※多分普通の霖之助です。多少のオリ設定(?)があるため苦手な方はブラウザで戻るをどうぞ。
※作品集24の霖之助商売奮闘記その2の続きです。一応あらすじを設けましたが見ておくと
なんだか得した気分になれます。多分。
~あらすじ~
季節は秋、香霖堂の経営がついに大変な事になってしまった。
店主の霖之助は居候兼バイトのルーミアと共に(?)打開策として新しいお店を考え始めるのだった。
……あれ?二行で済んでしまった。まあいいか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ルーミアも寝た事だし、
霖之助は店のカウンター内の椅子に座り、これからのことを考えていた。天井の紅い手形は無視した。
新しく店を始める為に何が必要だろうかと紙に書き込んでいく。
知識、資金、人手、土地……
挙げたらきりが無いが少なくとも霖之助は香霖堂を立ち上げたという実績もあり、
いくらかの条件はクリアしている為、必要の無い項目には斜線を入れる。
「しかし他はなぁ……」
特に資金か。今の貧乏ぶりからして、
店の品を売って始めるのはあまりにも大きな博打だ。
もし魔理沙ならば見切り発車を事も無げにするだろうが、生憎そんな度胸は僕に無い。
おのれ魔理沙(思い出し恨み)
となると……
ぶつぶつとあーでもない、こーでもないと悩み、無作為に時間は過ぎていく。
そして1刻ほど経った頃、
「こんにちは」
ふいに真横から声がした。
「……今日は閉店しましたが」
霖之助は気だるそうに首を声が聞こえた方に向ける。
「相変わらず愛想が悪いわねぇ、それじゃあ得られるものも得られないわよ?」
「紫……、急に横から声が聞こえたら驚くんだが」
いつの間にか横に現れた大妖怪、八雲 紫に霖之助は特に驚いた様子も無く冷静に返した。
よく考えれば今は夜。紫が普通活動する時間だ。
「あら、あなたは驚くと冷静になる性質なのね。勉強になるわ」
「まあ、愛想が悪いのは否定しないが。…良かったら多分こんな苦労しないはずだし」
「そうね。愛想がいい霖之助さんは変そのものだもの」
あいかわらず失礼な妖怪だ。僕にだって愛想のいい時ぐらいある…はずだ。
「まあいいか。で何故ここへ?」
「力になって(好感度を)あげようかな、って思っただけよ。
最近暇(なんてことは無く山の上にでかいのが来たから結界修復に忙しいけどこれ以上ないチャンス)だったし」
「最近新聞に『山の上に新しい神社!? 八雲氏結界修復に多忙』という記事があったが……」
「(ギックゥー! そういえばインタビュー受けて真面目っぽい事言ったんだった!)
……大きい所は終わってるし、後はうちの式で十分よ」
霖之助は一言そうか、と言っただけだった。疑っている様子はない。
「……コホン、話を戻すわよ。色々困ってるみたいだけどそんな面倒な事はこの紫に任せなさい」
出た! 紫の”絶対言わないだろう”ランキング一位『面倒な事は私に任せなさい』!(文々。新聞調べ)
果たして霖之助選手に効くのか!?
「……ああ、ありがとう(珍しいな、よほど暇だったのか)」
全く効いてない! むしろ暇人扱い!
しかし対する紫は満面の笑み! 「これは効いたな」と思い込んでいる!
「いえいえ。で、まずは資金ね。これはもう業務提携としちゃいましょう」
「業務提携……か? 生憎僕は交流が少ないからあては無いに等しいのだけれども」
「わかってるわよ」
交流先に脈があるとすれば霧雨道具店ぐらいだが、そこから独立した手前、
再び頼るようなことは霖之助の信念に反することになる。
「ふふん実はね、前(出会ったあの日)から面白そうだったから喫茶店を計画してたの。
いつでも動かせる状態だったし、この際ちょうどいいから使いましょう」
「喫茶店? なんでまたそんな事を」
「ん? (夫婦で)経営とかにちょっと興味があったのよ。まずはコレを見て頂戴」
そう言うと、紫は数十枚の紙の束を霖之助に渡した。
紐で丁寧に綴られており、手で書かれたと思えないほど正確で綺麗な文字。
おそらく天狗、もしくは外の印刷技術が使われているのだろう。
表紙にあたる部分にはこう書かれていた。
「『幻想郷経済白書』……?」
ぺらり、と捲るとびっしりとグラフと文字が書かれていて、そのかなり複雑なグラフは見ただけでうんざりするほどだ。
霊夢ならばすぐさま火にくべて暖を取るに違いない。
「幻想郷の主な金持ちの家計簿よ。」
いいのかこれ。いやまずいだろ。
「何の為にこんなことを?」
「他言無用よ。というかそんなことどうでもいいじゃない。」
にこやかに紫は言う。
うわ、これ私生活バレバレだ。永遠亭は質素な暮らしをしていると聞いたが。
そのわりにこの出費……単にあの大所帯のせいか、あの姫様のわがままか……
「永遠亭はまだ安泰ね。あの薬師がうまく制御してるわ。」
でも時間の問題、と紫は続けた。
「あのニー……姫様がパーソナルコンピュータを手放さない限り、近い内に崩壊ね」
「なに? あそこの式は動くのか? なら今度……」
「即刻やめるべきね。あれは悪魔の式。中毒性が高く下手に手を出したが最後、
六割の確率でいろんなものを失い人生を棒に振るわ。特に貴方のような人がかかるの」
なんだその確率。微妙すぎだろう。というか病気の一種なのか?
