「――さあみんなっ、ここに集まれこの指とまれっ!
永遠亭を知るイナバよ今こそ来たれーっ!」
「「「うさー!」」」
それは、ある穏やかな昼下がりのこと。
てゐの一声に反応し、昼寝していた小さな子達や竹林の方にいた子達が次々に庭に集まってきます。
そこにある絶対感というか信頼感のようなものは、やっぱりてゐが慕われているのだと感じさせるには十分でした。
「……なのに、何であんなことしてるんでしょうか」
「気にしちゃだめよ。子供は元気なくらいで丁度いいんだから」
「はぁ……そういうものですか」
私の傍らで茶をすする師匠。既に準備は万端と言わんばかりに、愛用の医者かばんは開かれている。
これから起こる惨事と、その後始末――主に、手当て――は想像するまでもなく大変なもので。
「あの子達の本能みたいなものなのよ。危ないと解るくらいに知識があってもやめられない。
それどころか、もっともっとって限界を求めていく。楽しくひたむきにね。
でもね、そうやって同じことを体験して仲良くなっていくのは悪いことじゃないわ。
――だったら、私達でそれを助けてあげる形で、一緒に仲良くなれればいいでしょう?」
「それは、そうかもしれませんけど……受け身の取り方とか、私から教えてあげた方がいいかもしれませんね」
「ええ、是非ともそうして頂戴。それも共通の体験になるでしょうしね」
――ああ、何だかちょっと想像してしまった。
大広間に、てゐの指示によって縦横完璧にぴしっと並んだ大人数の子達。
そしてその一番前で体操のお姉さんのような感じで、衝撃を逃がす体術を指導する私。
もちろん、みんなでやる度に畳を鳴らすのは言うまでもなく。
「始まるわよ」
師匠の言葉に気付いて現実を見れば、えいえいおーと拳を振り上げてみんなが盛り上がっていた。
ああもう、てゐも持ち上げるのが上手いんだから……って、本当に小さい子を持ち上げてるし。
「ね、ね、てゐさま。やっぱりやめましょうよ」
「大丈夫大丈夫♪ 女は度胸! なんでも試してみるものよ。
さ、抱っこしてあげるからみんなで乗ろっ」
涙目になりながら懇願する小さい子を、それはもう素敵な笑顔で諭して乗せてあげるてゐ。
高い所がダメなあんな子まで構わず乗せてしまう辺り、何て言うか……黒い。
――そうしてみんな、高みへと登っていく。
ある者は嬉々として。
ある者はこれから訪れる災厄に怯え。
そしてある者はてゐの細腕に抱えられて。
でも、空を目掛けて伸びる竹だって花が咲けば枯れるし、形ある物はいつか壊れる。
暗闇を切り裂く流星だって、いつかは地に落ちるから。
小さな子達を乗せ終えたてゐは、最後に……やや慎重に、自らもその舞台に上がりました。
「これで全員だよね? みんな揃ってるよね? じゃあいくよー
やっぱりイナバ! 100人乗っても!」
「「「だいっ! じょー!」」」
――ミシッ
ああもう、やっぱり。
「「「うさーっ!?」」」
夢と希望とみんなを巻き込んで、崩れ落ちる姫様お手製竹編み物置。どうせからっぽだけど。
私と師匠の戦いはここからだ。あんまり怪我人が多くなければいいんだけど。
「しかし姫様も姫様ですよね。あれ、少し手を抜いてるんでしたっけ?」
「あら、手を抜くどころか暇つぶしよ。姫が本気になったら時すらも敵じゃないわ」
ウサギ達が可愛いです。発想も可愛い。そうだよね、乗りたいよねぇ。うん、かわいいよもう。
しかしまた遊びたくなる気もするな
しかしこの兎たち、ノリノリである