Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

フランと七色の人形遣い 3

2008/01/04 09:38:48
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注:この作品は、私BOUZUが先に投稿いたしました、「フランと七色の人形遣い 2」
  の続きとなって下ります。

 
 「はぁっ・・・はぁっ・・・」

 アリスは一片の光さえない無明の闇を走っていた。

 「はぁっ・・・はぁっ・・・」

 何故走っているのかアリス本人にさえわからない。
 だが何故か停まってはならないと心のどこかで警鐘がなっている。

 (停まっちゃだめ・・・停まったら・・・・)

 アリスは走る、先の見えない闇の中をただひたすらに、何者かから逃れるかのように。

 (停まっちゃだめ・・・奴等が・・・)

 「はぁっ・・・はぁっ・・・・・・ぁっ!」

 不意に何かに足をとられ転倒する。
 すぐに立ち上がろうと地面に手をついたその時背後に気配を感じる。

 「ッハッハッハッハッハッハッハ・・・」

 獣じみた息遣いが聞こえる。
 恐る恐る振り向く。
 そこには、今にも飛び掛らんとしなやかな肢体を縮こまらせ、獲物を逃すまいと
 獲物を逃すまいと真紅に染まった瞳をこちらに向ける



 イヌミミを生やした十六夜 咲夜の姿があった。



 「いやぁっ!」
 「わおーん!」


 アリスは再び走り出す、咲夜もアリスを追って走り出す。

 (あれに捕まっちゃだめ・・・)
 
 不意に何かの影像が頭をよぎる。
 
 (アリス、泣いてるの? ないちゃダメだよ! 私が本を読んであげる!)
 
 (美女と野獣!)

 急いでその本をとりあげて中を確認する自分、その本の内容は・・・

 大型のイヌミミ咲夜に組み敷かれ\ 光学迷彩! /されているアリスだった。

 (いやぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!)

 疲労に朦朧としていた意識もどこへやら、アリスは今まで以上に速度を上げて走り始める。
 
 (だめ!捕まったら殺される! 殺されて剥かれて\ パッド長! /される!!)

 「ほら咲夜! もっと速く走りなさい!」「きゃははは!咲夜!もっと速く~!」

 背後からの気配が増えた、走りながら振り向くといつの間にか昨夜の背中にはレミリアとフランドールが跨っていた。
 レミリアは咲夜に手綱をかませて操り、フランドールは咲夜の臀部をレーバテインで打っていた。
 
 (ひぃいいいいぃぃいいいぃい!!! 怖い! 主に咲夜の表情が!)

 咲夜は二人の主人に跨られ手綱を引かれ、レーバテインで打たれ恍惚の表情を浮かべていた。
 だが、恐るべきは今まで以上に咲夜の追い足が速くなっていることであった。

 (まずいわ! 追いつかれる!)

 追いつかれる恐怖に怯えながらもなおも走るアリス。
 ふと目の前に明るい光がさした。
 そこにはショッキングピンクの扉と、その上にでかでかと輝く『こあの部屋の扉(アリスさん専用)』というネオンサインがあった。
 さらに、扉の周りには『今なら100%御奉仕還元!』とか『地獄極楽悶絶サービス!』という文字の書かれたのぼりも立っていた。

 (・・・・・・)

 その雰囲気にとても嫌なものを感じたアリスはフルスピードで通過した。
 お嬢様ズ・オン・イヌミミ咲夜も通過した。

 背後で「こぁ~!無視するなんてヒドイです~!」と声がしたが聞こえない、アリスはなおも走る。
 いい加減足も腕も疲労の限界に達してきた。
 しかし停まったら人生の終わりだ。

 (停まれない! 停まりたくない!)

 だがそんな気持ちとは裏腹に手足の動きはどんどん鈍くなっていく。
 そのことに絶望しかけた瞬間、目の前に見知った人影が現れた。

 「あら、アリス・・・どうしたの?そんなに慌てて・・・」
 「どうしたもこうしたもないわよ! あれ見てよ! 野獣に追われてんのよ! お願い!助けてぇっ!」
 
 目の前に現れたパチュリーに必死ですがりつき助けを求める。

 「ええ、安心して私が来たからにはもう大丈夫」
 「来たわ!」
 
 イヌミミ咲夜とお嬢様ズが追いついて来た。
 
 「ッヘッヘッヘッヘッヘッヘッヘッヘ!」
 「追いついたわ、さぁ大人しく・・・咲夜の\ 幻想郷! /になりなさい」
 「きゃははは! いぬにくいぬにく~!」
 「もう来たの? 今日は喘息の調子もいいから・・・取って置きの魔法を見せてあげる!」

 力強く詠唱に入るパチュリーに心強いものを感じる。

 (ああ、これで助かる・・・)

 パチュリーの詠唱が最高潮を迎え、パチュリーの体が眩い光に包まれる。
 きっと凄い威力のある魔法だ、これならやつらも・・・

 Boooooooooooooomb!!

