山も湖も。早苗の居住区さえも吹き飛んだけれど、悪気は無い。
だから、怒らないで欲しい。……泣くのはもっと、やめて欲しい。
早苗にだってちょびっとは責任あるんだぞ。昼間からあまり、恥ずかしい真似するんじゃないとあれ程。
全く。君は何なんだ。若妻気分なのか。奉仕の精神が余ってるのか。
オムライスは百歩譲って許す。新婚さんみたいなメニューでムズムズするがね。
問題はハニーアレンジだ。
『八坂様専用☆オムライス』
ケチャップでこんなん書くとか、どんだけ気合入ってんだ。こまごました漢字書く暇が有ったなら、諏訪子にも作ってやればいいのに。
とどめに卵めくったら、ニンジンと玉ねぎで私の似顔絵が作られてるときた。脳みそ溶かす気か。よくないんだよ、こういうの。
何故なら。非常に残念な事に、私には夜中、恥ずかしい事を思い出しては、布団の中でジタバタ暴れる習慣が有ってな。
――そう! 今夜はランチのオムライスが、脳裏にへばりついてた訳だ。
頭ガンガン振っても、弾幕ぶっ放しても、こそばゆさが振り切れなくてもうね。死ぬかと。
「――つまり、いつもより激しく暴れてたのは不可抗力」
「神社ごと周囲10キロメートル四方を吹っ飛ばした言い訳が、それですか……?」
寝巻き姿のまま呆然とする早苗の横顔に、いつもの神聖さは無い。
一方、虚空を見つめる諏訪子は――いつも通り神聖さが無い。その虚ろな視線から察するに、現実逃避の真っ最中なのだろう。
「……ローンがまだ残ってたのに」
神社ってローンとか有るのか。洩矢名義のままにしといて良かった、厄介な金銭トラブルは奴に任せよう。
早苗の方は……。まだ若いし。どうとでもなるだろう。
私は適当な祠なんぞ見つけて、土着神にでもなろうかしら。
「バイバイ。達者でね」
素敵に逃避せんと、振り向けば拳。
早苗、容赦無いな。きちんとひねり入れて殴るから、私がジャイロ回転する。
重力と明日にサヨナラ、そしてコンニチハ走馬灯。
――薄れゆく意識の中。
早苗の泣き顔を、みたような気がす る
きみしってるか。早苗はセーラー服しか着ない――外にいた頃の話だけれど。
学校なる施設に通う際は、常にその装備だった。こだわりのオサレなのか。気になる。追跡したのは、言うまでもない。
正門前まで行った所で、男子生徒どもにべっぴんさんだ、たゆんエロスとか騒がれた末、早苗にバレて追い返されたのは残念。
――というか。人様の体型でギャイギャイ騒ぐ男の子達。何なのアレ。
レディーの胸元をガン見ヨクナイ。
褒めそやすの、もっとヨクナイ。
周囲の女性陣から、「死ねばいいのに」みたいな、ジェラシーオーラ出てくるからね。わかる? うんそう。視線が痛いよね。アンタとは気が合いそうだ。ゆっくり語り合おうじゃないか。……その前にお駄賃渡せ? 死神? ちょ これ臨死体験かよ……!
「っぶねー……!」
途中で起きたのでセフセフ。
魂だけで旅行したのは初めてだ。早苗に語ってやろうかと思ったがいねぇ。
人様を撲殺しかけといて、どういうつもりよ。
思わずしかめ面になる。途端、視界が白く染まる。何だこれは。また臨死体験か。
たまらず鼻息を荒げると、ぺろぺろと眼前の純白がめくれる――紙だ。紙切れがデコに貼りついてたらしい。
『 探したら殺します。 早苗 』
なんという書き置き。対象のデコにひっつける度胸も凄まじいが、たった一行で神をも拘束できる、殺人的な文才が恐ろしい。
こうもアグレッシブな家出は、近年稀に見る悪夢。『ウォーリーを探せ:反撃に気をつけろ』みたいな本が有ったら買う?
