この日、香霖堂の店主の森近霖之助は機嫌がよかった。
理由は珍しい外の世界の着衣を見つけたからである。
幻想郷では外の世界の着衣は珍しく、好事家などに高値で売れる。高値で売ればいい酒や上質な茶を買うことができる。
そんなわけで今日の霖之助は特に機嫌がよかった、とある少女が来るまでは…
カランカラン
「すみませ…」
「おや、いらっしゃい」
その少女は店の中央にある外の世界の着衣を見て硬直した。
霖之助はその人物の様子に首を傾げる。
「君が見ているその服は外の世界の物でね…」
「………い」
少女が顔を真っ赤にして呟く。
「変態!」
真っ赤な顔のまま少女は絶叫とともに店から飛び出して行った。
「…はい?」
そこには呆気にとられた霖之助と露出度の高いバニーコスチュームが残されていた。
少女、東風谷早苗が初めて香霖堂へ来た時の事であった。
幻想郷に住民は総じて人をおちょくるのが好きだ。
どのように広まったのかは全くを持って謎なのだが霖之助の変態という不名誉極まりない称号が幻想郷全土に広まっていた。
店にいれば様々な客にニヤニヤとした笑みを浮かべながら「変態店主」と言われ、常連には事あるごとにからかいの種にされる。
中でも霖之助が頭を抱えたのが、里に寄った時に偶然出会った道具屋霧雨店の店主を務める彼の元師匠が笑いながら「変態!変態霖之助」という言葉を連呼していたことである。どこが壺にはまったかは謎である。
しかし人の噂も七十五日、そのような噂はいつの間にか消えていた。実際のところは一通りおちょくり終えて満足しただけであったりする。
ちなみに例の外の世界の着衣は噂の最中に永遠亭の薬師に破格の値段で売ることになった。
このようなこともあって霖之助は早苗の名をブラックリストに書き加えるのであった。
ちなみに名前については後日、霊夢に教えてもらったとのことだ。
噂が消えてから数日後…
カランカラン
「いらっしゃ…」
「あの、すみません…」
恐る恐るといった感じで店に入ってきたのは霖之助に変態という称号を与えた張本人。
「…いったい何の用だい?」
嫌そうな顔を隠しもせずに、嫌そうな声色で、嫌そうな目で早苗の迎えた。
「う、そうあからさまにしなくても…」
「用がないなら早く帰ってくれないか」
そう言い捨てると手元にある本を読み始める。
明らかな拒絶を感じた早苗は慌てる。ちなみに霊夢ならば「いつも本場っか読んでてよく飽きないわね」などと言ってそうであるが…
「よ、用ならあります。あの、その…」
「…で、その用は?」
「…み、巫女服を作っていただけませんか?」
早苗は今着ている巫女服の端を掴ん恥ずかしそう俯いていた。
「他を当たってくれ」
だが霖之助はそんな早苗をばっさりと切り捨てる。
「な、何でですか!」
「なんでも何も此処は古道具屋だ。あいにく仕立て屋ではないんでね」
「そ、それはそうですが」
思わず納得してしまう早苗、実際香霖堂はほぼなんでも屋に近く制作の依頼があれば作らないこともない。
たとえば霊夢が使っている巫女服どころかお払い棒や札なども霖之助が作っていたりする。
ようは早苗にさっさと帰ってほしいだけなのである。
「で、ですが霊夢が巫女服はここで作ってもらっていると…」
言葉がだんだんと尻すぼみになっていく。
そこでハッと何かに気づいたかのように懐から小さな箱を取り出しこちらに手渡してきた。箱には妖怪山名物妖怪饅頭などと書かれていた。中身は饅頭だ。
「遅れましたがこの間はすみませんでした。霊夢からいろいろ話は聞きました。それで…あの…その…」
早苗が何か困ったように言葉を濁す一方、霖之助は鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をしていた。
「で、いったいどんな風に仕立てればいいんだい?」
「ええと、今着ているこの服のサイズを一回り大きくしてほしいのですが…」
菓子折り付けてでの謝罪は霖之助にかなりの好印象を与えたようだ。
霖之助もよくよく話してみれば早苗は常識をもったまともな人間であることに気づき、さらには霧雨店店長が早苗のことを高評価していたことを思い出したため巫女服を作ることに了承したのであった。