「問題は永遠亭じゃないわ。今は……こっち。どう思う?」
ぺらりぺらりと紫はページを何枚か捲った。書かれていたのは紅魔館。
そこにはなんとも……
「すごく……酷い状態だな」
莫大な収入にそれを上回る支出。
「詳しくは(めんどくさいから)話さないけど食い扶持はあのお嬢様二人と陰気少女、
それとメイド達の待遇改善費。今紅魔館は火の車どころか炎のモンスタートラックよ。」
モンスタートラックってなんだ。
「あのメイド長は……」
「がんばってるわ。人なりにね。紅魔館は下にいくつか支配している富豪があって、
そこで安全な生活の保障と引き換えに上納金。それでもってやりくりしてたけど」
もう手に負えないということか。
「じゃあ紅魔館と業務提携を?」
「ええ。二つ返事でOK貰ったわ。よほど切羽詰ってたんでしょうね」
「ああ、そう……いや、なんか…いやどう考えてもおかしくないか?」
「先を見通す力って大事よ? 商売人ならなおさら…ね?」
それはもはや見通すとかじゃなく未来予知の範囲だ。
……なんだかタチの悪いドッキリに思えてくるな。この妖怪なら普通にしそうだし。
パサッ
「はいこれ誓約書」
まるでそう思うと分ってたかのように渡された書類には確かに『十六夜 咲夜』とサインがしてある。
本格的な上に綿密な文面。二、三度読み返したが不審な箇所はなし。
今自分はどんな顔をして見ているのだろうか。きっと彼女の式にでもつままれたような顔をしているのだろう。
「あと人里付近にちょっと寂れた大きめの家屋があるから
そこもおさえといたわ。はいこれ里の半獣に渡した誓約書の写し。」
「そこまで!? ってよく見たら両方とも僕名義だ!」
「偶然よ。(元からそういう計画だったし)」
紫はいつも通りの胡散臭い笑顔でしれっと答える。
「偶然じゃないだろう!!」
ッしまった、つい粗暴な口調に……
いくら胡散臭くとも面倒な部分をいくつかやってくれたというのはありがたい事なのに。
「っと…………声を荒げてすまない。感謝するべきことなのに」
あわてて取り繕うが紫はさして気にしてないようだった。
「ふふ、別にかまわないわよ。…でも当然対価はもらうわ。」
まあここまでやってタダってわけにはいかないだろう。特に異論は無い。
「ふむ、……わかったよ。僕にできることなら極力やろう。」
なるべくなら少しはマシな条件であるといいが
「そう? じゃあしばらくの間私の”所有物”として動いてもらうわ。」
「所有物?」
これまたずいぶんと奇妙な条件だな。
あの式のように使いっパシリになれとでも言うのか。
「あら、不満?」
「いや、いいさ。ただし無茶なことは控えさせてもらうよ」
紫が小さくガッツポーズをしたのが見えた。なんでだ。
ちょっと嫌な予感がしたがまあ彼女はそれなりにわかる妖怪…のはずだ。
うん大丈夫。多分大丈夫。
「そりゃもちろんよ。」
紫はウキウキした様子で言う。いつもの胡散臭い笑みとは違い、
少女のような華やかな笑顔だった。
「で、さっそくだけどオーナーは私。あなたにはお店の店長となってもらうわ。泊り込みね」
「え? ここはどうするんだい」
「そこは代理を出すわ。この子。」
紫がつい、と指を振ると、突如空間の裂け目(スキマ)が開き、その中から人(?)が出てきた。
ひょこっ
「……どうも。」
あの黒とんがり円錐帽子は……
「ああどうも。……って春告精じゃないか。しかも黒いほうの」
スキマから這い出てきた通称”黒百合”リリーブラックは心なしか元気が無いように見える。
なにかあったのだろうか?
