ええと、たぶんルーミアと霖之助。意外と序盤のボスって謎が多いぞ!?
ある日の午後、穏やかな木漏れ日がふりそそぐ香霖堂で、僕はルーミアという妖怪と向き合っていた。
目の前には、黒蜜がかけられた葛餅がひときれ、皿の真ん中似鎮座している。
「こういうときどうするべきか、僕たちには回答が用意されている」
「私が食べれる?」
「僕が食べることも出来る」
そういって僕は竹串を手に取る。もちろん葛餅を半分にすべく。
だが、そんな僕の手にそっとルーミアの手が重ねられた。
僕の鼓動がうるさい。もう何年も生きたが、こんなドキドキはそう何度も無い。
「食べたら食べちゃうからね」
ルーミアの瞳は本気だった。どこまでも偽りなく、慈悲も躊躇も無い。
こういった状況になったのは、そもそも里の帰りに彼女に見つかってしまったことが始まりだった。
そのときに葛餅を食べようと買っていたのが、結果として僕の命を救ったのだ。
「貴方は食べられる……人間?何か違う感じ」
「食べるもんじゃないからあっちに行くといい
「貴方が食べられるかどうか、食べたらわかるかもね」
幻想郷の人気の無いところを歩いていると、時折こういった妖魔の類と出会うことがある。
こういう厄介な手合いには退魔のお札を放るに限る。僕は手馴れた要領で札を放った。
だが無駄だった。お札はあっさりと回避され、ついでに彼女にキャッチされ、食われた。
「うぇー、マズい。口直ししなきゃ」
万事窮す。だが口直しという単語が、僕の持ち帰る荷物の中の食料品を思い出させた。
「僕より美味しいものがあるから、それで手を打たないか」
お札よりも葛餅一つの方が効き目があるというのはどうかと思う。
だがまあそんな道理は往々にして無視されるのが世の常というものだ。
とにかくこうして僕はルーミアと一緒に葛餅を食べる状態に至った。
だが一人で食うつもりの葛餅を半分に分けたので、中途半端にあまってしまったのだ。
結果として、冒頭のやり取りに至る。
「安心して僕に任せてくれ。さっさと切り分けるから」
「……全部食べたい」
「む……」
手が止まる。
「ダメ?」
ルーミアが僕の手を、そっと両手で包み込んだ。ぞっとするような温度で。
暖かくもなく、冷たくも無い。ただそこにあるだけで、何かが喪失していく温度。
彼女は僕の手を見て、次に僕の目を、上目遣いに覗き込んだ。
「ねえ、こうすると『貴方のことが好きです』っていってるように見える?」
「『貴方が美味しそうです』って言っているように見えるかな」
僕はそっと手を垂直に下げて、竹串を葛餅に突き刺す。
その先には、とろりとした黒蜜のなごりが白い葛餅にほんのりと絡んでいた。
ルーミアの口が開いて、何かを喋ろうとする――
「こんにちは!新聞の集金に……いえ、次の機会でいいです!号外もお持ちしますね!」
その瞬間を狙い済ましたかのように、新聞屋の天狗が現れた。
そしてどこからか取り出したカメラで僕たちを撮影すると、颯爽と飛び去って行く。
「ルーミア」
僕は冷静に今何をいうべきかを考えて、彼女の手の上に、もう片方の手を乗せる。
「いまの天狗がこれから半刻もたたない間に新聞を配る」
「うん」
「その新聞を配らせないようにしてくれたら、里へお菓子を食べに行こう」
「ホント?」
「ああ、きっとだ。でも新聞が配られたら無理だね」
「……私、頑張るから。だから、一緒に行こう!きっとだよ!」
ルーミアは立ち上がり、そのまま外に飛び出していった。
やたら気合が入っている気がするのは、きっと食べ物の力に違いない。
僕は彼女の健闘を祈り、とりあえず忘れ去られたであろう最後の一切れを口にした。
後のことを考えたくなくなる。それくらい、甘い甘い一切れを。
ミマミマ…もといニマニマ
これぞ幻想郷って感じです。
「ルーミアと一緒に」じゃないとエッチなことになりませんか…?
>号外もお持ちしまね!
ルーミア可愛いねえ
こーりん食われたってあるけど大丈夫なんだろうか?
指摘のあった部分は訂正させていただきました。
次は何を書こうかなあ…