「氷符!あいしくるすたなぁぁぁぁぁ!!!」
ごん、と重たい音がして妖精メイドの後頭が地面に叩きつけられる。
叩きつけられた妖精メイドは、そのまま頭を抱えたまま動かなくなった。
そこから少し離れたところでは、大妖精が怯えた視線を送っている。
「ち、チルノちゃん・・・」
「⑨のくせに・・・このっ!」
「霜符!アイススピアー!!!」
もはや冷気などまったく関係のなくダッシュし、勢いのまま飛び込んだチルノの肩が深々と妖精メイドその2の鳩尾に入った。
弾幕を出そうとしていた妖精メイドはモロに喰らい、お昼食べたものがウベロベロベロベロ。
「な、なんで⑨があんなに強く・・・!?」
「友を護るためなら限界の1つや2つ、超えていくわ!」
「チルノちゃん・・・そんなに難しい漢字も使えるようになったんだね。私嬉しいよ!」
チルノは確かに強かった。
小悪魔率いる妖精メイド達は思わぬ事態に浮き足立つ。
確かにチルノは強い、妖精としては破格の力を持っている。
だがしょせん妖精は妖精、これだけ数がいれば圧倒できるものと思っていた。
事実、『パーフェクトフリーズ』や『アイシクルフォール』などといった主だったスペルカードを消費されることに成功。
このまま圧殺できる、小悪魔たちはそう思った。
その時だ、チルノが氷で作り出した即席カードを取り出し、高々と宣言したのは。
「あんなスペルカードありだっていうの!?」
「そ、そんな馬鹿な話が」
「氷符、DDT(デンジャラス・ドライアイス・ティルノ)!!」
喚く妖精メイドを、腹を蹴り上げ、そのまま相手の頭を腋に抱え込んで後ろに倒した。
ざわめく小悪魔と妖精メイド達、大妖精はチルノの成長に感動で涙ぐんでいる。
「そ、そんなバカな・・・。⑨で名高いチルノが・・・そんな・・・」
「怯むんじゃありません!相手はチルノですよ。2面以降は登場しないあのチルノです。みんなで一気にやってしまいなさい!」
「「「わああああっ!!」」」
「ちょっ、一列になっちゃダメですっ!」
一番前の妖精から連鎖してみんな被弾した、所詮は連隊妖精である。
十数名ほどいた手勢が、残るは小悪魔1匹。
「トドメよ!凍符!」
「ば、馬鹿な!なぜ・・・なぜなんですか・・・!」
チルノは小悪魔の首を掴む。
「こ゛ぁ゛っ!」
そのまま片手で小悪魔を高々持ち上げる。
「ぶりざーどすらむ!!」
「こ、これで勝ったと思わないでください、この私が倒れてもいずれ第2、3の小悪魔が・・・こぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ベチッ、と小悪魔は地面に背中から落ちた。
「あんたらの敗因は一つ、最強のあたいに挑んだことよ!」
「痛い・・・・・」
小悪魔は泣いた。
「ということが有ったらしいんだ」
「そう、だからどうかしたの?」
語る魔理沙に対し、霊夢はそっけなく返した。
「いや、どうかしたって、チルノがそんな強かったら気になるだろう?」
「十分強いじゃない、妖精にしたら破格もいいところよ」
「そりゃそうだけどさ、というかいいのか?アイツ、弾幕ごっこで格闘技なんてやったんだぞ」
「宴会続きのときだって似たようなので決着つけたじゃない。そんなことより掃除でも手伝いなさい」
「なんだか納得いかないぜ」
「それなら自分で戦ってくればいいじゃないの。自称『最速』の天狗はどっかの門番に飛び蹴りされても当たらなかったらしいわよ、『最速』だから」
「!・・・・ちょっとチルノと弾幕ってくる」
そういうと魔理沙は箒に乗った。
「萃夢想での私の強キャラっぷりを見せ付けてやるぜ!」
「氷山、鉄山靠!」
「うぼぁっ!」
チルノの背中を使った体当たりに魔理沙は箒ごと吹き飛び、軽く宙を舞う。
「あたいったらやっぱり最強ね!」
魔理沙は泣いた。
このままおめおめと霊夢のところに泣きかえるわけにもいかず、夜雀の屋台で一晩中飲み明かした。
意識が飛ぶほど飲んだら、翌朝自宅のベットに夜雀と一緒だった。
「な、なにを言ってるかわからねえと思うが、私も何をされたのかわからなかった。手の速さが幻想郷最速とかおいしそうだったからつい・・・とかじゃない、もっと恐ろしいアルコールの魔性を体験したぜ・・・だから慧音のところにいくぜ!」
なかったことに。
といいつつも、じんときちゃったのは秘密だぜ?
小悪魔に笑った。なんか面白い。
いつの日か、二人があえた時に告白ができる事を祈ろう