 パチュリーを中心に真っ白い煙が噴出する。
 そこから現れたのは、黄色く逞しいボディとそれをシックに飾る茶色いカラメルソース、頂点にむきゅ!と鎮座するパチュリーヘッド。
 ぱっちゅぷりんであった。

 「食べても・・・いいのよ・・・」
 「咲夜~」
 「わふん!」

 ガツガツガツガツガツガツ!
 ぱっちゅぷりんは3秒でイヌミミ咲夜の胃袋に収まった。
 
 「たよりにならなぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
 「いやぁ・・・乱読家なもんで・・・」

 足元にコロコロと転がってきたパチュリーヘッドが照れたように言う・・・関係あるのか!?

 「さぁ、追い詰めたわ」
 「ひっ!」

 レミリアが宣言し、咲夜がジリジリと近づいてくる。
 逃げ出そうとしても、一度停まってしまった手足は地面に根付いてしまったかのように動かない。
 そして・・・

 「わおーーーーん!」

 勝利の宣言のように吼えながらイヌミミ咲夜がメイド服を華麗に脱ぎ去り高く飛び上がる。

 「あ・・・いや・・・いや!」

 どんどん全裸のイヌミミ咲夜が迫ってくる。 2m・・・1m・・・

 「たすけ・・・」

 50cm・・・

 「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


☆★☆★



 「・・・ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 がばっ!「うわっ!」ドスン!

 「はぁ・・・はぁ・・・? ここは・・・?」

 気がつくと見知らぬベッドに寝かされていた。

 「っててててて・・・何だよアリス!びっくりするじゃないか」
 「魔理沙?」

 頭をさすりつつベッドの下から起き上がってくるのは魔理沙だった。

 「うなされてるようだから心配してやったのに、いきなり跳ね起きるからベッドから落ちたじゃないか!」
 「そう・・・夢・・・だったのね・・・よかった」

 魔理沙はプンプン怒っているが、心底ほっとした・・・あれが現実だったらば今頃・・・
 自分の想像にぞっとしながら辺りを見回す。

 「ここは?」
 「紅魔館だぜ」

 なぜ私は紅魔館に・・・ああそうか、パチュリーの依頼でフランの家庭教師に来たんだったわね。
 
 「それにしても、凄いうなされようだったぜ? なんか寝言で『犬が・・・犬が・・・』とか『プリンはだめ・・・』とか言ってたぜ」
 
 魔理沙が聞いてくるが、私は無言で首を振る。
 あんな夢を人に説明する気にもなれない。

 「あら・・・起きたのね、調子はどうかしら?」
 「失礼いたします、お加減はいかがでしょうか?」

 魔理沙が気になるぜ~と絡み付いてくるのをうっちゃっていたら誰かが部屋に入ってきた。

 「ええ、ごめんなさいね。 他人の屋敷で倒れるなん・・・て・・・・」

 改めて謝罪しようと声のした方に向き直る・・・が、そこにいたのは・・・
 プルプルと禍々しくゆれる黄色い物体を持ったパチュリーとイヌミミが生えた咲夜だった。

 「いやああああああああああ! イヌ! プリン! いやー!いやー!」
 「うお!」
 
 先ほど夢で植えつけられたトラウマの再来に絶叫する。

 「やー! わんわやなのぅ! プリンもやぁ~!!」
 「お、おいアリス?」
 「どうしたのかしら・・・?」
 「さぁ・・・?」

 恐怖のあまり幼児退行して魔理沙にしがみつくアリスを不思議そうに見つめる3人であった。

☆★☆★

 「重ね重ね、ごめんなさい」
 「いいえ、気にすることはないわ」
 
 暫くたって恐慌状態から脱したアリスは、おやつのプリンを食べているパチュリーに謝罪した。
 なんでも、パチュリーの大好物でおやつの時間にはかかさず食べているとのことであった。
 
 「それにしても何であのメイド長はイヌミミなんか・・・?」
 「ああ、レミィのお仕置きでね『あなたが誰の狗か、もう一度再認識させてあげるわ』って言われて今日一日つけていることを命令されたそうよ」

 咲夜はアリスの体調に問題がないことを確認すると仕事に戻っていった。

 「にしてもアリスぅ~、お前犬とプリンを怖がるなんて見た目は私より大人なくせに子供だな!」
 
 図書館から持ってきた本を読んでいた魔理沙が不意に顔を上げてニヤニヤしながらからかう。
 
 「五月蝿いわよ! 深い事情があるの! 黙って本読んでなさいよ!」

 と、そこで

 「アリス? 起きたの?」

 とフランが部屋に入ってくる。

 「急に倒れたからビックリしたよ? お熱あるの?」

 とピトっと自分の額をアリスの額にくっつけてくる。
 
 ドクン!
 とアリスの心臓がひとつ跳ねた
 
 (え!? 何かしら今のは・・・)
 
