ふと、満月を見て彼女は思う。『今頃月では何が起こってるのか、と』それを思うたび、彼女は月で過ごしたときにことを思い出すのだ。
『レイセン?お願いがあるんだけど』
『何?』
『穴に詰め込んで悶えてほしいウサ』
『アーーーーー!!』
「ってこんな思い出はない!」
後ろにてゐがいました。
「……人の思い出を勝手に変えないでくれる?」
「変えたつもりはないよ?鈴仙ちゃん」
きししと口に手を当てて意地悪く笑うてゐ。
それを見て溜息をつきながらてゐを見るうどんげ。
同じ兎でありながら月か地上の違いがある二人は、しかしそれでも仲が良かった。
「いきなりブルーだったから禿増してあげたのよ」
「禿増してどうするのよ」
「増し増しだー!増し増しだー!」
「黙れニコ厨」
「これだけで、ニコ厨だとは、限らない(5・7・5)」
「……」
こんな奇想天外な会話も幻想郷じゃ普通。自らの姫に教えられていたので、昔と違いあまり動揺しなくなったうどんげである。
「で?何でブルーになってたの?クールになりたかったの?戦隊ものの青はクールだよねぇ」
「違うわよ。……ちょっと、昔のことを思い出してただけよ」
「まだ自分が麺類だったころの話?」
「うどんちゃうわ!」
「で、うどんなのに華が咲いたから優曇華になったんだよね?」
「私は言葉で変形する生き物じゃないよ!?」
「で、それが院にこもってばっかだからこうなっちゃったと。親の顔が見てみたいねぇ」
「あんた阿呆か!?」
こんな会話も(以下略
しかし、今の会話の一部に彼女の眉をひそめる単語があった。
「お母さん、か」
「どったの?」
てゐが自分の唇に指を当てて聞く。そのしぐさが可愛くて思わずくすりと笑う彼女だが、その笑顔も元の憂鬱な表情に戻ってしまう。
「言ってみて?」
「うぅん。私の個人的なことだから」
「言って~」
「言わないって」
「言って~、言って~」
「だから、言わないって」
「て☆ゐ」
「自重しろ東Mネタぁ!」
こん(略
今一シリアスになれない展開に、とりあえずうどんげはその場を離れることにした。
くるりと回転しててゐから離れようとしたそのとき、てゐに声をかけられた。
「鈴仙ちゃんは、後悔してるの?」
先ほどとは違う、真剣みを帯びた言葉。それに飲まれたのか、優曇華は背を向けたまま答える。
「……まったくしてないといえば、嘘になるかな。少なくとも、向こうには友達も、家族もいたから」
「ここには家族も友達もいない?」
「……」
その言葉は、些かの棘があった。
考えてみれば、優曇華はここに来た当初はあまり他人と接しようとしていなかった。それは例え友を作ったとしても何れは離れてしまう悲しさからなのか。
「そんなこと、ないよ」
「嘘だよ」
「……っ」
即座にてゐに反論されて、言い返せない優曇華。
いたたまれなくなって、てゐの方を振り返って反論しようとした。
……そう、しようとしたのだ、が。
できない。
てゐの目があまりにも怖いのだ。
例えるなら、そう、狂気。
何を馬鹿な。狂気は自分の専売特許ではなかったのか。
「鈴仙ちゃんは私たちを友達だと、家族だと思ってない。……でしょ?」
「違う!私は、お師匠様や姫、それにてゐの事だって、家族だって思ってるもん」
それでも、そう言ってるのに自分の中に疑念が思い浮かんできている。
果たして本当に自分はそう思っているのか?口先だけのことなのではないか?