「いろいろ事情があるのよ」
「白がネットゲームをやりだしてね」
……ネットゲームというのはパーソナルコンピュータで出来るゲーム…だったはず。
聞くところによると中毒性があり、やめどころがなかなか見つからないという恐ろしいゲームだと。
「……で、白がネットゲーム中毒になったせいでお金が減るものだから
こうして働きでもしなきゃ明日の食料の保障さえない状況で……。うんまあこれも白の幸せの為なんだよ。」
「大変なんだ……」
「仕方ないよ。私は白の為ならなんでもするし」
うわ、この人病んでるなあ。
「仕事に困ったらスキマ斡旋所へ♪」
にこやかに紫は言った。何時も通りの胡散臭い笑みで。
……この妖怪そんなことまでやってるのか…
というか白働け。黒に謝れ。
「これでお店は大丈夫。この子は有能よ。今までいろんなバイトしてたし……閻魔様の所の書記官とか」
「安心して任せて」
この妖精えらくやる気あるけど実際ここだとやること事体ない気がするのは気のせいだろうか。
……あれ? 誰がバイト代出すんだ?
なんかいろいろ仕組まれた感がするんだが。
「じゃあ来週から頼んだわ。基本的にお店番してれば大丈夫。主に来るのは……」
と、紫はだいたいの店の説明をした。
……店主である僕より店のことわかっているんじゃないかと思う。
「あ、そうそう。」
と、付け加えるように、
つい、と紫は僕に向けて指を動かした。
すとん。
と何の前触れも無く僕の視界が落ちる。
「私の物である証として私の前ではその姿でね」
「な……!?」
何がなんだかわからないまま咄嗟に両手を見る。
右手が小さい。左手もだ。しかし服と眼鏡は変わらず丁度いいサイズ。
壁にある鏡を見る。なつかしい、どこかで見た事のある自分。
何だこれは。霖之助は驚愕した。
――霖之助の”存在”自体が縮んでしまった。
「はいリボン。」
しかも紫はなんの説明もなく境界を縛っているものと同じ色のリボンをカウンターに差し出した。
「これは境界を縛るリボン。身に着けている間は元に戻るわ。」
それじゃあね、と紫はリリーブラックと共にさっさとスキマへと帰ってしまった。
「じゃあ店主、また今度」
「お、おい! ちょっと……!」
ピシャリ、とスキマはきれいに閉じた。
あとには呆然とした顔でいつもより高いと感じる椅子に座る幼い在りし日の姿の霖之助だけが取り残されていた。
後は何も無い、静寂のみだ。
……この姿が彼女にとって一体どういう意味を持つのかなんて知る由も無いが、
半ば強引に協力していたのはこの為なのか。
霖之助は思った。
”ああ、よくわからないが嵌められたんだ”と
外では朝日がいつもと変わらず昇っていた。
※作品集24の霖之助商売奮闘記その2の続きです。一応あらすじを設けましたが見ておくと
なんだか得した気分になれます。多分。
~あらすじ~
季節は秋、香霖堂の経営がついに大変な事になってしまった。
店主の霖之助は居候兼バイトのルーミアと共に(?)打開策として新しいお店を考え始めるのだった。
……あれ?二行で済んでしまった。まあいいか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ルーミアも寝た事だし、
霖之助は店のカウンター内の椅子に座り、これからのことを考えていた。天井の紅い手形は無視した。
新しく店を始める為に何が必要だろうかと紙に書き込んでいく。
知識、資金、人手、土地……
挙げたらきりが無いが少なくとも霖之助は香霖堂を立ち上げたという実績もあり、
いくらかの条件はクリアしている為、必要の無い項目には斜線を入れる。
「しかし他はなぁ……」
特に資金か。今の貧乏ぶりからして、
店の品を売って始めるのはあまりにも大きな博打だ。
もし魔理沙ならば見切り発車を事も無げにするだろうが、生憎そんな度胸は僕に無い。
おのれ魔理沙(思い出し恨み)
となると……
