Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

愛しいあのこは中華小娘

2008/03/03 08:43:15
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 初めての出会いは私がパチュリー様に召喚されたときでした。


「それでは行ってきます」
「ええ。でも地下室へはレミィの許可がでないかぎり行っては駄目よ」
 パチュリー様は本から目を離さずに言う。
 駄目と言われれば、行きたくなるのが人の性。いや私は悪魔ですけど。
 湧いてくる好奇心。それと同時に行かないほうがいいと第六感が強く告げる。
 ……来たばかりだし、ここは大人しくしておきましょう。
「わかりました」
 そう答えて図書館を出る。
 始めはメイド長に会いにいき、そしてメイド長に連れられレミリアお嬢様のもとへ。
 挨拶はすぐに済んで、お嬢様からも地下へは行かないようにと忠告されました。
 一体なにがあるんでしょうか? そのうちわかるといいですねぇ。

 今になって思うと、地下へと行かせなかった第六感を褒めてあげたいです。
 何も知らない状態で好奇心に負けて行ったら、待つのは死でしたからね。


 お嬢様に会ったあとは、これからともに過ごす方々に挨拶をして回り、最後に出会ったのが貴方です。
 紅魔館の入り口に立ち、私が近づいていくとすぐに気づいて笑顔で迎えてくれました。


「初めて見る顔ですね? はじめまして、私は紅美鈴、ほんめいりんです。
 大事なことなので二回言いました。
 格好が中国っぽいということで中国と呼ばれることもあります。
 愛称で呼ばれるのは嫌ではないんですけど、やっぱり本名で呼ばれたいです」
 嫌ではないのなら強調しないんじゃ?
 やっぱり本名で呼ばれたいんでしょうね。


 第一印象は面白い人でした。


「はじめまして。私はいまだ未熟者ですので、名乗ることができません。
 どうぞ小悪魔と呼んでください。
 パチュリー様に召喚されて今日からこの紅魔館に住むことになりました。
 よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。
 小悪魔さんですか。早く名乗れるようになるといいですね」
「はい。でもまだ先のことでしょうね。
 美鈴さんはここで何をしているのですか?」
「見てのとおり門番ですよ。主な役割は侵入者を排除することです」
「侵入してくる人がいるんですか?」
「はい、けっこうたくさんいますよ」
 よく見てみると門にたくさんの傷が入ってますね。
 ここで何度も争いがあった証拠ですね。
「大変な仕事なんですねぇ」
「楽じゃないですけど、お嬢様たちやここに住む人たちが好きですから少しでもお守りできるのは嬉しいです」
 胸を張って笑い浮かべた綺麗な笑顔。本当にここに住む人たちが好きなんだとわかりました。
 それに門番という仕事に誇りを持っていることも。

 ふいに美鈴さんが門の方向を見た。その表情はさっきまでと違い、きりっと引き締まっていてカッコイイです。
「ちょっと仕事してきます」
 素早い動きで門の前に立った美鈴さんは、遠くからやってきていた侵入者を迎え撃つ。
 いつのまにか美鈴さんのそばに仲間らしい人たちがいて、その人たちに指示をだしながら美鈴さんも戦っています。
 相手に触れられることなく、一撃をもって倒していく。自分たちの人数以上いた敵をあっというまに減らしていく。
 入り混じる戦いの中で美鈴さんはひときわ目立っています。
 見惚れていたのが悪かったのか、乱戦の流れ弾がこっちにむかってきているのに気づくのが遅れた。
 気づいた頃には避けられそうになくて、当たるなぁと頭のすみで客観的に思っていると、目の前に美鈴さんがいました。
 流れ弾を手で叩き落として、
「大丈夫ですか?」
 と聞かれて、ようやく助けてもらったんだとわかりました。
「え? あっ! ありがとうございますっ」
「無事ならいいんです」
 ふんわりと浮かべた笑顔がすっと心に入ってきた。
「もうちょっと待っててくださいね。すぐに終らせますから」
 再び美鈴さんは門に向かう。その背中が大きく強く見える。
 守るという気概に満ち溢れたすごい背中でした。