――違う、そんなはずはない。確かに過去の皆とは別れてしまった。それは悲しい。だけどだからといってそれがここに家族を作らないという理由にはならないはずだ。
しかし疑念は消えない。自分を包んで自らを狂わせてしまうほどに大きくなってきた気がする。
「ねぇ、鈴仙ちゃん。一体何を考えてるのかな?」
てゐがじりじりと優曇華を追い詰めていく
「わ、わたしは……」
「それは私にも話せないこと?隠し事?」
てゐの優曇華を見る目が段々きりきりしてくる。
「わたしは……!」
「してるよね、私に。嘘や、隠し事」
優曇華はてゐから目を離せない。まるで自分の中を全て見透かすような目に、思わず失言をしてしまう。
「して、ないわよ。嘘や隠し事、なんて」
「……」
暫くあの目で優曇華をじぃっと見ていたてゐだが。ふっと微笑むと。
「そっか、してないんだね」
「う、うん。してるわけないじゃない」
『嘘だ!!!!』
「……ゑ?」
「言うと思ったのよ。流れがそれじゃないの」
うどんげはやれやれと溜息をついて、しかし先ほどまでの憂鬱そうな表情を改めて、言う。
「ま、でも。貴方のおかげで大分回復したわ、有難うね、てゐ」
「なっ!!」
てゐが顔を真っ赤にした。手を大きく振って挙動不審げに。
「べべべ、別に鈴仙ちゃんを励まそうだなんてこれっぽっちも思っちゃいなかったわよ!」
「はいはい。てゐは可愛いわね。そういう所も私を元気にさせる要因のひとつかしら」
「いいえ、ケフィ(中断」
「ニコ厨か」
「これだけで、ニコ厨だとは、かぎらない」
「いや、流石にそれを言ったら確定よ」
こんな会話をしながら、うどんげは思うのだ。
(向こうの家族や、友達と別れるのはつらかったけど、それでも一生会えなくなるわけじゃない、かもしれない。それに、今はこの家族といるのがとても楽しいから、楽しもう。それが、今の私にできることでしょう?)
(いいえ、ケフィ(略))
(人の回想にまで入ってきてニコ厨っぷりを発揮しなくていいから)
これが、彼女と彼女を取り巻く“家族”のあり方なのである。
『レイセン?お願いがあるんだけど』
『何?』
『穴に詰め込んで悶えてほしいウサ』
『アーーーーー!!』
「ってこんな思い出はない!」
後ろにてゐがいました。
「……人の思い出を勝手に変えないでくれる?」
「変えたつもりはないよ?鈴仙ちゃん」
きししと口に手を当てて意地悪く笑うてゐ。
それを見て溜息をつきながらてゐを見るうどんげ。
同じ兎でありながら月か地上の違いがある二人は、しかしそれでも仲が良かった。
「いきなりブルーだったから禿増してあげたのよ」
「禿増してどうするのよ」
「増し増しだー!増し増しだー!」
「黙れニコ厨」
「これだけで、ニコ厨だとは、限らない(5・7・5)」
「……」
こんな奇想天外な会話も幻想郷じゃ普通。自らの姫に教えられていたので、昔と違いあまり動揺しなくなったうどんげである。
「で?何でブルーになってたの?クールになりたかったの?戦隊ものの青はクールだよねぇ」
「違うわよ。……ちょっと、昔のことを思い出してただけよ」
「まだ自分が麺類だったころの話?」
「うどんちゃうわ!」
「で、うどんなのに華が咲いたから優曇華になったんだよね?」
「私は言葉で変形する生き物じゃないよ!?」
「で、それが院にこもってばっかだからこうなっちゃったと。親の顔が見てみたいねぇ」
「あんた阿呆か!?」
こんな会話も(以下略
しかし、今の会話の一部に彼女の眉をひそめる単語があった。
「お母さん、か」
「どったの?」
てゐが自分の唇に指を当てて聞く。そのしぐさが可愛くて思わずくすりと笑う彼女だが、その笑顔も元の憂鬱な表情に戻ってしまう。
「言ってみて?」
「うぅん。私の個人的なことだから」
「言って~」
「言わないって」
