とある、薄暗い森。
その森に入ってすぐのところに小さな池がある。
その池に小さな子供が泣きながら歩いてきた。
「え~ん、え~ん」
そして、池のほとりに来て、その子供は泣き崩れた。
「なんで、ボクは不幸なんだよ!!」
さらに大きな声で泣き喚く。
泣き崩れてしばらく経ち、涙も出なくなった頃、子供は目の前にある気配を感じた。
「一体何がいるんだろう??」
子供は怖くなったが、恐る恐る頭を上げてみた。
その子供の目の前には、しゃがんでこっちをやさしく見つめている女性がいた。
「あなた、不幸?」
その女性はやさしく笑顔で子供に語りかける。
「・・・う・・・うん・・・」
子供は恐る恐る答えた。
「じゃあ、おねえちゃんが、その不幸を貰ってもいいかな?」
右手の人差し指を伸ばして、可愛らしい仕草をする。
「え??」
子供は訳が分からなかった。
が、次の瞬間。
その人差し指が伸びていた右手の手のひらを広ろげ、子供の顔の前に差し出す。
「じゃあ、貰うわね」
そういうと、子供の体から黒い光の塊が無数浮かび上がる。
「う・・うわぁ・・・」
子供は、恐怖で動けなかった。
体から黒い光の塊が出なくなると、その女性は右手を下ろした。
「はい、おしまい!」
※ ※ ※
その後、2人は池のほとりにあった倒れた大木のところで座って話していた。
「どうしてこんな所にきたの?ここは危ない所なのよ?」
「・・・」
子供は、黙っていた。
最初に比べて恐怖心はなくなったものの、名前すら分からない人に言っていいものなのか?
「・・ねえ?その前に・・・おねえちゃんの名前はなんて言うの?」
意を決して聞いてみた。
「あ、そうだったわね、自己紹介がまだだったわね。私は雛・・・鍵山 雛よ」
子供も簡単に自己紹介をすると、少し安心したのか雛に話し始めた。
「あのね・・・・ボク、逃げてきたんだ・・・」
思いつめた言葉使いで子供は淡々と話す。
「?どこから逃げてきたの?」
雛は聞いた。
「家から」
子供は、そういうと顔をひざにうずめてしまった。
そして、何かを思い出したかのように、小さく嗚咽が聞こえてきた。
雛は、その子供の小さな頭をやさしく撫でる。
「大丈夫よ、今日はもう悪いことは起こらないわ。だって、悪い事を起こす厄は私が全部貰ったんだもの」
その言葉を聞いて、子供は顔を上げる。
その顔は涙でグシャグシャだった。
「う・・・う・・・家に帰るとお父さんとお母さんがいつも喧嘩しているし、
そのとばっちりで、いつもボクに八つ当たりするんだよ!!」
そういって、子供は服を捲し上げて雛に腕やお腹を見せた。
見せてもらった場所には、生々しい傷が多数あった。
「これは・・・酷いわね・・・」
雛は子供が捲し上げている服をそっと元に戻した。
雛は思った。
この子供の厄の原因はきっと両親にあると。
※ ※ ※
すべての話を聞き終えて、「もう遅いから」と雛は里の近くまで子供を送る。
遠くから、その子供が家に入るのを躊躇している姿が見えたが、しばらくして
決意したのか、やっと子供が家に入っていく姿を確認した。
「あの家か・・・」
子供の家の場所を確認した雛は、ある事をする決意をした。
その日の深夜。
すでにほとんどの人が寝静まった頃。
体の厄を一度すべて落としてきた雛は、里にいた。
「ここね・・・」
あの子供が入っていった家の前に行く。
外からすこし覗くと、あの子供はすでに眠っている様だった。
が、その子供の両親と思われる2名は、酒を大量に飲んでいた。
しかし、よく見るとその2人は一緒に飲んでいるのではなく、別々の所で飲んでいた。
雛が何か違和感を感じた矢先、その家の中で怒号が飛び交い、そこら辺にあった皿などが宙を舞う。
「お前さえいなければ!!」
「あんたなんていなければいいのよ!!」
ただ、両者ともかなり酔っているので呂律は回っておらず、声に力もない。
投げつけた皿も、力なく手から落ちる具合。
「典型的な夫婦喧嘩ね・・・」
