「えぇっと・・・、霊夢の話だとそろそろ着いてもいいはずなんだけど」
私は木々が鬱蒼と生い茂った魔法の森と呼ばれる場所にいます。
霊夢の話ではこのあたりに魔法使いの家があるはずなんですが・・・
ぁ、ありました。
西洋風の小ぢんまりとした家
たぶん、この家が魔法使いの家なのでしょう。
コンコンッと扉をノックしてみると
中から金髪の綺麗な女性が出てきました。
「・・・誰?」
「ぁ、すっすみません。えっと、貴女がアリスさんですか?」
まるで人形のような綺麗な人だなぁ、と見とれていたので
ちょっと慌ててしまいました。
「・・・そうだけど、あなたは誰?」
我ながら大失敗です。
慌ててたとはいえ、自分の名前を名乗らずに相手の名前を尋ねるとは・・・
「し、失礼しました。私は守矢神社の風祝 東風谷 早苗 といいます」
「あぁ、魔理沙や霊夢がいってた生意気な巫女さんね」
グサッときました。
今の一言グサッと・・・
確かに、幻想郷という世界を理解せず生意気なことをしてしまったのは事実ですが、
改めて言われると結構グサッときます。
「で、その巫女さんが私に何の用?」
私が、あはは、と放心気味なのをアリスさんは華麗にスルーしてくれました。
実にありがたいことです・・・
「えっと、実はですね。
霊夢や魔理沙から貴女は料理の腕が素晴らしいと聞いたので、料理を教わりに・・・」
ぁぁ、そんな不信な目で見ないでください。
わかってます。初対面の人に頼むようなことじゃないのは理解してます。
「ぁ、ぁ・・・じ・・実はですね。もうすぐクリスマスじゃないですか
それで家の神様たちがパーティーをしたいと言うんですが、
私はケーキとかそういったお菓子なんか作ったことないんですよ。
それ以前に、ガスも電気もない環境で料理するのが思ってた以上に大変で・・・
冷蔵庫とか電子レンジの偉大さを痛感しました」
「・・・
色々と突っ込みたいところがあるけど、
とりあえず、あなたも苦労してるのね」
アリスさんのその一言で堪えてた涙とかが、一気に流れてきます。
ぁぁ、この人は常識人だ・・・
「で、具体的にどんなものを作りたいの?」
彼女は私を部屋の中に案内すると、単刀直入に訊ねてきました。
まぁ、それが目的で来てるのですから、当たり前ではあるんですが・・・
「えっとですね・・」
「何をキョロキョロしてるの?」
「いや!あの、随分たくさん人形が置いてあるので」
「たくさん置いてあるけど何か問題でもあるのかしら?」
ぇ、アリスさん・・・
なんで笑顔でそんな青筋立てているんですか?
私なにか言っちゃいけないこと言いましたっけ?
「いえ!別に問題とかそういうのじゃなくて、
素敵な人形だなぁーって・・・」
「・・・」
あれ・・・
今度は俯いちゃった・・・?
やっぱり人形に触れるのはタブーだったんですか?
「素敵・・・って、本当に?」
「え・・えぇ、本当に素敵で可愛らしい人形ですよね」
威圧するような低い声に対して慌ててそう告げると、
彼女はがしっと私の両手を掴んできました。
突然のことに驚いていると、グッと彼女の顔が寄ってきます。
なにか、物凄い笑顔・・・
「あなた良くわかってる!物の価値がわかってる!
あの馬鹿な白黒とは大違いね!」
えーっと・・・
「ここに置いてある人形の大半は私が作ったの。
あなたみたいな人が来てくれて、この子達も喜んでるわ」
うん
前言撤回
やっぱり幻想郷の住人はどこかがおかしい
「なになに、まずクリスマス用のケーキ・・・
生クリームのとチョコレートケーキ2つよろしくね・・・?
七面鳥のクランベリーソー・・・
幻想郷に七面鳥なんていたかしら・・・
あと他には何を・・・」
うぅ、恥ずかしい
神奈子様と諏訪子様の直筆のメモとか・・・
本当に恥ずかしい
「う~ん・・・
七面鳥は鶏で代用するとしても材料が足りないわね」
「ですよね・・・」
「それにこんなに本格的なものを教わるなら
私のところじゃなくて、
紅魔館のメイドのところに行ったほう良かったんじゃない?」
「はい、私も最初はそう言われて紅魔館に行ったんですが、
門番の方に追い払われて・・」
あれ?
