あらすじ
カレイドスター
魂魄妖忌殿へ
里に吹く初春の風も、ようやく暖かとなりました。
うららかな陽射しに照らされる空を見上げれば、気の早い蝶の幽霊が幽雅に舞っています。
つい先日は、庭の池のほとりで冬眠から目を覚ました蛙が石の上でひなたぼっこをしているのを見ました。
貴方が世話をしてくれた桜のつぼみもほころび始める時節。
旅先の貴方は、一体どんな景色を見ているのかしら。
お久しぶりね、妖忌。元気にしていたかしら?
私と妖夢は相変わらず、明朗快活な日々を白玉楼で過ごしているわ。
貴方が旅立って、もう随分と経ってしまったわね。
四季を伝える私の文も、たくさん溜まってしまったわ。
本当は貴方に届けたいのだけれど、貴方はいつも気ままな旅の空の下。
せっかく書いた文も届けられず、文車に溜まるばかり。
このままではそのうち付喪神になってしまいそう。
けれども届かない文のことで貴方に文句を言っても仕方ないわね。
いつものように、妖夢と一緒にすごす日々で感じた心の在り様を書き留めて。
貴方が戻ってきたときに、私たちのすごした日々を伝えられるようにしましょう。
ここ数年の春はとても賑やかだけれど、今年もやっぱり、賑やかな春になりそうだわ。
去年の秋に越してこられた守矢神社の方たちが、博麗神社の春の例大祭を手伝ってくださるそうなの。
八坂神奈子様、洩矢諏訪子様の神様お二柱が加わっての春の祭典は、きっと例年以上に盛り上がるでしょうね。
今から妖夢と二人で、とても楽しみにしているのよ。
そう言えば、守矢神社の方たちは、今も毎日毎日カレー屋さんが大繁盛なのですって。
外の世界の神社経営は進んでいるのね。
そうそう、カレーで思い出したわ。最近妖夢もカレーを作るようになったの。
ふもとの里でカレールーを購入して、自分なりにアレンジを加えて頑張っているみたい。
「白玉楼の名に恥じない、魂魄家のカレーを作ってみせます!」って意気込んでたわ。
それから一週間カレー。朝も昼も夜もおやつもずっとカレー。今日もカレー。明日もカレー。
私が泣いてすがって頭を下げてもずーっとずーっとカレーなの。カレーは修羅の道なのね。
うん、っていうか、妖忌。
幽々子、前から貴方に言いたかったことがあるの。
もしこれを貴方が読む日が来たら今そこで正座なさい正座。
あのね。あのね妖忌?
貴方が人一倍人に厳しく自分に厳しい、寡黙な人柄だったことは私もよく知っているわ。
貴方は一つのことを決めたら頑として譲らずにひたすら寡黙にその道を突き進む人だったわね。
妖夢もその厳しくも大きな背中を見て育ったから、それはそれは貴方にそっくりに育っているわ。
うん、でもね、貴方には間違いに気づいて改める姿勢とか節度があったからまだ私なにも言わなかったけど。
妖夢はそうじゃないわよね? 貴方のそのひたむきさだけ学んじゃってるわよね?
貴方も貴方で「間違いは自分で気づくべし」な人だったから、妖夢そのままにして旅立っちゃったわよね。
今も妖夢はカレーを作っているわ。それはもうひたむきにカレーを作ってるわ。
やっぱりね妖忌、私、言葉にして伝えることもすごく大事だと思うの。幽々子すごく思うの。
妖夢が自力で、おうどんにカレーをかける発想に至ったのだけれどね。
それって外の世界ではもうだいぶ古くに開発されていたものだったらしいの。
その話を妖夢がカレーうどんに到達する前に東風谷さんから聞いていたのね、私。
で、つい勢い余って、「妖夢、その場所は既に二千年前に通過されているわッッッ」って言っちゃったの。
それから一週間カレー。朝も昼も夜もおやつもずっとカレー。今日もカレー。明日もカレー。
私が泣いてすがって頭を下げてもずーっとずーっとカレー。自業自得だとしても限度があると思わない?
萃夢の宴のときだって妖夢ったら「斬れば分かる」の意味をそのまま実践しちゃって辻斬り三昧。
もうあの後どれだけ私が頭を下げたか分かる? ねえ妖忌、あれって「刃を通して真と理悟るべし」って意味よね?
妖夢素直だから少なくとも「言葉通りの極意ではない」くらい教えていって欲しかったと思うの。
あとね、貴方って求道的な人柄だったけど、同時に天才肌だったりもしたじゃない?
