その日、雨上がりの後日。何時もと同じように萃香とルーミアは霖之助に張り付いている。湿度が多少高いことを除けば中々に良い日だった。最近は居候が増えたり老人の剣客が来たり盗賊が来なかったりと変わった日が多かった。そしてこの日も。
「…ん?」
一番最初に気付いたのは霖之助だった。店の扉が薄く開き、そこから円筒形の小さい物体が転がり込んできた。どこかで見たことがあると感じたとき、体が動いていた。萃香とルーミアを引き倒し、その上に覆いかぶさる。その転がり込んできた物の名は、手榴弾。そう霖之助は記憶していた。
「……ッ!?」
しかしソレは爆音こそ発したものの、爆風は発せず、代わりに閃光が香霖堂を満たした。音と光が霖之助の視覚と聴覚を蹂躙し、無効化した。突然の事の連続に混乱し続けていた霖之助の襟を後ろから握って引っ張った者があった。手の感触はするが、それが生物のものかは分からなかった。急に後方、扉の方に引っ張られた事により、軽い窒息をしてしまった。爆音で霞んだ聴覚から、くぐもった声が聞こえてきた。その声に聞き覚えを感じ、その方を見てみると…
「なに、してるの?」
透明な何かの背後にのしかかるルーミアと
「そうだな、なにしてるんだろうな」
霖之助を庇うように立ち塞がる萃香がいた。
~十分後~
「で、毎度毎度訊くけど、君は本当に何をしに来たんだい?」
香霖堂店内。先ほどの襲撃の実行犯が簀巻きにされていた。左右にルーミアと萃香が、正面には霖之助が立っている。
「まったく。音響閃光手榴弾と、ステルス迷彩まで引っ張り出して…。これ、すぐ疲れるんだろう?」
犯人は、言わずもがな。この装備を持ってわざわざココまで持ってくる者と言えば。
「永遠亭に乗り込みに行くという話しなら断っているはずだよ、にとり。」
どこぞの某河童だった。労力的にお値段以上。実のところ、最近にとりは頻繁に来ていた。それも永遠亭に乗り込むから手伝えと言う用件で。萃香とルーミアが居ついてから来なくなっていたのだが、まさかこんな形で再登場とは思いもよらないだろう。
「う。だ、大丈夫だよ。今回は作戦書も書いてきてるから」
「…何が大丈夫なんだい?」
「ていうか作戦書って…」
諦めの悪い河童に呆れる鬼と半妖。なんとも言い難くも遣る瀬無い雰囲気を醸し出しているにも関わらず、にとりはノートを取り出した。
「あれ? いつの間に」
「こんなアナクロな束縛法、あたしにかかれば簡単に脱出できるよ」
ささやかに、ささやかな胸を張るにとり。いつの間にか彼女の拘束は解けていた。
「…そうか。じゃあ次は審問椅子か駿河問いがいいんじゃないか、霖之助」
「石抱きはどう?」
「すいません勘弁してください」
なんでやたらとそんな事に詳しいか、とかそんな事を聞いてはいけない。ルーミアや萃香にだって色々あったのだろう。想像したくないが。と、軽口を叩いている間に、パラパラとノートのページを開いていく。
「…というか、今から行くにしても急だよ。永遠亭は結構遠いのに」
「ふふん、霖之助さんは素人だ。そんなんじゃ河童の里に来たら困るよ?」
「いや、行く気は無いんだが」
「いずれ定住することになるんだから、準備しておいてね。…と、話がそれた。だいたい、そんな普通の方法で行ったらインパクトがなさすぎでしょう」
ああ、なんだかそんな単語最近聞いたなぁ、だなんて黄昏ている霖之助にノートのあるページを見せた。そこに書いてあるのは、外の世界の車のような、戦車のような紫色の物体が書かれていた。
「…はい?」
ここ最近、妙に聞き慣れた言葉だった。
「何だこれ、恐。あ、萃香とルーミアが下の方に組み込まれてる」
「なに!? あ、本当だ私とルーミアが下の方に組み込まれてる!」
「お~」
「素晴らしいでしょう? 因みに名前は、国とり神話の『建御名方神』と『洩矢神』にちなんで【マケイン】と」
「ちなんでねえええ!!」
「なんかちなみ損ねた」
ばんばんと勘定台を叩く萃香。関心するルーミア、ドン引きの霖之助、そしてなぜか誇らしげなにとり。この場は間違いなく、幻想郷で一番混沌としていた。
「あ、因みに萃香とルーミアの席は上下に動くようになってるよ」
「なんでだよ!? あれか、私たちはスイッチか!?」
「いや、そういうのは全部上のあたしの所についてる。自爆スイッチとか」
「なんでそんなもん作った!」
「誤爆スイッチとか」
「なに誤爆するつもりだお前はッ!」
肩で息をする萃香。突っ込みは初めてのようだ。しかし、次第に落ち着きを取り戻し始める。
「まったく、こんなモン間違ってもつくるな…」
嫌な予感がした。そして間髪いれずにルーミアにスカートを引っ張られた。見ると、扉の方を指差している。ギリギリとまるで錆びた鉄が擦られているような音を上げながら、開けっ放しの香霖堂の扉を見た。
「もう、できてる…」
愕然とするしかなかった。何かの閃光で光ったソレは嫌な感じに神々しかった。
「おや、もう見つけたの? 食いしん坊だなぁ」
「アレは戸棚の中に隠してあるお菓子かなにかか!?」
「お菓子なの!?」
「あ、でもあれって雨にぬれると変な臭いがするんだ。まぁ気にせず」
「乗るかッ!」
「牛乳まみれの野良犬を拭いた雑巾ってあんな感じかな?」
「最ッ悪だ!」
「まずそ~」
萃香はもう一杯一杯だ。ルーミアも追い討ちをしているような。突っ込みすぎて咳き込んだりしている。それを見かねた霖之助が助け舟を出した。
「というか、これ、僕が乗る所がないじゃないか」
「…は!」
忘れていたらしい。律儀に萃香とルーミアが乗る場所をも付けたというのに。なんとも抜けた河童だった。
「く、うっかりです。まさかこんな初歩的な事で躓くとは…」
「何がしたかったんだい、君は」
「次はこうは行かない。首でも足でも洗って待っててよ!」
そう言うが早いか、どこからかもうひとつ、今度は催涙手榴弾を床に投げつけた。そしてにとりが振り返り、走り出す直前にそれは催涙ガスを発して、今度こそ霖之助達の視界を塞いだ。そして煙が晴れたとき、にとりはどこかへ行き、催涙ガスに目をやられた霖之助たちと『マケイン』が取り残されていた。
文々。新聞号外
「怪奇 香霖堂前に停まる謎の鉄隗! はたして香霖堂は!?」
しかし増田こうす○劇場好きですねぇ~
私も大好きですがw
あとからルーミア辺りに食われそうだぞにとりwww
それと射命丸、自重しろ
登場するキャラが全て好きなだけで全て許せるものなんですね。りん、るみゃ、萃香、にとりん、全員可愛い過ぎて堪りません!
登場するキャラが全て好きなだけで全て許せるものなんですね。りん、るみゃ、萃香さん、にとりん、全員可愛い過ぎて堪りません!
うん、もう言うまでも無いとは思うけど、あえて叫ぼう…
こぉぉぉぉぉぉりぃぃぃん、きぃぃさぁぁまぁぁあ!!!!!