――買わないよね。怖いもん。
だから、何というか。書き置きに従ってぢっとしてるのは、当然の反応だと思う。ヘタレってゆーな。
「ヘタレ」
珍しく、諏訪子が罵声を吐く。今すぐ早苗を探して来いと。謝れと。そうまくしたてる。
なんでよーあたし神様だから、別に謝んなくていーじゃん。そんな駄々をこねてみたけれど、帽子が睨んでくるのでやめた。超怖い。
諏訪子の話によると。早苗は着の身着のまま、飛び出したらしく。
胸元のはだけたパジャマ姿で駆け出そうとしたが、それではあまりにご褒美すぎる、と諏訪子に咎められ、適当な私服を羽織ったそうな。
……適当な私服ってどんなんだ。しまった、全く早苗の服装が予想できないぞ。身体的な特徴で目星つけるしかないじゃないか。
緑髪、おさげ、全体的に清楚な雰囲気、脱ぐと凄いんです――そんな子を見かけませんでしたか、と叫んでみる。
「見た」
天使みたいなソプラノ声に振り返る。
純真無垢を体現したかのような眼に安堵。
ひんやりとした手を握り、導かれるがまま目的の場所へ。
緑なす黒髪を通り越して、ホントに緑の髪。控えめに自己主張するおさげ。
そこには、早苗さん以上に早苗さんな人がいた。……多分、早苗だよな。取り合えず謝罪してみる。
「ホントごめん、早苗!」
「あの。私、大妖精っていうんですけど」
「――」
ああそっか。ここまで私を案内してくれたあの子、大ちゃん大ちゃん言うから何事かと思えば、この子の事か。
大妖精だから、大ちゃん。分かりやすいネーミングに頬の筋肉がゆるみかけた、ゆるみかけた直後に凍りつくとは何事だろう。
それは。本能が示すシグナル、PTSDの予感。
もしも、ぶっちぎりで人違いして、早苗の人相をぼんやりとしか覚えていない事を証明した一部始終が、本人に見られていたとしたら。この寒気は簡単に説明がつく……。
「――いっぺん死んでみます?」
ほらね。やっぱりね。早苗さんは見ていた。
ハイライトの消えた瞳はマジギレのサイン、何度でも死ねる。
「大妖精さんと、私の見分け方を教えて差し上げましょうか?」
「は、はい」
「より、殺傷力の高い方が――私です」
「 」
こういうの大好きだw
脱字らしきモノ
「追い返さのは」→「追い返されたのは」ではないかと。
…………幽香×神奈子たまとか永琳×神奈子たまとか見たいです。神奈子たまは(性的に)可愛いがられて光る子と信じています。これだけは譲れない。
>『ウォーリーを探せ:反撃に気をつけろ』
すばらしすぎる。
>早苗さん以上に早苗さん
ツッコミが思いつかない程の渋いボケ、こういうの大好きw
小学生みたいなルールだw
愛ゆえに神社は吹き飛ばねばならぬのか……!
なにそのサスペンス!?
そして画面には大量の水滴、最高でした。
殺傷力の高いSSでしたwwwww
これはいい幻想郷
10秒以上笑えたのは久々だよ。
オムライスの中身といい、どうしてこんなにいいセンスを持っているんだ
この言葉にインパクトがありすぎる!!www
そして言葉の運びがすごいなぁと感心するばかりでした!
愛は素直に受け取りましょうや、神奈子様w
守矢一家の苦労人は諏訪子様で決定!
>きみしってるか。早苗はセーラー服しか着ない。
これがもう伏線だったとは・・・
おもしろかったです
そして脱帽です。おみごと!!
それにしても早苗さんKOEEEEEEEEEE
てかなんでその事知ってるチルノ?!
これでよく「結束硬く」、なんて過去に報道されたもんだw
電車の中で読んでて盛大にフイタよチクショウwww
ところでB++の写真が欲しいのですが・・・
これがきになってしょうがないw
こんなに好奇心が刺激される本は久しぶりだw
最初から最後まで笑い所満載でした。こういうノリが大好きです。
笑いすぎで腹筋がどうにかなりそうだ。
これほど才能を感じた&変な笑い出た例えは初めてです。
これ、めっちゃ気になる。
気になって眠れないじゃないかw
神奈子がドMになっちゃったw
射命丸もきっと・・・
とりあえずここで一回ダウンですw
この発想がSUGEEEEEE。
早苗さん怖すぎるw
おしい天狗だ。・・・というかいつか諏訪子さまが「早苗が欲しくば私をたおせ」な発言しそうな気がしたw
ほとんどこれの印象が強すぎて覚えてないwwwwww
ローンで堪えるのがギリギリで、
『ウォーリーを探せ:反撃に気をつけろ』
もうだめだったwwww
腹いてえwwwwwwww
秀逸過ぎるww
腹筋崩壊したwww
これだけで丼飯三杯いける