 第二印象は素敵でかっこいい人でした。


 その日から、私の紅魔館での生活が始まりました。
 私の仕事場は図書館、美鈴さんは門。室内と屋外という違いがあって、美鈴さんの様子をいつも知るということはできません。
 でも美鈴さんは目立っていたので、仕事場が違ってもメイドさんから情報は入ってきます。
 仕事をさぼってメイド長に怒られたとかですけどね。
 用事で図書館を出たときも、花壇で楽しそうに水やりをする姿や愛おしそうに鳥の世話をする姿、門番隊たちと訓練をするきりっとした姿を
見ましたっけ。
 ころころと変わる表情が魅力的でした。
 自然と視線が美鈴さんを向いていたことから、このときからすでに惹かれていたんだと思います。
 そうそう怪我していたところに出くわしたなんてこともありましたね?

 日はすでに暮れ落ちて、星が輝き満ちた月が天に昇る時間。館の主が本領を発揮する時間帯。
 月明かり星明りのみの廊下を一人歩いていたとき。反対側からひょこひょこと不自然な歩き方をしていたのが貴方。
「どうしたんです!?」
「あ、こんばんわ」
「あ、はい、こんばんわ。じゃなくてっ大丈夫ですか!?」
「大丈夫、大丈夫。慣れてるから。だからもうちょっと静かにね。
 メイドさんたちが起きちゃいます」
 よく見ると体中傷だらけなのに、いつもの明るい笑顔。
 大丈夫とは言うけれど私にはそうは見えない。
「治療しましょう。私の部屋に来てください」
「これくらい一晩寝れば治りますよ。
 私の体は非常識なんです」
 妖怪は体のつくりが大雑把といっても限度がある。
 今の状態はその限度を超えている。
「駄目です」
 ちょっときつめの目と口調で見て言うと、全然怖がっていないのに怖いと言われる。
 それに対して怒ってますよといったジャスチャーをして、美鈴さんを引っ張って自室へと連れて行く。

 魔法で作った明かりを天井に浮かべて、美鈴さんの体を診ていく。
 本人も非常識だと言っていたようにすでに治り始めていた。
 呆れた体のつくりです。
「ほら治療なんて必要ないです」
「それでも友人が傷ついているのを見て、なんとかしたいと思っては駄目ですか?」
 偽りを本分とする悪魔が、嘘偽りのない言葉を口にすることになるとは。
 でも少しぽかんとしたあと、笑みを浮かべた美鈴さんの表情を見ることができたので、気にはなりませんね。
「なんというか、ありがとうございます。
 それとお願いします」
「はい。といっても一番酷い箇所だけしかする必要はなさそうですけど」
 複雑に折れているらしいスネに治療用の魔法を使う。変なつながり方をしないように、きちんと接骨準備をしたうえで。
「実はそこだけ二日くらい回復が遅れそうで困っていたんですよ」
「ほかの妖怪だって二日じゃ治りませんよ。
 これらの傷は侵入者にやられたんですか?」
 手強い人がきたのかと思って聞いてみる。
「んー……まあ言っても大丈夫かな?
 これはフランドール様と遊んでできた怪我なんです」
「フランドール様っていうと、レミリアお嬢様の妹だと聞きましたけど?」
 さすがに十年近く紅魔館にいれば、お嬢様に妹がいるという情報くらいは知っている。
「そうです。妹様はずっと地下室にいて、ここ三百年ほど外に出ていないんです。
 それで暇で暇で仕方なくて、遊び相手に呼ばれるんです」
「遊び相手で怪我ですか?」
「力の加減が苦手な方ですから」
「もしかして毎回こんな怪我を?」
 慣れているって言っていたのはこのこと?
「ええ、まあそうですね。
 でも! 妹様は悪気はありませんし楽しんでくれているので、私も嬉しいんですよ?」
 親愛の情が込められていて、心底そう思っているとわかる。
「それでも……」
「心配してもらえるのは嬉しいです。
 でも本当に大丈夫ですよ。今は無理ですけど、いつか力の制御を覚えられて普通の遊びをできるようになられます。
 やればできる方だと信じてますから!」
 そう言い切られると私にできることはなにもないじゃないですか。
 ここまでの怪我を負わされて信じていられるのだから、いい方なのでしょうね。
 気が触れられているっていう噂も聞いたことがありますが、そっちの信憑性が低いのでしょうか?
 

