注意書き:今回のお話は少し黒いお話。多分
そう、運が悪かったとしか言い様がない。
幻想郷の妖怪には、言葉のやり取りが出来ないような妖怪も多々存在する。
そういった妖怪は大抵が非常に獰猛で、好戦的で、執念深いものだ。故に、そういった妖怪が主に人間達との争いを起こしている。
ほとんどの場合が人間に退治されてしまうのだが、稀に例外が起きる。
それらが徒党を組んだときだ。
その徒党は5匹程度のものから、200匹を超えるものまで様々ある。
そしてその徒党は、同一の目標を殺戮しつくすか、徒党が全滅するまで常に害を成す。
言うならば妖怪災害とでも言うべきだろうか。その被害は徒党の規模はどうであれ、小さくはない。
私はその徒党に、喧嘩を売ってしまった。
事の始まりは屋台を開いていた時の事。
偶然、その日はただの人間がお客さんだった。
偶然、そういった徒党が屋台を見つけてしまった。
偶然、そのお客が私の歌を良いと言ってくれる常連さんだった。
そんな偶然が重なり、私は妖怪の徒党から常連さんの人間を助けてしまった。
故に私は、襲われた。
その人を逃がす為に私は弾幕を張る。いつもの弾幕ゴッコでは宣言して使うスペルカードだ。
でも、こいつらにそんなルールは通用しない。遊びなんかではない、本気の殺意を持って攻撃してくる。
だから私も本気で戦う。生きる為に殺す。ただそれだけ。
初めの数分は私が優位に戦っていた。地を這う妖怪がほとんどだった事も幸いし、全く体に触れさせなかった。
それから更に時間が経った。そこで私は異常に気付いた。
(どんどん増えていっている……!)
既に30は殺したと思ったが、減っているどころか逆に数が増えていっている。
どうやらこの徒党は、相当大規模な徒党らしい。
空を飛ぶ妖怪も現れ始め、一人空中で戦えるという優位性もすでに無くなっていた。
それから更に時間が経った。
「ッ!!?」
突如、背中に大きな衝撃が加わり、地面へと突っ込んでいく。
その衝撃は相当のもので、何もできずに顔が地面とぶつかり合った。
そして即座に来る激痛。思いっきりぶつけてしまった顔と、何かがぶつかった背中から耐えられないほどの痛みを感じる。
どうやら羽を狙われたらしい、背中に生えた羽の感覚が全く感じられなかった。
たんに負傷しただけか、それとも根こそぎもぎ取られてしまったか。今の私にそれを確認する余裕は無い。
あまりの痛さに涙が出る。全身が震える。
イタイ
それを待っていたように、地を這う妖怪たちが私に殺到してくる。
無理矢理起き上がり、必死に爪を振るい、それらを近づけないようにするが、あまり意味は無く。
ブチブチッ
何かが千切れるような音がする。いや、自分で何が千切れているか分かっている。でもそれを認めてはいけない、別の何かだと認識しなければならない。
そうしなければこの殺意の波に押し流され、自分と言う存在が失われてしまうから。
既に自分がどんな行動をしているかも分からない。ただ、既に忘れて久しかった感情が甦って来た。
コロス
ナニヲ?
キマッテイルジャナイ
メノマエノイノチヲ
ホラ、スコシヒッカクダケデクビガトレルヨ?
ミヲマカセナヨ
ダッテアナタモ
ムカシハアイツラト
オ ナ ジ ダ ッ タ ジ ャ ナ イ
ドス黒い意思が頭を駆け巡り、思考を明確にしていく。
人と妖怪とが命を削りあって戦った昔の感覚が体に宿る。
腕に血管を浮き立たせ、歓喜するように妖怪の群れへと歩を進める。
そこに繰り広げられるは妖怪達の宴
血が舞い
肉が飛び散り
歓喜とも断末魔とも言える叫びが辺りに響く
妖怪達の殺戮の宴
宴の終わりに残る物は
死臭漂う化け物達と
肉塊となった歌姫と
亡骸抱えて泣く友ぞ
「……ア……起きてよ、ミスティア。」
「う、うぅん……あ、あれ、リグル?あ、私、何で屋台に居るの?」
「もう、ミスティアの屋台なんだからミスティアが居てあたりまえでしょ?」
「あ、うん、そっか、夢かー……。」
「気持ち良さそうに寝てたけど、何か夢でも見てたの?」
「うん……まぁ、ちょっとね。」
「 ?? まぁいいけど。ホラ、行こう。皆待ってるよ。」
「あ、ちょ、ちょっと待ってー。」
見ていた夢が真実か
今の現実が幻か
それは誰にも知りうる事のできない事である
そう、運が悪かったとしか言い様がない。
幻想郷の妖怪には、言葉のやり取りが出来ないような妖怪も多々存在する。
そういった妖怪は大抵が非常に獰猛で、好戦的で、執念深いものだ。故に、そういった妖怪が主に人間達との争いを起こしている。
ほとんどの場合が人間に退治されてしまうのだが、稀に例外が起きる。
それらが徒党を組んだときだ。
その徒党は5匹程度のものから、200匹を超えるものまで様々ある。
そしてその徒党は、同一の目標を殺戮しつくすか、徒党が全滅するまで常に害を成す。
言うならば妖怪災害とでも言うべきだろうか。その被害は徒党の規模はどうであれ、小さくはない。
私はその徒党に、喧嘩を売ってしまった。
事の始まりは屋台を開いていた時の事。
偶然、その日はただの人間がお客さんだった。
偶然、そういった徒党が屋台を見つけてしまった。
偶然、そのお客が私の歌を良いと言ってくれる常連さんだった。
そんな偶然が重なり、私は妖怪の徒党から常連さんの人間を助けてしまった。
故に私は、襲われた。
その人を逃がす為に私は弾幕を張る。いつもの弾幕ゴッコでは宣言して使うスペルカードだ。
でも、こいつらにそんなルールは通用しない。遊びなんかではない、本気の殺意を持って攻撃してくる。
だから私も本気で戦う。生きる為に殺す。ただそれだけ。
初めの数分は私が優位に戦っていた。地を這う妖怪がほとんどだった事も幸いし、全く体に触れさせなかった。
それから更に時間が経った。そこで私は異常に気付いた。
(どんどん増えていっている……!)