アリスさん、なんでそんな驚いてるんですか?
「えぇっと、あなた、霊夢と魔理沙にケンカ売ったのよね?」
「ぇぇ、まぁ、結果論としては・・・」
「で、負けたけど、それなりにあの二人を追い詰めたのよね?」
「ぇぇ・・・負けましたが、ある程度は・・・」
「あの二人とそれなりに戦える人間が門番に負けたの?」
「・・・はい?」
えーと、なにか話がかみ合ってない?
負けた?
なんでここで勝ち負けの話が出てくるんでしょうか?
「勝ったの?負けたの?」
「ぇ!?いえ、勝ったとか負けたとかどういうことですか?」
「弾幕ごっこやらなかったの?」
「は、はい」
「えーっと、・・・状況説明お願い」
「どのあたりから説明しましょうか?」
「最初から」
「えっと、
まず、最初に博麗神社に相談に行ったところ
霊夢が留守で、その代わりに魔理沙がいたんです。
そこで魔理沙に今回の料理のことを話したら
紅魔館の咲夜というメイドが料理のことは詳しいから
紅魔館へ行くと良いと教えてくれたんです。
そして、紅魔館に行ったんですが」
「追い返された?」
「はい・・・最初は門番の方も友好的だったんですが
途中から鬼気迫るような態度で・・・」
「・・・
もしかして魔理沙の紹介で。とか言った?」
「はい」
「・・・あの門番に魔理沙は禁句よ
彼女のとって魔理沙は天敵以外の何者でもないから」
ぇ・・・
そうだったんですか?
あのとき魔理沙はあとから自分も紅魔館に行くって・・・
「まぁ、なんというか・・・
魔理沙は紅魔館には毎回強行突破で侵入するから」
・・・
強行突破?
なんだか身に覚えが・・・
「まぁ、そこで強行突破に出ないで、
引き下がったあなたは門番としてはありがたかったでしょうね
って、大丈夫?早苗?」
「ぁ、はい。なんとか・・・」
「・・・あなたも身に覚えがあるって感じね」
も?
今「あなたも」と言いましたか?
ハッとして彼女の方を見ると暖かな眼差しが・・・
ぁぁ、アリスさんも被害者なんですね・・・
そして、いつの間にか紅魔館の前に立ってます。
アリスさんの話では自分が行けば大丈夫だということですが、
本当に良いのでしょうか・・・
「早苗ー、許可取ったからいくわよー」
はやっ
「アリスさん・・・よくこんなに早く許可出ましたね」
「別に難しいことじゃないわ。魔理沙が特別なだけよ」
そのとき、突然背後から強烈な音と光が
あ、あれは噂に聞くマスタースパーク!?
そして、あの照射位置はさっき門番の方がいた場所・・・
「ね、トラウマになるのもわかるでしょ?」
「ぇ、ぇぇ・・・あれはトラウマになります・・・」
魔理沙は呆然とする私には目もくれず紅魔館の中へと侵入していきました。
「それじゃ、私たちも行きましょうか」
アリスさんのあっさりとした態度から今の光景は日常茶飯事のことなんだと
なんとなくわかってしまいました。
門番さん・・・頑張ってください。
「そうそう、
あの二人がちゃんと説明してるかわからないから念の為に言っておくけど」
紅魔館の中に入るなりアリスさんは声をかけてきました。
「ここの主人は吸血鬼。
あと、その妹君はちょっと情緒不安定なとこがあるから取り扱い注意」
「へー
ここって吸血鬼の・・・吸血鬼!?」
私が驚く様子にアリスさんは、やっぱりかと呆れ気味、
そして、その横に立ってる少女もクスクス笑ってる。
ぇ?
少女!?
「あなたが山の上に引っ越してきたって言う巫女さんかしら?」
実に堂々と、そして威圧するような雰囲気がします・・・
彼女が吸血鬼・・・?
「あら、お嬢さま。巫女ではなく風祝というそうですよ」
ぇぇ!?
今度は突然人が沸いた?
瞬きした一瞬で人が!?
