注:ちょっとだけ、前回投稿の『土とか食ってみようかな』と続いている…気がしました。
あと大分咲夜さんのキャラが壊れてます。本当に注意してください。
「なぁ霖之助。暇なんだが」
「それは僥倖だ。人生の暇とは宝というものだよ、萃香。というか、それ脱がないのかい?」
「なんだ、霖之助。私に脱いで欲しいのか」
「・・・はぁ」
「た、ため息吐くってどういうことだよ!?」
今日も清閑な香霖堂。のはずなのだが、何故だか店に入り浸る鬼一人。特にやることもなく、最近は霊夢が忙しいとかで神社に居てもしょうがないから、と言うのが理由らしい。そこまで言われてようやく、暫く霊夢が来ていないことに気付く霖之助はどうなのだろう? そして入り浸る萃香の服装も異なものだった。それは、巫女服。緑色の。理由は霖之助が訊いても答えは得られなかった。察せよ、と言うのが諸兄らの言だろう。私もそう思う。誰だ私。
「そういえば、何読んでるんだ、霖之助」
「これかい? えぇと名前は…『アー・エイジフ』かな?」
「今すぐやめろそれ読むの!」
恐るべし香霖堂。死霊秘宝まであるとは。などと言う、のどかな会話はしかし、突然の咆哮によって終わりを迎えた。
「こおおおおおおおおおりんどおおおおおおおおおおお!!!!」
その一閃した咆哮の残響が終わるか終わらないかと言う内に、扉から足が生えた。当然、足が勝手に生えるような材料を使っていないところから見ると、その足が何者か――扉を蹴破らんとする者――の足であることは分かる。だが、そんな事に思い至る前に、その異常性にどうにかなりそうだった。
「…………ッ!?」
「う、えぇ?」
脳味噌があるような生物は、いきなりの事に対応できないときがある。今がまさにそのときだろう。そして、その足が生えた扉が手前に傾き…そして倒れた。現れたのは…
「こおおおおおおおおりんどおおおおお…」
右足に扉をつけた状態の十六夜 咲夜だった。御存知、紅魔館の完全瀟洒なメイド長である。
「…?」
今度こそ思考が停止した。もう阿呆のような顔で彼女を見つめるしか出来ない萃香と霖之助。
「こおおおりんどおおお…」
扉をぶら下げたまま、まるでのたうつ様に近づいてくる咲夜に感じたのは狂気だった。しかし、その体からは奇妙な違和感を覚えた。あるはずのものが忽然と消えているような。だがそんな思考を彼女は許してくれなかった。ジリジリと、主の仇を見るような瞳で、ジリジリとジリジリと近づいてくる。そこでようやく恐怖を感じ、冷静になってきた霖之助。
「こおおりんどおおおお!!」
「だからなんなんだあああ!!」
しかし吼えたのは萃香だった。ゴッスン。
~半刻後~
「中々やるな、お前の拳…」
「…まだ大分錯乱しているようだね」
右足に扉を付けたまま口元を拭う咲夜に、呆れたように呟く霖之助。先ほど萃香の拳を腹に食らった咲夜が意識を取り戻したが、まだどこかおかしいような。可笑しいような。
「へぇあっ!? 誰が錯乱してるんだぜ!? どのへんがなんだぜ!」
「全体的な、部分がだよ…。というかそれ、気に入ったのか?」
こちらも呆れたように呟く萃香。どこか遠く、白玉楼の辺りで「取っちゃやだぜ」と聞こえたような。魔理沙だろうか。
「そんな、私が錯乱していたなんて、私の名前と掛けたつもりですか? ああ、貴方はいつもそうなんです。初めて私が貴方と会ったあの夜も…」
「駄目だな、これは。もう少し置いておこう…」
~更に半刻後~
「落ち着いたかい?」
「何がかしら?」
完全にしらばっくれようとしている咲夜。さすがは瀟洒なメイド長。素敵に大胆不敵だ。だが、さすがにあの光景を忘れようとするのは容易ではない。当然理由が気になるものだ。人も妖怪も、その相の子も。しかし今の咲夜の雰囲気からは、どうしても聞き出せないということしか分からなかった。
「まぁいいか。それよりどうしたんだい? あんなに慌てて。あれはもう人外レベルだったよ」
「…あ、そうだった。ちょっと探してるものがあって、ここに来たのよ」
「ほう、それは?」
しかしそこで黙り込む咲夜。とても言い難そうな所を見ると、なにか大切なものなのが察せられる。しばらくそうしてから、何かを決意したように口を開いた。
「実は…」
「実は?」
「私の、命がどこかへ…」
「…はい?」
メイド長の命が亡くなったらしい。今日も門番は元気だろうか。しばし呆けていた霖之助だったが、得心したような顔をすると、おもむろに紙と筆を取り出して何かをを書き始めた。
「これはどうやら僕にどうにかできる事じゃなさそうだね。咲夜さん、竹林地帯があるだろう? その中に永遠亭という所があってね。良い薬剤師がそこにいるから…」
どうやら永遠亭にむけた紹介状らしい。英断だと思う。
「え、別に病気じゃないのよ!? 命と言うか、えぇと…」