ぶつぶつとあーでもない、こーでもないと悩み、無作為に時間は過ぎていく。
そして1刻ほど経った頃、
「こんにちは」
ふいに真横から声がした。
「……今日は閉店しましたが」
霖之助は気だるそうに首を声が聞こえた方に向ける。
「相変わらず愛想が悪いわねぇ、それじゃあ得られるものも得られないわよ?」
「紫……、急に横から声が聞こえたら驚くんだが」
いつの間にか横に現れた大妖怪、八雲 紫に霖之助は特に驚いた様子も無く冷静に返した。
よく考えれば今は夜。紫が普通活動する時間だ。
「あら、あなたは驚くと冷静になる性質なのね。勉強になるわ」
「まあ、愛想が悪いのは否定しないが。…良かったら多分こんな苦労しないはずだし」
「そうね。愛想がいい霖之助さんは変そのものだもの」
あいかわらず失礼な妖怪だ。僕にだって愛想のいい時ぐらいある…はずだ。
「まあいいか。で何故ここへ?」
「力になって(好感度を)あげようかな、って思っただけよ。
最近暇(なんてことは無く山の上にでかいのが来たから結界修復に忙しいけどこれ以上ないチャンス)だったし」
「最近新聞に『山の上に新しい神社!? 八雲氏結界修復に多忙』という記事があったが……」
「(ギックゥー! そういえばインタビュー受けて真面目っぽい事言ったんだった!)
……大きい所は終わってるし、後はうちの式で十分よ」
霖之助は一言そうか、と言っただけだった。疑っている様子はない。
「……コホン、話を戻すわよ。色々困ってるみたいだけどそんな面倒な事はこの紫に任せなさい」
出た! 紫の”絶対言わないだろう”ランキング一位『面倒な事は私に任せなさい』!(文々。新聞調べ)
果たして霖之助選手に効くのか!?
「……ああ、ありがとう(珍しいな、よほど暇だったのか)」
全く効いてない! むしろ暇人扱い!
しかし対する紫は満面の笑み! 「これは効いたな」と思い込んでいる!
「いえいえ。で、まずは資金ね。これはもう業務提携としちゃいましょう」
「業務提携……か? 生憎僕は交流が少ないからあては無いに等しいのだけれども」
「わかってるわよ」
交流先に脈があるとすれば霧雨道具店ぐらいだが、そこから独立した手前、
再び頼るようなことは霖之助の信念に反することになる。
「ふふん実はね、前(出会ったあの日)から面白そうだったから喫茶店を計画してたの。
いつでも動かせる状態だったし、この際ちょうどいいから使いましょう」
「喫茶店? なんでまたそんな事を」
「ん? (夫婦で)経営とかにちょっと興味があったのよ。まずはコレを見て頂戴」
そう言うと、紫は数十枚の紙の束を霖之助に渡した。
紐で丁寧に綴られており、手で書かれたと思えないほど正確で綺麗な文字。
おそらく天狗、もしくは外の印刷技術が使われているのだろう。
表紙にあたる部分にはこう書かれていた。
「『幻想郷経済白書』……?」
ぺらり、と捲るとびっしりとグラフと文字が書かれていて、そのかなり複雑なグラフは見ただけでうんざりするほどだ。
霊夢ならばすぐさま火にくべて暖を取るに違いない。
「幻想郷の主な金持ちの家計簿よ。」
いいのかこれ。いやまずいだろ。
「何の為にこんなことを?」
「他言無用よ。というかそんなことどうでもいいじゃない。」
にこやかに紫は言う。
うわ、これ私生活バレバレだ。永遠亭は質素な暮らしをしていると聞いたが。
そのわりにこの出費……単にあの大所帯のせいか、あの姫様のわがままか……
「永遠亭はまだ安泰ね。あの薬師がうまく制御してるわ。」
でも時間の問題、と紫は続けた。
「あのニー……姫様がパーソナルコンピュータを手放さない限り、近い内に崩壊ね」
「なに? あそこの式は動くのか? なら今度……」
「即刻やめるべきね。あれは悪魔の式。中毒性が高く下手に手を出したが最後、
六割の確率でいろんなものを失い人生を棒に振るわ。特に貴方のような人がかかるの」
なんだその確率。微妙すぎだろう。というか病気の一種なのか?
