研究が始まりました。
 一切の妥協を許さず、口当たり、後味、香り、お湯の適した温度、使用する草の量、草を乾燥させる時間、草を揉む強さを追求していきました。
 一種類だけの追求が一段落つくと、次は草を二種類混ぜてみたりといったこともやっていきました。
 魔法使いの忘れていった茸も使い、うっかりトリップしかけたこともいい思い出です。

 そして研究開始から一ヶ月経った頃、お茶の作り方のレポートと三種類のお茶をサンプルとして薬師のもとへ持参し、試飲を求めました。

「完成したわ。まだまだ追求できるけど、とりあえずこれでどう?」
「時間かけたわね? 正直忘れかけてた」
「妥協はしないっていったでしょ。自分で飲んでとりあえず満足できるものじゃないと持ってくる気がしなかったのよ」

 さあ飲みなさいと巫女は促します。
 薬師は三つ並んだ湯のみの一つを取り、飲んでみました。

「これはっ!?」

 良薬口に苦し、という諺があるように薬としての側面を持っていた薬草茶は、味を犠牲にしていた部分があります。
 薬師もそれは知っていたので、苦味を打ち消すのがせいぜいだろうと考えていました。

「美味しい!?」

 しかし巫女のお茶への情熱は、苦味を消すだけでは到底満足するようなものではありませんでした。
 一種類のお茶だけで美味しさに限界があるなら、ほかの草から旨味をもってくればいいと、相性のいい草を探し出したのです。
 そして草の調合の仕方、お湯の入れ方にも工夫を重ねた結果、薬師に美味いと言わせたお茶が完成しました。

 苦味を完全に打ち消すことはせず、旨味の一つとして残しつつもくどく口に残ることはない。あっさりとした口当たりで飲みやすい薬草茶。
 長く生きた薬師が今までで一番と思える薬草茶でした。
 次いで飲んだほかのお茶も美味しいものでした。

 ここで薬師は疑問を抱きます。味のみを追求して、体にいい成分が犠牲になっているのではないかと。
 それでは薬草茶としての役割は果たせません。美味しいだけのお茶として売り出してもいいのですが、薬としての面も持っていてほしいと
思ってしまいます。
 薬師にそう思わせるほどのできでした。
 調べた結果、まったく薬としても損なわれていないとわかりました。
 巫女のお茶への情熱が知らず知らずのうちに、そういった面でも発揮されていたのでしょう。

 巫女は薬草茶作りに関して、いまや薬師の弟子の域にまで達していました。
 たった一ヶ月でそこまでに至ったのですから、薬師の驚きはたいそうなものでした。
 そして巫女を見て気づきます。一ヶ月前よりも巫女が青白くほっそりとしているような?

「あなたちゃんと睡眠とって、食べてる?」
「ご飯は作ったお茶で済ませたり、睡眠時間も少なくなってたわね」

 ああ、この子はこの一月修羅の道へと足を踏み入れていたのね。それほどの意気込みならば、このお茶も納得と薬師は一人頷きます。
 
 薬師に大丈夫と保障されたお茶を巫女は量産し、半分は永遠亭に納め、残りは里人に売っていきます。
 一人での作業でしたから、たくさんできたわけではありません。それでも飲みたいという人は多く、値段が上がっていきました。
 おかげで巫女の懐は潤っています。
 いまや誰も貧乏巫女と呼ぶものはいません。

 さらに追求していった巫女のお茶の影響はすさまじく、幻想郷にお茶ブームを巻き起こします。
 酒好きの鬼にお茶もなかなかいいじゃないかと言わせるほどですから、巫女のお茶のすごさはわかってもらえると思えます。

 このままお茶の文化が花開くと思われた幻想郷でしたが、そうは問屋がおろしません。
 なぜならどえらい存在の怒りに触れたからです。
 その存在はお酒さいこー! ビール大好き! と豪語するお方でお酒を二の次とする文化を認めなかったからです。

 文化の中心である巫女に次から次へと無理難題が降りかかります。
 巫女はお茶を作るどころか、飲む暇さえなく働くはめになってしまいました。

 その後はお茶第一を掲げる巫女とどえらい存在との間で、互いの誇りをかけた闘争が幻想郷を巻き込んで始まりました。
 それは語ることすらできない激しいものでした。
 闘争が始まり十年たったとき、お茶と酒を混ぜるという妥協案で戦いは終わりを告げました。



「この話の最後のように、いい加減に誤魔化すことを『お茶を濁す』という」

 寺子屋で慧音が子供たちを前に授業をしている。
 長々と例文を話していたため、眠っている子供もいた。
 そんな子供に、ほれぼれとする見事な頭突きをかまして授業は続いていった。
 
 一方博麗神社では、売ることよりも自分が美味しいお茶を飲むことを優先した霊夢が幸せそうに自作のお茶を飲んでいた。
 永遠亭にお茶を定期的に納めることで、ツケはちゃらとなったので懐の痛みも緩んでいる。
 神主は今日もお酒を飲めて、争いなど起こりようのない平和な一日だ。
ひさしぶりにとうもろこし茶が飲みたくなった


感想ありがとうございます

これ書いたあとに自分も紅茶のお酒飲んだことあると思い出しました。
妥協点になってないような? と思ったけどいまさら変更はきかないので、両者がお茶はお茶、お酒はお酒で楽しむべし、混ぜるなんて認めないと頑固に主張しあったと脳内補完。
トナ
http://blog.livedoor.jp/ee383/
コメント



1.名無し妖怪削除
霊夢の赤貧ネタ、最近多い気がするな
嫌いな二次設定じゃないが乱発されすぎて面白くなくなってきた。
話になにか一捻りが欲しい…。
2.欠片の屑削除
非常に正統派のお話で読みやすかったです。テンポも起承転結も安定してて面白かった。
霊夢さんは結構嵌まるタイプなのねw
そして神主様がさりげなく酷いw
3.名無し妖怪削除
>お茶と酒を混ぜるという妥協案
これはねーよwww
4.名無し妖怪削除
お酒にお茶を混ぜたものは実際に売ってますね
けっこう好き

お金はともかく、他は新しいと思うし、別にお金ネタだっていいと思う
そのネタを使ってどんな作品を作るかが大切だと思うね
5.三文字削除
ちょww神主ww
そのくらい許してあげようよ・・・
6.名無し妖怪削除
焼酎のウーロン割りや緑茶割、抹茶系のカクテルなんかも多いから妥当な妥協点ですねw

神主の出現には大いに笑いましたw
7.名無し妖怪削除
けーね先生の授業だったってオチがすばらしいw