「ぁー・・・お二人さん、早苗が混乱してるから自己紹介お願いできるかしら」
アリスさんがオロオロしている私を見かねて提案してくれました。
心から感謝を述べたい・・・
「私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主で夜の王様よ。
そして、こっちはうちのメイド長」
「十六夜 咲夜ですわ。」
「別名 ザ・刃物」
「お嬢さま?そんな呼ばれ方はしたことありませんよ?
まぁ、刃物を使った手品は得意ですけど。もちろんタネなしの」
ごめんなさい
私にはついていけそうもありません
神奈子様・・・
なんで幻想郷にきちゃったんですか
「おっと、話がそれたけど
そちらの自己紹介がまだじゃない?」
「ぁ、失礼しました。
守矢神社の東風谷 早苗といいます」
「ふーん・・・
で、うちに何の用かしら?
信仰心とやらを集めに来たの?
もし、そうなら巫女なんかじゃなく
引っ越してきた神自身がきたらどうなんだ?」
空気が凍りつく。
ダメだ
この吸血鬼と神奈子様を会わしていけない
私はそう直感する
「ぁー、はいはい。ストップ
今日は貴女じゃなくて、そっちのザ・刃物に用があるのよ」
アリスさんが話を遮るとふっと空気が溶ける
本当に今日は彼女にお世話になりっぱなしだ
「あら?そうなの
それじゃぁ咲夜、あとはお願いね」
吸血鬼は興味をなくしたとばかりにそのまま去っていった
「あ、アリスさん、ありがとうございます・・」
「お礼なんていらないわ
私もあの空気は嫌いなのよ・・・」
「で、お二人さんは私に何の用?」
主人である吸血鬼が去った途端にフランクになるメイド長
彼女もなかなか曲者かもしれない・・・
その後、私は咲夜さんにここまできた経緯を説明し
料理の教えを請うことになる
アリスさんも手伝ってくれたとはいえ
とても大変な時間でした
ガスレンジも偉大だったんだなぁ・・・
あと炊飯器
そしてクリスマス当日
上手くできるか心配でしたが
アリスさんが様子を見に来てくれたので
大きな失敗もなく料理は完成しました
あとは神奈子様と諏訪子様が来るのを待つだけです
「じゃぁ、私はそろそろ帰るわね」
「ぇ?アリスさん帰っちゃうんですか?」
「様子を見に来ただけだし、私みたいな部外者はいない方がいいでしょ?」
「部外者なんて・・・
色々と手伝ってもらったんですから是非」
私が「是非いっしょに食べましょう」そう言おうとしたとき
部屋の戸が勢い良く開く
「今日は宴会があるんだって?
宴会といえばこの私だろ!」
「はいはい。わかった、わかった。
あんたは騒ぐ専門だからねぇ」
ぇーっと・・・
なんで霊夢と魔理沙がくるんですか?
「随分と立派な神社ね。
霊夢のトコとは大違い」
「お嬢さま、本人の前でボロ神社とか言ってはいけませんわ」
いやいや、貴女の方が酷いこと言ってますから
って、吸血鬼に咲夜さんまできてる!?
「あら~?おいしそうな匂いね」
「幽々子様ストップストップ!あいさつもなく入ってはいけませんって!!」
「あらあら妖夢?
こういうものは早い者勝ちよ?」
「そんなわけありませんから!!」
今度はなんですか!?
あれは・・・亡霊?
私の直感がそう告げてる
でも、なんで亡霊が??
「ぁ、貴女がこちらの神社の巫女さんですか?」
「ぇ・・ぇぇ、この神社の風祝の早苗です」
小柄な少女が礼儀正しく一礼するが
その腰には二振りの刀
ちょっと物騒じゃありませんか・・・?
「私は西行寺家の庭師兼お嬢さまの剣の指南役の魂魄 妖夢といいます
そして、こちらが西行寺家のお嬢さまの幽々子様で・・・
って、幽々子様!!勝手に他所の家の食事食べちゃダメですって!!」
ぁぁ・・・
なんでかしら・・・
あんなに一生懸命作ったのに
誰とも知らない亡霊に物凄い勢いで食べられてる
「おや、今日は随分と賑やかだね」
「か、神奈子様~」
ようやく登場の神奈子様に私は涙で訴えるが
それを遮るように
あの吸血鬼が私の前に立つ。
「お前がこの神社の神とかいうやつか?」
「えぇ、そうよ。正確には、この山の、だけれど」
「ふん
そんなことはどうでもいい。
お前が私が信仰するに値するか試してやる」
「随分と自信過剰なお嬢さんだね。
良いだろう。相手をしてあげるよ」
ぇ?ぇ?