既に30は殺したと思ったが、減っているどころか逆に数が増えていっている。
どうやらこの徒党は、相当大規模な徒党らしい。
空を飛ぶ妖怪も現れ始め、一人空中で戦えるという優位性もすでに無くなっていた。
それから更に時間が経った。
「ッ!!?」
突如、背中に大きな衝撃が加わり、地面へと突っ込んでいく。
その衝撃は相当のもので、何もできずに顔が地面とぶつかり合った。
そして即座に来る激痛。思いっきりぶつけてしまった顔と、何かがぶつかった背中から耐えられないほどの痛みを感じる。
どうやら羽を狙われたらしい、背中に生えた羽の感覚が全く感じられなかった。
たんに負傷しただけか、それとも根こそぎもぎ取られてしまったか。今の私にそれを確認する余裕は無い。
あまりの痛さに涙が出る。全身が震える。
イタイ
それを待っていたように、地を這う妖怪たちが私に殺到してくる。
無理矢理起き上がり、必死に爪を振るい、それらを近づけないようにするが、あまり意味は無く。
ブチブチッ
何かが千切れるような音がする。いや、自分で何が千切れているか分かっている。でもそれを認めてはいけない、別の何かだと認識しなければならない。
そうしなければこの殺意の波に押し流され、自分と言う存在が失われてしまうから。
既に自分がどんな行動をしているかも分からない。ただ、既に忘れて久しかった感情が甦って来た。
コロス
ナニヲ?
キマッテイルジャナイ
メノマエノイノチヲ
ホラ、スコシヒッカクダケデクビガトレルヨ?
ミヲマカセナヨ
ダッテアナタモ
ムカシハアイツラト
オ ナ ジ ダ ッ タ ジ ャ ナ イ
ドス黒い意思が頭を駆け巡り、思考を明確にしていく。
人と妖怪とが命を削りあって戦った昔の感覚が体に宿る。
腕に血管を浮き立たせ、歓喜するように妖怪の群れへと歩を進める。
そこに繰り広げられるは妖怪達の宴
血が舞い
肉が飛び散り
歓喜とも断末魔とも言える叫びが辺りに響く
妖怪達の殺戮の宴
宴の終わりに残る物は
死臭漂う化け物達と
肉塊となった歌姫と
亡骸抱えて泣く友ぞ
「……ア……起きてよ、ミスティア。」
「う、うぅん……あ、あれ、リグル?あ、私、何で屋台に居るの?」
「もう、ミスティアの屋台なんだからミスティアが居てあたりまえでしょ?」
「あ、うん、そっか、夢かー……。」
「気持ち良さそうに寝てたけど、何か夢でも見てたの?」
「うん……まぁ、ちょっとね。」
「 ?? まぁいいけど。ホラ、行こう。皆待ってるよ。」
「あ、ちょ、ちょっと待ってー。」
見ていた夢が真実か
今の現実が幻か
それは誰にも知りうる事のできない事である
最後まで題名の意味が分かる、二度お得な素晴らしいお話、ありがとうございました。
甘いのも悪くないけど、そればかりだとちょっと
こういうのも読みたくなります
幻想郷は妖怪が人間食らう所、弾幕などのルールも絶対ではないなら、人里以外はかなり殺伐としてそう。白鳥の水面下みたく、綺麗に見えるゲームの裏とか見てみたくなったな。
それとも自らの手で勝手に消えていくのだろうか
知能の低い妖怪たちが消えていったら、知能ある妖怪たちはどうなっていくのだろうか
いずれ幻想郷も外の世界と同じように妖怪たちが消え、人間の世界になってしまうのかもしれないなぁ
自分としては歌姫の死で終わっていたならば興味深い(おもしろい)と思いはすれど、好きにはなれなかったかもしれません。
殺伐も必要です。でも甘いのも必要なんだと思います。
私の想像した歌姫の亡骸の笑顔は、歪んでいました。