―あらすじ―
妖夢容赦なし
―白玉楼 縁側―
「ねぇ妖夢、今日はバレンタインデーっていう行事があるそうよ」
「そうですか。あ、幽々子様。本日のお茶菓子は羊羹です」
「待てコラ」
「待てと申されましても。羊羹は、幽々子様の大好物じゃありませんでしたか?」
「違うの妖夢、妖夢違うのよ。私が言いたいのはね――」
「あ、本日用意した羊羹は、小豆とカレーとジンギスカンですよ」
「ふざけんなテメェ。大体よ、小豆はともかくカレーとジンギスカンって何!?」
「紫様からのお土産だと、今朝方に藍さんが届けてくれたんですよ」
「あんの足kふごぶっ!?」
「あーあ、余計な事を仰ろうとするから。慧音さんも言っていましたよ、『壁に耳あり、スキマにまじかるゆかりん☆』って」
「ングングング……」
「幽々子様、口に羊羹を棹のまま頬張って、話そうとなさらないで下さい」
「ングウングゴクン。……なにこれっ!?」
「今のは、カレー羊羹ですね。お味はいかがでしたか?」
「カレーに対する冒涜だと思うわ」
「では、ジンギスカンにチャレンジされますか? こちらにご用意してございます」
「そうじゃなくって! ねぇ妖夢、あなたはバレンタインデーがどんな日なのか分かっているの?」
「殉教者の死を悼む日ですよね。生憎、私は宗教が違いますから……」
「あぁもぉ。そうでなくて、もっと俗な行事があるでしょう?」
「あ、なーんだ。そーゆー話でしたか」
「そうよ! なに、今までのはボケだったの?」
「ちゃんと仰っていただきませんと。幽々子様は、羊羹よりこちらがお好きでしたか」
「……ナニコレ」
「煮干し、ですが。ご存知ありませんでしたか?」
「いえ、煮干し位は知っているわよ。でも、なんでいきなり煮干しを出してくるの? しかもスカートの中から」
「2月14日は、煮干しの日ですよ」
「知らないわよ!」
「幽々子様……西行寺の姫ともあろうお方が、そのように声を張り上げないで下さい。お師様が見たら、たいそうお怒りになるでしょうに」
「妖忌は、この際どうでもいいわよ! 妖夢、今日は2月14日! バレンタインデーなのよ!?
あなたも年頃の乙女として、何か思うところはないわけ!?」
「ゆ、幽々子さまっ! そのようなお話は……っ!」
「真っ赤になっちゃってー。なーんだ、やっぱりボケていただけなのね。夕べ、お勝手に明かりが灯っていたけど……ちゃんと用意してあるんでしょう?」
「ででででは! この魂魄妖夢、つたない作ではありますが!」
「やっぱり、チョコを用意していたんじゃないのぉ♪ 早く寄越しなさ……」
「早速、鈴 仙 さ ん に 渡 し て き ま す !」
「
…
……
………えっ?」
「では幽々子様、夕餉までに戻りますので!」
「あっ、ちょ……」
――その日、白玉楼の豪華な床の間に、ちゃぶ台と一升瓶が運び込まれたという。
―終劇―
主従関係を越えようとするに幽々子様・・・これは萌えざるを得ない。
それにしてもうどみょんは良い。心が洗われるようだ。