おっぱい税を導入するそうだ。世も末だ。
曰く、巨乳は色々と得だから。
曰く、ちゃんと世のため人のためにお金使うから。
曰く、おやつは三百円まで。バナナはおやつに入らなくってよ、フラン。
この法案を提出した紅魔館の連中は、途中で『飽きた』とか言って遠足へと向かった。おかげで、なんか変な案が混じってる。
二度と帰って来るな。
彼女らが言うには。弾幕ごっこは、幻想郷に甚大な被害を与えているらしく。
流れ弾による家屋の破壊、被弾によって衣服の破れた少女が引き起こす、風紀の乱れ(むしろこちらは慈善事業では? という意見も有る)
被害者一同に謝罪と賠償を要求されたので、税金で弁償しようというのだ。殊勝な心がけだ。
しかし、胸囲に応じて税率を上げるとはどういう事だろう。近々、文書で説明してくれるそうだが。
『 巨乳は環境に悪影響を与えるのです。
お乳が揺れる度に殿方の鼻息が荒くなり、幻想郷の気温が上昇すると予想されます。
故にデカ乳女の責任は甚大、たっけー税金納めるのは当然なのです。 かしこ 』
環境問題に論点を摩り替える悪知恵、果たしてこれが紅魔館の連中だけで思いつく所業であろうか。
――否。断じて否。あの館は通称悪魔保育園、知恵の回らなさ加減には定評が有るくらいだ。
アドバイザーの存在は最早確実。妙に丁寧な語り口の文書や、巨乳に対する無限の悪意から察するに――
「四季映姫ヤマザナドゥ」
またお前の入れ知恵か。こないだも身体測定永久廃止法を作りかけて、顰蹙を買ったばかりであろうに。
里の守護者として、そして税金高く取られそうな体型の一人として、このような悪法を認める訳にはいかぬ。
「ちょっと文句言ってくる。妹紅もついてこい」
「何故」
いや、一人じゃ不安とかそういう訳ではなくてだな。
寄らば大樹の……違う、これじゃ頼りになる人に甘えてるみたいだ、えーと……。
「つまり、一人じゃ怖いんでしょ?」
「……うん」
だってあの裁判長、ちょっと軸がぶれてるんだもの。
『我らナイチチス党が巨乳をホロコースト』
軸がぶれてるってレベルじゃねーぞ。歪んでる。激しく。
「くされ巨乳共は摂取した栄養を乳に送り、我々は脳に送った」
何を語ってるんだろう。新作のポエムだろうか。
「故に、我ら貧乳は知的に優れた、優良種である。しかるに、劣等種たる巨乳の粛清は正当な行為であり――」
ああこれ政治演説なんだ。幻想郷終わったな。
得意気な顔して持論をまくしたてる裁判長、幻想郷においては多数派を占める貧乳の支持を受け、独裁者と化している。
何より恐ろしいのは、『あー。なんかあの子言ってる事おかしいけど、可愛いから許す』みたいな風潮だ。
古来、萌えキャラ化した独裁者ほど危険なものはない。
「えーきちゃんのためなら死ねる」
ほらな。こういう男共が出てくるからまずいんだ。止めねば。
「お前らなにやってんだ」
「慧音様じゃないですか。ちゃんとおっぱい税納めて下さいね」
これは……殴った方が良いのだろうか。
あれこれ悩んでるうちに、妹紅の奴がさっさか焼き払ってしまった。連れてきて良かった。
「貴方達巨乳は、いっつもこうだ! 人の邪魔ばかりしては栄養蓄えバストアップ、地獄に落としてやる」
何故、こんな駄目な子が裁判長になれたんだろう。
そして、このグラマーさんに対する無尽蔵の敵意は、どこから沸いてくるのか。
ちょっと歴史を調べてみようか。
――パパー。えーき100点とったよ!