神奈子様・・・
というか、私この前会ったときに吸血鬼と神奈子様を会わせちゃいけないって!!
「その力試してやろう!山の神!!」
「神の力を見せてあげるよ!吸血鬼!!」
ぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!
なんでいきなりラスボスの会話みたいなのが成立してるんですか!?
もう手遅れ?手遅れなんですか!?
「ふわぁぁあ。
早苗ー、夕食の準備おわったのー?」
「諏訪子様ぁ・・・」
お願いだから、あの二人を止めて
そう言おうとしたら、また私の前に立つ少女が・・・
あれ・・・
この子ってさっきの吸血鬼の横いた子じゃなかったけ?
それにコレはなんだろう・・・
宝石の付いた羽?
「んん?あなたは誰かな?」
「ねぇ、あなたも神様なんでしょ?」
「そうだよー。私も神様
洩矢 諏訪子っていうだよ。
よろしくねー」
「ふ~ん
じゃぁ、一緒に遊ぼ♪
神様なら本気でやっても壊れないよね」
「へ?」
「私はフランドール・スカーレット
悪魔の妹だよ♪」
す、諏訪子様!
危険です!!
その子は危険です!!
直感とかそんなの関係なしに危険な気配がビリビリと伝わってきます!!
だから、その遊び引き受けちゃ・・・
「う~ん
誘われちゃ、断れないよね」
諏訪子様ぁぁぁあああああああ!!!!!!
「あはは♪
ホントにいいの?」
「一度誘った遊びを下げるほど
あなたの遊びは軽いものなの?」
「む!
私の遊びはそんなに軽くない!!」
ちょっ
諏訪子様!?
なんで挑発までしてるんですか!?
その子は危険だって!!
「さぁ、もう後悔しても遅いよ?
あなたが、コンティニュー出来ないのさ!」
「わざわざ、ここまで来てくれたのだから
只で帰す訳にもいかないでしょう?」
いやぁぁぁああああああああ!!!!!
こっちも弾幕開始ですか!?
今日はクリスマスじゃなかったんですか!?
不意に両肩にポンッと手を置かれる
霊夢にアリスさん?
なんでそんなに哀れむような目で見るんですか・・・?
「おお?宴会場はここかな?」
今度はなに?
「早苗さん、こんばんわー」
えっと
烏天狗の文さんに河童のにとりさん・・・と
頭に二本の角・・・
鬼?
「いやー、宴会があるなら一声かけてくれてもいいじゃない」
「あんたは呼ばなくても勝手に沸くでしょ」
「霊夢ーそんな冷たいこと言わないでさー」
あの・・・
本当に私はどうすればいいんですか・・・?
「ぎゃぁぁぁぁあああ!!