豁然大悟して白玉楼を去ったり、たまに何かをひらめいて即実行に移したりする有言実行即断即決の人だったわよね。
土砂降りの雨の中に佇んでいた貴方が突然刀を振って雨を斬り落としたときは幽々子びっくりしちゃった。
妖夢も貴方そっくりに育ったんだけど、物心つくときからその生き様を見ていたせいか発想がすごいの。
日常的に豁然大悟するのよ。悟入幻想を思いついたときなんてあの子お風呂の最中だったの。
でも新しい技をひらめいたものだから即座に実行に移さずにはいられなかったって言ってね。
脱衣所にある楼観剣と白楼剣を抜かずに「サトリファンタジー!」ってルビりながら素手でお風呂場を真っ二つ!
私がかけつけたとき、すっぽんぽんで右手を掲げて「聖剣抜刃」とか興奮しながら叫んでたの。
私があそこで楼観剣と白楼剣を投げ渡して妖夢を正気に戻してなかったら、妖夢たぶん剣士でなくて拳士になってたわ。
世間では幽雅でお嬢様な私が無理難題を妖夢に言って、からかって遊んでるなんて言われますけれどね。
私だって、私だって実はちょっぴりじゃすまないお茶目な妖夢に苦労してるんですからね!?
この苦労を分かってくれるのは紫だけっ、原因である貴方は豁然大悟して旅の空じゃないっ!
お、おうちの恥を話すのは紫にだって恥ずかしいのよ!? 私だって人並みの神経はしてるんですからっ!
妖夢との毎日はそれはそれは楽しく得がたい日々だけれど、それにだって限度があるでしょうっ!?
貴方の教えは難解で深遠だから、未熟な妖夢には在る程度砕いて教えた方がいいって言ったのに!
幽々子何回も口をすっぱくして妖忌に言ったのに貴方ほったらかしのまま出て行くんだからっ!
しかも出て行ったときなんか、「今宵は良い月夜ですな」って渋く貴方が切り出してきて!
ドキドキしながら雰囲気に呑まれてたら、あれよあれよと言う間の出来事だったじゃないっ!?
気がついてみれば、私、ちいさな妖夢と白玉楼で二人っきりよ!? ええ、妖夢、手間はかからない子だったわ!
貴方がきちんと躾けていたおかげで、あの子をあやして育てて、なんて苦労はしなかったわね。ええ! ええ!
でも、貴方がいなくなった夜に、妖夢も寂しいだろうと思って寝床にあの子を呼んだらね。
あの子なんて言ったと思う? 「初めてで至らぬところもありますが云々」
行き届きすぎでしょう!?
どれだけ先まで見通してるのよ!?
幽々子ね、幽々子ね! あの魂魄家伝統の「物事を順序良くぶつ斬りにして豁然大悟させる教育」ってね!
大いに問題あると思うの! それを教えるのに「斬れば分かる」って言っちゃう妖忌も問題あると思うの!
もっと情操教育に力を入れるべきだわ! そして貴方は言葉の大事さを知るべきだわっ!
あの子舞い散る桜を見て最初は「一拍に何枚の花を斬れるか」しか考えてなかったのよ!?
と、とにかく妖忌、早く帰ってきなさい!
そして妖夢と私に頭を下げなさいっ、下げなさいっ!
それがダメなら旅先で人柄を丸くしてらっしゃいっ!
ねえ聞いてるの妖忌!? 聞いてるのー!?
「幽々子様~、カレーが出来ましたよー」
「もういやああああああああああああああああああ!?」
白玉楼の幽冥蝶にも人知れぬ苦労というのは存在するものである。
カレイドスター
魂魄妖忌殿へ
里に吹く初春の風も、ようやく暖かとなりました。
うららかな陽射しに照らされる空を見上げれば、気の早い蝶の幽霊が幽雅に舞っています。
つい先日は、庭の池のほとりで冬眠から目を覚ました蛙が石の上でひなたぼっこをしているのを見ました。
貴方が世話をしてくれた桜のつぼみもほころび始める時節。
旅先の貴方は、一体どんな景色を見ているのかしら。
お久しぶりね、妖忌。元気にしていたかしら?