「問題は永遠亭じゃないわ。今は……こっち。どう思う?」
ぺらりぺらりと紫はページを何枚か捲った。書かれていたのは紅魔館。
そこにはなんとも……
「すごく……酷い状態だな」
莫大な収入にそれを上回る支出。
「詳しくは(めんどくさいから)話さないけど食い扶持はあのお嬢様二人と陰気少女、
それとメイド達の待遇改善費。今紅魔館は火の車どころか炎のモンスタートラックよ。」
モンスタートラックってなんだ。
「あのメイド長は……」
「がんばってるわ。人なりにね。紅魔館は下にいくつか支配している富豪があって、
そこで安全な生活の保障と引き換えに上納金。それでもってやりくりしてたけど」
もう手に負えないということか。
「じゃあ紅魔館と業務提携を?」
「ええ。二つ返事でOK貰ったわ。よほど切羽詰ってたんでしょうね」
「ああ、そう……いや、なんか…いやどう考えてもおかしくないか?」
「先を見通す力って大事よ? 商売人ならなおさら…ね?」
それはもはや見通すとかじゃなく未来予知の範囲だ。
……なんだかタチの悪いドッキリに思えてくるな。この妖怪なら普通にしそうだし。
パサッ
「はいこれ誓約書」
まるでそう思うと分ってたかのように渡された書類には確かに『十六夜 咲夜』とサインがしてある。
本格的な上に綿密な文面。二、三度読み返したが不審な箇所はなし。
今自分はどんな顔をして見ているのだろうか。きっと彼女の式にでもつままれたような顔をしているのだろう。
「あと人里付近にちょっと寂れた大きめの家屋があるから
そこもおさえといたわ。はいこれ里の半獣に渡した誓約書の写し。」
「そこまで!? ってよく見たら両方とも僕名義だ!」
「偶然よ。(元からそういう計画だったし)」
紫はいつも通りの胡散臭い笑顔でしれっと答える。
「偶然じゃないだろう!!」
ッしまった、つい粗暴な口調に……
いくら胡散臭くとも面倒な部分をいくつかやってくれたというのはありがたい事なのに。
「っと…………声を荒げてすまない。感謝するべきことなのに」
あわてて取り繕うが紫はさして気にしてないようだった。
「ふふ、別にかまわないわよ。…でも当然対価はもらうわ。」
まあここまでやってタダってわけにはいかないだろう。特に異論は無い。
「ふむ、……わかったよ。僕にできることなら極力やろう。」
なるべくなら少しはマシな条件であるといいが
「そう? じゃあしばらくの間私の”所有物”として動いてもらうわ。」
「所有物?」
これまたずいぶんと奇妙な条件だな。
あの式のように使いっパシリになれとでも言うのか。
「あら、不満?」
「いや、いいさ。ただし無茶なことは控えさせてもらうよ」
紫が小さくガッツポーズをしたのが見えた。なんでだ。
ちょっと嫌な予感がしたがまあ彼女はそれなりにわかる妖怪…のはずだ。
うん大丈夫。多分大丈夫。
「そりゃもちろんよ。」
紫はウキウキした様子で言う。いつもの胡散臭い笑みとは違い、
少女のような華やかな笑顔だった。
「で、さっそくだけどオーナーは私。あなたにはお店の店長となってもらうわ。泊り込みね」
「え? ここはどうするんだい」
「そこは代理を出すわ。この子。」
紫がつい、と指を振ると、突如空間の裂け目(スキマ)が開き、その中から人(?)が出てきた。
ひょこっ
「……どうも。」
あの黒とんがり円錐帽子は……
「ああどうも。……って春告精じゃないか。しかも黒いほうの」
スキマから這い出てきた通称”黒百合”リリーブラックは心なしか元気が無いように見える。
なにかあったのだろうか?
「いろいろ事情があるのよ」
「白がネットゲームをやりだしてね」
……ネットゲームというのはパーソナルコンピュータで出来るゲーム…だったはず。
聞くところによると中毒性があり、やめどころがなかなか見つからないという恐ろしいゲームだと。
「……で、白がネットゲーム中毒になったせいでお金が減るものだから
こうして働きでもしなきゃ明日の食料の保障さえない状況で……。うんまあこれも白の幸せの為なんだよ。」
「大変なんだ……」
「仕方ないよ。私は白の為ならなんでもするし」
うわ、この人病んでるなあ。
「仕事に困ったらスキマ斡旋所へ♪」
にこやかに紫は言った。何時も通りの胡散臭い笑みで。
……この妖怪そんなことまでやってるのか…
というか白働け。黒に謝れ。
「これでお店は大丈夫。この子は有能よ。今までいろんなバイトしてたし……閻魔様の所の書記官とか」
「安心して任せて」
この妖精えらくやる気あるけど実際ここだとやること事体ない気がするのは気のせいだろうか。
……あれ? 誰がバイト代出すんだ?
