半獣が守る里の近く
人が入ると迷う竹林の奥に一つの庵があった
そして、その中に住む住人
「妹紅…いるか?」
「や、慧音久しぶり」
藤原妹紅の姿があった
「……また自堕落な生活をしていたな?」
庵の中の様子を見て、慧音がそう呟くと
部屋の中を片付け始めた
その中で、燃えるごみと燃えないごみを分けると
「……妹紅…」
「ん、分かった」
慧音が燃えるごみを妹紅に手渡した
それを持って妹紅は外に出ると
「燃えろ!」
彼女の能力であとかたも無く燃やされる燃えるごみ
燃え尽きた事を確認した妹紅は、慧音の待つ家の中に戻った
「焼いてきたよ」
「そうか、今ご飯が出来るから少し待っているといい」
「うわーい」
その後、慧音が作った料理を食べた後
慧音が食器を片付けながら妹紅に聞いた
「なあ、妹紅…」
「んっ?なに…慧音」
「お前の不死鳥の事だが…」
慧音がそういうと、妹紅の傍にやってきた
「どうやって手に入れたんだ?」
その言葉を聞いて、妹紅は少し複雑そうな顔をした
その顔を見た慧音が少し取り乱す
「い、いや、嫌なら言わなくても良いんだ」
だが、妹紅は首を振ると
「……そうだな、慧音は信頼できるから話してもいいかな」
そう呟くと、少しだけ昔語りをしてくれた
あれは、まだこの幻想郷に来てすぐの事だったな
ただでさえ、知って居る人がいないところで
周りには化け物が一杯だろ?
流石に何度死んでも蘇るけど、怖くてね
そんな時に見つけたんだ、私の友を
「友…」
慧音がその言葉に、少し落ち込む
「ん?どうしたの慧音…」
「な、なあ…その……私は…妹紅にとって…」
慧音がそう呟くと、妹紅は笑って慧音の方を向くと
「慧音は、親友以上だよ」
そう答えた、その答えを聞いた慧音は
「そ、そうか!、い、いやすまなかった、話を続けてくれ」
ぱあ~っと明るい顔になった
まあ、私の友になる奴なんだけど……大怪我をおっていてさ
薬草を取るために山まで登ってきたみたいだけど
その薬草があるところは、なんと猛毒の毒草の溜まり場だったんだ……
そいつを見ていると、何とか助けてやろうと思ってね
「妹紅……まさか…」
「うん、飛び込んだ」
凄い簡単な口調で妹紅が語った
「幸い、昔読んでいた本に、その薬草の絵を見たことがあったしね」
「いや、痛くは無かったのか?」
「ん~……五回ほど死んで蘇った」
少しだけ唖然とする慧音を置いて話は進む
何とかその薬草を取ってきたんだけど
そいつ、警戒してたべてくれないんだよ
多分、人が信じれないような事があったんだろうね
私も分からないでもなかったけど……
「…そうか」
慧音も頷いた、慧音もないがしろにされた事が
あったからだ、死ぬ事が出来ない妹紅なら特にだろう
「で?どうしたんだ」
「ああ、その薬草を目の前で食べたんだ」
「その薬草を?」
「ああ、その薬草……私には効果がありすぎて猛毒なんだ」
「……」
慧音が黙ったので妹紅はそのまま話を続けた
目の前で、食べても大丈夫と判断したそいつは
何とか、その薬草を食べようとしてくれたんだけど
あんまり動いてくれなかったから、私がその薬草を噛み砕いて
そいつの口の中に入れてやったんだ
「な!?」
慧音が顔を真っ赤にする
「あん?どうしたの慧音?」
「つ、つまりそれは…その…」
妹紅に話しずらそうにしながら慧音が呟く
「か、間接キスって事か?」
顔を紅くして、少しだけ涙目になる慧音…妹紅は、その慧音を見て
「あ……確かにそうだけど」
妹紅は、少しだけ頭をかくと呟く
「……死ぬ事が出来る奴が、生きようとしてるのを見たら
そんなこと気にならなかったな」
その言葉を聞いて、慧音は別の意味で涙を流した
「そうか……」
そして、再び妹紅の話が進む
食べさせてやったら、そいつ……すぐに元気になってな
私も凄くうれしかったんだ……
それで、そいつに頑張って生きろよ…って言ってどこかに行こうとしたら
そいつもついてきてな…
一生懸命逃げようとしたけど、それでもついてきたんだ
仕方がないから、一緒に生活するようになったんだ
「ど、同棲!?」
慧音先生、本気で涙目に
「いや、同棲っていうか、いっしょにご飯食べたり
そいつに包まって眠ったりしてただけだぞ?」
「!?(そ、そんな!同じ布団で眠っている所まで!)」