「大丈夫だよ、咲夜さん。そこにいる鈴仙さんという人はよく気が利いて、多少ならカウンセリングに…」
「ちがっ…! え~と、あ~もうこの青イナフ!!」
「イナフ!?」
e・nough《inʌf》 十分な; (…に)足る ((for; to do))。どうやらまだ錯乱しているらしい。口調がもう完璧におかしくなっていた。言っていることもおかしいし、どうしたのだろうか。
「…ん?」
そこで、今まで会話に入り込めなかった萃香が何かに気付いたようだ。
「あれ、なんか今日胸が薄…」
先駆「Time alter・triple accel! 」
それはまさに一瞬。いつもは高速で流れる時間が、咲夜によって拘束され、咲夜だけのために流れを滞らせた。流れるような動作で投げられるナイフ。二度、三度、四度。終に萃香はナイフの檻の中に閉じ込められた。そして
「…Release alter. 」
彼女が時の拘束を解いたとき、不可避の弾幕が萃香を貫いた。彼女じゃなければ確実に閻魔様に謁見が出来ただろう。しかしそれよりも恐ろしいのは
「何か言ったかしら?」
殺戮笑顔の咲夜さんだった。先ほどの萃香の発言で違和感の正体に気付いた霖之助も、迂闊にその事に触れられず、ただ萃香の安否を気にすることしか出来ない。それでもやっぱり気になり、ちらりとその違和感の正体を見た。
「何か?」
「いやぁ、何も」
しかし慌てて目を逸らす。霖之助は先ほど永遠亭に向けて書いていた手紙の裏に、咲夜の無くしたものの替えと思われる物がある場所を書いて、ナイフまみれの萃香を抱えながら奥に引っ込んだ。願うことなら、お金はいらないからそのままソレを持って去ってくれと願いをこめて。
「…あら」
残された咲夜は、その紙を見て御満悦ながらも、多少落ち込んでいたようだった。
~もう半刻後~
「…帰ったか?」
「帰ったようだね…」
香霖堂内にてダンボールが二つ、蠢いていた。色は黒く、表に「Z.○.E」と書いてある。そしてその中から聞こえたのは、霖之助と萃香の声。スニーキング中らしい。そしてそのまま、咲夜の来訪が無いのを震えながら願っていたのであった。カシャリ。
アーカイブNo.23
文々。新聞号外:『怪奇! 香霖堂店内で震える段ボール箱』
あと大分咲夜さんのキャラが壊れてます。本当に注意してください。
「なぁ霖之助。暇なんだが」
「それは僥倖だ。人生の暇とは宝というものだよ、萃香。というか、それ脱がないのかい?」
「なんだ、霖之助。私に脱いで欲しいのか」
「・・・はぁ」
「た、ため息吐くってどういうことだよ!?」
今日も清閑な香霖堂。のはずなのだが、何故だか店に入り浸る鬼一人。特にやることもなく、最近は霊夢が忙しいとかで神社に居てもしょうがないから、と言うのが理由らしい。そこまで言われてようやく、暫く霊夢が来ていないことに気付く霖之助はどうなのだろう? そして入り浸る萃香の服装も異なものだった。それは、巫女服。緑色の。理由は霖之助が訊いても答えは得られなかった。察せよ、と言うのが諸兄らの言だろう。私もそう思う。誰だ私。
「そういえば、何読んでるんだ、霖之助」
「これかい? えぇと名前は…『アー・エイジフ』かな?」
「今すぐやめろそれ読むの!」
恐るべし香霖堂。死霊秘宝まであるとは。などと言う、のどかな会話はしかし、突然の咆哮によって終わりを迎えた。
「こおおおおおおおおおりんどおおおおおおおおおおお!!!!」
その一閃した咆哮の残響が終わるか終わらないかと言う内に、扉から足が生えた。当然、足が勝手に生えるような材料を使っていないところから見ると、その足が何者か――扉を蹴破らんとする者――の足であることは分かる。だが、そんな事に思い至る前に、その異常性にどうにかなりそうだった。
「…………ッ!?」
「う、えぇ?」
脳味噌があるような生物は、いきなりの事に対応できないときがある。今がまさにそのときだろう。そして、その足が生えた扉が手前に傾き…そして倒れた。現れたのは…
「こおおおおおおおおりんどおおおおお…」
右足に扉をつけた状態の十六夜 咲夜だった。御存知、紅魔館の完全瀟洒なメイド長である。
「…?」
今度こそ思考が停止した。もう阿呆のような顔で彼女を見つめるしか出来ない萃香と霖之助。
「こおおおりんどおおお…」
扉をぶら下げたまま、まるでのたうつ様に近づいてくる咲夜に感じたのは狂気だった。しかし、その体からは奇妙な違和感を覚えた。あるはずのものが忽然と消えているような。だがそんな思考を彼女は許してくれなかった。ジリジリと、主の仇を見るような瞳で、ジリジリとジリジリと近づいてくる。そこでようやく恐怖を感じ、冷静になってきた霖之助。
「こおおりんどおおおお!!」
「だからなんなんだあああ!!」