 美鈴さんの言葉を信じて、妹様に初めて遭ったとき酷い目に合いましたねぇ。
 あの時は美鈴さんを少し恨みました。
 まあ、治療のお礼といってもらった手作りの点心でチャラにしてますが。点心とても美味しかったです。

 そんないつでも前向きだった貴方の表情に翳りが見え始めたのは最近のこと。
 レミリアお嬢様が紅い霧の事件を起こして、霊夢さんや魔理沙さんたちが紅魔館へと頻繁に訪れるようになってからです。
 あんなに誇っていた仕事もさぼることが多くなって、咲夜さんに怒られてばかりです。


 今日はパチュリー様にお休みをもらって、美鈴さんが仕事をさぼって何をしているか調査です。
 この日のために姿と気配を完全に隠す魔法も修得しました。
 気配に敏感な美鈴さんにばれないためには、これくらいしないといけません。
 すでに使って門の近くに潜んでいます。気づかれていないようですから、成功したみたいですね。
 美鈴さんは周囲を入念に見渡してから、素早い動きで森へと飛んでいく。もちろん私もあとを追います。
 森の中にある広場に下りた美鈴さんはスペルカードを取り出して弾幕を撃ち始めた。
 一度撃ち終わると、少し考えてまた同じ弾幕を撃つ。
 何度も繰り返している様子を見て、弾幕の細部が変わっていることに気づいた。
 苦手だと言っていた弾幕の練習のためにさぼっていたんだとようやくわかった。
 練習なら一人より二人のほうがいいと思って声をかけようと思ったけど、隠れて練習しているってことはばれたくないんだと思って
見てるだけに止める。
 練習する美鈴さんはいままでで一番の真剣な表情です。
 じっと見てて気づきましたが、真剣さの中にわずかな怒りと悔しさが混じっています。
 侵入した霊夢さんと魔理沙さんに怒っている? 
 いやあれは、なんとなくですけど自分に向けたもののような気がします。
 誇りを傷付けることになった不甲斐なさ、好きな人たちが傷ついた悔しさから自分に向けたもの。
 それに気づいて不謹慎ですけど、少し嬉しかったです。好きな人には私も入っていたでしょうから。
 侵入者の存在に気づいた美鈴さんが練習を止めるまで、彼女の真剣な練習風景を見続けました。
 
 美鈴さんに遅れて紅魔館にもどるとすでに侵入者は追い返されていた。
 そして咲夜さんにさぼりがばれて、体中ナイフだらけに。
 情けない表情で謝りながら説教されている美鈴さんを見て、私にもできることを思いつきました。

「咲夜さん」
「小悪魔さん? 何か御用でしょうか?」
「美鈴さんのことで」
「美鈴の?」
「はい。最近さぼることが多いじゃないですか。
 そのわけを話して、お仕置きを減らしてもらおうと」
「弾幕の練習をしてるのは知ってるわよ」
「知ってたんですか。それじゃあお仕置きをもう少し軽くしてあげても」
「隠してるということは知られたくないということでしょう?
 軽くすると気づかれるかもしれないから、いつもどおり接すると決めたの」
 ああ、そういう考え方もありますね。
「でも何に怒っているのか、それはわからないのよ」
 呟いたつもりでしょうけど聞こえてますよ。
 それにしても、そこにも気づいていたんですね。よく見ないとわからないのに。
 もしかしてライバルですか? でもレミリアお嬢様も狙ってますよね? レミリアお嬢様一本に絞ってください。
「あれは自分に対して怒っているんですよ」
 推測の域をでないけど、ほとんど合っていると思う考えを話してく。
 結果、ほんの少しだけ手加減して練習の邪魔をしないということになりました。
 
