Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ふたりの季節

2007/12/16 11:46:06
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その日、リリーは別れを告げに来た。

「レティ、そろそろ春よ」

「もうきちゃったんだ。今年は早いね」

リリーがレティを訪れた時、それが春の訪れとなる。

「久しぶりに会えたんだからもっと遊びましょうよ」

湖では氷の妖精達がはしゃいでいた。

「よしておくわ」

リリーは湖に目をやりながら答えた。




「ねぇリリー」

優しい声で話しかけるレティ。

「わたしに会うの楽しみにしてる?」

「私はただあなたに別れを告げに来るだけだから」

以前湖を見つめ続けるリリー。

「わたしのこと嫌い?」

その質問に一瞬彼女を見つめるも、また目線を下に向ける。

「考えたこともないわね」

「そっか」

レティも一瞬湖に目をやるも、すぐに彼女を見つめなおした。

「わたしはねリリーのこと大好きだよ。本当ならずっと一緒にいたい」

リリーはその瞳を見つめられなかった。

「無理なのはわかってるわ。わたし達は季節の変わり目でしか会えないのだから。でもね―」

「お願いだからもうやめて!」

リリーは我慢できなかった。

(どうしてそんなこと言うの。年に数回しか会えないとわかっているのに。愛し合えばただ悲しくなるだけなのに…)

その場を立ち去る彼女。

その日彼女は泣きつくした。




「起きろリリー」

そこには、黒い服を着て彼女に瓜二つの女性が立っていた。

「…あなたは」

「お前の『真』だ」

彼女が言うには、リリーの『正直な心』から生まれた存在らしい。

「なぁ素直になれよ」

「素直になれたらどれだけ楽か」

一つため息をつくリリー。

「じゃあ行ってくるわ」

リリーは春を告げに飛び立った。
うっすらと涙を浮かべながら…

しかし彼女は笑顔だった。
悲しみを誰にも悟られないように。





「みなさーん、はるですよー」




彼女達の一部始終を眺めていた鴉天狗はあえてこのことを記事にはしなかったそうです。

この作品は柊一さんの作品を見てひらめきました。
ありがとうございました。
HAL
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