しかし吼えたのは萃香だった。ゴッスン。
~半刻後~
「中々やるな、お前の拳…」
「…まだ大分錯乱しているようだね」
右足に扉を付けたまま口元を拭う咲夜に、呆れたように呟く霖之助。先ほど萃香の拳を腹に食らった咲夜が意識を取り戻したが、まだどこかおかしいような。可笑しいような。
「へぇあっ!? 誰が錯乱してるんだぜ!? どのへんがなんだぜ!」
「全体的な、部分がだよ…。というかそれ、気に入ったのか?」
こちらも呆れたように呟く萃香。どこか遠く、白玉楼の辺りで「取っちゃやだぜ」と聞こえたような。魔理沙だろうか。
「そんな、私が錯乱していたなんて、私の名前と掛けたつもりですか? ああ、貴方はいつもそうなんです。初めて私が貴方と会ったあの夜も…」
「駄目だな、これは。もう少し置いておこう…」
~更に半刻後~
「落ち着いたかい?」
「何がかしら?」
完全にしらばっくれようとしている咲夜。さすがは瀟洒なメイド長。素敵に大胆不敵だ。だが、さすがにあの光景を忘れようとするのは容易ではない。当然理由が気になるものだ。人も妖怪も、その相の子も。しかし今の咲夜の雰囲気からは、どうしても聞き出せないということしか分からなかった。
「まぁいいか。それよりどうしたんだい? あんなに慌てて。あれはもう人外レベルだったよ」
「…あ、そうだった。ちょっと探してるものがあって、ここに来たのよ」
「ほう、それは?」
しかしそこで黙り込む咲夜。とても言い難そうな所を見ると、なにか大切なものなのが察せられる。しばらくそうしてから、何かを決意したように口を開いた。
「実は…」
「実は?」
「私の、命がどこかへ…」
「…はい?」
メイド長の命が亡くなったらしい。今日も門番は元気だろうか。しばし呆けていた霖之助だったが、得心したような顔をすると、おもむろに紙と筆を取り出して何かをを書き始めた。
「これはどうやら僕にどうにかできる事じゃなさそうだね。咲夜さん、竹林地帯があるだろう? その中に永遠亭という所があってね。良い薬剤師がそこにいるから…」
どうやら永遠亭にむけた紹介状らしい。英断だと思う。
「え、別に病気じゃないのよ!? 命と言うか、えぇと…」
「大丈夫だよ、咲夜さん。そこにいる鈴仙さんという人はよく気が利いて、多少ならカウンセリングに…」
「ちがっ…! え~と、あ~もうこの青イナフ!!」
「イナフ!?」
e・nough《inʌf》 十分な; (…に)足る ((for; to do))。どうやらまだ錯乱しているらしい。口調がもう完璧におかしくなっていた。言っていることもおかしいし、どうしたのだろうか。
「…ん?」
そこで、今まで会話に入り込めなかった萃香が何かに気付いたようだ。
「あれ、なんか今日胸が薄…」
先駆「
それはまさに一瞬。いつもは高速で流れる時間が、咲夜によって拘束され、咲夜だけのために流れを滞らせた。流れるような動作で投げられるナイフ。二度、三度、四度。終に萃香はナイフの檻の中に閉じ込められた。そして
「…
彼女が時の拘束を解いたとき、不可避の弾幕が萃香を貫いた。彼女じゃなければ確実に閻魔様に謁見が出来ただろう。しかしそれよりも恐ろしいのは
「何か言ったかしら?」
殺戮笑顔の咲夜さんだった。先ほどの萃香の発言で違和感の正体に気付いた霖之助も、迂闊にその事に触れられず、ただ萃香の安否を気にすることしか出来ない。それでもやっぱり気になり、ちらりとその違和感の正体を見た。
「何か?」
「いやぁ、何も」
しかし慌てて目を逸らす。霖之助は先ほど永遠亭に向けて書いていた手紙の裏に、咲夜の無くしたものの替えと思われる物がある場所を書いて、ナイフまみれの萃香を抱えながら奥に引っ込んだ。願うことなら、お金はいらないからそのままソレを持って去ってくれと願いをこめて。
「…あら」
残された咲夜は、その紙を見て御満悦ながらも、多少落ち込んでいたようだった。
~もう半刻後~
「…帰ったか?」
「帰ったようだね…」
香霖堂内にてダンボールが二つ、蠢いていた。色は黒く、表に「Z.○.E」と書いてある。そしてその中から聞こえたのは、霖之助と萃香の声。スニーキング中らしい。そしてそのまま、咲夜の来訪が無いのを震えながら願っていたのであった。カシャリ。
アーカイブNo.23
文々。新聞号外:『怪奇! 香霖堂店内で震える段ボール箱』
なくなった原因がレミリアにあると知ったら咲夜はどういった反応を見せるのか。血の涙でも流す?
隠せてないを勘違いして、感想書いたあとわかって悶えたよ
伏字のことだったんだねぇ
まぁ、咲夜さんなら使えてもおかしくないけど。しかも、無反動で。
文章のテンポも良くて面白いせいで香霖堂に萃香が居ついていることに全く疑問を抱けなくなりましたどうしてくれる。