 「え、えぇ! 大丈夫よ、心配かけてごめんなさいね」
 
 己の内の正体不明の変化に戸惑いながらもフランに笑いかける。

 「ううん! アリスが元気なら平気だよ!」

 アリスの言葉を聞くと今まで心配そうに曇っていた顔が、花が咲くようにほころぶ。
 
 ドクンドクン・・・

 (かわいい・・・って! どうしたのかしら!? 私!)

 「・・・おっと!いつまでも休んでられないわね! 早速人形劇の準備を始めるわ!」
 「ええ、お願いするわ私もできることがあったら言ってちょうだい」
 「面白そうだな! 私も参加するぜ!」  
 「フランも手伝う~!」

 いつまでも見とれてしまいそうな自分を振り切り、アリスは製作開始を宣言する。
 パチュリーもそれに同意し、イベント好きな魔理沙は即座に参加を決めた。
 フランは純粋に皆で何かできることが嬉しくてたまらないようだ。

 「それじゃ、皆にお願いするわね!」


☆★☆★

   
 
 「今回は、吊り下げ式のパペットにするから木のパーツを沢山作るわ。 パチュリーはこの材料から大まかに切り出しをお願いするわ。」
 「埃が立ちそうな作業ね・・・でも、任せてちょうだい」

 どでんと鎮座する丸太を前に説明をするアリス。
 パチュリーは埃をすわないようにマスクをしている。

 「それじゃ、お願いするわね」
 「わかったわ・・・金木符『エレメンタルハーベスター』・・・」

 ギュイーーーンとパチュリーの周りに回転する鋭い歯車が現れる。
 パチュリーは設計図を片手にすいっと手を翻す。
 その途端、歯車は木材のほうへ飛んで行き木材を切断し始める。

 (ここは、大丈夫なようね・・・さ!次へ行かなくちゃ)


☆★☆★


 「どう? 魔理沙、はかどってるかしら?」
 「ああ、 ちょいと精製に時間がかかるが私にかかればお手のもんだぜ!」

 そういいつつミニ八卦炉の出力を調整する魔理沙。
 魔理沙には人形の命となるガラスの瞳を精製してもらっている。
 ガラスの精製には強い火力が必要となるため魔理沙がこの役を買って出たのだ。

 「それじゃ、勢い余って材料ごと消し飛ばさないようにね」
 「誰に物言ってるんだ? 私に不可能はないんだぜ!」

 うぉー!精製はパワーだぜ!っとさらに出力を上げる魔理沙に不安を感じつつもその場を後にする。


☆★☆★


 トンテンカントンテンカン
 金槌が材料を打つ小気味良い音が響いている。
 
 「美鈴? あなたどうして?」
 「いやぁ、折角初めてフラン様が人形劇を見るんですから。 その舞台も思い出に残るくらいいいものにしないと、と思いまして」

 舞台を設置する予定になっているホールを通りがかったら予定になかった人物が作業していた。

 「そうね、今回は急な作業だったから舞台は机とかを代用しようと思っていたけれど。 いい舞台をお願いするわね」
 「はい! 任せてくださいよ! これでも誰かさんのせいで毎日門の修理をしてるんです! 大工仕事はお手のもんです!」

 そういう美鈴の笑顔に見送られてホールを後にする。


☆★☆★


 「フランお嬢様、こちらはこう糸を通してこう糸を引くとうまくいきますよ」
 「うーん、難しいよ・・・」
 「調子はどうかしら? お二人さん」

 フランの部屋に入ると、てきぱきと針仕事をこなしつつフランにやり方を教えている咲夜の姿があった。
 フランは物を作ること自体がはじめてなので悪戦苦闘しているが一生懸命な様子が微笑ましい。

