相も変わらず閑散とした、博麗神社の縁側で。
相も変わらない二人の少女は、呑気にお茶をすすっていた。
「する事が無いのは、退屈だぜ」
「だったら、退屈しのぎに境内の掃除でもしてくれる?」
「やりたくない事をするのは、やる事がないのと同じくらい嫌だぜ」
他愛のない無駄話に興じている、その時だった。
ぱきんという音と共に、彼女達の湯飲みが真っ二つに割れた。
幽霊庭師でもここまで綺麗には斬れないであろう、平らな断面がごろりと上を向く。
「……不吉ね」
「……きっと職務怠慢な巫女への天罰だな」
破片をつまみ上げ眉をひそめる霊夢をよそに、魔理沙はお茶請けの煎餅を手に取る。
しかし、口元に運ぼうとした煎餅はするりと指から滑り抜け、地面に落ちて粉々に砕けた。
「……ついてないぜ」
「……呪いのアイテムでも拾ったんじゃないの?」
二人は怪訝な顔で互いを見合わせる。すると、
「助けてーっ」
明らかに参拝客ではないであろう悲鳴が、空の彼方から聞こえてきた。
目も当てられないほど強烈な負のオーラを放ちながら、赤いドレスの少女が横回転で舞い降りてくる。
そして、
「夢想封印!」
霊夢の放った弾幕が、神社の上空に爆発を巻き起こした。
境内の真ん中に墜落した黒焦げの少女―――厄神こと鍵山雛。
彼女の下に、霊夢と魔理沙が駆け寄ってきた。
「あぁ、あなた達……」
「あんたかーっ!」
喋る間も与えず、霊夢は雛の襟首をふん捕まえる。
「あんたが何処で何しようと勝手だけど、うちにだけは来ないでって言ったでしょ!
傾くわよ?建物的にも財政的にもポッキリいくわよ!?」
「クリスマスはとっくに終わったぞ?来年まで押入れの隅で埃被ってたらどうなんだ?」
「うぅ、あんまりだわ……」
よよよ、と嘆き崩れる厄神。
が、既に何人も神様を屠ってきた少女達は、それを冷ややかな視線で見下ろすだけだった。
肌を刺す視線に耐えられなくなった雛は、あきらめて立ち直る。
「そんな事より、大変なんです!実は……」
「いいから、湯呑み弁償しなさいよ。ついでに賽銭入れてきなさい」
「それより香霖堂行って煎餅買って来いよ。ほらほら、ジャンプしてみ?」
「話を聞いてくださいお願いですから!」
祓い棒と箒を構えてにじり寄る霊夢達に本気で怯えながら、雛はやけ気味に叫んだ。
「奴が……奴が来るんですぅ!」
「「は?」」
二人の体がぴたりと止まる。それに合わせたかのように。
「ほーっほっほっほっ!」
甲高くうざったい笑い声が、やはりと言うべきか上空から響いてきた。
「な、何だぁ?」
聞き覚えのない声に多少の不安を覚え、二人は空を見上げる。
遥か彼方から近づいてくる、謎の人影。霊夢はそれを指差した。
「ちょっと、奴ってあれの事!?」
「そうです、奴こそ……」
雛はわなわなと拳を握り締め、高らかに告げた。
「私の宿敵、福神です!」
彼女らしからぬその煽り振りに、霊夢と魔理沙は息を呑む。
距離を縮めると共に、その人影は徐々に輪郭を露わにしていく。
目も当てられないほどの輝かしいオーラを放ちながら、少女はくるくると舞い降りてきた。
縦回転で。
「マスタースパーク!」
魔理沙の放った弾幕が、神社の上空に二度目の爆発を轟かせた。
て、縦回転てwww