Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

厄神様の平凡?な日常

2008/01/20 22:12:31
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とある、薄暗い森。

その森に入ってすぐのところに小さな池がある。

その池に小さな子供が泣きながら歩いてきた。


「え~ん、え~ん」


そして、池のほとりに来て、その子供は泣き崩れた。

「なんで、ボクは不幸なんだよ!!」

さらに大きな声で泣き喚く。




泣き崩れてしばらく経ち、涙も出なくなった頃、子供は目の前にある気配を感じた。


「一体何がいるんだろう??」
子供は怖くなったが、恐る恐る頭を上げてみた。


その子供の目の前には、しゃがんでこっちをやさしく見つめている女性がいた。

「あなた、不幸?」

その女性はやさしく笑顔で子供に語りかける。


「・・・う・・・うん・・・」

子供は恐る恐る答えた。

「じゃあ、おねえちゃんが、その不幸を貰ってもいいかな?」
右手の人差し指を伸ばして、可愛らしい仕草をする。

「え??」
子供は訳が分からなかった。
が、次の瞬間。
その人差し指が伸びていた右手の手のひらを広ろげ、子供の顔の前に差し出す。

「じゃあ、貰うわね」

そういうと、子供の体から黒い光の塊が無数浮かび上がる。

「う・・うわぁ・・・」
子供は、恐怖で動けなかった。

体から黒い光の塊が出なくなると、その女性は右手を下ろした。
「はい、おしまい!」


     ※    ※    ※


その後、2人は池のほとりにあった倒れた大木のところで座って話していた。

「どうしてこんな所にきたの?ここは危ない所なのよ?」

「・・・」
子供は、黙っていた。

最初に比べて恐怖心はなくなったものの、名前すら分からない人に言っていいものなのか?

「・・ねえ?その前に・・・おねえちゃんの名前はなんて言うの?」
意を決して聞いてみた。

「あ、そうだったわね、自己紹介がまだだったわね。私は雛・・・鍵山 雛よ」

子供も簡単に自己紹介をすると、少し安心したのか雛に話し始めた。

「あのね・・・・ボク、逃げてきたんだ・・・」

思いつめた言葉使いで子供は淡々と話す。

「?どこから逃げてきたの?」
雛は聞いた。

「家から」
子供は、そういうと顔をひざにうずめてしまった。
そして、何かを思い出したかのように、小さく嗚咽が聞こえてきた。

雛は、その子供の小さな頭をやさしく撫でる。

「大丈夫よ、今日はもう悪いことは起こらないわ。だって、悪い事を起こす厄は私が全部貰ったんだもの」

その言葉を聞いて、子供は顔を上げる。
その顔は涙でグシャグシャだった。

「う・・・う・・・家に帰るとお父さんとお母さんがいつも喧嘩しているし、
そのとばっちりで、いつもボクに八つ当たりするんだよ!!」

そういって、子供は服を捲し上げて雛に腕やお腹を見せた。

見せてもらった場所には、生々しい傷が多数あった。

「これは・・・酷いわね・・・」

雛は子供が捲し上げている服をそっと元に戻した。


雛は思った。
この子供の厄の原因はきっと両親にあると。


   ※   ※   ※


すべての話を聞き終えて、「もう遅いから」と雛は里の近くまで子供を送る。
遠くから、その子供が家に入るのを躊躇している姿が見えたが、しばらくして
決意したのか、やっと子供が家に入っていく姿を確認した。