私と妖夢は相変わらず、明朗快活な日々を白玉楼で過ごしているわ。
貴方が旅立って、もう随分と経ってしまったわね。
四季を伝える私の文も、たくさん溜まってしまったわ。
本当は貴方に届けたいのだけれど、貴方はいつも気ままな旅の空の下。
せっかく書いた文も届けられず、文車に溜まるばかり。
このままではそのうち付喪神になってしまいそう。
けれども届かない文のことで貴方に文句を言っても仕方ないわね。
いつものように、妖夢と一緒にすごす日々で感じた心の在り様を書き留めて。
貴方が戻ってきたときに、私たちのすごした日々を伝えられるようにしましょう。
ここ数年の春はとても賑やかだけれど、今年もやっぱり、賑やかな春になりそうだわ。
去年の秋に越してこられた守矢神社の方たちが、博麗神社の春の例大祭を手伝ってくださるそうなの。
八坂神奈子様、洩矢諏訪子様の神様お二柱が加わっての春の祭典は、きっと例年以上に盛り上がるでしょうね。
今から妖夢と二人で、とても楽しみにしているのよ。
そう言えば、守矢神社の方たちは、今も毎日毎日カレー屋さんが大繁盛なのですって。
外の世界の神社経営は進んでいるのね。
そうそう、カレーで思い出したわ。最近妖夢もカレーを作るようになったの。
ふもとの里でカレールーを購入して、自分なりにアレンジを加えて頑張っているみたい。
「白玉楼の名に恥じない、魂魄家のカレーを作ってみせます!」って意気込んでたわ。
それから一週間カレー。朝も昼も夜もおやつもずっとカレー。今日もカレー。明日もカレー。
私が泣いてすがって頭を下げてもずーっとずーっとカレーなの。カレーは修羅の道なのね。
うん、っていうか、妖忌。
幽々子、前から貴方に言いたかったことがあるの。
もしこれを貴方が読む日が来たら今そこで正座なさい正座。
あのね。あのね妖忌?
貴方が人一倍人に厳しく自分に厳しい、寡黙な人柄だったことは私もよく知っているわ。
貴方は一つのことを決めたら頑として譲らずにひたすら寡黙にその道を突き進む人だったわね。
妖夢もその厳しくも大きな背中を見て育ったから、それはそれは貴方にそっくりに育っているわ。
うん、でもね、貴方には間違いに気づいて改める姿勢とか節度があったからまだ私なにも言わなかったけど。
妖夢はそうじゃないわよね? 貴方のそのひたむきさだけ学んじゃってるわよね?
貴方も貴方で「間違いは自分で気づくべし」な人だったから、妖夢そのままにして旅立っちゃったわよね。
今も妖夢はカレーを作っているわ。それはもうひたむきにカレーを作ってるわ。
やっぱりね妖忌、私、言葉にして伝えることもすごく大事だと思うの。幽々子すごく思うの。
妖夢が自力で、おうどんにカレーをかける発想に至ったのだけれどね。
それって外の世界ではもうだいぶ古くに開発されていたものだったらしいの。
その話を妖夢がカレーうどんに到達する前に東風谷さんから聞いていたのね、私。
で、つい勢い余って、「妖夢、その場所は既に二千年前に通過されているわッッッ」って言っちゃったの。
それから一週間カレー。朝も昼も夜もおやつもずっとカレー。今日もカレー。明日もカレー。
私が泣いてすがって頭を下げてもずーっとずーっとカレー。自業自得だとしても限度があると思わない?
萃夢の宴のときだって妖夢ったら「斬れば分かる」の意味をそのまま実践しちゃって辻斬り三昧。
もうあの後どれだけ私が頭を下げたか分かる? ねえ妖忌、あれって「刃を通して真と理悟るべし」って意味よね?
妖夢素直だから少なくとも「言葉通りの極意ではない」くらい教えていって欲しかったと思うの。
あとね、貴方って求道的な人柄だったけど、同時に天才肌だったりもしたじゃない?
豁然大悟して白玉楼を去ったり、たまに何かをひらめいて即実行に移したりする有言実行即断即決の人だったわよね。
土砂降りの雨の中に佇んでいた貴方が突然刀を振って雨を斬り落としたときは幽々子びっくりしちゃった。
妖夢も貴方そっくりに育ったんだけど、物心つくときからその生き様を見ていたせいか発想がすごいの。
日常的に豁然大悟するのよ。悟入幻想を思いついたときなんてあの子お風呂の最中だったの。
でも新しい技をひらめいたものだから即座に実行に移さずにはいられなかったって言ってね。
脱衣所にある楼観剣と白楼剣を抜かずに「サトリファンタジー!」ってルビりながら素手でお風呂場を真っ二つ!
