Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

あなりすと

2008/02/04 10:58:14
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 連日厳しい寒気の中で、ふと気紛れに訪れた僅かな陽気。
 太陽の温かさは、それ自体は厚手の服や毛布、火鉢には敵わないものの、それを超えて
身を包まれたいと思える魅力がある。
 相変わらず寂れた博麗神社の縁側にて、そんな太陽の恵みを全力で賜りつつ――
博麗霊夢は湯呑みに口を付けた。ちょっと奮発した茶葉で淹れたお茶が流れ込み、さわやかな渋みが
口内に広がっていく。同時に香りが鼻を抜けて、霊夢はふにゃふにゃと表情を和らげた。
 って言うか、ダレた。
 ダレいむだ。
 今日はこのまま何もしないで、静寂に包まれたままで夜を迎えたいものだと、心の底から
それを願った。昨日まで続いて明日からも続くであろう冬が、今日だけ見せた気紛れの優しい
一日なのだ。たったの二十四時間――いやいや、太陽が大地を照らすのはもっともっと短い
時間だけ。そんな刹那の至福なのだから、どうか天よ、存分に浸らせてほしい――


「れいむー」
 駄目だった。


「……いらっしゃいアリス。お賽銭箱はそっちよ。そしたら森はあっち」
 かけられた声に目も向けず、霊夢は右手で鳥居の方を指した。
「つめたいなぁ、せっかく来た客に対して。あと一応ツッコむけど私はアリスじゃない」
「じゃあレミリア。お賽銭箱はあっちよ。そしたら紅魔館はそっち」
 鳥居に向けた手をピクリとも動かさずに、左手の湯のみに口付ける。
「話を聞こうって気すらないのね。あと律儀にツッコむけど私はレミリアじゃない」
「もう誰でもいいわ。お賽銭入れて帰れ」
「お邪魔するぜ」
 返事を待たず、霧雨魔理沙は霊夢の隣へ腰を降ろした。
 お互いの間にある茶菓子に手を出すと、霊夢は右手を下ろしてブロック。魔理沙負けじと迂回、
フェイント等を繰り出すが、回避能力に定評ある霊夢の防御はなかなか掻い潜れない。
 カンフー映画みたいな攻防が続く中で、
「実は、ちょっと相談したい事があるのです」
 両手を上げてゆらゆらしながら、霊夢の隙を窺いつつ、魔理沙が言う。
「無理です」
 対する霊夢、自分を挟んで魔理沙の反対側に茶菓子を置いて、体全体でガードしてしまう。
「何故ですか」
 手も足も出ず、ぷぅっと頬を膨らませて不機嫌を露わにした。
「聞く気がないからです」
 勝ったと言わんばかりに悠々と、せんべいを口に銜えて魔理沙に顔を向ける。
「それは困りました」
 その瞬間、魔理沙は霊夢の銜えたせんべいに手を伸ばし、ぱきっと割って奪い取った。
 満足そうに笑う魔理沙にやられたとため息を吐き、不満そうに口元に残ったせんべいを
ぽりぽりと咀嚼する。

 奪ったせんべいを銜えつつ、スカートに手を突っ込みごそごそと……エロい話じゃないよ!?
 魔理沙のスカートは四次元的ぷりてぃ秘密でいっぱいなだけなのです。
 さて何らかの手ごたえを感じ、魔理沙が手を引っこ抜く。
 その手にあったのは、

「……フライパンね」
「うん(バリバリ)」
「……穴、あいてるわね」
「うん(モグモグ)」

 真ん中にぽっかり開いたそこから魔理沙が覗き込む。ぱちぱち瞬きしか見えない。
「きのうあいた」
「捨てればいいじゃない」
 チッチッと舌を鳴らしながらフライパンを下ろす。
「短絡的だぜ霊夢。なぁこれは壊れたんじゃなく、新しい何かに目覚めたとしたら、どうだ」
「何かってなによ」
「それが解んなくて聞きに来たのです。お前、料理とかしてる時に『あぁ、ここにぽっかり穴が
開いていればいいのに』とか思った事ないか?」
「ないわねぇ」
「じゃあ、なんかこれが役立ちそうなアイディアとか」
「……ドーナッツ焼く時とかに便利なんじゃない」
「おー、なるほど」

 魔理沙はフライパンを庭先に投げた。静寂の世界に突如大きな音が響いて、屋根に止まっていた
小鳥たちが逃げていく。その姿がまるで平穏の時間そのものに見えて、霊夢は深く深くため息を吐き、
魔理沙にゲンコツをお見舞いした。良い音がした。

「……あれ、ミニ八卦炉の火力加減を間違えて開けたんでしょ」
「じゃあ次なんだが」
「聞けよ。つか次ってなんだよ」
「おいおい、まさかこれだけの為に来た訳が、ないじゃあないか」
「普段来るのに理由ないでしょうが」

 再びスカートに手を突っ込む。心なしか頬が赤く、手を動かす時に「んっ……」とか鼻にかかる
吐息を漏らしているのは、何でしょうか。何でしょうね?