幽々子様!!それ私の半霊ですって!!!」
・・・
「霧雨 魔理沙!一発芸いくぜ!!」
・・・
「あのー・・・
早苗さん?大丈夫?」
・・・
「誰でもいいからたすけてぇぇっぇぇえええええええええええええええ!!!!」
私は木々が鬱蒼と生い茂った魔法の森と呼ばれる場所にいます。
霊夢の話ではこのあたりに魔法使いの家があるはずなんですが・・・
ぁ、ありました。
西洋風の小ぢんまりとした家
たぶん、この家が魔法使いの家なのでしょう。
コンコンッと扉をノックしてみると
中から金髪の綺麗な女性が出てきました。
「・・・誰?」
「ぁ、すっすみません。えっと、貴女がアリスさんですか?」
まるで人形のような綺麗な人だなぁ、と見とれていたので
ちょっと慌ててしまいました。
「・・・そうだけど、あなたは誰?」
我ながら大失敗です。
慌ててたとはいえ、自分の名前を名乗らずに相手の名前を尋ねるとは・・・
「し、失礼しました。私は守矢神社の風祝 東風谷 早苗 といいます」
「あぁ、魔理沙や霊夢がいってた生意気な巫女さんね」
グサッときました。
今の一言グサッと・・・
確かに、幻想郷という世界を理解せず生意気なことをしてしまったのは事実ですが、
改めて言われると結構グサッときます。
「で、その巫女さんが私に何の用?」
私が、あはは、と放心気味なのをアリスさんは華麗にスルーしてくれました。
実にありがたいことです・・・
「えっと、実はですね。
霊夢や魔理沙から貴女は料理の腕が素晴らしいと聞いたので、料理を教わりに・・・」
ぁぁ、そんな不信な目で見ないでください。
わかってます。初対面の人に頼むようなことじゃないのは理解してます。
「ぁ、ぁ・・・じ・・実はですね。もうすぐクリスマスじゃないですか
それで家の神様たちがパーティーをしたいと言うんですが、
私はケーキとかそういったお菓子なんか作ったことないんですよ。
それ以前に、ガスも電気もない環境で料理するのが思ってた以上に大変で・・・
冷蔵庫とか電子レンジの偉大さを痛感しました」
「・・・
色々と突っ込みたいところがあるけど、
とりあえず、あなたも苦労してるのね」
アリスさんのその一言で堪えてた涙とかが、一気に流れてきます。
ぁぁ、この人は常識人だ・・・
「で、具体的にどんなものを作りたいの?」
彼女は私を部屋の中に案内すると、単刀直入に訊ねてきました。
まぁ、それが目的で来てるのですから、当たり前ではあるんですが・・・
「えっとですね・・」
「何をキョロキョロしてるの?」
「いや!あの、随分たくさん人形が置いてあるので」
「たくさん置いてあるけど何か問題でもあるのかしら?」
ぇ、アリスさん・・・
なんで笑顔でそんな青筋立てているんですか?
私なにか言っちゃいけないこと言いましたっけ?
「いえ!別に問題とかそういうのじゃなくて、
素敵な人形だなぁーって・・・」
「・・・」
あれ・・・
今度は俯いちゃった・・・?
やっぱり人形に触れるのはタブーだったんですか?
「素敵・・・って、本当に?」
「え・・えぇ、本当に素敵で可愛らしい人形ですよね」
威圧するような低い声に対して慌ててそう告げると、
彼女はがしっと私の両手を掴んできました。
突然のことに驚いていると、グッと彼女の顔が寄ってきます。
なにか、物凄い笑顔・・・
「あなた良くわかってる!物の価値がわかってる!
あの馬鹿な白黒とは大違いね!」
えーっと・・・
「ここに置いてある人形の大半は私が作ったの。
あなたみたいな人が来てくれて、この子達も喜んでるわ」
うん
前言撤回
やっぱり幻想郷の住人はどこかがおかしい
「なになに、まずクリスマス用のケーキ・・・
生クリームのとチョコレートケーキ2つよろしくね・・・?
七面鳥のクランベリーソー・・・
幻想郷に七面鳥なんていたかしら・・・
あと他には何を・・・」
うぅ、恥ずかしい
神奈子様と諏訪子様の直筆のメモとか・・・
本当に恥ずかしい
「う~ん・・・
七面鳥は鶏で代用するとしても材料が足りないわね」
「ですよね・・・」
「それにこんなに本格的なものを教わるなら
私のところじゃなくて、
紅魔館のメイドのところに行ったほう良かったんじゃない?」
「はい、私も最初はそう言われて紅魔館に行ったんですが、
門番の方に追い払われて・・」
あれ?
アリスさん、なんでそんな驚いてるんですか?
「えぇっと、あなた、霊夢と魔理沙にケンカ売ったのよね?」
「ぇぇ、まぁ、結果論としては・・・」
「で、負けたけど、それなりにあの二人を追い詰めたのよね?」
「ぇぇ・・・負けましたが、ある程度は・・・」
「あの二人とそれなりに戦える人間が門番に負けたの?」
「・・・はい?」
えーと、なにか話がかみ合ってない?
負けた?
なんでここで勝ち負けの話が出てくるんでしょうか?