なんかいろいろ仕組まれた感がするんだが。
「じゃあ来週から頼んだわ。基本的にお店番してれば大丈夫。主に来るのは……」
と、紫はだいたいの店の説明をした。
……店主である僕より店のことわかっているんじゃないかと思う。
「あ、そうそう。」
と、付け加えるように、
つい、と紫は僕に向けて指を動かした。
すとん。
と何の前触れも無く僕の視界が落ちる。
「私の物である証として私の前ではその姿でね」
「な……!?」
何がなんだかわからないまま咄嗟に両手を見る。
右手が小さい。左手もだ。しかし服と眼鏡は変わらず丁度いいサイズ。
壁にある鏡を見る。なつかしい、どこかで見た事のある自分。
何だこれは。霖之助は驚愕した。
――霖之助の”存在”自体が縮んでしまった。
「はいリボン。」
しかも紫はなんの説明もなく境界を縛っているものと同じ色のリボンをカウンターに差し出した。
「これは境界を縛るリボン。身に着けている間は元に戻るわ。」
それじゃあね、と紫はリリーブラックと共にさっさとスキマへと帰ってしまった。
「じゃあ店主、また今度」
「お、おい! ちょっと……!」
ピシャリ、とスキマはきれいに閉じた。
あとには呆然とした顔でいつもより高いと感じる椅子に座る幼い在りし日の姿の霖之助だけが取り残されていた。
後は何も無い、静寂のみだ。
……この姿が彼女にとって一体どういう意味を持つのかなんて知る由も無いが、
半ば強引に協力していたのはこの為なのか。
霖之助は思った。
”ああ、よくわからないが嵌められたんだ”と
外では朝日がいつもと変わらず昇っていた。
香霖頑張れ!と言うのを禁じえないw
次回作も期待してますw
さてどうなるかな…
しかしあとがき地味に続いてたのかw
このまま小ネタとして連載かな?
オラすげぇワクワクしてきたぞ!
続き、楽しみにしています
ここのこーりんの人気具合で繁盛するかが決まりそうですね。紫がべたぼれだから人気あるのかな?ありすぎると店崩壊フラグが…。
外界でまだ幻想になってない事態が蔓延している気が…
後、後書の三人はシリアス損過ぎるww
次回分も出来た事だし、レスしようと思ったのですが……多い(汗)
めげずにいきましょう!では、下から
>名無し妖怪さん(一人目)
一話の時の感想に『魔理沙外道w』との感想を貰ったので
急遽二話おまけでちゃんと反省していた、と言う事にしたのですが
ついでにこのおまけで伏線回収すればいいかと思い、現在に至ります。
>欠片の屑さん
二次関数のグラフのごとく反り返らないよう頑張ります!
それにしても香霖に関してのコメントが少ないのは何故だろう。
>名無し妖怪さん(二人目)
計算高い人ほど相手の心の計算が計れないものです。多分
>幻想入りまで一万歩さん
虹の一番外側にいる人ですから。そうストレートに言えないんですよ。
乙女ですし。
>名無し妖怪さん(三人目)
霖之助スレを覗いて見たことがありますが
カップリング談義をしておりました(笑)
香霖堂読む限りだと少女なのになあ紫…
>名無し妖怪(四人目)
小ネタどころか伏線張り&回収係になりそうです
>名無し妖怪(五人目)
悟空さん、天界からのご感想ありがとうございます。
個人的には劇場版第十二作目の貴方が好きでした。
>名無し妖怪(六人目)
小町フラグもお忘れなく。
>道端から覗く程度の能力
そこに関しては次回、理由が明らかになる予定です。
>名無し妖怪(七人目)
さすがに爆発オチとかは現在のプロットにはありませんね…
今の所付かず離れず、といった所でしょうか。
>名無し妖怪(八人目)
夢いっぱいの『不思議な国のアリス』だって裁判沙汰があるんですよ。
そこは幻想という名前の現実ですから。
おまけのは…まあいいじゃないか、という理念の下に書いてます
>名無し妖怪(九人目)
はい、次回も楽しめるよう、絶賛調整中です!
>名無し妖怪(十人目)
えーっと、香霖堂第11話ぐらいの時からです。
次回UP予定は2月13日です、お楽しみに!?
しかしこのゆかりん、ノリノリである