衝撃発言に慧音先生が、完全に沈黙した
「…まあ、話し続けるよ?」
「…ああ……」
慧音は妹紅の傍で体育座りをしながら話を聞くことにした
まあ、そんなこんなでこの不死の身体になってから
初めて楽しいと思っていたんだけどさ……
ある日、そいつがほとんど動かなくなってしまったんだ
何かの病気かと思っていたけど……そうじゃなかった
「…なんだったんだ?」
体育座りをしながら、慧音が突っ込みを入れると
妹紅は少し悲しそうにして呟いた
「……寿命だったんだ」
もう、ほとんど動かなくなったそいつに
私は出来るだけの事をしていたんだけど
それでも、そいつは弱っていく一方だったんだ
そんなある日にさ、そいつが起き上がったんだ
「元気になったのか?」
慧音の言葉に、妹紅は首を振った
「いや、死期を完全に悟ったんだ」
そのことを話す妹紅は、複雑な顔をしていた
そいつは、私が着いてこれるように
ゆっくりと移動してな……気がついたら
目の前に、ものすごく高い建物があったんだ
そして、そいつはその建物の一番上に向かって飛んでいったんだ
私は、急いでその建物の中に入って頂上を目指したよ
中に迷惑な奴らがいたけど、何度も死にながらも
私の友に会うために、頂上を目指したんだ
「迷惑な奴ら?」
慧音の疑問に対して妹紅は少し笑って答えた
「ああ、壁に化けている奴らとか……多分
その建物を守るための式みたいなものだったんだろうな」
妹紅は悪いことしたかな?とぼやいた
そして、最後の扉を開けると
そこには、その建物の一番上にそいつはいたんだ
その時な……そいつが私に語りかけてきたんだ
ありがとうって……どれだけぶりかに、涙が出たよ
そして、そいつは自分が生きた証を私に受け取っておくれって言って
「ど、どうしたんだ?」
慧音がそう問いかけると、妹紅は
少しだけ泣きそうな顔をして呟いた
「……最後の力を使って…その建物から…飛び降りたんだ」
その言葉を聞いて、その場が少しだけ静かになった
そして、妹紅が再び語り始めた
その建物の上から、そいつが落ちるのを見て…大泣きしたんだ…
もう、恥ずかしいぐらいに泣いてさ……
そしたら、その時に私に向かって一つの光が飛んできたんだ
そして、その光を受けた時に……あいつの最後の想いが聞こえてきてさ…
私に宿ったんだ……あいつが生きた証が…
「い、生きた証が宿った!?」
爆弾発言に慧音先生が絶叫した
「あん?そうだけど…」
妹紅がごくごく普通に話しかけるが
慧音先生は、全力で落ち込んだ
「妹紅の……妹紅の…純潔が…」
「ん?純潔…慧音何言ってるの?」
慧音のつぶやきに、妹紅が首を傾げる
「……ふふっ…いや、所詮は私のわがままか…
妹紅にも…歴史があるからな……鬱だ…」
自己完結して悟りを開きそうな慧音に対して
妹紅が一言
「あいつの…あの飛竜が生きた証がこのフェニックスなんだ」
「そうか……生きた証が…って…えっ!?」
自殺も考えて、縄を持ってこようとした慧音先生が
妹紅の方を振り向く
「後から分かったんだけど、その建物…
フェニックスの塔って言われる物だったんだ」
妹紅がそう呟くと、立ち上がって
「そういえば、もうすぐこのフェニックスの生まれた日で
あいつのいなくなった日なんだよな……久しぶりにお墓参りに行こうかな…」
そう言うと、妹紅はあくびをした
「さて、もうそろそろ寝ようか……慧音はどうするの?」
妹紅がそういうと、時間が止まっていた慧音が動き出す
「え、あっ…そ、そうだな…私は…」
「泊まってく?」
「だ、だが…」
「私の昔話を聞いてくれたおかげで、今日はもう遅いから…泊まっていけばいいさ」
「そ、そうか……では…遠慮なく」
二つの布団を引くと、そのまま横になる二人
そして、しばらく経ってから妹紅が慧音に問いかける
「ねえ…慧音…」
「ん…なんだ?妹紅」
「慧音も…私と一緒にいてくれるよね?」
その言葉に慧音は首を縦に振ると
「ああ、それこそ死んでも傍に居てやるからな…」
そう答えた……
おしまい
素晴らしい作品をありがとう。
けーねかわいいよけーね
連投お疲れ様です(._.)
でも神主なら幻想郷を酒で埋め尽くすんじゃないか?
そして、慧音さん、落ち着きなはれ。