「ほいっと……これだ」
「コーヒーカップ」
「別にコーヒーしか受け付けない我侭っ子じゃないけど、世間一般ではそう呼ばれている代物だ。
だが今はコーヒーすら受け付けない、駄目なヤツになってしまった」
「穴があいてるんでしょ」
「うん」

 底にぽっかり穴が開いていた。
 どうやって開けたのか不思議になるくらい、きれいに開いていた。
 それをまた望遠鏡のように、魔理沙が覗き込む。

「……捨てればいいじゃない」
「安易だぜ霊夢。なぁこれは壊れたんじゃなく、新しい何かに目覚めたとしたら、どうだ」
「ないわねぇ」
「ちょっと手順を飛ばしたぜ」
「帰ってほしい客を帰らせる時とかに使えば良いんじゃない」
「おー、なるほど」

 魔理沙はコーヒーカップを庭先に投げた。フライパンに命中して粉々に砕けた。
 同じ所を殴った。親たんこぶの上に子たんこぶが出来た。

「ほんじゃこれ。穴が開いたドロワーズ」
「私、ちょっとはしたない女なの……とかいう雰囲気が味わえるんじゃない」
「あ、あだるてぃ……」

「穴が開いた魔道書」
「濡れた時にかわかしやすいんじゃない」
「濡らすなよ」
「じゃあ穴開けるな」

「穴が開いた綿棒」
「職人芸ね」


 …………

 ……



 太陽が天高く昇っていた。
 吹き抜ける風も適度に温められていて気持ち良い。
 庭先に山積みとなったガラクタと、再びスカート中をごそごそする友人さえ視界に入れなければ
そこそこ幸せな時間である。

「じゃあ……」
「まだあるの……って言うか、何でそう穴ばかり開けるのよあんたは」
「普通に生きていれば、何にだって開くものだぜ。これで最後だ」

 そう言った魔理沙は、しかし望みのモノは中々取り出せず……仕方なしと立ち上がると、スカートを
思い切りばさりと捲って見せた。いくらドロワーズだってはしたないですよ!
 豪快な方法によって、最後の品がごろりと転がり落ちた。

「…………」
「…………」
「…………アリス?」
「うん」
 それはどこからどう見ても、七色の人形遣いその人。
 真っ暗に染まった顔は虚ろにどこかを見つめ、立ち上がろうともせずに、ぶつぶつと何かを囁き続けている。
「……壊れてないこれ」
 その背を指差しながら魔理沙に問うと、
「うん。心にぽっかり穴が開いてるな。ひゃあ最後に哲学的な問題を持ってくるか! 魔理沙さんめ!」
 何故か、笑いながら自分に拍手をした。
「うるさい。何をどうして、こんなにしちゃったのよ」
「何にもしてないぜ」
 小さく首を傾げる。
「本当に……?」
 疑惑の目でそれを睨む。
「数日前に、誕生日パーティやるとか聞いたような気がするけど、誰のか言わなかったし、来いとも
言われなかったから、それ以来会ってもいなかったぜ」
「それだよ」
「どれだよ」
「あんた終いには刺されるわよ。画面切り替えたって追ってくるわよ」
「幻獣より怖いあの人だな!」

「まぁそれは置いといてだな」
「うん」
「今まで『あぁ、こいつの心に穴が開いてれば良かったのに』とか思ったことは」
「これまでそういう扱いか」

 そういうあなたも「これ」扱いです。

 ぴーひょろろとトンビが鳴く声と、アリスの独り言だけが聞こえる。
 そんなお昼の時間。

「あー疲れた疲れた。おぅい霊夢、客にお茶が出てないぞー」
「あら失礼、はいどうぞ」
「おぉ早いな……なんだこの湯のみ。何にも入ってないっつーか、底が抜けてるぞ」
「そうね」
「…………」
「…………」

「駄目だなぁ霊夢、ちゃんと処分しろよ。こんなもの使ってるから貧乏巫女だって言われ」


 魔理沙の額に風穴が開いた。


 穴が開いたものは、今までありがとうの気持ちを込めて、
 丁重に、処分しましょう。


 ~終~




魔理沙のスカートの中に住みたい。

3万までなら出してもいい。
豆蔵
[email protected]
http://www.geocities.jp/oityang/index.htm
コメント



1.名無し妖怪削除
残念ながら3万じゃ博麗神社軒下ダンボール完備しかありませんな
それに既にレミリアとフランが住んでいるので不可能だ

それにしても魔理沙外道ww
霊夢非道ww
アリスカワイソス(´;ω;`)
2.名無し妖怪削除
穴の開いたドロワーズ、貰ったあ!
・・・アリスにあげるか(涙)
3.道端から覗く程度の能力削除
アリスを引き取りたいのですが、構いませんかね?
4.名無し妖怪削除
原さん怖すぎ
5.回転魔削除
一度話しかけただけなのに争奪戦…怖いねー

序盤の丁寧語で話す二人にトキメキを感じた
6.名無し妖怪削除
原さんw
7.名無し妖怪削除
>魔理沙さんめ! 自分でツッコミw
8.名無し妖怪削除
アリス…悲惨過ぎる…
それにしても魔理沙のスカートの中は一体どうなってんだWWW