幻想郷には珍しい常識人が客なのだ。逃すわけにはいかない。
「今の身長とかはわかるかい?」
「い、いえ今度測って…」
「わからないなら今からこのメジャーというもので測るから少し動かないでくれ」
「え、いややめてくだ…」
「動かない」
「…はい」
しばらく為すがままにされる早苗。その顔はトマトのように紅い。男性に服の仕立てをされるのが初めてな彼女にとって今の状況は火が出そうなほど恥ずかしいのであった
やがて測り終えたのか急に霖之助は離れメジャーをしまう。
「十日したら一度様子を見に来てくれ、その時にさっき提示した代金を支払ってくれればいい」
「わかりました」
霖之助はいつものようにカウンターに座り、早苗はふらふらと店から出て行った。
十日後
「ちょうど出来上がったところだから持って行くといい」
「ありがとうございます」
カウンターにお金を置いていく。
見事に仕事を完遂した霖之助の顔は久々に収入のある仕事ができたことに満足なのかやけに晴れ晴れとしていた。
早苗は十日前にあった時の印象とまるで違う霖之助に対して、首を傾げながら服を持ってくる前に入れて貰ったお茶を口へ運ぶ。
カウンターには綺麗に仕立て上げられた巫女服があった。
デザインは今現在早苗が着ている巫女服と全く違いが見られない程で、早苗をあの短時間でよくここまでできたものだと感心させていた。
そしてあの時のことを思い出してまた顔を赤くさせる。
「また何かあればまた来るといい」
「あ、はい、ありがとうございます」
早苗は慌ただしく店から飛び出して行き、霖之助はそれを見送った。
しばらく彼女が出て行った扉を眺めてから…
「さて、久しぶりにいい酒でも飲むかな」
と、密かに高く設定した代金でどんな酒を買おうか思案を巡らし始めた。
彼女は確かにいい客だ。
ブラックリストから早苗の名前は消えていた。
理由は珍しい外の世界の着衣を見つけたからである。
幻想郷では外の世界の着衣は珍しく、好事家などに高値で売れる。高値で売ればいい酒や上質な茶を買うことができる。
そんなわけで今日の霖之助は特に機嫌がよかった、とある少女が来るまでは…
カランカラン
「すみませ…」
「おや、いらっしゃい」
その少女は店の中央にある外の世界の着衣を見て硬直した。
霖之助はその人物の様子に首を傾げる。
「君が見ているその服は外の世界の物でね…」
「………い」
少女が顔を真っ赤にして呟く。
「変態!」
真っ赤な顔のまま少女は絶叫とともに店から飛び出して行った。
「…はい?」
そこには呆気にとられた霖之助と露出度の高いバニーコスチュームが残されていた。
少女、東風谷早苗が初めて香霖堂へ来た時の事であった。
幻想郷に住民は総じて人をおちょくるのが好きだ。
どのように広まったのかは全くを持って謎なのだが霖之助の変態という不名誉極まりない称号が幻想郷全土に広まっていた。
店にいれば様々な客にニヤニヤとした笑みを浮かべながら「変態店主」と言われ、常連には事あるごとにからかいの種にされる。
中でも霖之助が頭を抱えたのが、里に寄った時に偶然出会った道具屋霧雨店の店主を務める彼の元師匠が笑いながら「変態!変態霖之助」という言葉を連呼していたことである。どこが壺にはまったかは謎である。
しかし人の噂も七十五日、そのような噂はいつの間にか消えていた。実際のところは一通りおちょくり終えて満足しただけであったりする。
ちなみに例の外の世界の着衣は噂の最中に永遠亭の薬師に破格の値段で売ることになった。
このようなこともあって霖之助は早苗の名をブラックリストに書き加えるのであった。
ちなみに名前については後日、霊夢に教えてもらったとのことだ。
噂が消えてから数日後…
カランカラン
「いらっしゃ…」
「あの、すみません…」
恐る恐るといった感じで店に入ってきたのは霖之助に変態という称号を与えた張本人。
「…いったい何の用だい?」
嫌そうな顔を隠しもせずに、嫌そうな声色で、嫌そうな目で早苗の迎えた。