「勝ったの?負けたの?」
「ぇ!?いえ、勝ったとか負けたとかどういうことですか?」
「弾幕ごっこやらなかったの?」
「は、はい」
「えーっと、・・・状況説明お願い」
「どのあたりから説明しましょうか?」
「最初から」
「えっと、
まず、最初に博麗神社に相談に行ったところ
霊夢が留守で、その代わりに魔理沙がいたんです。
そこで魔理沙に今回の料理のことを話したら
紅魔館の咲夜というメイドが料理のことは詳しいから
紅魔館へ行くと良いと教えてくれたんです。
そして、紅魔館に行ったんですが」
「追い返された?」
「はい・・・最初は門番の方も友好的だったんですが
途中から鬼気迫るような態度で・・・」
「・・・
もしかして魔理沙の紹介で。とか言った?」
「はい」
「・・・あの門番に魔理沙は禁句よ
彼女のとって魔理沙は天敵以外の何者でもないから」
ぇ・・・
そうだったんですか?
あのとき魔理沙はあとから自分も紅魔館に行くって・・・
「まぁ、なんというか・・・
魔理沙は紅魔館には毎回強行突破で侵入するから」
・・・
強行突破?
なんだか身に覚えが・・・
「まぁ、そこで強行突破に出ないで、
引き下がったあなたは門番としてはありがたかったでしょうね
って、大丈夫?早苗?」
「ぁ、はい。なんとか・・・」
「・・・あなたも身に覚えがあるって感じね」
も?
今「あなたも」と言いましたか?
ハッとして彼女の方を見ると暖かな眼差しが・・・
ぁぁ、アリスさんも被害者なんですね・・・
そして、いつの間にか紅魔館の前に立ってます。
アリスさんの話では自分が行けば大丈夫だということですが、
本当に良いのでしょうか・・・
「早苗ー、許可取ったからいくわよー」
はやっ
「アリスさん・・・よくこんなに早く許可出ましたね」
「別に難しいことじゃないわ。魔理沙が特別なだけよ」
そのとき、突然背後から強烈な音と光が
あ、あれは噂に聞くマスタースパーク!?
そして、あの照射位置はさっき門番の方がいた場所・・・
「ね、トラウマになるのもわかるでしょ?」
「ぇ、ぇぇ・・・あれはトラウマになります・・・」
魔理沙は呆然とする私には目もくれず紅魔館の中へと侵入していきました。
「それじゃ、私たちも行きましょうか」
アリスさんのあっさりとした態度から今の光景は日常茶飯事のことなんだと
なんとなくわかってしまいました。
門番さん・・・頑張ってください。
「そうそう、
あの二人がちゃんと説明してるかわからないから念の為に言っておくけど」
紅魔館の中に入るなりアリスさんは声をかけてきました。
「ここの主人は吸血鬼。
あと、その妹君はちょっと情緒不安定なとこがあるから取り扱い注意」
「へー
ここって吸血鬼の・・・吸血鬼!?」
私が驚く様子にアリスさんは、やっぱりかと呆れ気味、
そして、その横に立ってる少女もクスクス笑ってる。
ぇ?
少女!?
「あなたが山の上に引っ越してきたって言う巫女さんかしら?」
実に堂々と、そして威圧するような雰囲気がします・・・
彼女が吸血鬼・・・?
「あら、お嬢さま。巫女ではなく風祝というそうですよ」
ぇぇ!?
今度は突然人が沸いた?
瞬きした一瞬で人が!?
「ぁー・・・お二人さん、早苗が混乱してるから自己紹介お願いできるかしら」
アリスさんがオロオロしている私を見かねて提案してくれました。
心から感謝を述べたい・・・
「私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主で夜の王様よ。
そして、こっちはうちのメイド長」
「十六夜 咲夜ですわ。」
「別名 ザ・刃物」
「お嬢さま?そんな呼ばれ方はしたことありませんよ?
まぁ、刃物を使った手品は得意ですけど。もちろんタネなしの」
ごめんなさい
私にはついていけそうもありません
神奈子様・・・
なんで幻想郷にきちゃったんですか
「おっと、話がそれたけど
そちらの自己紹介がまだじゃない?」
「ぁ、失礼しました。
守矢神社の東風谷 早苗といいます」
「ふーん・・・
で、うちに何の用かしら?
信仰心とやらを集めに来たの?