私がかけつけたとき、すっぽんぽんで右手を掲げて「聖剣抜刃」とか興奮しながら叫んでたの。
私があそこで楼観剣と白楼剣を投げ渡して妖夢を正気に戻してなかったら、妖夢たぶん剣士でなくて拳士になってたわ。
世間では幽雅でお嬢様な私が無理難題を妖夢に言って、からかって遊んでるなんて言われますけれどね。
私だって、私だって実はちょっぴりじゃすまないお茶目な妖夢に苦労してるんですからね!?
この苦労を分かってくれるのは紫だけっ、原因である貴方は豁然大悟して旅の空じゃないっ!
お、おうちの恥を話すのは紫にだって恥ずかしいのよ!? 私だって人並みの神経はしてるんですからっ!
妖夢との毎日はそれはそれは楽しく得がたい日々だけれど、それにだって限度があるでしょうっ!?
貴方の教えは難解で深遠だから、未熟な妖夢には在る程度砕いて教えた方がいいって言ったのに!
幽々子何回も口をすっぱくして妖忌に言ったのに貴方ほったらかしのまま出て行くんだからっ!
しかも出て行ったときなんか、「今宵は良い月夜ですな」って渋く貴方が切り出してきて!
ドキドキしながら雰囲気に呑まれてたら、あれよあれよと言う間の出来事だったじゃないっ!?
気がついてみれば、私、ちいさな妖夢と白玉楼で二人っきりよ!? ええ、妖夢、手間はかからない子だったわ!
貴方がきちんと躾けていたおかげで、あの子をあやして育てて、なんて苦労はしなかったわね。ええ! ええ!
でも、貴方がいなくなった夜に、妖夢も寂しいだろうと思って寝床にあの子を呼んだらね。
あの子なんて言ったと思う? 「初めてで至らぬところもありますが云々」
行き届きすぎでしょう!?
どれだけ先まで見通してるのよ!?
幽々子ね、幽々子ね! あの魂魄家伝統の「物事を順序良くぶつ斬りにして豁然大悟させる教育」ってね!
大いに問題あると思うの! それを教えるのに「斬れば分かる」って言っちゃう妖忌も問題あると思うの!
もっと情操教育に力を入れるべきだわ! そして貴方は言葉の大事さを知るべきだわっ!
あの子舞い散る桜を見て最初は「一拍に何枚の花を斬れるか」しか考えてなかったのよ!?
と、とにかく妖忌、早く帰ってきなさい!
そして妖夢と私に頭を下げなさいっ、下げなさいっ!
それがダメなら旅先で人柄を丸くしてらっしゃいっ!
ねえ聞いてるの妖忌!? 聞いてるのー!?
「幽々子様~、カレーが出来ましたよー」
「もういやああああああああああああああああああ!?」
白玉楼の幽冥蝶にも人知れぬ苦労というのは存在するものである。
ゆゆ様の必死に涙を禁じ得ない!
とりあえずこのみょんはきりがなさそうなので異世界の先輩とつく方に見てもらった方がいいと思いますw
ゆゆ様切実だ……
>幽々子、前から貴方に言いたかったことがあるの。
何故かときめいた
とりあえず、妖夢はもっと落ち着くべきw
このままだとゆゆ様、カレー大っ嫌いになってしまわれるw
この一言で吹いたwがんばれ冥界の姫ww
とりあえず、今からカレー食べに行ってきます。
カレーについては洩谷家に修行にいく妖夢の続編が見たいです先生
> 気がついてみれば、私、ちいさな妖夢と白玉楼で二人っきりよ!? ええ、妖夢、手間はかからない子だったわ。
> 貴方がきちんとしつけていたおかげで、あの子をあやして育てて、なんて苦労はしなかったわね。ええ。
……もしかして妖夢ってゆゆ様と妖忌との間に生まれた子?
あ、週末は何時もカレーです^-^
カレー大会が始まることを夢見てます
>何故かときめいた
同士がここに・・・
ていうか、魂魄家の教えすげえw
萌ゑwwwwwwwwwwwww
そして一人称が自分の名前ってのはかなりクるものがあります
妖忌、気づいたれよ・・・
しかし、気づいてても態度が変わらなかったということもありか
帰って来てくれないかなぁ妖忌
やっぱり、じょにーずさんの作品は素晴しい。
ゆゆ様大変だろうけどがんばれww
イイ……
カレー食べたくなった。
ここでめがっさ萌えたwww
だが!あえて言おう!妖夢は俺のよm(ryu
気持ち分かります。
カレーはどれだけ頑張っても一週間が限界ですね
っていうか幽々子様禁断の名前呼びwww
一人称幽々子は反則だわぁ……。
妖夢が
カレイドスター
責任取れ
とても美味しい幽々子さんご馳走様でした。