 美鈴さんが実力を上げても、魔理沙さんも実力を上げるので結局門を突破され続けています。
 それでも好きな人たちを守るため、自身の誇りにかけて努力し続ける美鈴さんは素敵です。



「つまりなにが言いたいかというと、美鈴LOVE! ということです」
 宴会の席で顔を赤くした小悪魔が大声で惚気ている。
 普段はお酒に酔うなんてことはないのに、珍しく酔いはめを外した結果だった。
 美鈴は隠していたことや己の考えがばれて恥ずかしくなり、顔を赤くして慌てている。
 そんな美鈴にフランドールが抱きついた。信じていると言われて嬉しかったのだろう。
 フランドールほど直接的な行動にでることはないが、紅魔館の面々も美鈴に対する好感度を上げたようだ。
 レミリアだけは妹を盗られるという思いもあって±0だが。いや、やや+よりか。
 しかしそれぞれも美鈴との思い出があり、今回のことがきっかけとなりフラグがたった。
 
 すなわち紅魔館メンバーによる『第一回紅美鈴争奪戦』勃発。

 この戦いのきっかけとなった小悪魔の惚気はのちに開始を知らせるゴング、始まりの宣言として長く語り継がれていく。

 第一回紅美鈴争奪戦は美鈴が博麗神社に逃げこみ、同情した霊夢が紅魔館メンバーを追い返したことで終わりを告げた。

 そこでうっかり母親のごとく霊夢の世話を焼いたせいで、母として懐かれた霊夢を交え『第二回紅美鈴争奪戦in博麗神社』が勃発することに
なっちゃったりする。

 好感度アップイベント成功しすぎな美鈴に休まる時間はない!
 頑張れ美鈴! ファイトだ美鈴! 諦めて現状を受け入れるのも一つの選択肢だ紅美鈴!
 
 
小悪魔から一言
「二股三股の皆さんと違って私は美鈴さん一筋なんです!
 絶対に負けません!」


なんか書きたかったものとずれているような気がしないでもないような?
美鈴×小悪魔にするつもりが、小悪魔→美鈴になってる
まあいっかなんて思ってたりもする今日この頃


脱字指摘、感想ありがとうございます
トナ
http://blog.livedoor.jp/ee383/
コメント



1.ぺ天使B削除
美鈴は、魔理沙以上なのか!?(フラグ的に
2.名無し妖怪削除
これはいい片思い小悪魔ですね、って小→美だったのかw
自主訓練や門番隊を訓練してるとことか、もっと読んでみたいなーと思いました。
あと、3行目、一文字抜けてます多分。
3.脇役削除
魔理沙とはまた別の意味で、フラグ立っちゃうね
魔理沙は主に憧れや、カッコイイという意味で惹かれるが
美鈴は主に母性的な意味で惹かれる……
この後の第三次美鈴争奪戦IN幻想郷も見てみたい!
4.名無し妖怪削除
それぞれも美鈴との思い出があり……ですか。
そこのところ詳しくお願いしたいですよ~
5.名無し妖怪削除
会話が淡々としてるなんてヤボな事は言わないよ
サクッと読めて楽しかったです
6.名無し妖怪削除
濃過ぎず且つ薄過ぎず、良い塩梅で楽しめました。
美鈴×小悪魔さんは大好物なのでこう言うSSは嬉しくて堪りません。
やっぱり美鈴は朴念仁かヘタレ、若しくは天然が理想です!
7.名無し妖怪削除
なんというフラグメーカー。
ハーレムエンドか包丁エンドかの二択しかない。
8.ウェスカー削除
恐るべし中ご(ry
9.名無し妖怪削除
つまりなにが言いたいかというと、美鈴LOVE!
10.名無し妖怪削除
で、八雲紫が博麗霊夢の母のざ決定戦をしかけると