「土とか、食ってみようかな」
「…は?」
それは麗らかな小春日和。そろそろ木々も蕾を結ぶ、そんな季節。香霖堂には客が訪れていた。…そう、客なのである。ちゃんとお金…とは行かないが、対価を払っていく客なのである。そんな良心的な客人――鬼なのだが――が妙な事を言い出したのだ。対価を払われたりしている側の霖之助は、驚くしかないだろう。そして、そんな客のそんな言を無視するわけには行かず、尋ねてみた。
「な、何を言い出すんだい萃香。酒が恋しくて脳味噌が…」
「いや、違うんだ霖之助。ちょっと前にあった人気投票の結果が振るわなかったんだ。聞いたところによると、風神録では新キャラが結構な人を喜ばせたんだってな。私にはそういう…インパクト? がないなぁ、って」
「いや、だからってこんな所で土を食べても僕以外誰にも気付かれないよ」
そう、悲しいかな、店には萃香と霖之助以外は、なりを潜めた閑古鳥しかいなかった。
「というか、引くけれど」
「くそう、やっぱり巫女とかじゃないと幻想郷的インパクトは残せないのか。萃香無念」
目尻を潤ませながら遠いところを見始めた萃香。
「そういえば、巫女の服というのはあるよ」
「本当か。ようし、何処だ」
「そこの箪笥の中だよ」
「わかった、任せろ」
霖之助が何を任せればいいのか、と問う前に萃香は店の奥に消えていく。そして暫く、その手の趣味の人には涎物の衣擦れ音をさせた後、つかつかと戻ってきた。
「緑じゃねーかッ!」
「緑ですけど!?」
半人半妖の変人香霖堂店主に幻想郷にはいないはずの鬼が緑色の巫女服を着てヘッドバントをかます、というなんとも珍しくもどうしようもない光景を見せ付けられた、店の片隅に居を構える蜘蛛はどう反応すればいいのだろうか。あまりの衝撃にうっかり敬語になる店主も見ものかもしれない。
「何だよあの蛙みたいな色の巫女服は! 私が○ルイージだとでも言うのか、紅いの持ってこんかい!」
「そんな無茶な。いいじゃないか、似合ってるんだから。それに隠せていないよ、それ」
「な!? ななな、なんだとこらぁ、やるかぁ!」
「なんでそうなる!」
そのまま鯖折へと移行した赤鬼を見つつ、嗚呼、この客に対する評価を変えなければ、と思う霖之助だった。カメラのシャッターが下りる音と共に堕ちていく視界と意識は、遠く白玉楼へと旅支度を始めたのだった。
見てえーっ!
だから緑巫女萃香は早苗さんの偽物だ!アレ?
ところで何を隠せてないのか具体的に詳細を事細やかにですね――あれ、こんな時間に誰か来たようだ
ってか緑巫女とか、どんだけーwww
太宰府天満宮でちょこちょこ見るし
ボクは断然赤が好きだけどね!