もし、そうなら巫女なんかじゃなく
引っ越してきた神自身がきたらどうなんだ?」
空気が凍りつく。
ダメだ
この吸血鬼と神奈子様を会わしていけない
私はそう直感する
「ぁー、はいはい。ストップ
今日は貴女じゃなくて、そっちのザ・刃物に用があるのよ」
アリスさんが話を遮るとふっと空気が溶ける
本当に今日は彼女にお世話になりっぱなしだ
「あら?そうなの
それじゃぁ咲夜、あとはお願いね」
吸血鬼は興味をなくしたとばかりにそのまま去っていった
「あ、アリスさん、ありがとうございます・・」
「お礼なんていらないわ
私もあの空気は嫌いなのよ・・・」
「で、お二人さんは私に何の用?」
主人である吸血鬼が去った途端にフランクになるメイド長
彼女もなかなか曲者かもしれない・・・
その後、私は咲夜さんにここまできた経緯を説明し
料理の教えを請うことになる
アリスさんも手伝ってくれたとはいえ
とても大変な時間でした
ガスレンジも偉大だったんだなぁ・・・
あと炊飯器
そしてクリスマス当日
上手くできるか心配でしたが
アリスさんが様子を見に来てくれたので
大きな失敗もなく料理は完成しました
あとは神奈子様と諏訪子様が来るのを待つだけです
「じゃぁ、私はそろそろ帰るわね」
「ぇ?アリスさん帰っちゃうんですか?」
「様子を見に来ただけだし、私みたいな部外者はいない方がいいでしょ?」
「部外者なんて・・・
色々と手伝ってもらったんですから是非」
私が「是非いっしょに食べましょう」そう言おうとしたとき
部屋の戸が勢い良く開く
「今日は宴会があるんだって?
宴会といえばこの私だろ!」
「はいはい。わかった、わかった。
あんたは騒ぐ専門だからねぇ」
ぇーっと・・・
なんで霊夢と魔理沙がくるんですか?
「随分と立派な神社ね。
霊夢のトコとは大違い」
「お嬢さま、本人の前でボロ神社とか言ってはいけませんわ」
いやいや、貴女の方が酷いこと言ってますから
って、吸血鬼に咲夜さんまできてる!?
「あら~?おいしそうな匂いね」
「幽々子様ストップストップ!あいさつもなく入ってはいけませんって!!」
「あらあら妖夢?
こういうものは早い者勝ちよ?」
「そんなわけありませんから!!」
今度はなんですか!?
あれは・・・亡霊?
私の直感がそう告げてる
でも、なんで亡霊が??
「ぁ、貴女がこちらの神社の巫女さんですか?」
「ぇ・・ぇぇ、この神社の風祝の早苗です」
小柄な少女が礼儀正しく一礼するが
その腰には二振りの刀
ちょっと物騒じゃありませんか・・・?
「私は西行寺家の庭師兼お嬢さまの剣の指南役の魂魄 妖夢といいます
そして、こちらが西行寺家のお嬢さまの幽々子様で・・・
って、幽々子様!!勝手に他所の家の食事食べちゃダメですって!!」
ぁぁ・・・
なんでかしら・・・
あんなに一生懸命作ったのに
誰とも知らない亡霊に物凄い勢いで食べられてる
「おや、今日は随分と賑やかだね」
「か、神奈子様~」
ようやく登場の神奈子様に私は涙で訴えるが
それを遮るように
あの吸血鬼が私の前に立つ。
「お前がこの神社の神とかいうやつか?」
「えぇ、そうよ。正確には、この山の、だけれど」
「ふん
そんなことはどうでもいい。
お前が私が信仰するに値するか試してやる」
「随分と自信過剰なお嬢さんだね。
良いだろう。相手をしてあげるよ」
ぇ?ぇ?
神奈子様・・・
というか、私この前会ったときに吸血鬼と神奈子様を会わせちゃいけないって!!
「その力試してやろう!山の神!!」
「神の力を見せてあげるよ!吸血鬼!!」
ぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!
なんでいきなりラスボスの会話みたいなのが成立してるんですか!?
もう手遅れ?手遅れなんですか!?