雛は呆れた顔をする。
けど、2人とも酔いがまわったらしく、それ以上の騒動はなかった。
その間、子供は音で起きることも無くグッスリと眠っていた。
「仕方ない・・・とりあえず、あの2人から厄を取りますか・・・
根本的な解決にはならないかもしれないけど・・・気休めにはなるでしょ?」
そして、雛は2人が酔って寝た所を見計らって、厄を抜き去った。
「あら?結構な量があるわね」
2人から出てくる厄の量は、滅多にない位の量だった。
これでは、なにをやっても不幸になるのは当たり前。
厄の量に少し驚きながらも、誰にも気が付かれない様に、その家を後にする。
帰り際、窓越しに眠っている子供に「おやすみ」と小声で声を掛けていった。
※ ※ ※
翌日。
雛が、厄を集めに行こうと家を出た時に、あの池の所に昨日の子供がいた。
今日は泣いていない。
雛の姿を見つけると、笑顔で走り寄ってきた。
「おねえちゃん!ありがとう!!昨日はおねえちゃんの言った通りに、なにもなかったよ!!」
「あら、それはよかったわね」
笑顔で答える雛。
「で、今日はどうしたの?」
子供の目線に合わせる様にしゃがむ。
子供は興奮して早口で話し始めた。
「あのね・・・おとうさんとおかあさんが、仲直りしたんだよ!!」
話を聞くと、どうも子供の父親は仕事をしておらず、その事で度々母親と喧嘩をしていたそうだ。
だが、今朝方その父親の仕事が決まった。
元々、職人だった父親なので、変なこだわりがあった様で、その仕事しかしない!と
言い張っていたそうだが、父親が希望する仕事が決まったとの事で、
朝から一家全員で喜んだそうだ。
「だから、おねえちゃんにお礼が言いたくって・・・」
子供が涙ぐんでいた。
「いいのよ・・よかったじゃない」
よかったという表情で雛は答える。
そして、涙を拭っている子供の頭の上に手を乗せて、厄を取ろうとする。
「あら?やっぱりね」
子供の体に、すでにもう厄はなかった。
これでもう大丈夫!そう確信した雛は、子供にやさしい口調で語りかける。
「けどね・・もうあまりここにきちゃダメよ。ここには怖い妖怪がたくさんいるんだからね。
下手をしたら、食べられちゃうかもしれないわよ」
すこし子供の恐怖心を煽ってみる。
子供はすこし考えて答えた。
「うん・・分かった。 けど、また何か困ったら来てもいい?」
「その時はいいわよ」
雛も笑顔で答える。
そして、子供と手をつなぎ、森の外まで一緒に歩く。
「じゃあ、おねえちゃんはこれから仕事があるから・・・またね」
子供に向かって、笑顔で手を振る。
「うん、ありがとう!」
子供は、そう元気よく答えると里へ向かって元気よく走っていった。
※ ※ ※
その一件以降、妖怪の森の入り口付近にある小さな池に
里の人間がよくやってくる様になった。
どうも、あの子供が「あそこには女神様がいて、願いをかなえてくれた」という話を里でしたらしい・・・
最初はだれも信じなかったが、その子供の両親がその日を境に人が変ったかのように
仲睦まじく過ごしているのを見て、段々と里の人も「もしかして?」という思いが芽生えた様だ。
朝に厄を集めに行く時に、ここ数日池のほとりで必死に祈りをささげる人間を目撃する。
「一体なんなのよ・・・」
戸惑いながらも、雛は散歩に行く前の日課として、気づかれない様に池のほとりにいる人間の厄を取る事に決めた。
そして雛は思った。
「間違いなく、博麗の巫女よりも私の方が信仰高いわよ・・・ね?
今度賽銭箱でも、置いてみようかしら?」
と。
災厄が訪れなければ最低でも死ぬようなことは起こらない
幻想郷にいる妖怪からも襲われなくなるだろう
あれ?博麗の巫女より効果あるんじゃね?
また良い雛をお願いします。
間違いありません。
効果覿面ですwwww
>また良い雛をお願いします。
たまに壊れますが、よろしいですか?w
むしろそれが良いですww
……博麗いらなくない?