Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

おとしもの

2008/03/02 12:49:02
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きっかけは、わりとどうでもいいことだった。傍から見れば、ささいなことだと思う。
ことのはじまりであろう出来事を説明するとすれば、香霖堂へ少女が買い物に来た。
それくらいだ。たった一行で事足りてしまう。

問題は、その少女が藤原妹紅といって、ちょっと見た目よりお姉さんだったことだ。




「おや?」

霖之助がその小さい鈴を見つけたのは、妹紅が買い物に着てから数時間後の事だった。
彼女以降とりたてて来客のなかった店内を手早く片付け、雨戸を閉める。
その作業の途中で、落ちている鈴が視界に入ってきたのだ。

「紐が千切れてる……どうやら引っかかった拍子に落ちてしまったようだな」

振れば幽かな音が聞こえるその鈴を、霖之助はそのままにしておく気にならなかった。
来歴に思いを巡らせる霖之助が落とし主に思い至るまで、そう時間も要さない。

「つまり、持ち主がハッキリしている可能性の高い落し物か」

妹紅のことを知る霖之助は、どうせ商いで歩き回るのでついでに届けておこうと考えた。
もし会えなくても書置きでも残せばよかろうと、深く考えずにそのまま寝たのだ。

翌日、霖之助は竹林の家を訪ねるが、生憎と出かけてしまっているようであった。
ならば書置きを、と筆と紙を取り出してさらさらと書き上げると、入り口に挟んでとっとと帰ってしまう。




しばらくして妹紅が、慧音と一緒に戻ってきた。
妹紅は戸に挟んである文に気がついて、それを2人でしばらく眺めていた。

「……文だよね?」
「差出人は、森近……霖之助?殿方からの文だね。恋文とか?」
「え、あ、あ…バカ、変な事いうなっ!」

一気に顔が赤くなる妹紅。育った年代の織り成す幸か不幸か、文の差出人と慧音の言葉が被って、彼女の勘違いの回路が見事に形成、動作してしまった。
中には霖之助からの伝言が記されているだけであったので2人とも肩透かしを食らった顔をしていたが
それでも『不在でしたのでまた来ます』だとか『(またのご来店を)お待ちしております』の一文にきゃあきゃあとあれこれ言う2人の姿があった。


夜。
何度も文を読み返している自分が恥ずかしくて、妹紅は枕元に文を置くとしばらく顔を埋めて、じたばた己の妄想と格闘していた。

「慧音が変な事いうから……あーっ!」

このままでは本当に恥ずかしさのあまりに火事になるんじゃないだろうかと変な方向に考えが至った妹紅は、寝る姿勢になって淡々と明日の自分の行動を思い描くことにした。

『私は鈴を取りに行けばいい。あの店に出向いて、店主に会って、お礼を言えばいい。あのメガネをかけて静かな感じの店主に……』

まるで念仏のように何度も繰り返しているとじわじわ眠くなってきたので、妹紅はようやく眠りに付くことが出来た。
妹紅は考えすぎたからか、夢にまでその行動予測が出てきてしまったくらいに繰り返してしまったのである。

「……夢に、見たぞ」

普通ならそれで終わる話だが、いかんせん妹紅は見た目より、ほんの少しお姉さんだった。
ほんの少しお姉さん過ぎて、その価値観がかなりずれたまま生き続けてきていたのだ。
具体的に言うと「相手にその気があるから夢の中まで会いにきた」という実にアレな価値観である。

眠気は吹き飛んでいた。妹紅は目を覚ますと現実から逃避するべく布団を頭から被った。
ああ、そのまま二度寝してしまおう。彼女はそう決意したのだ。



それから何刻か過ぎて、戸を叩く者がいた。
慧音だろうか、あるいは急病人か。そんなことを考えながらも、妹紅は外に出た。

「どうかした――」
「やあ、昨日は留守だったようなので――」
「の……―――キャアアアアア!? 亜qw背drftgyふじこl!!!!!!」
「わっ」

藤原妹紅。その人生において味わったことのない、最悪な不意打ちであった。



それを監視する輝夜の僕たる兎が、いたとか、いないとか。


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この作品を書こうと思った動機
・ジェネレーションギャップにより壮絶な勘違いする妹紅が浮かんできた
・なぜか乙女回路によりあれこれ妄想したり悲鳴をあげる妹紅が浮かんできた
・おとしものによりおとされる妹紅

私は一体ナニを……

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  U( (U_つ::::..


でも感想とかお待ちしてます!
ぽんこつたぬき
http://ponkotsutanuki.blog4.fc2.com/
コメント



1.名無し妖怪削除
こういう妹紅もいいね!
2.名無し妖怪削除
ぴちゅーん
3.名無し妖怪削除
古典がいろいろ散りばめられていて読んでいてニヤニヤしてしまいましたw
4.名無し妖怪削除
悶える妹紅の様が脳裏に鮮やかに浮かんだw
5.名無し妖怪削除
ああもう可愛いなぁ!この妹紅は大いにありですw