「ふわぁぁあ。
早苗ー、夕食の準備おわったのー?」
「諏訪子様ぁ・・・」
お願いだから、あの二人を止めて
そう言おうとしたら、また私の前に立つ少女が・・・
あれ・・・
この子ってさっきの吸血鬼の横いた子じゃなかったけ?
それにコレはなんだろう・・・
宝石の付いた羽?
「んん?あなたは誰かな?」
「ねぇ、あなたも神様なんでしょ?」
「そうだよー。私も神様
洩矢 諏訪子っていうだよ。
よろしくねー」
「ふ~ん
じゃぁ、一緒に遊ぼ♪
神様なら本気でやっても壊れないよね」
「へ?」
「私はフランドール・スカーレット
悪魔の妹だよ♪」
す、諏訪子様!
危険です!!
その子は危険です!!
直感とかそんなの関係なしに危険な気配がビリビリと伝わってきます!!
だから、その遊び引き受けちゃ・・・
「う~ん
誘われちゃ、断れないよね」
諏訪子様ぁぁぁあああああああ!!!!!!
「あはは♪
ホントにいいの?」
「一度誘った遊びを下げるほど
あなたの遊びは軽いものなの?」
「む!
私の遊びはそんなに軽くない!!」
ちょっ
諏訪子様!?
なんで挑発までしてるんですか!?
その子は危険だって!!
「さぁ、もう後悔しても遅いよ?
あなたが、コンティニュー出来ないのさ!」
「わざわざ、ここまで来てくれたのだから
只で帰す訳にもいかないでしょう?」
いやぁぁぁああああああああ!!!!!
こっちも弾幕開始ですか!?
今日はクリスマスじゃなかったんですか!?
不意に両肩にポンッと手を置かれる
霊夢にアリスさん?
なんでそんなに哀れむような目で見るんですか・・・?
「おお?宴会場はここかな?」
今度はなに?
「早苗さん、こんばんわー」
えっと
烏天狗の文さんに河童のにとりさん・・・と
頭に二本の角・・・
鬼?
「いやー、宴会があるなら一声かけてくれてもいいじゃない」
「あんたは呼ばなくても勝手に沸くでしょ」
「霊夢ーそんな冷たいこと言わないでさー」
あの・・・
本当に私はどうすればいいんですか・・・?
「ぎゃぁぁぁぁあああ!!
幽々子様!!それ私の半霊ですって!!!」
・・・
「霧雨 魔理沙!一発芸いくぜ!!」
・・・
「あのー・・・
早苗さん?大丈夫?」
・・・
「誰でもいいからたすけてぇぇっぇぇえええええええええええええええ!!!!」
神奈子様やケロちゃんもきっとそんな感じで戦っちゃうでしょうね
どちらが勝つかはさておいて
よく見ると皆苦労人ばかりだw
毎回思うのですが、本当に嬉しくて励みになります
<12/24 3:03の名無し様
<どちらが勝つかはさておいて
ということですが、ぶっちゃけ私はS姉妹が好きなんで
勝敗を決めようとすると・・・なので自重しました
でも、実際は引き分けが一番可能性高そうですよね
<12/24 8:46の名無し様
やっぱり苦労人な気配がしますよねw
<12/24 9:29の名無し様
今回なんとなくケロちゃんとフランをあててみたんですが
思いのほか相性良さそうですね
<12/24 11:14の名無し様
早苗さんは色々と素敵ですよねw
<卯月由羽様
風神録のキャラ説明に「真面目」とあったので
幻想郷では異端なくらい常識人でもいいかなっと思ったのでw
<12/25 0:29の名無し様
<アリスや妖夢、藍あたりと似た空気
言われてみれば、確かにその通りで・・・
というか、無意識のうちにアリスと妖夢とは絡ませてましたね・・・w
最後に皆さんの感想見てると
早苗さんのイメージは皆さんと同じようなので安心しました
今後も多くの人と共感できるような話を考えたいです
よくわかりますねww
早苗さん、ファイト!
<08-01-20の名無し様
常識とは自分で決めるものですからね
私たちが幻想郷にいけないのも、「私たちの常識」が「幻想郷の常識」を拒んでるからですしね!
早苗さんは神様たちとの関係や自分の奇跡の能力があったからこそ、幻想郷に行けたのかもしれませんね…
それでも、真面目すぎる早苗さんには幻想郷の常識は厳しいようです