 「ええ、大体の裁断は終わっているからあとはもう一気に縫い上げるだけよ」
 「助かるわ、小物類は意外と時間がかかるのよ」
 
 咲夜は口を動かしながらも手を休めることなく縫い続ける。
 こういった細かな仕事まで何でもこなす所など流石完全で瀟洒なメイドといったところか。

 「フランも頑張っているわね、でも針で怪我をしないように気をつけてね」
 「う~、咲夜みたいに早くできないよ~」

 一生懸命やってはいるのだが今日始めて針を持った者と、いつでも細かい仕事をしている者とでは実力の違いは歴然である。

 「フランお嬢様も、練習をすればすぐに咲夜を追い抜けますよ」
 「うぅ~、すぐって明日?」
 「うふふ・・・それはあなたしだいよ」

 未だにう~う~うなっているフランと咲夜に別れを告げ図書館へ向かう、今回の物語の台本を書くためだ。


☆★☆★


 「よし、フランのためにもいい劇にして上げなきゃね・・・」
 「お疲れ様です、アリスさん」

 図書館のパチュリーの執務机で原稿を書き始めると小悪魔が紅茶を差し入れてくれる。

 「ああ、ありがとう悪いわね・・・あら、変わった香りの紅茶ね・・・」
 「ええ、私コアの特製スタミナ紅茶ですよ!これを飲めば三日三晩寝ずにベッドの上で戦えちゃうんですよ!」

 また、強烈なものを・・・

 「ま、まぁなんにせよありがとう・・・」
 「いえ~、お礼だなんて~アリスさんは私の大事な方ですし・・・いやん!言っちゃった!キャー!!」

 何か一人で悶え始めた・・・

 「それにそれに・・・このお茶で元気が出すぎちゃって、今日の夜私の寝室に忍び込んでくるなんてことも・・・キャーキャー!」

 いや、それはないだろう・・・

 「それじゃぁ、頑張って書き上げちゃいましょう」
 「はい~、頑張っちゃってください~!」


☆★☆★


 「・・・ふぅ、こんな感じでいいかしらねぇ」
 
 ふと気がつくとだいぶ長い時間集中して書いていたようだ。
 周りを見渡すが小悪魔はどこか別の場所に行っているようだ。

 「ちょっと、いいかしら?」
 「きゃひっ!」

 死角から声をかけられてアリスは思わず飛び上がった。

 「そんなに、驚かれても困るわ」
 「ごめんなさい、少し集中していたものだから」

 声をかけてきたのは紅魔館に入ってから一度も姿を見ていなかったレミリアであった。

 「それで、何の御用かしら?」
 「ええ、今回の劇の事なんだけれども、紅魔館の皆は命令したものもそうでないものもフランのために頑張ってくれているわ」

 何か少し迷うような、それでいて答えはもう出ているようなそんな様子でレミリアは続ける。

 「だから・・・その・・・私もあの子の姉として、なにか・・・してあげたいと・・・ね」
 「ええ」

 まだ続くようなのでアリスは短い相槌だけをうつ。

 「私は、あの子が生まれてから495年の間軟禁してきたわ。 あの子にはとても恨まれているでしょう
 だけど、霊夢や魔理沙と触れ合う事であの子も変わってきている・・・だから・・・私も・・・」
 「やり直したい?」

 少し言いよどむそぶりを見せたので酌んでアリスが続ける。

 「ええ・・・やり直したいわ、あの子を守るためとは言えずっと閉じ込めてしまっていた間に、
あの子と私との間に出来てしまった壁を取り除きたいの」
 「わかったわ、プライドの高いあなたが直々に頼みに来るくらいだものね」

 アリスは改めてレミリアを見、そして告げる

 「では、レミリアにお願いする仕事があるわ」
 「ええ・・・なんでも言って」

 一呼吸おいて告げる

 「レミリア、あなたは何もしないで待っていて」
 「なっ!?お前は私の言うことを聞いていなかったのか!!」

 アリスの次げた言葉に激昂するレミリア

 「落ち着きなさい、私は今回フランにも仕事を振っているわ、でもそろそろ飽きが来ているはずよ」
 「ふむ?」
 
 とりあえずは落ち着きを取り戻して話を聞くレミリア

 「そろそろあの子は暴れ出すわ、そうしたら私はあの子を叱る・・・手ひどくね」
 「・・・」
 「その後、慰めて諭すのはあなたの役目よ、今まで閉じ込めていたぶん言うことを聞いてくれないかもしれないけれど、根気強くやりなさい」
 「わかった」

 そう言いレミリアが図書館を後にしようとした時

 ズズーン!

 紅魔館全体を揺るがすような振動が巻き起こる。

 「ほら、始まったわ」
 「ええ、そのようね・・・」

 アリスは立ち上がり紅魔館の地下室へと走った。




つづく




 わおーん! あけましておめでとうございます! BOUZUでございます。
人名、キャラ名から相性を割り出せる占いで第二位に香霖がランクインしました! うおお! 褌イヤー!
 
 今回もコメディーパートとシリアスパートのバランス取りはgdgdです orz
次回当たりで終わりになると思われますが保証はできません。
こんな勢いだけな私をお許しください。

 では、次回も宜しくお願いしますね!
BOUZU
コメント



1.名無し妖怪削除
前回の一件がしっかりアリスのトラウマになってるようで何よりw