「う、そうあからさまにしなくても…」
「用がないなら早く帰ってくれないか」
そう言い捨てると手元にある本を読み始める。
明らかな拒絶を感じた早苗は慌てる。ちなみに霊夢ならば「いつも本場っか読んでてよく飽きないわね」などと言ってそうであるが…
「よ、用ならあります。あの、その…」
「…で、その用は?」
「…み、巫女服を作っていただけませんか?」
早苗は今着ている巫女服の端を掴ん恥ずかしそう俯いていた。
「他を当たってくれ」
だが霖之助はそんな早苗をばっさりと切り捨てる。
「な、何でですか!」
「なんでも何も此処は古道具屋だ。あいにく仕立て屋ではないんでね」
「そ、それはそうですが」
思わず納得してしまう早苗、実際香霖堂はほぼなんでも屋に近く制作の依頼があれば作らないこともない。
たとえば霊夢が使っている巫女服どころかお払い棒や札なども霖之助が作っていたりする。
ようは早苗にさっさと帰ってほしいだけなのである。
「で、ですが霊夢が巫女服はここで作ってもらっていると…」
言葉がだんだんと尻すぼみになっていく。
そこでハッと何かに気づいたかのように懐から小さな箱を取り出しこちらに手渡してきた。箱には妖怪山名物妖怪饅頭などと書かれていた。中身は饅頭だ。
「遅れましたがこの間はすみませんでした。霊夢からいろいろ話は聞きました。それで…あの…その…」
早苗が何か困ったように言葉を濁す一方、霖之助は鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をしていた。
「で、いったいどんな風に仕立てればいいんだい?」
「ええと、今着ているこの服のサイズを一回り大きくしてほしいのですが…」
菓子折り付けてでの謝罪は霖之助にかなりの好印象を与えたようだ。
霖之助もよくよく話してみれば早苗は常識をもったまともな人間であることに気づき、さらには霧雨店店長が早苗のことを高評価していたことを思い出したため巫女服を作ることに了承したのであった。
幻想郷には珍しい常識人が客なのだ。逃すわけにはいかない。
「今の身長とかはわかるかい?」
「い、いえ今度測って…」
「わからないなら今からこのメジャーというもので測るから少し動かないでくれ」
「え、いややめてくだ…」
「動かない」
「…はい」
しばらく為すがままにされる早苗。その顔はトマトのように紅い。男性に服の仕立てをされるのが初めてな彼女にとって今の状況は火が出そうなほど恥ずかしいのであった
やがて測り終えたのか急に霖之助は離れメジャーをしまう。
「十日したら一度様子を見に来てくれ、その時にさっき提示した代金を支払ってくれればいい」
「わかりました」
霖之助はいつものようにカウンターに座り、早苗はふらふらと店から出て行った。
十日後
「ちょうど出来上がったところだから持って行くといい」
「ありがとうございます」
カウンターにお金を置いていく。
見事に仕事を完遂した霖之助の顔は久々に収入のある仕事ができたことに満足なのかやけに晴れ晴れとしていた。
早苗は十日前にあった時の印象とまるで違う霖之助に対して、首を傾げながら服を持ってくる前に入れて貰ったお茶を口へ運ぶ。
カウンターには綺麗に仕立て上げられた巫女服があった。
デザインは今現在早苗が着ている巫女服と全く違いが見られない程で、早苗をあの短時間でよくここまでできたものだと感心させていた。
そしてあの時のことを思い出してまた顔を赤くさせる。
「また何かあればまた来るといい」
「あ、はい、ありがとうございます」
早苗は慌ただしく店から飛び出して行き、霖之助はそれを見送った。
しばらく彼女が出て行った扉を眺めてから…
「さて、久しぶりにいい酒でも飲むかな」
と、密かに高く設定した代金でどんな酒を買おうか思案を巡らし始めた。
彼女は確かにいい客だ。
ブラックリストから早苗の名前は消えていた。
あときゅんきゅん、楽しみにしてます
この調子でドルルン師匠には、さな霖SSを書いてもらおうか
ってか書いて!お願い!!
B・W・H!!B・W・H!!色んな意味でおいしいですね!!ww