紅魔館、そこは霧の湖の岬に立つ洋館。
これ以上詳しく知りたい人は、東方求聞史紀を読んでください。持ってない人は諦めるか、買ってください。
簡単にいうと危ない館。これで十分だ。
外観は名の示すとおり紅い。見事に紅い。周囲に浮くほど紅い。近寄ることを躊躇うほどに紅い。人が近寄らない理由の三割を占めるほどに紅
い。
そんな館に突入する人間や住み込む人間がいるのだから世界は広い。
「咲夜」
紅魔館の一室で、今はそばにいないメイド長を呼ぶ館の主レミリア・スカーレット。
子供に見える外見ながら、その顔に湛える表情と仕草はまさに高潔な貴族といえるもの。
自信に満ち溢れた雰囲気は、そこらの人間ならば目の前に立つだけで、己の意思に関係なく膝を地に着き頭を垂れる。
しかし、空間を裂いたかのようにやってきたメイドは、その雰囲気に圧されることなく吸血鬼のそばに控える。そして自らの意思で敬意を払っ
ている。
「お呼びでしょうか」
「いつもより遅かったわね」
そうは言っても呼んで経過した時間は一秒ほどだ。
「申し訳ありません。妹様のお着替えを」
「そう」
「ご用件はなんでしょうか?」
「紅茶を入れてくれる」
「かしこまりました」
腰を曲げた瞬間にテーブル上に暖かな湯気を上げるティカップが現れる。
レミリアはそれを当然のように手にとって口に運ぶ。
カップから上がる湯気がふんわりと香りを漂わせる。香り付けにと入れられた一滴のブランデーが香りに深みを与えていた。
一口二口飲み、口から放す。
「さらに腕を上げたわね」
「ありがとうございます」
静かな時間が過ぎていく。
レミリアはお茶を楽しみ、咲夜は仕えることを至上の喜びとしている。
その静けさを破るかのように、遠くからトタトタと小さな足音が聞こえる。徐々に大きくなった足音は部屋の前で止まった。
「お姉様ー!」
楽しそうに入ってきたのは咲夜が着替えを手伝っていたフランドール。
シャラシャラと涼やかな音を鳴らす羽を持つ子供。レミリアと違いこちらは外見にあった雰囲気を持つ。
今も楽しそうでいて期待感たっぷりな表情で立っている。
「フラン?」
レミリアは入ってきたフランドールを見つめる。
ノックもなしに入ってきたことを少し説教しようという気持ちは吹き飛び、呆然とフランを見つめている。
「どう? お姉様?」
その場でクルリと回り、自らの様相を大好きな姉に見せ付ける。
「グッドですわ、妹様!」
いい笑顔で咲夜が感想を言った。
一方で感想を求められたレミリアは、徐々に顔を赤くしている。わずかに体も震えだす。
「そ、その格好は?」
「咲夜がこれをつけたらお姉様が喜ぶって!」
「さ、咲夜?」
「お気に召しましたでしょうか?」
完璧で瀟洒なメイドは表情を崩さず問う。主の嗜好なぞ熟知ずみだと言わんばかりだ。
それにレミリアは鼻血を噴出することで答えた。
レミリアに鼻血を出させたフランドールの姿、それは……いつもと変わらぬ姿。
だが咲夜の手により作り上げられた至高の芸術品。
帽子はなく、かわりに猫耳がつけられ、腰には細くしなやかな尾がついている。手には猫の手を模した手袋。どれも色は白。
フランドールの無邪気で純粋さを表しているようだ。
その姿まさに……猫!
フランドールならぬ、フニャンドール!
いつもと同じように、今日も紅魔館は紅く染まる。
おもに主の血の色で。時々、メイド長の鼻血と門番がナイフに刺された血と貧弱魔女の吐血でも染まる。
でも俺が吹いたビールは返してくれwwwww
>>いいぞもっとやれ
今後もレミリアを喜ばせるため咲夜さんは頑張ってくれるはずです!
>>ビールは返してくれ
萃香が全部飲んだので無理です
>>フニャンドールって言いたいがために…!
まさにそのとおり!
せめて端での折り返しにした方がいいかと思いますよ、投稿前に確認を。