――そうかそうか。そんな事より牛乳飲みなさい。おっぱい大きくなれないぞ。
――パパー。えーきね、さいばんちょーになって、こまってる人をたすけるのー。
――ふーん。そんな事よりお前、発育悪いな。特に胸とか。
――パパ、おっぱい大きい人が好きなんだね……。
なんという悲劇。おっぱいマニアの父親に認められようと、裁判長の座に就くまで努力したか。
されど父の関心は乳以外に無く。ああこれは巨乳嫌いになるわな。
「感動した。娘の鑑だ」
妹紅のテンションが変になった。四季映姫つるぺたヒストリーを教えてやったのは間違いだろうか。間違いだな。
父君が恥かかされたからとか、そんなんで輝夜を逆恨みする真性ファザーコンプレックス故、感銘を受けてしまったようだ。逃げよう。
「私は裁判長に手を貸す事にした。感動した」
目頭を押さえる妹紅に、そっとハンカチーフを手渡す裁判長。すんごい地味な柄、さては父親とお揃いの使ってるだろ。
「分かってくれますか」
「ああ。女の子の初恋の相手は、誰だってお父さんだからな」
「……理解者がいるというのは、こんなにも有り難い事なのですね」
晴れやかな顔は、いっそう狂気を帯びていた。
敵意が孤立を生み、真実から遠のかせ、理解者により初心に帰る。いい話に聞こえるが、その実よりおかしな方向へと回帰しただけであり、
「私の本当の願い……そう、パパのお嫁さんになりたい」
そんな、犯罪じみた理念を掲げさせるに至る。
この日、裁判長と不死鳥による、歴史的な同盟が結ばれた。
そこから先の事は細かく把握してない。把握したくもない。
☆父さん主義☆
☆労働者の保有するあらゆる資本は、一旦父さんに預ける。その後、父さんが平等に分配する。
☆これにより、ブルジョワ階級が財産と父さんの愛情を独り占めする事がなくなる。
☆父さんに肩たたきしてあげるのは人民の義務である。
星が多いな……。奴らのシンボルマークだから仕方ないのだが(パパと目が合うと、目に星が浮かぶから、だそうだ。奴ら狂っとるねん)
なにやら裁判長と妹紅が生み出した新たな政治思想が、幻想郷住民を虜にしているらしく。
「え? 皆さんはお父様と一緒にお風呂に入らないのですか」
千の演説に勝る、裁判長の一言。結果、中高年男性を中心とした支持者が死兵と化す。
まずい、今の裁判長はカリスマを帯びてきている……! 父さん主義者何人増やすつもりだ。
よほど新しい政治思想と相性が良かったらしい、絶好調じゃないか。
「――何。父親の匂いが臭いと訴える娘? 殺してしまいなさい」
労働者は平等とか言いながら、結局ホロコーストはするんだな。
いや、皆を平等に粗末に扱うから、理念は守ってるのか?
どっちみち破綻は目に見えている。何故なら――
「父さん主義……? 中年男なんざ萌えねーだろ。アホか。自由とブルジョワと女神(洋ロリ)こそ至高でしょうに」
紅魔館の連中が、遠足から帰ってきたからだ。
その後、両勢力の最終兵器である妹紅・フランドール嬢による睨み合いの時期を、冷戦時代。どちらの指導者がより可愛いかを、ブレザー&ウサ耳コスで競い合った時期を、鈴仙時代と呼ぶのが通例となっている。
教科書に書けない裏事情とはまさにこの事、最後は大乱闘でキャットファイトでウフフだなんて書けるか。
「け、慧音様。里は大混乱で御座います」
「だろうな。スカーレット姉妹の猫なで声&苺みるく極撒き戦法は非人道的過ぎた。あれはない」
「ですよね。大量破壊兵器にも程がある。脳髄に直接ブドウ糖を叩き込まれた様な気分でした」
「父さん主義者達も酷い。毎日パパの肖像画にチューして抱きついてハァハァして、見るに耐えなかった」
「まさしくその通りです。里が一瞬にしてけしからん空気に満ちた時は、本気で逃げ出そうかと思いました」
人々を幸福にしよう、という気持ちより、自分の信条や思想が一人歩きしてる様な連中がトップの座に就くと、大変な事になるのだ。
「そんな訳で。この混乱を収めるためにも、ぜひ慧音様に里の指導者になって頂きたいのですが」
何がそんな訳でだ。脈絡無さ過ぎるだろ。
そういう大規模な権力になど興味無いのだ。寺子屋一つ維持するのが、私には相応しい。
なにより、あまり大人物になってしまうと、子供達と距離が出来てしまうからな。
――そんな事を、呟いてしまった。
「か、完璧な思想じゃないですか。そんじゃ、今日から慧音様がプレジデントで決まりですね」
「……あれぇ?」
世界が乱れすぎてて大変なことになってるじゃないですかww
君がプレジデントになるのなら全力で支持しよう。
巨乳持ちは例外無く地獄行きなんだろうな
けーねはロリショタなのかーそーなのかー
吹いたwww
このセンスは真似できねえ。
とりあえず、巨乳でもない貧乳でもない中間の人たちに倖あれ。
>ブレザー&ウサ耳コスで競い合った時期を、鈴仙時代
素直にこの人天才なんだなと思いましたよええw
何なんだこの壮大な幻想郷大戦はwww
あれだ、えーきさまの親父が素敵すぎるんですがwwwww
そして何故カオスなのにこんなに流れが自然なんだw
センスが素敵過ぎますw
そして、初っ端からの怒涛のネタラッシュが気持ち良過ぎますww
このセリフ、発音的に心地よすぎるので、明日からの朗読の課題に使わせてもらいますね。
>見るに耐えられなかった
見るに耐えない、です。
改めてタイトルを見て二度納得wwwwwwwwww
同居人に見せたら二人揃って爆笑して、隣の人にうるさいと怒られました。
でも隣の人は一般人なので見せられません。どうしてくれる。
駄目だ、あなたの言語感覚を理解しようとした自分が愚かだった。理解できるものではなかったのですね?理解するのではなく感じるのですね!?
ああ、また一つ悟りが開けそうだ。
ところで、延髄にブドウ糖ぶち込んでいただきたいのですが・・・
というかどんな頭の構造してるんですか貴方様はwwwwwwwwww
もう涅槃の先まで見えたようなああでももう記憶も曖昧で
なんというかロリコンズルいよロリコン。
あと「レイセン、って冷戦とも読めるよなあ、なんか一本書けそうなネタだなあ」
とか無駄に考えていたところを無慈悲に踏み潰すロリコンズルイよロリコン。