「言って~、言って~」
「だから、言わないって」
「て☆ゐ」
「自重しろ東Mネタぁ!」
こん(略
今一シリアスになれない展開に、とりあえずうどんげはその場を離れることにした。
くるりと回転しててゐから離れようとしたそのとき、てゐに声をかけられた。
「鈴仙ちゃんは、後悔してるの?」
先ほどとは違う、真剣みを帯びた言葉。それに飲まれたのか、優曇華は背を向けたまま答える。
「……まったくしてないといえば、嘘になるかな。少なくとも、向こうには友達も、家族もいたから」
「ここには家族も友達もいない?」
「……」
その言葉は、些かの棘があった。
考えてみれば、優曇華はここに来た当初はあまり他人と接しようとしていなかった。それは例え友を作ったとしても何れは離れてしまう悲しさからなのか。
「そんなこと、ないよ」
「嘘だよ」
「……っ」
即座にてゐに反論されて、言い返せない優曇華。
いたたまれなくなって、てゐの方を振り返って反論しようとした。
……そう、しようとしたのだ、が。
できない。
てゐの目があまりにも怖いのだ。
例えるなら、そう、狂気。
何を馬鹿な。狂気は自分の専売特許ではなかったのか。
「鈴仙ちゃんは私たちを友達だと、家族だと思ってない。……でしょ?」
「違う!私は、お師匠様や姫、それにてゐの事だって、家族だって思ってるもん」
それでも、そう言ってるのに自分の中に疑念が思い浮かんできている。
果たして本当に自分はそう思っているのか?口先だけのことなのではないか?
――違う、そんなはずはない。確かに過去の皆とは別れてしまった。それは悲しい。だけどだからといってそれがここに家族を作らないという理由にはならないはずだ。
しかし疑念は消えない。自分を包んで自らを狂わせてしまうほどに大きくなってきた気がする。
「ねぇ、鈴仙ちゃん。一体何を考えてるのかな?」
てゐがじりじりと優曇華を追い詰めていく
「わ、わたしは……」
「それは私にも話せないこと?隠し事?」
てゐの優曇華を見る目が段々きりきりしてくる。
「わたしは……!」
「してるよね、私に。嘘や、隠し事」
優曇華はてゐから目を離せない。まるで自分の中を全て見透かすような目に、思わず失言をしてしまう。
「して、ないわよ。嘘や隠し事、なんて」
「……」
暫くあの目で優曇華をじぃっと見ていたてゐだが。ふっと微笑むと。
「そっか、してないんだね」
「う、うん。してるわけないじゃない」
『嘘だ!!!!』
「……ゑ?」
「言うと思ったのよ。流れがそれじゃないの」
うどんげはやれやれと溜息をついて、しかし先ほどまでの憂鬱そうな表情を改めて、言う。
「ま、でも。貴方のおかげで大分回復したわ、有難うね、てゐ」
「なっ!!」
てゐが顔を真っ赤にした。手を大きく振って挙動不審げに。
「べべべ、別に鈴仙ちゃんを励まそうだなんてこれっぽっちも思っちゃいなかったわよ!」
「はいはい。てゐは可愛いわね。そういう所も私を元気にさせる要因のひとつかしら」
「いいえ、ケフィ(中断」
「ニコ厨か」
「これだけで、ニコ厨だとは、かぎらない」
「いや、流石にそれを言ったら確定よ」
こんな会話をしながら、うどんげは思うのだ。
(向こうの家族や、友達と別れるのはつらかったけど、それでも一生会えなくなるわけじゃない、かもしれない。それに、今はこの家族といるのがとても楽しいから、楽しもう。それが、今の私にできることでしょう?)
(いいえ、ケフィ(略))
(人の回想にまで入ってきてニコ厨っぷりを発揮しなくていいから)
これが、彼女と彼女を取り巻く“家族”のあり方なのである。
>名無し妖怪さん
お疲れ様です。手遅れでも何とかなると信じれば何とかなるかな?……かな?
>幻想入りまで一万歩さん
ニコニコは好きだけどニコ厨じゃないよ
それでは、感想ありがとうございました。