「あの家か・・・」

子供の家の場所を確認した雛は、ある事をする決意をした。



その日の深夜。
すでにほとんどの人が寝静まった頃。
体の厄を一度すべて落としてきた雛は、里にいた。

「ここね・・・」

あの子供が入っていった家の前に行く。

外からすこし覗くと、あの子供はすでに眠っている様だった。
が、その子供の両親と思われる2名は、酒を大量に飲んでいた。

しかし、よく見るとその2人は一緒に飲んでいるのではなく、別々の所で飲んでいた。

雛が何か違和感を感じた矢先、その家の中で怒号が飛び交い、そこら辺にあった皿などが宙を舞う。

「お前さえいなければ!!」

「あんたなんていなければいいのよ!!」

ただ、両者ともかなり酔っているので呂律は回っておらず、声に力もない。
投げつけた皿も、力なく手から落ちる具合。


「典型的な夫婦喧嘩ね・・・」
雛は呆れた顔をする。

けど、2人とも酔いがまわったらしく、それ以上の騒動はなかった。

その間、子供は音で起きることも無くグッスリと眠っていた。


「仕方ない・・・とりあえず、あの2人から厄を取りますか・・・
根本的な解決にはならないかもしれないけど・・・気休めにはなるでしょ?」

そして、雛は2人が酔って寝た所を見計らって、厄を抜き去った。

「あら?結構な量があるわね」
2人から出てくる厄の量は、滅多にない位の量だった。
これでは、なにをやっても不幸になるのは当たり前。

厄の量に少し驚きながらも、誰にも気が付かれない様に、その家を後にする。
帰り際、窓越しに眠っている子供に「おやすみ」と小声で声を掛けていった。



   ※   ※   ※

翌日。

雛が、厄を集めに行こうと家を出た時に、あの池の所に昨日の子供がいた。
今日は泣いていない。
雛の姿を見つけると、笑顔で走り寄ってきた。

「おねえちゃん!ありがとう!!昨日はおねえちゃんの言った通りに、なにもなかったよ!!」

「あら、それはよかったわね」
笑顔で答える雛。

「で、今日はどうしたの?」

子供の目線に合わせる様にしゃがむ。

子供は興奮して早口で話し始めた。
「あのね・・・おとうさんとおかあさんが、仲直りしたんだよ!!」

話を聞くと、どうも子供の父親は仕事をしておらず、その事で度々母親と喧嘩をしていたそうだ。
だが、今朝方その父親の仕事が決まった。
元々、職人だった父親なので、変なこだわりがあった様で、その仕事しかしない!と
言い張っていたそうだが、父親が希望する仕事が決まったとの事で、
朝から一家全員で喜んだそうだ。

「だから、おねえちゃんにお礼が言いたくって・・・」

子供が涙ぐんでいた。

「いいのよ・・よかったじゃない」
よかったという表情で雛は答える。

そして、涙を拭っている子供の頭の上に手を乗せて、厄を取ろうとする。

「あら?やっぱりね」

子供の体に、すでにもう厄はなかった。


これでもう大丈夫!そう確信した雛は、子供にやさしい口調で語りかける。

「けどね・・もうあまりここにきちゃダメよ。ここには怖い妖怪がたくさんいるんだからね。
 下手をしたら、食べられちゃうかもしれないわよ」

すこし子供の恐怖心を煽ってみる。

子供はすこし考えて答えた。
「うん・・分かった。 けど、また何か困ったら来てもいい?」

「その時はいいわよ」
雛も笑顔で答える。


そして、子供と手をつなぎ、森の外まで一緒に歩く。

「じゃあ、おねえちゃんはこれから仕事があるから・・・またね」
子供に向かって、笑顔で手を振る。

「うん、ありがとう!」

子供は、そう元気よく答えると里へ向かって元気よく走っていった。


    ※    ※    ※


その一件以降、妖怪の森の入り口付近にある小さな池に
里の人間がよくやってくる様になった。

どうも、あの子供が「あそこには女神様がいて、願いをかなえてくれた」という話を里でしたらしい・・・
最初はだれも信じなかったが、その子供の両親がその日を境に人が変ったかのように
仲睦まじく過ごしているのを見て、段々と里の人も「もしかして?」という思いが芽生えた様だ。


朝に厄を集めに行く時に、ここ数日池のほとりで必死に祈りをささげる人間を目撃する。

「一体なんなのよ・・・」

戸惑いながらも、雛は散歩に行く前の日課として、気づかれない様に池のほとりにいる人間の厄を取る事に決めた。


そして雛は思った。










「間違いなく、博麗の巫女よりも私の方が信仰高いわよ・・・ね?
今度賽銭箱でも、置いてみようかしら?」

と。






幻想郷の中で、意外と純粋に信仰が高いと思われる厄神様・・・

だと思うんだけど。

まあ、マッタリと読んでくださいませ。

苦有楽有
コメント



1.名無し妖怪削除
厄が無ければ災厄は訪れない
災厄が訪れなければ最低でも死ぬようなことは起こらない
幻想郷にいる妖怪からも襲われなくなるだろう
あれ?博麗の巫女より効果あるんじゃね?
2.名無し妖怪削除
お久しぶりで。
また良い雛をお願いします。
3.時空や空間を翔る程度の能力削除
>間違いなく、博麗の巫女よりも私の方が信仰高いわよ・・・ね?

間違いありません。
効果覿面ですwwww
4.苦有楽有削除
色々とコメント、ありがとうございます。

>また良い雛をお願いします。

たまに壊れますが、よろしいですか?w
5.名無し妖怪削除
>たまに壊れますが、よろしいですか?w
むしろそれが良いですww
6.日々流離う程度の能力削除
なるほど……そして厄神様の周りで悪事を働こうとした妖怪には溜め込まれた厄がぶちまけられる訳ですね?
……博麗いらなくない?
7.削除
厄の神様を厄避けの神様として祀るのは普通にあることですし……わりと正しい信仰形態だと思います、これ。そして、さすが身代わり供儀の神様。そこはかとない優しさが漂っておられる。ありがたやありがたや……。
8.名無し妖怪削除
仮に鍵山神社を建てたら沢山の人がお参りにくるだろうなwww